Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

「ねぇ。今日は僕もリンクスの皆と飲みたいんだけど。」

出かけようと上着を手に取った君に、僕は言ってみた。
どうしてだ。という君に僕はなんでもないんだけど、と肩をすくめて答える。

「しばらく皆と会ってないしね。」
でも、ホントは僕の中では今日は特別な日だ。君は気付いてないと思うけど。

君はリンクスの溜まり場に僕が顔を出すのを嫌がる。危険だからだろう。
アッシュはカリスマだ。リンクスの中では神に近い。そんな神様の近くにポッと出の僕なんかが彼の脇にいるのをよく思ってないメンバーがいるはずだ。と僕は思っている。
だから、僕もリンクスのたまり場には極力顔を出さないようにしている。でも今日はー。

「それにこのアパートの中ばかりだと息が詰まっちゃってね。」

僕は少し目を伏せて少し精神的にまいっているフリをした。自分でもよくやるよ。と思う。
でも、今日はなんとしてもあのバーに行きたいんだ。君と2人で。
そんな僕を見て君は逡巡したようだ。
小さくため息を付いて、いいか。俺から離れるなよ。と言って僕の肩を抱いた。
やった!作戦成功だ! 「うん。君の傍を絶対離れないよ。」 と僕は顔を上げて君を見てからニコリと笑う。
連れて行ってくれるならなんでもアッシュの言う事を聞くよ。と。

アッシュも僕に笑い返してくれた。

僕は今日というこの日に君に見せたいものがあるんだー。


*****


そして、僕は今リンクス達の溜まり場のテーブル席で酒を飲んでいた。

なのに僕の隣には君がいない。
僕は早いペースで酒を煽る。
心配したボーンズが、もうやめとけよと静止するのも聞かずに。

アッシュはカウンターにいて僕に背を向けていた。その隣にはけばけばしい化粧の女が座っている。

さっきまで僕はそこに座っていた。

1時間くらい前、この溜まり場に到着して、僕たちはカウンター席に向かった。そこはアッシュの指定席だ。ボスである彼がこのバーにいない時もそこに座るリンクスはいない。迷わずいつもの椅子に座るアッシュについて、僕は彼の隣に座った。
アッシュはいつものお酒を注文し、僕はとりあえずビールを頼む。
強面のマスターがニコリともせずに、すぐにお酒を出してくれた。
グラスに口をつけるアッシュは心なしか機嫌はいいようだ。
きっと僕が今から君に見せるものも喜んでくれるだろう。 たわいない会話で笑い合いながら僕たちは杯を重ねる。
二杯目のお酒も残りわずかになって、僕はそろそろ本題に入ろうとポケットに手をやった。

「あのさ。君は覚えてないかもしれないけどー。」

その時、とても美人な女の人が、久しぶりね、とアッシュに声を掛けて僕とは反対側のスツールに座った。 いつもはアレックスが座る席。

アッシュが少し動揺する。僕はそれを見逃さなかった。

会話からして昔なじみのようだ。
アッシュは僕に気兼ねをしてか、取り敢えず彼女に断りの言葉を掛けていた。
だが彼女は構わず、アッシュの肩に親しげに手を載せ、アッシュに話しかける。

彼女はとても・・ゴージャスだ。

腰まで届く波打つ金髪は少し赤みがかっていて美しい。アッシュの明るいプラチナブロンドの髪の隣でよく映えている。
白い肌。濃い青色の瞳。ハッキリした目鼻立ちは彼女の性格を表しているのだろうか。
不機嫌なアッシュをものともせずに明るく話しかけている。
アッシュはうるさげに返事をしていた。
彼の肩に手を載せたまま彼女が彼の耳に口を寄せた時、 彼女が、まるで初めて僕に気づいたかのようにアッシュの肩越しにこちらを見た。

まるで珍しいものでも見るような視線。

僕は不快な気分になる。

「――――英二、悪いな・・・席を外してくれ」

え?僕が? 今日僕は君と・・・。

そんな僕の動揺を知ってかしらずか彼女が僕の目からアッシュを隠すように、僕と彼の間に割り込んできた。

真正面で見ると怖いくらいの美人だ。 僕は少し怯んだ。
そんな僕にアッシュが、お前は向こうに行ってろと言ってボーンズに視線を送る。
すぐにボーンズが寄って来て、向こうに行こうぜ、と僕に声をかけ、僕は彼に連れて行かれた。





そして僕は今ボーンズとコングと3人でテーブルを囲んでいる。
ボーンズには一応アッシュと彼女の関係を聞いてみた。それとなく。
でもなんだか僕には言いづらいみたいで。
ああ・・とか、まあ・・とか、ごまかして、ボスが言ってないならお前は知らなくていいんじゃねぇか。と教えてくれない。

アッシュなんて知らないんだ。

僕は何杯目かの酒を煽る。 僕の視線の先ではカウンターでアッシュが彼女と話をしていた。
絶えずアッシュの方を向いて話をしている彼女はとても楽しそうだ。
僕は杯を重ねながら2人を見る。
笑う彼女。 スネる彼女。 アッシュにしな垂れかかる彼女。
どの彼女もとても楽しそうで。
あんな美人に寄りかかられて悪く思う男はいないハズだ。
僕の胸はなんだか苦しくなる。

僕たちはこの間恋人同士になったばかりだ。
勇気をもって、君が好きなんだと言った僕に、君は少し戸惑って、僕から視線を少し逸らしながら、俺もお前が好きだと、答えてくれた。

そして僕たちは2度目のキスをした。

恋人同士になってから初めてののキスだね。と僕が言うと君がそうだなと少し笑った。
そして2人でキミのベッドで抱き合いながら眠った。
一つのベッドで寝るのも初めてだね。 と僕が言うと。
初めてばかりでよかったな。早く寝ろよ。と君は僕の額にやさしくキスをして僕が眠るまで髪を梳いてくれた。

だから。 だから僕たちは恋人同士なのに。

どうして今、彼の隣に座っているのは僕じゃぁないんだろう。

僕は酔いの回った頭で考える。

やっぱり僕たちは男同士だから?
やっぱりアッシュは女の子の方がいい?

その時、アッシュの隣のゴージャスな彼女が僕を振り返って、真っ赤な唇が意味ありげに笑った。

僕は彼女の視線を振り切るように、グラスの酒を一気に飲み干す。

ー負けられない。

僕は今日中に君と2人で話したいことが、あるんだ。

一大決心をした僕はテーブルに両手を付き、ガタンと大きな音をたてて椅子から立ち、
それが倒れたのも構わずに、彼女の視線にちょっと怯みながら、おぼつかない足取りで、ボーンズの静止も聞かずにアッシュに近寄っていく。
アッシュは長いカウンターで僕に背を向けて飲んでいた。
だけど僕はわかるんだ。あの広い背中は僕が近寄っていくことを察知しているって。
あきらかに自分の酒量を超えた飲み方をした僕は少し気が大きくなっていた。
僕よりアッシュの好みを知ってるやつはいないんだぞ。と。
足がつかない程背の高いスツールに座っているアッシュの隣に僕は立った。
アッシュが振り向く。そして僕を見下ろした。

「ね。君。今日は何時に帰ってくるんだい?」

僕は知ってるんだ。この角度から君を見上げる僕の瞳にきみが弱いって事を。

それまで少し仏頂面だったアッシュの顔が僕を見て少しやわらいだ。
やっぱりこの角度は効果があるようだ。と酒でぼやけた頭で冷静に分析する。
そんな僕に君が呟いた。これからリンクスの会合があるんだ。だからお前は帰っとけ。と。
彼の脇からは女が茶々を入れてくる。うるさいな。だが酔っ払った僕の耳には彼女の言葉はちゃんと入ってこなかった。
アッシュは僕を一人で帰らせる為に、もう一度ボーンズを呼び寄せようとする。
そんなに僕を帰らせたいのか。なんで?アッシュ。”俺の傍を離れるな”ってさっき君は言ったよね。

僕の胸はキリリと締め付けらる。

僕はくやしくなってうつむいて少し歯を食いしばった。

君。ー見てろよ。

僕はまた顔を上げアッシュのTシャツの裾を少しひっぱった。
アッシュの気配が少しドキリとしたのを感じられる。 こういうのが嫌いな男がいるなんて聞いたことがない。僕も男だから良くわかる。
僕は酔った頭でろくでもないことを考える。男が男の裾をひっぱるなんてシラフの僕には出来ないだろう。でも。

しめしめだ。

僕は彼のTシャツの裾をもうすこし強く握った。
「忙しいんだね。僕は君といたいのに。」
いつもならあんまりこの手のワガママを言わない僕のその言葉にアッシュはどう思っただろうか。でもやっぱり・・本心なんだ。
「僕はいつも心配だよ。君の・・帰りが遅くなったときはいつもいつも。」
そして、また顔を上げてアッシュを見る。酒を飲んだ僕の目は潤んでいるハズだ。だって、いつも皆にそういわれるから。
それから 、少し寂しげな表情を顔に浮かべた。もちろんわざとだ。
「でも、眠らずに待ってるから。早く帰ってきてね。」
僕がこの表情を浮かべた時、僕にやさしいアッシュはかならず僕の心配をしてくれる。
アッシュの手が思わず僕の黒髪をなでようとしたのをさりげなく僕はかわした。
君の手が宙を掴んで少し止まり、そして降ろされる。その顔はとても切なそうだ。

ごめんよ君にそんな顔させて。

ーでも後一押しか。

いつもの僕なら絶対にやらないこんな駆け引きに僕は負けたくないんだ。
アッシュの隣の彼女に負けたくない一心で君の気を引こうとする。
僕は何かに思いついたようなフリをして、顔を上げた。
君って確か『彼』が大嫌いだったよね。
「そうだ。でも今日は確かシンが前から見たいっていってたビデオが手に入ったっていってたから、彼に電話するよ。僕もすごくみたかったんだ。2人で見てる分には君も安心だよね。彼も腕は立つし。だから、一人でも大丈夫だよ。心配しないで。」

僕はもはや最初の計画の意味を見失っていた。
僕は君とこのバーで2人きりで話をしたかっただけなのに。
アパートにもどってしまったら意味がないのに。
シンとビデオを見る約束なんてしてない。全部ウソだ。
そして、君が一番弱いとっておきの僕の笑顔を顔に浮かべて見せる。

「ね?」

よし。これでどうだ。

それまで 黙って聞いていた君は、怖い顔になり・・・。お前ちょっとこっちへ来い。と僕の手を強くひっぱって僕を店の奥へと連れて行く。

しまった・・やりすぎたか。

痛いよ君。どうしたんだい。と声を出す僕にかまわず君はートイレへと僕を連れ込んだ。

個室に入り、後ろ手に鍵をかけた。 なんでトイレ? ガチャリと閉まる鍵の音はなんだか不穏な音に聞こえる。
「――――アッシュ?」
こんなところに連れ込んだアッシュは、なのになにも言わずに僕をただ見下ろしている。その瞳は険しい。

どうしよう・・・。君を怒らす気はなかったんだ。
『シン』 の一言がこんなに効果があるなんて。
だけど、いまさら全部ウソだったなんて言えないし・・。

僕は彼の瞳を見ていることができず、思わずその翡翠の瞳から目を逸らした。
それが彼の怒りをさらに煽る。
ドンッと僕は壁に押し付けられた。
「・・・っ・・痛っ」 
肩に食い込む彼の指先が痛い。
そして顎を捕まれ無理やり彼の方を向かされた。

怒気を孕んだその瞳。
僕はアッシュにこんなに怒りを向けられたのは初めてだ。
どこで失敗したんだろう。
僕は・・・僕はただ、今日、きみと2人きりになりたかっただけなのに。

しばらく見詰め合う瞳と瞳。

その時きみの眼差しからフッっと力が抜けた。
「・・・なぁ・・俺が怖いか?」
君の目が不安に揺れる。
ーえ?
そりゃ。君にあんな目で見られて怖くないやつなんかいないと思うけど。でも。

先ほどまで君が身に纏っていた怒気がなりを潜め、かわりにひどく自信のなさそうな君が目の前にいた。
頼りなさそうな。僕を窺うようなその瞳。

僕は知ってるんだ。

君はとても強いんだけど、本当はとても不安定な所があるということを。
君は一人で何もかもできるんだけど、本当はとても寂しい心を持っているという事を。
だから僕は君のそばにいたいと思ったのにー。
だから僕は君の不安をできるだけ取り除きたいと思ったのにー。

なのに。

君にそんなことを言わせた僕に、僕は軽い自己嫌悪を覚える。
僕が君を怖いと思うことなんて・・。

だけど、君の瞳は真剣で。真剣に僕を窺っていて。でも同時にそれはとても自信なさ気で。
ここで僕が、そんなことないよ。と言っても信じてもらえそうにはない。
僕はどう言ったものかと逡巡した。

そうだ。今ここで・・・・。

僕はポケットをゴソゴソさぐりながら君に話しかける。
今日の僕はこのポケットの中のモノを君に見せたかったんだ。
このバーで。君と2人きりで。

「ね。覚えているかい?数年前の今日、僕らはここで出会ったんだ。」

すごく頭のいい君が覚えてないわけないよね。ただ思い出さないだけだ。 でもあの日。

僕はポケットから写真を出した。

君の表情がハッっとなる。
僕の手に握られてるのはその数年前にこのバーで撮られた一枚の写真。

そこには、 無表情なきみと、緊張してる僕と、自然な笑顔をした・・・スキップ。

「最近。伊部さんが写真の整理をしたみたいで。僕にあの時の写真を何枚か送ってくれたんだ。」

ぼくは懐かしさで胸がいっぱいになる。

この黒い肌の少年とは少ししか話さなかったけど。その少しの会話からスキップが君の事がどれほど好きなのかが僕にに伝わってきたんだ。

「君は人を殺したことがあるって言っていたけど、こんなにスキップに好かれる君は決して悪い人ではないんだと思った。僕はだから君が最初から怖くなかったんだ。」
だから僕は初めから君に惹かれたんだ。
今こうして君と恋人同士になれたのも彼のおかげかもしれない。
僕は君の瞳を真正面から見た。

そして、ゆっくりと君に向けて言葉をかける。 僕の思いの全てが君に伝わるように、願いを込めてゆっくりと。

「僕は君を怖いと思ったことなんか一度もないよ。」

そして、僕は写真を持っている写真を折らないように気をつけながら君の両頬をそっと手で包み、少し背伸びをしながらー。
なんともいえない顔をしている君の額にキスをした。
僕から君へキスをするのはこれが初めてだ。僕の頬は少し赤くなったのが自分でもわかる。

「ね?」

挑発してごめんね?・・・・反省してる。

酔いも少し冷めた僕はちょっとだけ冷静になった。
冷静になったところで、アッシュにウソをついてしまったんだな・・と後悔する。
そしてバツの悪い笑みを浮かべてしまったんだろうか。そんな僕に気付いたきみがー

お前。シンと約束したなんてウソなんだろう。と僕の頭の上から呆れた声をかけてきた。

なんでバレたんだ・・・。と思いつつも僕は慌てていろいろと言い訳をした。
だがアッシュは聞く耳をもたない。そりゃそうだろう。僕でも信じないよそんな言い訳・・・。
とさらに反省していると・・アッシュが僕を抱きしめ僕の首筋を小さく噛んだ。

ア・・・・・アッシュ?

そして僕の唇に彼の唇が寄せられて・・・・・

その時、トイレの個室をドンドンと叩く声がしてきた。この声は・・。
「ちょっとっ!!早く出てよっ!!漏れたらどうすんのよっ!!」
アッシュがその声に動揺する。
これってあの彼女の声だ。独特な低い声。

そうだ君。あの彼女と一体どういう関係なんだ!僕の機嫌はまた悪くなる。僕を放って置いてまで彼女と・・。

ん?彼女?

僕は”彼女”の風体を思いだす。女性にしては低い声。アッシュほどある身長。このうえなく女性らしい仕草。アッシュの嫌そうな顔。ボーンズの微妙な顔。そしてここは・・・男子トイレだ。

なんだ。

と僕は気が抜けた。”彼女”に嫉妬してアッシュを挑発した自分に恥ずかしくなる。『シン』まで引き合いに出したのに・・・。
皆の前であんな態度。結構度胸がいったんだよ。酔った勢いだったけど。
アッシュの腕の中で僕は小さく苦笑した。そして彼の腕から抜け出そうと身じろぎする。

その時手に持っていた写真がチラリと僕の視界に入った。


『OKエイジ。あんたの度胸にカンパイだ!』


手の中の”スキップ”が僕に呆れて笑った気がした。


スキップ。来年もまたここでー。


ーfinー




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注:英二の独白は青(小葉が書きました。)
アッシュの独白は緑(カボチャ様が書きました。)で表示しております。ご了承ください。



「ねぇ。今日は僕もリンクスの皆と飲みたいんだけど。」

出かけようと上着を手に取った君に、僕は言ってみた。
どうしてだ。という君に僕はなんでもないんだけど、と肩をすくめて答える。

「しばらく皆と会ってないしね。」
でも、ホントは僕の中では今日は特別な日だ。君は気付いてないと思うけど。

君はリンクスの溜まり場に僕が顔を出すのを嫌がる。危険だからだろう。
アッシュはカリスマだ。リンクスの中では神に近い。そんな神様の近くにポッと出の僕なんかが彼の脇にいるのをよく思ってないメンバーがいるはずだ。と僕は思っている。
だから、僕もリンクスのたまり場には極力顔を出さないようにしている。でも今日はー。

「それにこのアパートの中ばかりだと息が詰まっちゃってね。」
僕は少し目を伏せて少し精神的にまいっているフリをした。自分でもよくやるよ。と思う。
でも、今日はなんとしてもあのバーに行きたいんだ。君と2人で。
そんな僕を見て君は逡巡したようだ。
小さくため息を付いて、いいか。俺から離れるなよ。と言って僕の肩を抱いた。
やった!作戦成功だ! 「うん。君の傍を絶対離れないよ。」 と僕は顔を上げて君を見てからニコリと笑う。
連れて行ってくれるならなんでもアッシュの言う事を聞くよ。と。

アッシュも僕に笑い返してくれた。

僕は今日というこの日に君に見せたいものがあるんだー。


ー記念日ー


そして、僕は今リンクス達の溜まり場のテーブル席で酒を飲んでいた。

なのに僕の隣には君がいない。
僕は早いペースで酒を煽る。
心配したボーンズが、もうやめとけよと静止するのも聞かずに。
アッシュはカウンターにいて僕に背を向けていた。その隣にはけばけばしい化粧の女が座っている。
さっきまで僕はそこに座っていた。

1時間くらい前、この溜まり場に到着して、僕たちはカウンター席に向かった。そこはアッシュの指定席だ。ボスである彼がこのバーにいない時もそこに座るリンクスはいない。迷わずいつもの椅子に座るアッシュについて、僕は彼の隣に座った。
アッシュはいつものお酒を注文し、僕はとりあえずビールを頼む。
強面のマスターがニコリともせずに、すぐにお酒を出してくれた。
グラスに口をつけるアッシュは心なしか機嫌はいいようだ。
きっと僕が今から君に見せるものも喜んでくれるだろう。 たわいない会話で笑い合いながら僕たちは杯を重ねる。
二杯目のお酒も残りわずかになって、僕はそろそろ本題に入ろうとポケットに手をやった。

「あのさ。君は覚えてないかもしれないけどー。」

その時、とても美人な女の人が、久しぶりね、とアッシュに声を掛けて僕とは反対側のスツールに座った。 いつもはアレックスが座る席。

アッシュが少し動揺する。僕はそれを見逃さなかった。

会話からして昔なじみのようだ。
アッシュは僕に気兼ねをしてか、取り敢えず彼女に断りの言葉を掛けていた。
だが彼女は構わず、アッシュの肩に親しげに手を載せ、アッシュに話しかける。

彼女はとても・・ゴージャスだ。

腰まで届く波打つ金髪は少し赤みがかっていて美しい。アッシュの明るいプラチナブロンドの髪の隣でよく映えている。
白い肌。濃い青色の瞳。ハッキリした目鼻立ちは彼女の性格を表しているのだろうか。
不機嫌なアッシュをものともせずに明るく話しかけている。
アッシュはうるさげに返事をしていた。
彼の肩に手を載せたまま彼女が彼の耳に口を寄せた時、 彼女が、まるで初めて僕に気づいたかのようにアッシュの肩越しにこちらを見た。

まるで珍しいものでも見るような視線。

僕は不快な気分になった。




鼻が曲がりそうな臭いを撒き散らしながら、

「アッシュ?・・・やっぱりアッシュじゃない!!やだぁ、久しぶりね!!」

真っ赤な爪を俺の肩に乗せ、そこに座るのが当然といった――――嫌な顔付きで、左隣の椅子へ腰掛けた。


「・・・・」レヴィ!!お前なんでこんな所にいるんだよっ!!


馴れ馴れしいソイツの態度に、俺の右隣に座っている彼の肩にピクリと動揺が走り抜ける。

機嫌を損ね、納豆尽くしのメシを食わされでもしたら堪ったものではないと――――瞬 時に判断を下し、

「・・・レ・・レヴィ、悪いな。今コイツと飲んでるから、またにしてくれ」

消え失せろ!! 

そうそう邪険にも出来ない面倒な相手を、波風立たぬように追い返そうとする。が、
血でも啜ったような毒々しい真っ赤な口を耳元にすり寄せてきて、
 
「随分なご挨拶じゃない?一杯くらい奢ってくれてもいいでしょ?
あら?その子、可愛 いじゃない・・・」
 
酒焼けした低音のササクレ声でねぶられて、ついでに彼にも目を付けられてしまい渋々覚悟を決めた。


――――折角のデートをブチ壊しやがって!!
 

背後のテーブル席にいるボーンズに視線を送って、彼から絶対に目を離すなと無言で伝達してから、
 
「――――英二、悪いな・・・席を外してくれ」

怖くて見られない右隣のひとへ、聞こえるようにぼそっと呟く。と、
すかさず椅子から飛び下りて――――俺と彼の間に、体を割り込ませてきたレヴィが、
  
「あら!アタシは彼も一緒がいいわ!!・・・アッシュ、貴方ちょっと邪魔よっ!」

洋服からわざとはみ出させている、シリコンの胸の肉を彼に見せ付けるように微笑みかけて――――後ろの尻の肉>で、俺を椅子から弾き飛ばそうとする。 

矯正下着に包まれた、固いその肉に負けじと――――必死で椅子にへばり付きながら 

「――――英二!!お前は向こうに行ってろっ!!」
  
大切な彼に指1本触れられないうちに、安全な場所へと遠ざけた。




そして僕は今ボーンズとコングと3人でテーブルを囲んでいる。
ボーンズには一応アッシュと彼女の関係を聞いてみた。それとなく。
でもなんだか僕には言いづらいみたいで。
ああ・・とか、まあ・・とか、ごまかして、ボスが言ってないならお前は知らなくていいんじゃねぇか。と教えてくれない。

アッシュなんて知らないんだ。

僕は何杯目かの酒を煽る。 僕の視線の先ではカウンターでアッシュが彼女と話をしていた。
絶えずアッシュの方を向いて話をしている彼女はとても楽しそうだ。
僕は杯を重ねながら2人を見る。
笑う彼女。 スネる彼女。 アッシュにしな垂れかかる彼女。
どの彼女もとても楽しそうで。
あんな美人に寄りかかられて悪く思う男はいないハズだ。
僕の胸はなんだか苦しくなる。

僕たちはこの間恋人同士になったばかりだ。
勇気をもって、君が好きなんだと言った僕に、君は少し戸惑って、僕から視線を少し逸らしながら、俺もお前が好きだと、答えてくれた。

そして僕たちは2度目のキスをした。

恋人同士になってから初めてののキスだね。と僕が言うと君がそうだなと少し笑った。
そして2人でキミのベッドで抱き合いながら眠った。
一つのベッドで寝るのも初めてだね。 と僕が言うと。
初めてばかりでよかったな。早く寝ろよ。と君は僕の額にやさしくキスをして僕が眠るまで髪を梳いてくれた。

だから。 だから僕たちは恋人同士なのに。
どうして今、彼の隣に座っているのは僕じゃぁないんだろう。
僕は酔いの回った頭で考える。

やっぱり僕たちは男同士だから?
やっぱりアッシュは女の子の方がいい?

その時、アッシュの隣のゴージャスな彼女が僕を振り返って、真っ赤な唇が意味ありげに笑った。
僕は彼女の視線を振り切るように、グラスの酒を一気に飲み干す。

ー負けられない。
僕は今日中に君と2人で話したいことが、あるんだ。




「・・・アッシュ!いい加減教えてくれてもいいでしょ?
 あの子、付き合ってる人とか居るの?」

「お前に関係ないだろ」居るに決まってんだろ!!俺だよ!俺!!
 
トイレの芳香剤のような臭いに顔を顰めつつ、随分と早いペースで杯を重ねていく彼を横目で盗み見る。と、

ほんのり頬を染めている彼の黒い瞳が――――トロンと力を失い、涙を抱いているかのように艶やかな光を放ち、
 
「ボーンズ!おかわりぃ!!次はもうちょっと強いのが飲みたいなぁ・・」

舌先でペロリと唇の縁を辿った瞬間、周りの野郎共が――――ゴクッと喉仏を動かした。
  
――――あいつらっ!!

 
舌打ちを堪え、邪魔者ばかりのここから、どうやって彼を家まで無事に帰らせるか頭を働かせていると、

「教えてくれたっていいじゃない~!ケチ!!
 減るもんじゃあるまいし・・・ねぇ?教えてよ!」

血肉を引き裂いて染めたような爪を――――俺の二の腕に食い込ませ、彼の情報を何とかして吐かせようと、レヴ>ィが酒臭い唇を近付けてきた刹那、

――――英二?

テーブル席で飲んでいた彼がすくっと腰を上げ、覚束ない足取りで――――真っ直ぐこちらに向って足を運び始め>た。


気迫の篭った可愛らしい彼が、一歩一歩俺に近付いて来るのを、全神経を研ぎ澄ませて感じながら、 

「レヴィ・・・臭いツラを近付けんなっ!」
「なによ失礼ね!!」 

耳の直ぐ横にある、トイレの芳香剤を手を押し払い、もつれかかった不安定な足音に耳を傾ける。と、

空いている右隣に到着した彼から、ふわりと小さな風が巻き上がり――――甘い、ミルクの香りが漂ってきて、

「ね。君。今日は何時に帰ってくるんだい?」



僕は君を見上げた。
僕は知ってるんだ。この角度から君を見上げる僕の瞳にきみが弱いって事を。

それまで少し仏頂面だったアッシュの顔が僕を見て少しやわらいだ。
やっぱりこの角度は効果があるようだ。と酒でぼやけた頭で冷静に分析する。



舌足らずの物言いと共に、上目遣いに見詰められて――――前髪の隙間から覗く瞳に、誘われているような錯覚に陥った心臓がどくんと跳ね上がる。


叶う事なら、このまま彼と一緒に帰って、同じベットで横になって、モチモチの頬に頬擦りして、

おやすみのキスをして――――そして、許されるならその先へ進みたいと喚く欲望を宥めすかし



「・・・リンクスの会合があるんだ」あいつらをキッチリ〆とかないと駄目だろ?

生唾を呑み込んだ奴等への制裁をしなければならない――――彼氏のボスの役目を伝える。




君が呟いた。だからお前は帰っとけ。と。

リンクスの会合?だから何?その彼女と飲むのはいいってことかい?
僕はいつもの僕なら思いもしないような事でイラっとする。

彼の脇からは女が茶々を入れてきた。うるさいな。
だが酔っ払った僕の耳には彼女の言葉はちゃんと入ってこなかった。




俺たちの会話に聞き耳を立てていたレヴィが、ギラッと目を輝かせ、

「あら!!じゃあエイジ!!アタシと一緒に帰らない?」

獲物に喰らい付くような嫌な光を灯し、俺の彼に気安く声をかける。
 
「――――レヴィ!!お前は俺と飲むんだよっっ!!」話しかけんな!汚れるだろっ!
「え~!?なんであんたと飲まなきゃならないのよ!」
 
二の腕を掴んでいるマニキュアの指へ、ふっと寂しげな瞳を落とした彼に、 
 

違うんだ英二!レヴィはな、家までノコノコ着いてくるような厚かましい奴なんだよ!

おまけにな!!性転換の最中だから、男だろうが女だろうが両方こなせる兵なんだよ!

 
喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、 

「・・・・だからお前は帰っとけ」コイツは俺が食い止めるから!!なっ!?
 
この場にいる誰よりも信頼のおける人物の――――その気の全くないボーンズを、人差し指を折り曲げて呼び寄せようとすると



アッシュは僕を一人で帰らせる為に、もう一度ボーンズを呼び寄せようとする。
そんなに僕を帰らせたいのか。なんで?アッシュ。”俺の傍を離れるな”ってさっき君は言ったよね。

僕の胸はキリリと締め付けらる。

僕はくやしくなってうつむいて少し歯を食いしばった。

君。ー見てろよ。




「・・・・・そっか・・」  

掠れた声を紡いだ彼が微かに震えた指先で、俺のTシャツをつんと引っ張り――――

数年に一度の、甘えてくる彼の姿に、さっきよりも一段と跳ね上がった心臓がドクドクと耳煩い音を奏で出す。 

 
――――英二っ!?




アッシュのTシャツの裾をひっぱりながら僕は上目遣いになる。
アッシュの気配が少しドキリとしたのを感じられる。 こういうのが嫌いな男がいるなんて聞いたことがない。僕も男だから良くわかる。
僕は酔った頭でろくでもないことを考える。男が男の裾をひっぱるなんてシラフの僕には出来ないだろう。でも。

しめしめだ。



早摘みのアメリカンチェリー色の唇が、ぱくぱく卑猥に動いて、 

「忙しいんだね。僕は君といたいのに・・・・
 僕はいつも心配だよ。君の・・帰りが遅くなったときはいつもいつも。」
 
捨てられた子犬のように、小さく震えた瞳が真正面から俺を捉えて――――傷付いた笑みを見せる。




それから僕は、少し寂しげな表情を顔に浮かべた。もちろんわざとだ。
「でも、眠らずに待ってるから。早く帰ってきてね。」
僕がこの表情を浮かべた時、僕にやさしいアッシュはかならず僕の心配をしてくれる。




消え入りそうな彼の笑顔に、心が壊れてしまったように尖った痛みを訴えだし、

「用が済んだら直ぐ帰るから、な?」だから、そんな顔するなよ。

つい、いつもの癖で――――黒髪の指通りに癒されたくなった手を伸ばしてみる。が、

「・・・・っ・・」
触られたくないとでも言っているように、彼が素早く身をかわして逃れ――――初めて俺を拒否した。

  


アッシュの手が思わず僕の黒髪をなでようとしたのをさりげなく僕はかわした。
君の手が宙を掴んで少し止まり、そして降ろされる。その顔はとても切なそうだ。

ごめんよ君にそんな顔させて。

ーでも後一押しか。

いつもの僕なら絶対にやらないこんな駆け引きに僕は負けたくないんだ。
アッシュの隣の彼女に負けたくない一心で君の気を引こうとする。
僕は何かに思いついたようなフリをして、顔を上げた。
君って確か『彼』が大嫌いだったよね。
「そうだ。でも今日は確かシンが前から見たいっていってたビデオが手に入ったっていってたから、彼に電話するよ。僕もすごくみたかったんだ。2人で見てる分には君も安心だよね。彼も腕は立つし。だから、一人でも大丈夫だよ。心配しないで。」

僕はもはや最初の計画の意味を見失っていた。
僕は君とこのバーで2人きりで話をしたかっただけなのに。
アパートにもどってしまったら意味がないのに。
シンとビデオを見る約束なんてしてない。全部ウソだ。
そして、君が一番弱いとっておきの僕の笑顔を顔に浮かべて見せる。

「ね?」

よし。これでどうだ。




――――英二・・・なんでだよ・・・

 
宙を彷徨っていた指をきつく握り込んで、張り裂けてしまったような胸の痛みに耐えていると、 

悲しげに下がった口角を不自然に吊り上げた彼が、

「そうだ。でも今日は確かシンが前から見たいっていってたビデオが手に入ったってい ってたから、彼に電話するよ。僕もすごくみたかったんだ。
2人で見てる分には君も安心だよね。彼も腕は立つし。」

愛しい恋人の名でも口ずさむかのように、『シン』と唇を動かす時に――――綻んだ笑みを見せる。
 

――――っつ!! 
 

その途端、早鐘を打ち始めた心臓が壊れそうなほど激しく脈動をし出して、

まるで、鷲の鋭い鉤爪で胸を掴みにでもされているような――――初めて感じるキリキリした痛みに、

心臓がどうにかなってしまったのかと、眉を顰めてじっと耐えていると、

 
「だから、一人でも大丈夫だよ。心配しないで。――――ね?」 

 
言葉ひとつで、指先ひとつで、笑顔ひとつで、俺がこんな風になってしまう事を知らない彼が、

逢いたくて逢いたくて仕方がないんだと、瞳を細め――――シンに重ね合わせて、俺に笑いかける。


――――なんだよっ!!俺の事が好きだって・・お前、そう言っただろっ!!
  
 
さっき抱き寄せたばかりの彼の肩に、俺のではない腕が回されている幻影がチラついて、
「・・っ・・英二!ちょっと来いよっ!!」
木っ端微塵に砕けた心を隠し、それでもまだ愛しくて放したくない手首を、強引に掴んで引っ張って行く。 



それまで 黙って聞いていた君は、怖い顔になり・・・。お前ちょっとこっちへ来い。と僕の手を強くひっぱって僕を店の奥へと連れて行く。

しまった・・やりすぎたか。

君に捕まれた腕の痛みが一気に僕の酔いを醒ました。




「アッシュ?・・痛いよ!急にどうしたんだい?」

 
邪魔な奴等を一瞥して退かせ、トイレのドアを蹴り開けて――――自分自身が何をしたいのかも分からないまま、>薄汚れた個室に入って後ろ手に扉を閉める。

「――――アッシュ?」
 
木の軋む歪な音が、タイル張りの個室に悲鳴のように共鳴して、その音に瞳を顰めた彼が俺を見上げる。


――――嘘だったのかよっ!!俺がいいって・・・あの言葉は嘘だったのかよっ!! 


誰にも触られないように、ガラスケースにでも閉じ込めて、俺だけの物にしたい瞳を見下ろして、


何を聞いたらいいのか。まだ間に合うのか。

何故俺じゃ駄目なのか。いつからチビが入り込んだのか。

 
様々な思考が頭の中を駆け巡り、上手い言葉が見つからず、

「・・・なんで・・なんでだよっ!!」
意味の通じない問いを繰り返しながら彼を見詰めていると、

黒い瞳がグラリと揺れて、俺に見られるのが苦痛だと言わんばかりに――――顔をサッと伏せてしまう。

その瞬間――――抑えきれない激情に突き動かされた両腕が、 

「なんで避けんだよっ!!何が気に入らないんだよっ!!」
薄い両肩を掴んで、逃げてしまった彼の気持ちを捕らえるように、縋り付くように、

「・・・っ・・痛っ」 

壁に押し付け――――顎を掴んで無理矢理上を向かせた目を、正面から見据える。

 
俺以外の奴の名前なんて口にするなよ。 

頼むから、俺だけを見てよ。

  
拙い想いに支配されそうになる、情けない声帯を腹の底で押し止めて、

瞳を歪ませている彼に追い詰められた問いを投げ掛けた。

「・・・俺が・・俺が怖いのか?」 



俺はただ、お前とふたりきりになりたかっただけなんだ。それだけなんだよ。





その時きみの眼差しからフッっと力が抜けた。

ーえ?

そりゃ。君にあんな目で見られて怖くないやつなんかいないと思うけど。でも。

君の目が不安に揺れる。

先ほどまで君が身に纏っていた怒気がなりを潜め、かわりにひどく自信のなさそうな君が目の前にいた。
頼りなさそうな。僕を窺うようなその瞳。

僕は知ってるんだ。

君はとても強いんだけど、本当はとても不安定な所があるということを。
君は一人で何もかもできるんだけど、本当はとても寂しい心を持っているという事を。
だから僕は君のそばにいたいと思ったのにー。
だから僕は君の不安をできるだけ取り除きたいと思ったのにー。

なのに。

君にそんなことを言わせた僕に、僕は軽い自己嫌悪を覚える。
僕が君を怖いと思うことなんて・・。

だけど、君の瞳は真剣で。真剣に僕を窺っていて。でも同時にそれはとても自信なさ気で。
ここで僕が、そんなことないよ。と言っても信じてもらえそうにはない。
僕はどう言ったものかと逡巡した。

そうだ。今ここで・・・・。

僕はポケットをゴソゴソさぐりながら君に話しかける。
今日の僕はこのポケットの中のモノを君に見せたかったんだ。
このバーで。君と2人きりで。




両肩を掴まれたまま不便そうに、ポケットから一枚の紙を取り出して、

「ね。覚えているかい?数年前の今日、僕らはここで出会ったんだ。」

俺の目に映るように、目の前に差し出されたその写真に――――懐かしい空気に包まれた。
 
「・・・・これって・・・」スキップ・・・
彼が初めて店にやって来た時の思い出の一枚に、

久しぶりに見るスキップに、虚を衝かれて一瞬黙り込むと、
 
「最近。伊部さんが写真の整理をしたみたいで。
僕にあの時の写真を何枚か送ってくれたんだ。」

入手先を得意気に語り出す彼の瞳が――――痛い思い出に、少しだけ細くなる。 

初めて会ったばかりで硬い表情をしている、ほんの少し若い彼と、
小さなままの記憶通りのスキップを切り取った、

お世辞にも出来がいいとは言えないその写真に手を伸ばす。




ぼくは懐かしさで胸がいっぱいになる。

この黒い肌の少年とは少ししか話さなかったけど。その少しの会話からスキップが君の事がどれほど好きなのかが僕にに伝わってきたんだ。

「君は人を殺したことがあるって言っていたけど、こんなにスキップに好かれる君は決して悪い人ではないんだと思った。僕はだから君が最初から怖くなかったんだ。」
だから僕は初めから君に惹かれたんだ。
今こうして君と恋人同士になれたのも彼のおかげかもしれない。
僕は君の瞳を真正面から見た。

そして、ゆっくりと君に向けて言葉をかける。 僕の思いの全てが君に伝わるように、願いを込めてゆっくりと。

「僕は君を怖いと思ったことなんか一度もないよ。」



真っ直ぐの瞳を俺に向けて、一言一言が大切な宝物のように――――慎重に、丁寧に、言葉を紡ぎ出した。



欲しかったその答えに、彼の心がまだ俺にある事を知って、 

「記念日だから。・・・だから今日ここに来たかったのか?俺と一緒に?」
あんなに壊れそうだった心臓が命を吹き返したように、優しい調べを取り戻していく。
 
俺の心臓を操るなんて驚異的なことを難なくやってのける彼に、

「お前ってすごい奴だな」
泣きたくなるような幸福感が満ち溢れてきて、

柔らかなミルクの香りに鼻を埋めたくなって――――大切な人を腕の中に抱え込もうと小さく身を屈めると、


思い出の写真を傷を付けないよう、器用な指先で写真の角をそっと摘んで、

「・・・・アッシュ・・・」

壊れ物にでも触れるように、温かな掌で頬をそっと包み込んでくれる。


そんな積極的な彼に、毒気を抜かれている間に、
「・・・え・英二?」 
 
早摘みのチェリーが甘酸っぱいそよ風を起こしながら近付いて来て、額へ到着するや否や、すぐさま逃げ去って行>く。
  
逃げて行くチェリーを唇で追い縋って、タイルにの壁際まで追い込んで、ぷるんとした赤い実に齧り付こうと、顔を斜めに傾けて薄く口を開いたところで、
  
「ね?」
 
小首を傾げ、バツが悪そうに微笑む瞳とかち合って――――嘘の吐けないその瞳に、全てを悟った。 


――――コイツ、確信犯だ。

 
すまなそうに緩んでいる頬に、音を立ててキスのお返しをしてから、  

「お前、シンと約束なんてしてないだろ?・・・電話も嘘だな?」
 なだらかな首筋に鼻を埋めて、ハニーミルクをきつく抱き締める。
    
――――全くさ・・・ 

焦った彼が、ほんの少しだけ体温を上げ、

「え?ち・違うよっ!さ・さっき君の居ない時に電話で話してそれでビデオが――」 
 
それでも必死に取り繕っている、小憎たらしい首筋に――――軽い甘噛みをして、

「なんでそんな下手な嘘吐くんだよ!オニイチャン、最近『特に』性格悪いぞ?」
小さく怒っているフリをしながら、


――――全くさ、お前には敵わないよ。
 
 
心の中で全面降伏を掲げ、食べ損なったチェリーを口に含もうとする。が、

穴でも開けてるのか?と思わす聞いてしまいそうなほど、けたたましくドアがノックされ、

「ちょっとっ!!早く出てよっ!!漏れたらどうすんのよっ!!」





この声は・・。
アッシュがその声に動揺する。
これってあの彼女の声だ。独特な低い声。

そうだ君。あの彼女と一体どういう関係なんだ!僕の胸にまた黒いものが広がっていく。君は僕を放って置いてまで彼女と・・。

ん?彼女?

僕は”彼女”の風体を思い出す。女性にしては低い声。アッシュほどある身長。このうえなく女性らしい仕草。アッシュの嫌そうな顔。ボーンズの微妙な顔。そしてここは・・・男子トイレだ。

なんだ。

と僕は気が抜けた。”彼女”に嫉妬してアッシュを挑発した自分に恥ずかしくなる。『シン』まで引き合いに出したのに・・・。
皆の前であんな態度。結構度胸がいったんだよ。酔った勢いだったけど。
アッシュの腕の中で僕は小さく苦笑した。そして彼の腕から抜け出そうと身じろぎする。

その時手に持っていた写真がチラリと僕の視界に入った。


『OKエイジ。あんたの度胸にカンパイだ!』


手の中の”スキップ”が僕に呆れて笑った気がした。


スキップ。約束するよ。来年もまたここでー。



ーfinー






最後まで読んでくださってありがとうございます!
いやはや。とても楽しかった。(ケドとても疲れた(笑))
私。こんなにアッシュスキスキ光線を出してる英二を書くのはもうこれが最初で最後デスヨー。
”アッシュが好き”加減の度合いがわからなくて。難しかったです。
最初は・・英二がアッシュの袖をひっぱって上目遣いにかわいくアッシュの外出を引き止める。という短い妄想から始まったんですが。何がどうしてこうなった。
英二のシーンをカボチャさんに送ると、それのアッシュバージョンが速攻で返ってきて。しかもカボチャさんのところのアッシュだったんで。(カッコイイんだけど、怖くて、しかも英二に弱い。ってやつ)もうテンション上がりまくりました。
『どうなってもいいんですけど「俺が怖いか?」ってアッシュに言わせてください。』ってお願いしたら。
トイレに連れ込んだ!(笑)
たしかに怖い~~~www。とか思いました(笑)
すっごく楽しかったです!カボチャさん。最後までこのコラボに付き合ってくださってありがとうございました!感無量でございます!
そして、最後まで読んでくださった貴女。カボチャさんのブログに「カボチャ's director's cut 版」がございます。
お互いの小説でも切り取るところが違いましたので、別々に上げました。
そちらもぜひご覧くださいv。
それでは。お付き合いくださってありがとうございました~。
えーと。皆様こんばんわ。

糖度シリーズを最後まで楽しんでくださった方本当にありがとうございました~。
『選択』『糖度』と続けて載せて、結構管理人ヘロヘロでございます。
ございますが、楽しいことには目がないもので、

この度、親しくお付き合いさせていただいている

『カボチャの夢』さまのカボチャ様とコラボ小説を書かせていただきました~。

わ~パチパチ。

題名『記念日』

事のおこりは・・どうでしたかねぇ。
2人ともアッシュの過去モノを書くのが大好きで、しかも切り取るテーマが結構(どころかかなり)似てるという話になりまして。でも味付けが全然違うので、同じテーマを2人で別に書いてみても楽しいかもねー。
という話から・・・。

なぜだか。

同じエピソードを裏表で書いてもおもしろいかもねー。

という話になりまして。

やっぱり裏はアッシュかなぁ。いやいや、どうせなら英二を黒く・・・・。

などとどちらのスキー様にも怒られそうな意見を出し合い。

結果。

こんなカンジになりました!(アッシュの過去はどうなった。)
企画モノカテゴリからどうぞ。(いつもの目次カテゴリとは違いますよー)

カボチャ様がアッシュを考えました!
私が英二を考えました!

そして文章を掛け合わせております。英二→アッシュ→英二→アッシュみたいに。

カボチャ様のアッシュが英二にとてもやさしくて~。私とっても幸せでした!(笑)

ちなみにウチの企画モノカテゴリに、それぞれの小説を載せてます。
カボチャ様のところにもカボチャ様のディレクターズカット版がございますv

小説の切り取るところが違うから。2つはなんとなく違います。
結末がアッシュバージョンと英二バージョンに別れております。

うちの企画モノカテゴリには、それぞれ最初に2人が書いた小説が2本ありますので、興味のある方はそちらもどうぞ。

私たちが楽しんで書いたコラボ小説。皆様にも楽しんでいただければとてもうれしいです。

でわ~^^。


鼻が曲がりそうな臭いを撒き散らしながら、

「アッシュ?・・・やっぱりアッシュじゃない!!やだぁ、久しぶりね!!」

真っ赤な爪を俺の肩に乗せ、そこに座るのが当然といった――――嫌な顔付きで、左隣の椅子へ腰掛けた。


「・・・・」レヴィ!!お前なんでこんな所にいるんだよっ!!


馴れ馴れしいソイツの態度に、俺の右隣に座っている彼の肩にピクリと動揺が走り抜ける。

機嫌を損ね、納豆尽くしのメシを食わされでもしたら堪ったものではないと――――瞬 時に判断を下し、

「・・・レ・・レヴィ、悪いな。今コイツと飲んでるから、またにしてくれ」

消え失せろ!! 

そうそう邪険にも出来ない面倒な相手を、波風立たぬように追い返そうとする。が、
血でも啜ったような毒々しい真っ赤な口を耳元にすり寄せてきて、
 
「随分なご挨拶じゃない?一杯くらい奢ってくれてもいいでしょ?
あら?その子、可愛 いじゃない・・・」
 
酒焼けした低音のササクレ声でねぶられて、ついでに彼にも目を付けられてしまい渋々覚悟を決めた。


――――折角のデートをブチ壊しやがって!!
 

背後のテーブル席にいるボーンズに視線を送って、彼から絶対に目を離すなと無言で伝達してから、
 
「――――英二、悪いな・・・席を外してくれ」

怖くて見られない右隣のひとへ、聞こえるようにぼそっと呟く。と、
すかさず椅子から飛び下りて――――俺と彼の間に、体を割り込ませてきたレヴィが、
  
「あら!アタシは彼も一緒がいいわ!!・・・アッシュ、貴方ちょっと邪魔よっ!」

洋服からわざとはみ出させている、シリコンの胸の肉を彼に見せ付けるように微笑みかけて――――後ろの尻の肉で、俺を椅子から弾き飛ばそうとする。 

矯正下着に包まれた、固いその肉に負けじと――――必死で椅子にへばり付きながら 

「――――英二!!お前は向こうに行ってろっ!!」
  
大切な彼に指1本触れられないうちに、安全な場所へと遠ざけた。 



「・・・アッシュ!いい加減教えてくれてもいいでしょ?
 あの子、付き合ってる人とか居るの?」

「お前に関係ないだろ」居るに決まってんだろ!!俺だよ!俺!!
 
トイレの芳香剤のような臭いに顔を顰めつつ、随分と早いペースで杯を重ねていく彼を横目で盗み見る。と、

ほんのり頬を染めている彼の黒い瞳が――――トロンと力を失い、涙を抱いているかのように艶やかな光を放ち、
 
「ボーンズ!おかわりぃ!!次はもうちょっと強いのが飲みたいなぁ・・」

舌先でペロリと唇の縁を辿った瞬間、周りの野郎共が――――ゴクッと喉仏を動かした。
  
――――あいつらっ!!

 
舌打ちを堪え、邪魔者ばかりのここから、どうやって彼を家まで無事に帰らせるか頭を働かせていると、

「教えてくれたっていいじゃない~!ケチ!!
 減るもんじゃあるまいし・・・ねぇ?教えてよ!」

血肉を引き裂いて染めたような爪を――――俺の二の腕に食い込ませ、彼の情報を何とかして吐かせようと、レヴィが酒臭い唇を近付けてきた刹那、

――――英二?

テーブル席で飲んでいた彼がすくっと腰を上げ、覚束ない足取りで――――真っ直ぐこちらに向って足を運び始めた。


気迫の篭った可愛らしい彼が、一歩一歩俺に近付いて来るのを、全神経を研ぎ澄ませて感じながら、 

「レヴィ・・・臭いツラを近付けんなっ!」
「なによ失礼ね!!」 

耳の直ぐ横にある、トイレの芳香剤を手を押し払い、もつれかかった不安定な足音に耳を傾ける。と、

空いている右隣に到着した彼から、ふわりと小さな風が巻き上がり――――甘い、ミルクの香りが漂ってきて、

「ね。君。今日は何時に帰ってくるんだい?」

舌足らずの物言いと共に、上目遣いに見詰められて――――前髪の隙間から覗く瞳に、誘われているような錯覚に陥った心臓がどくんと跳ね上がる。


叶う事なら、このまま彼と一緒に帰って、同じベットで横になって、モチモチの頬に頬擦りして、

おやすみのキスをして――――そして、許されるならその先へ進みたいと喚く欲望を宥めすかし、


「・・・リンクスの会合があるんだ」あいつらをキッチリ〆とかないと駄目だろ?

生唾を呑み込んだ奴等への制裁をしなければならない――――彼氏のボスの役目を伝える。

俺たちの会話に聞き耳を立てていたレヴィが、ギラッと目を輝かせ、

「あら!!じゃあエイジ!!アタシと一緒に帰らない?」

獲物に喰らい付くような嫌な光を灯し、俺の彼に気安く声をかける。
 
「――――レヴィ!!お前は俺と飲むんだよっっ!!」話しかけんな!汚れるだろっ!
「え~!?なんであんたと飲まなきゃならないのよ!」
 
二の腕を掴んでいるマニキュアの指へ、ふっと寂しげな瞳を落とした彼に、 
 

違うんだ英二!レヴィはな、家までノコノコ着いてくるような厚かましい奴なんだよ!

おまけにな!!性転換の最中だから、男だろうが女だろうが両方こなせる兵なんだよ!

 
喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、 

「・・・・だからお前は帰っとけ」コイツは俺が食い止めるから!!なっ!?
 
この場にいる誰よりも信頼のおける人物の――――その気の全くないボーンズを、人差し指を折り曲げて呼び寄せようとすると、

「・・・・・そっか・・」  

掠れた声を紡いだ彼が微かに震えた指先で、俺のTシャツをつんと引っ張り――――

数年に一度の、甘えてくる彼の姿に、さっきよりも一段と跳ね上がった心臓がドクドクと耳煩い音を奏で出す。 

 
――――英二っ!?
 
 
早摘みのアメリカンチェリー色の唇が、ぱくぱく卑猥に動いて、 

「忙しいんだね。僕は君といたいのに・・・・
 僕はいつも心配だよ。君の・・帰りが遅くなったときはいつもいつも。」
 
捨てられた子犬のように、小さく震えた瞳が真正面から俺を捉えて――――傷付いた笑みを見せる。

 
消え入りそうな彼の笑顔に、心が壊れてしまったように尖った痛みを訴えだし、

「用が済んだら直ぐ帰るから、な?」だから、そんな顔するなよ。

つい、いつもの癖で――――黒髪の指通りに癒されたくなった手を伸ばしてみる。が、

「・・・・っ・・」
触られたくないとでも言っているように、彼が素早く身をかわして逃れ――――初めて俺を拒否した。
  
 
――――英二・・・なんでだよ・・・

 
宙を彷徨っていた指をきつく握り込んで、張り裂けてしまったような胸の痛みに耐えていると、 

悲しげに下がった口角を不自然に吊り上げた彼が、

「そうだ。でも今日は確かシンが前から見たいっていってたビデオが手に入ったってい ってたから、彼に電話するよ。僕もすごくみたかったんだ。
2人で見てる分には君も安心だよね。彼も腕は立つし。」

愛しい恋人の名でも口ずさむかのように、『シン』と唇を動かす時に――――綻んだ笑みを見せる。
 

――――っつ!! 
 

その途端、早鐘を打ち始めた心臓が壊れそうなほど激しく脈動をし出して、

まるで、鷲の鋭い鉤爪で胸を掴みにでもされているような――――初めて感じるキリキリした痛みに、

心臓がどうにかなってしまったのかと、眉を顰めてじっと耐えていると、

 
「だから、一人でも大丈夫だよ。心配しないで。――――ね?」 

 
言葉ひとつで、指先ひとつで、笑顔ひとつで、俺がこんな風になってしまう事を知らない彼が、

逢いたくて逢いたくて仕方がないんだと、瞳を細め――――シンに重ね合わせて、俺に笑いかける。


――――なんだよっ!!俺の事が好きだって・・お前、そう言っただろっ!!
  
 
さっき抱き寄せたばかりの彼の肩に、俺のではない腕が回されている幻影がチラついて、
「・・っ・・英二!ちょっと来いよっ!!」
木っ端微塵に砕けた心を隠し、それでもまだ愛しくて放したくない手首を、強引に掴んで引っ張って行く。 
  

「アッシュ?・・痛いよ!急にどうしたんだい?」

 
邪魔な奴等を一瞥して退かせ、トイレのドアを蹴り開けて――――自分自身が何をしたいのかも分からないまま、薄汚れた個室に入って後ろ手に扉を閉める。

「――――アッシュ?」
 
木の軋む歪な音が、タイル張りの個室に悲鳴のように共鳴して、その音に瞳を顰めた彼が俺を見上げる。


――――嘘だったのかよっ!!俺がいいって・・・あの言葉は嘘だったのかよっ!! 


誰にも触られないように、ガラスケースにでも閉じ込めて、俺だけの物にしたい瞳を見下ろして、


何を聞いたらいいのか。まだ間に合うのか。

何故俺じゃ駄目なのか。いつからチビが入り込んだのか。

 
様々な思考が頭の中を駆け巡り、上手い言葉が見つからず、

「・・・なんで・・なんでだよっ!!」
意味の通じない問いを繰り返しながら彼を見詰めていると、

黒い瞳がグラリと揺れて、俺に見られるのが苦痛だと言わんばかりに――――顔をサッと伏せてしまう。

その瞬間――――抑えきれない激情に突き動かされた両腕が、 

「なんで避けんだよっ!!何が気に入らないんだよっ!!」
薄い両肩を掴んで、逃げてしまった彼の気持ちを捕らえるように、縋り付くように、

「・・・っ・・痛っ」 

壁に押し付け――――顎を掴んで無理矢理上を向かせた目を、正面から見据える。

 
俺以外の奴の名前なんて口にするなよ。 

頼むから、俺だけを見てよ。

  
拙い想いに支配されそうになる、情けない声帯を腹の底で押し止めて、

瞳を歪ませている彼に追い詰められた問いを投げ掛けた。

「・・・俺が・・俺が怖いのか?」 



俺はただ、お前とふたりきりになりたかっただけなんだ。それだけなんだよ。
 

  

両肩を掴まれたまま不便そうに、ポケットから一枚の紙を取り出して、

「ね。覚えているかい?数年前の今日、僕らはここで出会ったんだ。」

俺の目に映るように、目の前に差し出されたその写真に――――懐かしい空気に包まれた。
 
「・・・・これって・・・」スキップ・・・
彼が初めて店にやって来た時の思い出の一枚に、

久しぶりに見るスキップに、虚を衝かれて一瞬黙り込むと、
 
「最近。伊部さんが写真の整理をしたみたいで。
僕にあの時の写真を何枚か送ってくれたんだ。」

入手先を得意気に語り出す彼の瞳が――――痛い思い出に、少しだけ細くなる。 

初めて会ったばかりで硬い表情をしている、ほんの少し若い彼と、
小さなままの記憶通りのスキップを切り取った、

お世辞にも出来がいいとは言えないその写真に手を伸ばす。と、
  

「アッシュ、僕は君を怖いと思ったことなんか一度もないよ。」

真っ直ぐの瞳を俺に向けて、一言一言が大切な宝物のように――――慎重に、丁寧に、言葉を紡ぎ出した。



欲しかったその答えに、彼の心がまだ俺にある事を知って、 

「記念日だから。・・・だから今日ここに来たかったのか?俺と一緒に?」
あんなに壊れそうだった心臓が命を吹き返したように、優しい調べを取り戻していく。
 
俺の心臓を操るなんて驚異的なことを難なくやってのける彼に、

「お前ってすごい奴だな」
泣きたくなるような幸福感が満ち溢れてきて、

柔らかなミルクの香りに鼻を埋めたくなって――――大切な人を腕の中に抱え込もうと小さく身を屈めると、


思い出の写真を傷を付けないよう、器用な指先で写真の角をそっと摘んで、

「・・・・アッシュ・・・」

壊れ物にでも触れるように、温かな掌で頬をそっと包み込んでくれる。


そんな積極的な彼に、毒気を抜かれている間に、
「・・・え・英二?」 
 
早摘みのチェリーが甘酸っぱいそよ風を起こしながら近付いて来て、額へ到着するや否や、すぐさま逃げ去って行く。
  
逃げて行くチェリーを唇で追い縋って、タイルにの壁際まで追い込んで、ぷるんとした赤い実に齧り付こうと、顔を斜めに傾けて薄く口を開いたところで、
  
「ね?」
 
小首を傾げ、バツが悪そうに微笑む瞳とかち合って――――嘘の吐けないその瞳に、全てを悟った。 


――――コイツ、確信犯だ。

 
すまなそうに緩んでいる頬に、音を立ててキスのお返しをしてから、  

「お前、シンと約束なんてしてないだろ?・・・電話も嘘だな?」
 なだらかな首筋に鼻を埋めて、ハニーミルクをきつく抱き締める。
    
――――全くさ・・・ 

焦った彼が、ほんの少しだけ体温を上げ、

「え?ち・違うよっ!さ・さっき君の居ない時に電話で話してそれでビデオが――」 
 
それでも必死に取り繕っている、小憎たらしい首筋に――――軽い甘噛みをして、

「なんでそんな下手な嘘吐くんだよ!オニイチャン、最近『特に』性格悪いぞ?」
小さく怒っているフリをしながら、


――――全くさ、お前には敵わないよ。
 
 
心の中で全面降伏を掲げ、食べ損なったチェリーを口に含もうとする。が、

穴でも開けてるのか?と思わす聞いてしまいそうなほど、けたたましくドアがノックされ、

「ちょっとっ!!早く出てよっ!!漏れたらどうすんのよっ!!」
切羽詰ったレヴィの声に、
 
 
腕の中の彼が身を強張らせ――――ひらりと俺の腕からすり抜けて、鍵をカチャリと外した瞬間、
   
「あ!!は・はいっ!!・・・え?あれ?でもここ、男子トイレだよね?」
「英二!!待て!!開けるなっ!!」
 
開け放たれたドアの隙間から、してやったりと微笑む血色の唇に――――深い溜め息が零れ落ちた。


全く、とんだ記念日になっちまったな。 




 
コメントありがとうございます!
6/24以前のコメント返礼は、この記事の一番下の「次ページ>>」ボタンからお戻りください。m(*_ _)m
拍手以外の各記事にだいたコメントは各記事のコメント欄に返礼させていただいております。ご了承ください。m(*_ _)m





★>無記名様
コメントありがとうございますー。
まさか『This love 』にコメつくとは思ってませんでした。

「ただただ甘いだけじゃないとこが、とっても萌え」
そうコメいただけるとうれしいです(o^^o)
ただただ甘いのも読む分にはすごく好きなんですが自分で書くとどうしてこうなるんだろ・・・。

「ときはどんな感じなんだろう!?」
うーん。どうなるんでしょうねぇ。(考え中考え中。)
・・・アッシュ。カワイイかも。
こりゃ『かわいい君』枠に入るな・・・。でもガッツリした英×Aは今のところ上げる勇気がありません~(。-_-。)

「リピートリピートして」
マジで!?文章のアラを直さなきゃ(笑)
なんともうれしいコメありがとうございます。・゜・(ノД`)・゜・。

それでは最後の最後までお付き合いしてくださってありがとうございました!









★>ミチル様
返コメに返コメありがとうございまーす。^^。

「私、アッシュのことも大好きなんですよー」
ハハ。初めて聞きましたよ(笑)でも私もアッシュの事も大好きですv

「英ちゃんの方が積極的だと余計に腹立つというか(結局腹立つんかい)」
結局それかい(笑)
そうか。ミチルさんは英二に押し倒されたいんだなー。w

「(今更)ウソですよう、本当にアッシュのこと大好きなんですよ」
ハイハイ。ワカリマシタ。
言葉って重ねるほどウソっぽくなるんですねー(遠い目)
ウソウソ。信じてますよー。スンマセン。

「でもアッシュ誘い受けならいいか・・・すみません、アホですね」
誘い受け(爆笑)
そしてまた・・・(考え中、考え中)・・・・いや・・・私の方が、アホですね・・・・。
アッシュ誘い受け。
”なんだか今日はいけそうな気がする~。(by天津 木村)”
あると思います!(古)

「ハズれてないですよ。需要ありまくる。」
ホンマですか?!ってね・・。
拍手くださる方がチラホラいて。
なんや・・需要あるとこにはあるんやーん。て思った。
いままで先輩方にビビらされてきた私はホンマ小心ものやなぁ。

でも、これでもかっていう忠告が。(いまのところ)クレームがなかった理由かも。
あれだけ書いたらねー。嫌な人は読まないよねー。

ミチルさんの2人w期待してますv

それでは。楽しいコメントありがとうございました~。
コメントありがとうございます!
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拍手以外の各記事にだいたコメントは各記事のコメント欄に返礼させていただいております。ご了承ください。m(*_ _)m





★>無記名様(こんにちは!十分102パーセントです^^~ の方)
コメントありがとうございます!

「十分102パーセントです」
ホントですか?!わーそうコメくださるとすっごくうれしいです~。もうちょっと2人に甘くなってもらってもよかったかなl。と思ってたんですけど、そうコメいただけるとホッとします~。

「英二だけに甘えん坊」
もうリンクス達には絶対ヒミツです(笑)
バレてたらどうしよう。
英二はそんなアッシュがかわいいんでしょうねぇ。オニィチャン気質w。でもオニィチャンだからこそ、弟がうっとうしいこともあったりして。でもかまっちゃう英二に萌える。(ごめんなさい・・)

「仔犬がじゃれ合ってるみたいで」
なるほどー。ふふ。カワイイですね。その表現(o^^o)
私の中では2人の仲が同等だからこんな感じもいいかなぁと思って。

「もう番外残して最後とは悲しいです」
やっぱりなんつー殺し文句。そうコメいただけてうれしいです(=´∀`)人(´∀`=)
ところで番外編は好き嫌いと得手不得手がパカッと別れますので、クリックには十分お気をつけください。

うれしいコメントありがとうございました!(o^^o)












★>ミチル様②
「僕のきみ。」にコメントありがとうございました~!

「102%でした!」
ほ・・ほんとですか?(嬉)

「だって、私アッシュにむかつきましたから。」
マジで!(驚)
んー。そこがミチルさんのおもしろいところですよねぇ。オンリーワンですよねぇ。アッシュにむかつくて。アッシュスキー様の所でコメしちゃダメですよー。(笑)

「つまり、とぉ~ッても楽しませてもらいました、てことです。」
とっても嬉しいです~><
でもその三段論法。ミチルさんだけしか使えない(笑)

「を見てるアッシュの姿が目に浮かびました。」
そこ~~><。”前髪を片手で上げながら”の描写のところですよね?ここはそうそう「憎たらしいい」カンジですよね!

「伊部さんの心情」
うちの伊部さんは英二に甘くて・・。(どこの伊部さんもそうかもしれませんが)
”Snapshots”でカメラを買い与えてるしw
”AnotherOne”で英二の道を誤らせまいとアッシュを牽制wしてるし。
可愛い姪(暁)はシンにとられ。かわいがってた英二はアッシュにやられ(笑)
本日の伊部さんはきっとヤケ酒ですww。

「小葉さんは今回いろいろ迷ったり」
そうそう(笑)でも毎回迷うんですけどね。”選択”は”選択”でこんな暗い話に需要なんて・・・。とか。”糖度”は”糖度”でこんな微妙にハズした萌えに需要なんて・・。と。でも結局ニッチなモノがお好きな方もいらっしゃるようで。ど真ん中でなくてもミチルさんのように喜んでくださった人がいるとわかったら、ああ書いてよかったなぁ。載せてよかったなぁ。と本当に思えるのです。ありがとうございます^^。

「ちょっと照れたり」
ああ。これ(苦笑)。
いつからかふっきってしまって。もうなんか照れんのが面倒くさくなってもういいか。とww。

「サイコー楽しかったです」
マジで!本当にうれしい言葉ありがとうございますー!
やっぱりこういうのは何も考えずに楽しむのが一番ですよね!

それではうれしいコメントありがとうございました~。












★>ミチル様①
「その気」にコメントありがとうございまーす。^^。

「‘無駄に長い脚’を持て余しちゃう」
酔っ払いですからw 酔ってなかったらどうしたかなぁ。と考えてみる。結構サクッと間に入ってますよ。きっとw。

「色目を使ってるのにも一つ分かってなさそうな」
酔っ払いですからw 酔ってなかったらさすがにわかったでしょうね・・。ドキリとする英二もかわいいかもw(←腐)

「結局アッシュに押し倒されちゃうところ」
A×英書いてますからね!(笑)
やっぱり最後は押し倒されないとねー。ラストくらいは王道をねー。ww。
そういえば、某掲示板でミチルさんはやっぱりA×英がいいと書かれてたのをチラリと読んだんですが。あんなにアッシュに焼きもちやいちゃうのにA×英なんですね??いや。98パーセントの方がA×英好きだろうから(私も好きですよ!)それはそれで不思議ではないんですけど。焼きもちやいてるから・・・。

「すっごく楽しいんです。」
わー。なによりうれしいです><。本当ですー!
この話はもう楽しんでいただくことだけを考えてつくりましたので。
気に入っていただけてすごくうれしいです!よかったー。^^

「このお話が一番好き」
やっぱりこういうのが一番ですよね。一点の曇りもない明るさ。
シリーズの中ではこの話が人気あるみたいですねー。
そうか・・こういうのを他にも・・(考え中考え中)・・疲れすぎてムリ。

それでは嬉しいコメントありがとうございました!
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2013.06.26 20:16 | 目次<<2次小説 | トラックバック(-) | コメント(-) |
やれやれ。皆様こんばんわ。小葉でございます。
ちょっと微妙な萌えの糖度シリーズにお付き合いしてくださった方々ありがとうございました!
管理人が楽しむために、こそこそと作っていた話だったんですが。(「その気」とか「僕のきみ。」とかは去年ほぼできてた。)ビビりまくりながら上げてたんですが。楽しんでくださった方もいらっしゃったみたいでとってもうれしかったです♪
パーセンテージは適当だったんですけど。徐々に上がってたヨー。と思ってくださればうれしいなぁ。

さて。今回は「糖度シリーズ」番外編。

題名 『This Love』

今回の糖度はいろんな意味で糖度メーターを”フッ切った”。
内容はシリアス(?)
99%A×英。
2人が真面目に・・・ゴニョゴニョゴニョ。
いままで上げてきたのはR18と言ってもR16.5くらいだなと思ってましたが、今回は正真正銘のR18。多分書くのは最初で最後。
そうそう。なんていうんですかね。うちの2人での話なので、英二がかわいい100%とかアッシュがかっこいい100%とかを期待しちゃ絶対に、ダメ。

閲覧上の要注意。
お子様が隣にいるときはクリックしないでください。
旦那様が隣にいるときはクリックしないでください。
とにかく家族が傍にいるときはクリックしないでください。
電車の中ではクリックしないでください。
会社とかでクリックするなんて色んな意味でとんでもないです。
家族と共用でパソコンを使用しているお母様方やその他の方。”履歴の消し方”をググってみてはいかがでしょうか。
BL、やおい、をこれまで読んだことなかったという人は、こんなの一生読まないでピュアなままでいてください。とにかく私の話でデビューするのはやめましょう。
なによりBLややおい、そしてR18が苦手な方はクリックしちゃダメ。絶対。
あ。18歳以下の方はもちろん回れ右。

夜の読み物。(朝からはやめたほうがいいかも・・)

うっかりクリックしてしまった方、最初の1行読んでナイワーと思ったら即ページを閉じてください。
こういうファンタジーは合う合わないがありますからね!

書きましたよー。ノークレームでお願いします。

それでも興味のある方だけどうぞ。

でわ~。

あ。パスワードかけました。yesと入力できる方のみお入りください。

p.s.予告なく消去する可能性がなきにしもあらず・・。
みなさまこんばんわー。小葉です。

さて。「糖度102%」シリーズ最終話。
相変わらず英×A風味だけどA×英だと管理人は思っております。

最終話ですから糖度の表示は102%

この話を読んでくださった方で、えー。これが102%?。と思った貴女ノンノンノン。
一番思ってるのは管理人です。

題名「僕のきみ。」
内容明るめ。R18。
ストーリーは、YOUはミーのものだよ。とお互いが××する話かなぁ。違うか。
何度も書きますが、私のカップリングのスタンスは”リバOK”です。

リバ?なんだかわかんないけど、どんど来いだぜ。と言う方以外は回れ右。
(でもこのシリーズA×英のつもりで書いてます。)

今回初めてこのシリーズを読む方等で、注意書きを読んでない方は読んでくださいねー。

ここまで書いてるのに、小説読んじゃった方はこれまた何度も書いておりますが、ヘタレ管理人にはくれぐれも優しい気分になってください。ノークレームでお願いします。

生暖かい目。大歓迎でございます!

このシリーズ最初から付き合っていただけた方。ど・・どうでしたかね?
102%まではいかないにしても糖度は着々と上がったかなぁ??最後が一番甘かったですか?
それとも他の話かなぁ?貴女の糖度ランキングをお聞かせください。多数決で並び替える(笑)かも。

とにかく。貴女もこんな2人がお好きだったらいいんですけど、どれくらいいるのかなぁ。こんな2人が好きな方。

それでは。次は番外編?を載せます。(準備中)

ここまでお付き合いしてくださった方、拍手、コメントくださった方。本当にありがとうございました。そして、今回ぽっと読んでくださった方もありがとうございました~。
それはいつものとおりのー

週末。
いつものとおりに僕が作った料理を2人で食べるために安いワインを開けた。
君の軽い皮肉を僕はかわしながら、または反論を試みながらーそれはたいてい成功しないがー少し拗ねた僕に君が笑い、笑った君にちょっと酒でいい気分になってきた僕は微笑み返す。
ワインを飲み干して料理もなくなった頃、2人で缶ビールを片手にソファーに移動し、暗い照明のリビングで並んで座り、スイッチをつけた先のテレビでやっていた映画を観る。
話の途中から観始めたそれはやっぱり最後まで見れないんだけど。なぜならー、

僕の肩に君の手が回され、軽く君の方を向かされ、僕の顔を覆うように君の顔が近づく。そうされるとテレビが見えないけどそんなことはどうでもいい。ぼくが少し顎を上げると2人の口が重なって君の舌が僕の歯列をなぞっていく。そしてその奥の僕の弱い部分を丹念に舌で刺激しながら、僕が持っているビール缶を君がそっと掴んでテーブルの上に置いた。

「ん・・・。」

僕の鼻から甘い音がこぼれる。

それに気をよくした君が、僕の唇から君の唇を離し、額に、瞼に、耳に、耳の下に、首に、キスの雨を降らしていく、そして胸のそれに口付けられた時、ぼくの体がかすかに震えた。

2つのうちのひとつを口で転がしながらもう一つを指でつままれ、体がピクリと跳ねる。

「気持ちいいか?」

と、君が笑って聞くから僕は君の背をドンとグーで、殴ってやる。

いてぇな。と全然痛くない感じで君がつぶやきながら、脇腹まで降りた君のキスが少しずつまた上がってくる。今度は僕の肌に跡がつくんじゃないかと思うくらい肌を吸われるキス。それを僕の身体に散らしながら。片方の手は僕の胸の突起を何度も優しくつまみながら。僕の意識はきみから今与えているその甘い刺激と、君がこれから与えてくれるだろうもっと甘い刺激を期待して、なんともいえない感覚でいっぱいになるー

が、

「ちょっ・・ちょっとアッシュ!」

僕の右の鎖骨の端に唇を寄せて強めに吸おうとしていた君の顔を押しやった。
「・・・なんだよ。」
ワンテンポズラして答える君の声は僕の抵抗を予測してたようだ。
「そこはいやだ。」
アッシュが今僕の肌を強く吸おうをしていた箇所は、Tシャツから見える部分だ。そんなところに跡をつけられると非常に困る。誰かに見られたら困るだろうと、僕は訴えた。とかいうか、いつも訴えている。

「大丈夫だって。跡つくほどやらねぇ。ついても見えねぇって。」
「そんな事言って、君は前科があるじゃないか!」

僕はあの時のことを思い出してアッシュに向けてしかめっ面をしてみせた。

あの晩もアッシュがこういうイタズラを仕掛けてきた。あの時も僕はアッシュにやめてくれと言ったんだけど。
その次の日の朝、鏡の前で自分の首元をみた僕は青くなった。確実にソレとわかる赤い跡。今日は撮影があるのに・・。その足でベッドに戻り、どんな文句を言っても起きないアッシュの頭を力いっぱい数発殴って仕事に出たのだ。あれほどアッシュを力いっぱい殴ったことは後にも先にもあれくらいだ。もっと殴ってやればよかった。
夏の炎天下の中、外の撮影で僕はシャツの第一ボタンを上までキチっと留めて数時間の撮影した。よく熱中症で倒れなかったと思う。なのに皆にはバレバレで。スタッフの皆に”情熱的なカノジョなんですね。””暑くて大変ですね。””もういいんじゃないですか。”と撮影の間ニヤニヤとずっとからかわれたんだ。あんなのはもうごめんだ。

「君もそんなところにつけられたら困るだろう?!」
と言い募る僕に、「別に。」と君は言い切った。

今、僕のシャツはアッシュにはだけられて全開にーどころか肩から中途半端にずり落ちて辛うじて腕で止まっている。アンダーシャツは乳首の上まで上げられてくしゃくしゃになっている。冷静になるとなんて姿だ。なのに、アッシュの衣服はさほど乱れていない。

彼はその自分のシャツの衿をわざと人差し指で引っ張って鎖骨を見せて、
「やりたいならやれば?俺は気にしないぜ?」
と猫のように目を細めて、だが誘うような表情で、僕に薄く笑ってみせた。

コノヤロー。

明日後悔しても知らないからな!と、僕は勢いよく身を起こす。
僕に跨って膝立ちしている君のシャツの襟元を引っ張り、勢い良くボタンを上から外す。言われたとおりそこに噛み付くようなキスをした。僕は彼の脇腹に手を入れて、彼の白くてすべらかな肌をなぞりあげるようにシャツをはだけさせていく。君は特に抵抗はしない。僕よりも白い胸が僕の目の前に現れた。いくつものキスを君の胸に散らしていく。きみの白い肌に真っ赤な花びらのような後が散った。

「気が済んだか?」

と聞く君の余裕な態度にもういちどコノヤロと思う。
「全然。君が気にしないなら見えるところにでもいいよね。」
君の背をソファーにつかせようと君の首筋に顔を埋めながら、ゆっくりと肩を押していく。少しずつ体勢を変える僕に、君はなんなく押し倒された。
そして僕は首筋をきつく吸い上げる。顔を上げてそれを確かめた。やわらかい部分に残る真っ赤な跡。

「別に俺はかまわないさ。」

アッシュが彼の目に掛かっていた前髪を片手で上げながら、意味ありげな視線を僕に投げかけた。
白い肌と赤い跡、そしてソファーに散った君の金髪がきれいだなんて思ってた僕だけど、何かを含んだような物言いに僕は「なんだよ」と問い返す。
するとアッシュが唐突に話題を変えた。

「明日の予定は?」
「伊部さんや皆で食事するんだよね?」

今伊部さんが仕事でNYに来ているのだ。だからマックスや他の皆も誘ってお気に入りのオイスターバーで明日飲むことになっている。
「俺は別にかまわないが、コレをみたらおっさん達はなんて思う?」
アッシュがいやに優しい笑顔で僕を見上げて聞いて来る。
「誰につけられたと思う?」
「・・・・・・・・僕?」
僕はガバっと態勢を起こしてアッシュのはだけたシャツを両手で掴んで強く引っ張った。アッシュの肩がソファーから少し浮く。
「こ、これ消えないのかい?!」
「そんなすぐ消えるわけねーだろ。」
と君が呆れた声をだす。
「君。確信犯だろ!」
と怒鳴る僕に君は涼しい顔でさあなと返した。
「もう君信じられないよ。」とシャツを掴んだまま、アッシュを力なく押しやった僕の腕が、アッシュに取られて引き寄せられ、体を入れ替えられて、強引にソファに背をつかされた。またもや形勢逆転だ。

そしてアッシュが僕の上に覆いかぶさり僕をなだめるように、優しいキスをあちこちにしてくる。僕の気持いいところばかり狙ったキス。だけど。

そんなのでなだめられるものか。

「なあ。俺もお前につけていい?」
「言い訳ないだろ!」

僕の身体のそこかしこを撫でるアッシュの手をがっちりとつかんで、僕は起き上がってアッシュの目を真正面から捉えた。
ここできちんと言っておかないと。またこんなことされたらたまらない。
「君はどうしてこんなことするんだ。」
いや。したのは僕なんだけど。とにかく皆に見られて恥ずかしいのはどうやら僕だけらしいし。
僕の瞳が真剣なのを見てアッシュの目が少し泳いだ。
そんな顔をしてもダメだ。オニィチャンは怒ってるんだぞ!
ちょっとそこにちゃんと座りなさいと、僕は姿勢を正して言葉を続ける。
「僕がこういうの嫌いだって知ってるだろ?」
本気の怒りを少しにじませた僕の声にアッシュが気圧されたのかしぶしぶと呟いた。
「明日あの2人もくるんだろ?」
?ああ。シンとあーちゃんの事か。

シンと暁は恋人同士だ。数年前、N.Y.に彼女が僕を尋ねて1人で遊びにきた時から2人はウマが合っていた。彼女は僕のアパートに泊まりたがったけど、アッシュもいるし、男2人のアパートに女の子が泊まるのはまずいだろうと姪馬鹿の伊部さんにあーちゃんのホテル代を出してもらって、彼女は僕たちの家からほど近いホテルに泊まっていた。その頃の僕は丁度写真の仕事が忙しくなって来た頃で、僕に会いに来たのにどちらかと言うと僕よりアッシュや・・特にシンによく遊んでもらっていた。日本語が話せないアッシュは、話せるシンを呼びつけて無理やり暁の観光につき合わせていたんだ。

「あいつら、お前の事を”好きだ”って言ってた。」

彼女が日本に帰るその日、僕ら3人ー僕とアッシュとシンーは彼女を空港まで見送りに行った。また遊びにくればいいよと笑って言った僕に、彼女は僕の目をしっかりと見て日本語で言い切った。”奥村さんが好きです。”と。
あの時あーちゃんは13才だったし。僕が彼女と遊んでやったのは小学校に入るか入らないかの頃だったし。”私、大きくなったらパパと結婚するの。”くらいの感情じゃないのか。と僕はその時思ったけど、さすがにそうとは言えなくて。どう返事したものかと答えあぐねていると。シンが”俺も英二が好きだぜ?”と冗談まじりに言ってくれて、”気が合うな。暁。今度俺とデートしないか?”とちゃっかりあーちゃんを誘っていた。その時の会話は日本語だったけど、”好き”という単語くらいはアッシュも知っている。

思えばそれがシンと暁の馴れ初めだったと思う。あれから5年たって暁ももう高校3年生だ。10歳も離れた国際的な遠距離恋愛で、どこまでシンは本気なんだろうと思ってたけど、学校が休みの時や、今回のように伊部さんが仕事でこちらに来るときなど、彼女は何度かこうしてN.Y.に遊びに来ていた。シンも暇を見て日本に行っているらしい。よく続いているなぁと思う。

だけど、アッシュはいつまでもその事を気にしていたのだろうか。そう言えばあれから僕がシンと2人で会うことに彼はいい顔をしなくなった。と思う。あんな冗談間に受けたとも思えないんだけど。日本語だからわからなかったのだろうか。

そこまで考えて、アッシュの腕をきつく掴んでいた僕の手が緩んだ。アッシュがそれを待っていたかのように僕に手を伸ばしてー。そして僕をゆっくり抱きしめた。

「なぁ。お前は俺のものだろ?」

僕の耳元に顔を埋めてはっきりと紡がれたその言葉に僕はほだされる。
そういえば、あーちゃんが帰ったあの夜もアッシュはソファーでこうして僕を抱きしめてなかなか離してくれなくて。
どうしたんだい?と聞く僕に、なんでもない。と君は言うばかりで。僕は彼に腕を離してもらうまで大変だった。コーヒー飲むかい?とか。君がいつも見てるニュース番組が始まったよ?とか。シャワー浴びたいんだけど。とか。そろそろ眠りたいんだけど。とか。

あれは、こういう事だったのかー。

いつも自信満々に見えて、なんでも人並み以上にそつなくこなす彼が、こういう弱いところを見せると僕はどうしようもなく切なくなる。僕だけしか知らない君ー。

しがみつくように僕を抱きしめるアッシュの背中を、僕はなだめるようにポンポンと軽く叩く。

「何言ってんだよ。君。そんな事わかってるだろ?」
「わからない。」
「わからないわけないだろ?」
「・・・・・わからない。」
君がさらに僕をギュっと抱きしめた。
君は駄々っ子か。
僕はアッシュを胸に抱いたままため息をついた。そして彼が欲しがる言葉を声に出す。

「・・・・・・・僕はきみのものだよ。」

なんてこと言わせるんだ。アッシュ。僕は顔が真っ赤になってると思う。これはある意味”愛してる。”と口にするより恥ずかしい。

「-ホントに?」
「ホントだ。」
「俺だけの?」

何回も言わせないでくれないか・・・。

「そうだ。」
「じゃぁ。」

とアッシュが僕の背に回していた腕を外し、僕の二の腕を掴んだかと思うと、そのまま僕をすばやく押し倒した。

あっと言う間の出来事にあっけにとられた僕が君を見上げると、君は口の端を少しあげるいつものあの笑みで。

「俺もお前につけていいだろ?」

何を?と思った僕に君は声には出さずに口だけを動かした。

キスマーク。

ダメだーーーー!!!

だけどアッシュは余裕の笑みで、僕の抵抗をなんなく封じて、僕の弱いところに余すところなくキスをして、僕の感じる部分をなで上げ、僕をなだめ、僕の感覚を溶かして、それからいつものとおり、僕は君にいやと言うほど鳴かされてー、





次の日の朝。結局僕は鏡を見てため息をついた。


ーfin.









*******オマケ*******


マックス:「あれ?お前。首のところ何かに刺されたのか?虫か?」
アッシュ:「ああ。虫だ。」
マックス:「あれ?英二も同じところ刺されたのか?」
英二  :「・・・・・。」
伊部  :「英ちゃん・・。」
暁   :「オクムラさん(涙目)」
シン  :「暁。何飲む?ほらメニュー見て決めろよ。」




ハハ・・102%に届かなかったヨ・・。ごめんさないごめんなさい。><。この話の冒頭はやる気満々(笑)で102%目指してたんですけど。なにがどうしてコウナッタ。こんなカンジの落ちでごめんなさいごめんなさい。
とにかくこのシリーズ。最後までお付き合いしてくださった方々。本当にありがとうございました!私的に甘い2人を書いてみました。もう書けない・・。そんなこと言わずにもっと書いてみろよー。という方がいらっしゃれば、私を「その気」にさせてください(笑)(←冗談です。言ってみたかっただけ。)そうだなー。また思いついたら何か書いてみようと思います。今度は・・勝手にしやがれシリーズとか。もう2人がじゃれあってハイハイ勝手にしてください。って皆さんが思うくらい甘い・・・・ムリだな。102%シリーズの名称を今からでも98%シリーズにしようと思ってるくらいの敗北感を感じてるし。orz。
あ。番外編が1つあります。甘いっつーかなんつーか・・・クリックには気をつけてください。でわ。ここまでお付き合いくださって本当にありがとうございました!

コメントありがとうございます!
6/23以前のコメント返礼は、この記事の一番下の「次ページ>>」ボタンからお戻りください。m(*_ _)m
拍手以外の各記事にだいたコメントは各記事のコメント欄に返礼させていただいております。ご了承ください。m(*_ _)m




★>無記名様
こんばんわ!コメント超うれしいです~><

「糖度シリーズ、楽しみに拝見してます」
わぁ~殺し文句殺し文句。ありがとうございます!

そうそう実はアッシュをその気にさせるのは簡単なんですねー。でも普段使わないからだし。あんまり使える切り札ではなさそうですw。
でもね・・・。英二から誘われたらアッシュは基本断れないんじゃ(←なに言ってんだ私)
どうやって英二から誘わせるか・・(考え中考え中)・・今眠すぎてムリ。

「アッスと英二の負けず嫌いっぷり」
私の萌えのひとつw。そこを楽しんでくださってとってもうれしいです♪

「6時前…遅刻」
ハハ。細かいところ拾ってくださってありがとうございます。そこは貴女の想像と妄想のハザマでお楽しみください♪

それでは。うれしいコメントありがとうございました!






★>まある様
わーコメントありがとございますー!

「何気ない甘~い二人にキュンキュン」
そうコメくださるとうれしい。・゜・(ノД`)・゜・。
自分じゃ書いてるとアップするころにはこれってほんとに甘いんだろうかとかわかんなくなってくるので。

「英二に押され気味になってるアッシュ~中略~うれしいんだけどなんか悔しい」
ここらへんのまあるさんのアッシュ描写。
も・・萌えるんですけどー(>_<)
ですよねですよねー。
かっこいいんだけど、英二にはかわいいアッシュが好きなんですよー!!
英二以外には超絶かっこいいくせにw。

今回いろんな萌えを各話に詰め込んでますv。

次の話も喜んでいただけたらうれしいんですけど・・。毎回自信ないという・・。
大丈夫かなぁ・・。

それでは。またお時間のあるときに遊びにきてやってください。

でわ~。
その日アッシュは一人、リビングルームの大きなソファに寝転がり、その肘掛に立てかけた数個のクッションの上に頭と背中を預けて本を読んでいた。
その本は、いつまでたっても英語がたいして上達しない英二に見せても題名の単語の意味すらわからないような難しい内容のハードカバーだ。
いつもならコーヒーを入れて何かと話してくる英二が今日はいない。もっともいつもは掛けられた言葉も耳に入らないほど集中して読んでいるので話しかけられても返事を返さないのだが。
そんなアッシュだが、今日はページを捲るスビードが遅かった。
目線だけ本から外し、正面の壁に掛けられた時計をチラと見る。
ー遅い。
時刻は0時を回っていた。
アッシュは英二を待っていた。
英二は知り合いの写真家の写真集出版記念パーティーに呼ばれて出席しているはずだった。
その時、玄関のドアに鍵が差し込まれる音が聞こえてきた。
英二だ。

「あれ?アッシュ。まだ起きてたの?」
「・・・・・・・・・・。」
「今日のパーティーすごかったよ、有名な人がいっぱい来てたんだ。」
今まで時計の音しか聞こえなかった静かな部屋に英二の明るい声が響く。いつもよりテンションの高いその声にアッシュは違和感を感じた。

こいつ。酔ってる?

英二は酒に弱い方ではない。
しかも仕事関係のパーティーで酔うまで飲むなどしないハズだ。
「なんとそこに偶然シンも来ててね。ユーシスが持ってる会社がスポンサーの一つだったんだってさ。」

偶然?なわけないだろ。

英二とシンはウマが合うようだ。よく2人は同じバーで飲んでいる。だがアッシュはそれが気に入らない。
一体あの2人で何を話しているのやら。あいつはいつも英二の周りをチョロチョロと。一度"ゆっくり"話でもした方がいいのかー。
アッシュは物騒なことを”ゆっくり”と考えながら、しかし本から目を離さず英二に返事もしなかった。
そんなアッシュに構わず、アッシュが横たわるソファーの端にポスリと英二は腰を下ろした。そして今日のパーティがどれほど楽しかったかを話し始める。
一緒にパーティーに参加したスタッフが最近ハマっているおいしい店の話から、そのパーティー会場にやって来た有名な誰々が人気女優の誰々を連れてきていたなどという普段の英二なら特に話題にしないような事まで。ご機嫌な酔っ払いだ。
どうでもいい事を楽しげに話す英二にアッシュは返事をしなかった。なんとなく面白くない。しかも、そのパーティでは英二の隣にシンがいたのかと考えると。

すると、英二がハードカバーの向こうからアッシュの顔を覗き込んだ。
「なんでしゃべらないんだ?機嫌悪い?なんで?」
なんだかわかんないけど機嫌直してよと、英二はアッシュの滑らかなプラチナブロンドにキスを落とした。
英二からキスをしてくるのは非常に稀だ。
できればシラフの時にお願いしたい。この酔っ払いめ。
「いつみても綺麗な金髪だね。」
「生憎その言葉、色んなやつに言われ続けてなんの感慨もないね。」
相変わらずアッシュは本から目を離さない。

英二はそのブロンドの前髪を、かき上げてその額にキスした。そしてその手がアッシュの目尻をやさしく撫でる。
「緑色の目も宝石みたいだ。」
「それも聞き飽きた。」
「ちぇ。浮気者め。」

おいおい。聞き捨てならないな。俺がいつお前以外のやつとー。いっぱいあるか・・。だがそれはほとんどが英二と出会う前、不本意な相手との事だった。

頑なに顔を向けないアッシュに焦れたのか、その頬を無造作に撫でていた英二の手がアッシュの両頬を掴んで無理やり彼の方に向ける。2人の瞳が今夜初めて合った。

「何?俺のこと襲う気?オニイチャン?」
「・・・そうだね。たまには。」
英二がアッシュに覆いかぶさり首筋に唇を寄せた。
おいおい!
いつにない英二の一連の行動にアッシュは目を見開いた。
よくよく見れば、英二の頬がうっすらと赤い。アーモンド形の黒瞳はどこを見ているのか、視線が定まっていないようだった。英二は酒がそれほど弱くなく、酔ってもあまり顔にはでないハズだ。
どれ程飲んだんた?
アッシュの首筋のラインを唇で下に辿ろうとしている英二の胸をアッシュは片手で軽く押し返す。
すんなりと英二が押し返され素直に体勢を起こした。
しかし、キョトンとした顔で問うてくる。
「嫌なの?」
ていうかお前酒くさいし。
「色気なさ過ぎ・・・」
「色気・・・ってどうやんだろ?」

アッシュは溜息をついた。
色気ってのはな・・。

腹の上に本を載せ、左手で眼鏡を軽く上に持ち上げながら、もう片方の手で自分のシャツのボタンを上から3番目までゆっくりと開けていく。
体を右方向に少し回し、だが目だけは英二を捕らえたまま翡翠のそれを薄く細めてみせた。
いわゆる流し目だ。
そして口元にうっすらと笑みを浮かべ、狙った獲物を確実に落とす甘い声をだした。
「俺をその気にさせてみろよ?」
「その気・・・・・」
ソファーに背を預けているアッシュ。その腰の辺りのソファーの端に英二は腰掛けていた。
酔いの回ったいまいち焦点の合っていない黒い目でアッシュをしばらく見つめ、何やら考えていた英二はアッシュの足に手を伸ばす。
アッシュの膝裏に手を差し入れ、ソファから持ち上げる。
かと思うともう一度、ソファの上にその足を置く。
そしてまた持ち上げようとする。
それを何度か繰り返す。

アッシュは両肘をソファについて上半身を少しだけ起こし英二を見た。
「・・・何やってんだ?」
「いやこの無駄に長い足の中に割り込もうとするんだけど、」
英二はアッシュの長い足をもてあましていたようだった。
無駄ってなんだ。
アッシュはまた溜息をつきながら、自らの右足を英二の頭上から大きく回し、ソファの外へ出した。
結果英二はアッシュの足の間に割り込んだ事になる。
「ありがとう。」
ニコっと英二はアッシュに向けて邪気のない笑みを返した。
アッシュは英二のその笑顔が好きだ。が、こういう場面にはそぐわない。
「・・・お前。ホントにヤル気あんの?」
「もちろん。いまから君をその気にさせるよ。」
「ハイハイ。」
もう酔っ払いには何を言っても無駄だと、アッシュはポスッともう一度ソファのクッションに背を預けた。
眼鏡を外して眉間の皺を揉む。
英二には悪いがアッシュは不本意ながら口説かれ慣れているし抱かれ慣れている。酔っ払った英二如きに自分をその気にさせられるとは思えなかった。
「アッシュ。好きだよ。」
普段の英二ではなかなか言ってくれない言葉にアッシュは驚く。眉間を揉んでいた手をそこから離し、顔だけ上げて英二をマジマジと見た。
「僕のこと好き?」
「好きだ。」
「愛してる?」
「愛してる。お前は?」
英二がなんの衒いもない笑顔でこう言った。
「もちろん。愛してるよ。」
日本人だからなのか英二の性格なのか。英二の口からはほぼ発されることがない言葉だった。自分もそれほど言わないが・・。
アッシュは自分の血がざわめくのを感じた。
英二はソファに乗っている方のアッシュの左膝裏に手を差し入れ足を立てさせる。
「このカッコいい脚も」
ジーンズ越しにその内腿に軽くキスをした。
「この白い肌も」
シャツをたくし上げ銃痕の残るわき腹にキスをする。
「この逞しい胸も」
手を伸ばしてアッシュの胸の上にあった本をソファの下に落とし、シャツのボタンを下から順に全て外しながら胸元にキスをする。
「この柔らかい首も」
首筋にキスをした。
キスをする箇所に応じてソファに乗り上げ、そしてアッシュの体に徐々に覆いかぶさってきた英二の腰にアッシュは自然と手を回していた。英二はアッシュの顔の両脇に手をついた。腕で体を支えながらアッシュの翡翠の瞳をじっと覗き込んでいる。
そしてそのまま首をのばし、唇に軽くキスを落とした。
「みんな愛してるよ。」
ーお前。
アッシュは英二の黒い少し濡れた瞳から目を離せなかった。
全身の血が沸き立つような感覚にアッシュは不覚にも自分がその気になった事を知った。
英二がアッシュの髪を梳き、頬をやさしく撫で、もう一度唇を寄せてくる。今度は深いキスだった。お互いに舌を絡ませ、何度も角度を換え、2人の息が上がってくる。
「その気になった?」
「・・・どうだか。」
「じゃぁ。もっとがんばる。」
ふふふと笑って英二はアッシュの肌蹴させたシャツから露わになった胸の蕾に顔を寄せて口付けた。アッシュは目線を下にやり、自分の胸の上にある英二の黒髪を眺めながらゆっくりと目を閉じる。慣れ親しんだ感覚に身を任そうとした。しかしー。
「・・・・・・。」
英二の動きがぴたりとそこで止んだ。
「?」
アッシュは再び目を開け胸の上の英二を見た。英二は眠っていた。少し肩を押して揺すってみる。が、起きる気配はない。
こ・・・このっ、酔っ払いが~~!
アッシュは自分の胸の上で眠っている英二をどうしてくれようかと、沸騰する頭であれこれ考えた。しかし、片頬を自分の胸につけ気持ち良さそうに眠っている英二を見て毒気が抜かれていく。
艶のある柔らかい黒髪にそっと手を潜り込ませる。
本日何回目か覚えていないため息を盛大について、英二の頭を胸に軽く抱いたまま、天井を見上げた。
・・・・明日ー覚えてろよ。
アッシュはしばらくそうした後、体勢を変えそのまま英二をソファーの奥へやり、その体を覆うように抱きしめながら自分もそのまま眠りについた。



**************



英二が薄く目をあけた。リビングの大きな窓に掛けられた大きなカーテンの隙間から薄い朝日がこぼれている。

彼が目覚めるとそこはどうやらソファーだった。しかもアッシュが隣に寝ている。その事態にわけがわからず、目をあけたまま少し固まっている。
すると眠っていたはずのアッシュが目を開けた。その瞼の中から綺麗な翡翠の瞳が現れる。しかし、それは怖い光を含んでいた。
「昨日のこと覚えてるか?」
「?」
英二は頭を無意識にかきながら、少し上を見て考えた。その顔にバツの悪そうな表情を浮かべる。
「・・・覚えてない。」
「嘘だな。」
「・・ホントだよ。」
「なんなら思い出させてやるぜ?お前がやったこと再現してやろうか?」
アッシュは英二に覆いかぶさり彼の足裏に手を挿し入れ昨日英二がしたように足を立てさせようとした。
「わ!アッシュ!覚えてる。覚えてるよ!」
「何か他にいう事は?」
「・・・・・・・途中で寝ちゃってごめん?」
「なんで疑問系なんだよ。」
「だって君。その気になってないって言ってたじゃないか。」
「・・・・。」
こいつのこんなところが嫌だ。天然過ぎるにも程がある。
黙り込んだアッシュを見て英二が何かに気づいたようにニヤリと笑った。
「まさか君。その気になってた?」
英二のくせにー。
アッシュは獰猛な肉食獣に見える笑みを口の端に浮かべた。
「今度は俺がその気にさせてやるよ。」
その言葉にあせった英二があわてて起き上がろうとするが、アッシュはそれを許さず英二をソファに縫いとめた。有無を言わせない深いキスを仕掛ける。長いキスの間、英二の息が上がってきたのを見計らって、アッシュは英二の片方の膝裏に手を入れそれを立てさせた。その膝の裏側をゆっくりと右手でたどり上げていく。
次第に力の抜けていく英二のシャツのボタンをゆっくりと外しながら、アッシュは壁にかけられた時計をチラリと見た。

まだ6時前かー。

英二がいつも家を出る時間まで2時間はある。
アッシュは英二の首に顔を埋め、はだけさせたシャツから現れた滑らかな肌の弱い部分をなで上げた。
英二の体が無意識に折れようとするのを自分の体で押さえて止める。そして英二の耳元で囁いた。

「その気になった?オニィチャン?」

明らかに吐息が甘くなり始めた英二は薄く目を開けて答える。

「・・・どうだか。」
「じゃ。もっとがんばらないとな?」
「ちょっとっ・・君・・・・ん・・・・・。」

そうして英二は仕事に遅刻したのだった。



ーfin.





女子向けの2次創作はこんなのがダイゴミだと思うんですけどどうでしょう。自信ない。
皆様・・こ・・こんばんわ。
まさかまさかの同日に2作目アップ。

糖度シリーズの3作目。(2作目は今日の朝2時ごろ上げました。今6/22の23:37。)

題名は
「続・かわいい君。」
もうやる気ない題名。題名つけるのいつもてきとーなんです。
内容は、「かわいい君。」の直後の話。アッシュが英二の機嫌をとりにキッチンに行きます。

今回はー。A×英。
これがそうでないと思っちゃった方は・・・それでもノークレームでお願いします。
管理人。もうおわかりだと思いますが、Aと英が仲良くしてくれれば、カップリングの上下なんてどっちでもいいと思っているモノでございます。だから境界がよくわからない・・。

でも、この話は「A×英」。そうとしか読めないと思うんだけどなー。
私にしてはすっごくがんばってアッシュに英二の機嫌をとってもらいました(笑)
もう二度と書けない。(でも他のバナナ2次様のアッシュよりも数段劣ると思うけど)

私。実はあんまり2次創作に明るくなくて。

「+」と「×」の意味をあんまりわかってなかったです。
バナナ2次の先輩に数ヶ月前に「かわいい君。」の案を読んでいただいたときに。
『英+Aっぽい、A+英でーす。』と説明させていただいたんですが。その時「+」と「×」の使い方の間違いを指摘していただきました。

それまでは、「×」ってぶっちゃけその小説の中で「ヤッテルかヤッテナイカ」(←ぶっちゃけすぎる)と思ってました。
だから恋人同士でも「ヤッテない」と表示は「+」表示でいいのかと。思ってたんですけど。

違うんですね?「ヤッテ」なくても恋人同士だったら「×」なんですね??

てことは、うちのG+AとかG×Aの表示ってどうなのよ。と思うんですケド。恋人同士じゃないからG+A?Rでも???
謎は謎のまま放ってマス。

うーん。なんだか話がそれまくってますが。管理人、疲労と眠気で何書いてるかわかんないです。

とにかく。今回の小説はA×英で書いてますが、この管理人の説明よくわかんないよ。こいつやばい。と思った方はクリックせずに。そうですねぇ。7月には一片の恋心も入ってない正真正銘のA+英を載せますんで。そこまでお待ちくださいませ。^^。

それでは。楽しめそうな方のみクリックしてくださいませ。

でわ~。


コメントありがとうございます!
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★>ミチル様

拍手とコメありがとうございます~^^。

「優しい甘さですね♪」
おお。ありがとうございます。こういうのが一番好きかも。といろいろ書いて読み返して思いました。
一番好きなのを一番最初にもってきたからもうあとは雪だるま式に溶けていく(転がらない)くらいです。

「としてたら、こっちでちゅーしたよ、おい。」
ハハ。そうそう。今回のシリーズは一貫性がないようでない。という。
押さえた萌えもいいし、はっきりした萌えもいいなぁ。と思って。あと明るい萌えとか。やりたいこと色々その話その話に詰めてみました。

「アッシュは普段とのギャップで可愛さが」
フフ。英二スキーのミチル様にアッシュが可愛いとコメいただけるなんて。やりぃ!

「他ではアッシュが英ちゃんを甘やかすのに、小葉さんとこは英ちゃんがアッシュを」
ああ・・やっぱりそうなんですね。
バナナを総ナメしてるミチルさんがそうおっしゃるなら、私、もしかして単独で、『英二がアッシュを甘やかす萌え』やってんの?!もしくは『アッシュは英二を甘やかしません萌え』を・・。
とか再確認。うーむ。みんなついて来てくださるかしら。

もう数少ないバナナ界でAと英を扱う王道路線を行ってるはずなのに、期待してご覧になる皆様の萌えをはずしてがっかりさせてんのかしら。とか最近思ったりして。
だから「続・かわいい君」ではうちのアッシュにすっごいがんばってもらいました。私もがんばった。もう書けないあんな英二を甘やかすアッシュ。と甘える英二。

でもでもミチルさんはアッシュに焼きもちやくんですねw。すっごい英二スキーがいる~(笑)。

「R18は「こっから更に楽しくなりますぜ」という誘い水」
ええ。私もそう思ってました。でもこのブログはじめた早い段階から、何人かの先輩方(同輩方)から、「バナナでRはキライな方が多いから気をつけたほうがいい。(とくに英A)」と言われまして。
別に私から話振ってないのにですよ。別々の方から別々にですよ。そりゃ気をつけるしかないでしょー。と思って。せっかく私のヘタな文章読んでくださる方にはご不快な気持になっていただきたくないし。
そして、刺されんのやだ。ヘタレだから本気でもどってこれない・・・。
だから今回これでもかってくらい注意と告知をしてみてます。

でもやってみたかったんですよねー。(ため息)なんのためのアダルトカテゴリ。

それでは。うれしいコメントありがとうございました!
なんと。3夜連続更新。怒涛のアップ。コンナハズカシイシリーズハヤクオワッテシマエなんてこれっぽっちも思ってない管理人です。ホントです。こんばんわ。

さて。今回の糖度シリーズの題名は。「その気」
英×Aを含んでるA×英。だと思います。多分。
今回はR18。
(というほどのものでもないですけど。一応)

糖度は76%。
内容は明るめ。しかも軽め。
どうやってその気にさせるかという話。(♪そのーきなんのききになるきになるきー♪)

どっちがどっちかって?それはほら。私どっちがどうでもいいカンジなんで、興味のある方は最後まで読んでみてください。でもこのシリーズ。どの話もどの話もA×英で書いてるつもりなんですよ!・・・・一応。

注意書きをよく読んで、やばいと思ったら回れ右。

なかなか、アップしづらいこのシリーズ。皆様の拍手とコメントが本当にありがたいです(涙)。くじけそうな心になかなかな勇気をいただいております。ありがとうございます。

それでは。大丈夫そうな方のみクリックしてください~。^^。

p.s.あ。そうだ。最初このシリーズは4話+番外編1話と説明してましたが、5話+番外編1話になりました。
え。そんなこと覚えてないって?そらそーですよね。でも一応説明。失礼しましたー。

「なぁ。英二。まだスネてんのか?」

別に。と短く答えた英二の腹にアッシュは後ろから手を回した。ゆるりと英二を抱きしめる。キッチンで野菜を切っていた英二はその手を止めた。
アッシュは彼のやわらかい首筋に顔を埋める。機嫌直せよ。と言いながら。

だが英二は黙ったままで何も言わない。

彼はまだ怒っているのだろうか。やりすぎたか・・。

英二が本気でヘソを曲げた時、アッシュはこうして必ず機嫌を取ることにしている。
いつもは微笑んでいる彼の笑顔が見ることができないと、なんだか自分は落ち着かないのだ。
黒髪の彼の顔をどうやってこちらへ向かせようかと、彼に回した腕に力を入れて、少し強めに抱きしめなおした。

すると彼が前を向いたまま、包丁持ってるときは危ないからやめてよね。と文句を言った。が、その声はこころなしか明るい。
機嫌なおったのか?と思っていると、彼が面白そうに言葉を続けた。

「君。この間のシンとアーちゃんと僕の会話を聞いてたんだろ?」

バレたか。

アッシュはバツが悪くなる。

そんなアッシュに「僕たちの会話がそんなに気になるなら日本語を覚えればいいのに。」と英二はクスクス笑って言った。

・・・そんな気もないくせに。

この黒髪の恋人はアッシュが日本語を覚えるのを嫌がる。
いや。面と向かって彼がそう言ったわけではない。しかも彼自身はその事に気づいてないなかもしれない。だがなんとなくアッシュはそんな気がしていた。

俺が日本語を覚えていいのか?とアッシュはカマをかけてみる。

「俺はもうたくさんの日本語を覚えたぜ?”カワイイ””オハヨウ””コンニチワ””アリガト”・・・」
英二の首筋に顔を寄せたままアッシュは声を出す。そこでしゃべられるとくすぐったいんだけど、と首をすくめて身じろぎする英二にかまわず、アッシュは今まで聞きかじった日本語を並べ立てた。中には伊部に教えてもらった、英二曰く『外人さんが使うとなんだかおかしい』日本語も混ざっている。それを聞いた彼がアッシュの腕の中で黒髪を揺らしながら楽しげな笑い声を立てる。もうホント料理のジャマだからやめてくれる?と言いながら。
どうやら彼の機嫌は直ったようだ。
いつしか英二は包丁をまな板の向こう側に置き、自身の腹に回されたアッシュの腕を軽く掴んでいた。

そしてアッシュは少しためらいながら、最後にあの言葉を言おうとする。

一度、英二に教えてもらった言葉。
銃弾に倒れ、病院に伏せる英二に掛けて去ろうとした言葉。
あの時本気で口にした別れのー

「サヨ」
「アッシュ。」

前を向いたまま英二が少し強い口調でアッシュの言葉を遮った。
腕のなかでクルリと体勢を変え振り向き、大きなその黒い瞳でアッシュを見上げる。

「そんなに覚えたらもう十分だよ。君は日本で立派にやっていける。」
「・・・・だろ?」
俺は十分日本語を覚えた。だからこれ以上はもういいのさ。と取り繕うように軽く笑って腕の中の恋人の髪にキスを落とした。

アッシュは呟く。お前が嫌なら俺はこれ以上日本語なんか覚えない。と心の中で。

そんなアッシュに英二は微笑んだ。いつものやさしい笑み。普段の彼は感情が豊かだ。楽しいときは素直に笑い、怒った時は素直に顔をしかめる。ただ目の前の彼はー。

知ってか知らずか彼は時折こうして読めない表情を浮かべる。そのポーカーフェイスは独特だ。やさしく笑ってはいるが隙のない笑顔。心を見透かされることをやんわりと拒絶しながらも相手を傷つけようとはしないその微笑み。そこにはどんな感情が隠されているのだろうか。

英二はあれからアッシュと一緒に日本に行こうとは言わなくなった。まるでその言葉を発すると何かが起こるとでも思っているかのように。

何が起こっても俺はもうお前から離れないのに。

ーそんな顔で笑わないでくれ。

アッシュは英二に微笑み返し、先ほどは口にしなかった日本語を言ってみる。彼の黒い瞳をみながら。

「”スキダ。””アイシテル。”」
「・・・・たくさんの日本語を知ってるんだね。」

英二が困ったように笑う。なぜなら、アッシュがこの日本語を口にすると必ずそのあとゴネるのを彼は知っているからだ。

「なぁ。お前は?」
「・・・・”好きだよ。”」
「なんでだ。どうしてお前は”アイシテル”って言わない。」

そう食い下がるアッシュに、何回も説明したと思うけどね、と、英二はため息をついて言い訳し始める。

「日本語で”愛してる”って言うなんて、なんかうさんくさいんだよ。本当に”好き”なのかどうかクサいセリフ過ぎて信用ならない。少なくとも僕はそうだ。」
そして、だいたいアメリカみたいに、猫や杓子もアイラブユーアイラブユーって言わないんだ。と呟いた。

「アメリカだってそうさ。人による。」
「え?」

ーなんだ。その意外そうな顔は。

「映画じゃあるまいし、I love you なんて、そんなに使うものじゃない。そんなの家族でもないやつにポンポン使うやつは信用ならないヤツさ。」
「でも君・・・。」
「英二。”アイシテル”」
そこまで言われての告白の言葉に、アッシュの意図を汲み取った英二の顔が真っ赤になった。

I love you なんてそうそう誰にでも使うものじゃないんだ英二。軽い言葉だとでも思ってたのか?俺が軽く口にしてるとでも。

「君って・・・信用ならないやつだったんだ。」

そう来たか。

憎まれ口をたたきながら英二がアッシュの胸に顔を埋める。
彼のそれより広い胸のTシャツを両手で掴んで、そこに真っ赤な顔を隠すように埋めた英二を、アッシュは苦笑しながら見下ろした。

「”kawaii”な。英二。お前、耳真っ赤だぜ?」

アッシュは彼の顎を掴んで上を向かせようとしたが、英二はどうしても頭を上げなかった。仕方なくアッシュは彼の両腕を強く掴んで自分の身を屈めて彼にキスをする。最初の何度かは彼をなだめるための軽いキス。それは角度を変え、どんどん深いものになっていく。その深さにつれてアッシュはゆっくりと英二の背をカウンターにつかせた。そして彼の額に自分のそれをコツリと当てて、黒く濡れ光る瞳を覗き込んだ。

「使い方合ってんだろ?」
「“馬鹿“」
「・・・・お前。いまなんて言ったんだ?」
「『僕、いい加減晩御飯を作りたいからその手を離して欲しいんだけど』って言ったんだよ。」
と英二はニコリと笑った。その頬はまだうっすらと朱に染まっている。

お前、幾つの笑みを持っているんだ。

たくさんの笑みを器用に使い分ける彼に感心しながら、英二の機嫌が直った事に満足してアッシュは手を離す。

これ以上やってまたヘソを曲げられると機嫌のとりようがない。

晩メシが出来たら呼べよ。と英二に背中を見せて言い置き、アッシュはキッチンを出た。
君、間違ってもソファでうたた寝とかするなよな。と英二がその背中に声をかける。

そしてアッシュはリビングに向かい、ソファに寝転がってテレビをつけた。
チャンネルをいくつか回すがどれもくだらない番組ばかりだ。
ソファに置かれてあった雑誌を手に取る。英二がいつまでも購入しつづけている日本の漫画雑誌・・。
アッシュはそれを所在なげにパラパラとめくった。
右から左へと縦に読むその文字は何が書かれているのかアッシュにはさっぱりわからない。

アッシュの瞼が重くなる。昨晩も遅くまで起きていたのだ。だが、ここで眠ると・・。

夕食前にソファで眠った君を起こすのも大変だからやめてくれ。と英二には普段からよく文句を言われるのだ。

アッシュの瞼は次第に降りる。

その眼裏には、先ほど自分の腕の中で赤い顔を隠した英二の姿が浮かび上がる。

”kawaii”か・・。

アッシュの薄い唇の端が少し上がる。

pretty cute lovely charming・・・なるほどな・・。

そしてアッシュはやわらかくも気持のいい眠りの中へと落ちていった。



ーfin.




**************オマケ***************
英二に起こされ眼が覚めたとき、アッシュはさすがに英二の顔を見ることができなかった。
「・・・・君。僕、ソファで寝るなっていったよね?」
「・・・・・・・。」

コメントありがとうございます!
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★>無記名様。
拍手コメありがとうございました!すっごいうれしかったです。

「いつも楽しみに拝見してますー」
まぁマジでうれしいですその言葉!(=´∀`)人(´∀`=)
枕言葉だって思ってもうれしいんですよー(o^^o)

「アッスと英二が同じベッドに」
よかった。そこが大丈夫で(笑)
BLのつもりですからね。もう2人は同じベッドですよ!(笑)
アッシュのベッドで2人で眠るのがいいですか?英二のベッドで2人で眠るのがいいですか?
そこでひともんちゃくあるのもいいかも。(私腐ってます?ですよね。ゴメンナサイ)
ちょっと今、妄想が膨らみました・・・。

「顔を埋めたり…引き寄せたり…抱き寄せたり」
おお。やっぱりそこか。そこですよね萌えって(笑)
よかった同んなじところに萌えてくださって。ありがとーございます。ー☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

「これ以上糖度があがったら」
それがですね・・。
ある意味この話が一番甘かったりして。なんて思ってます。(・_・;
甘い話って難しい~(>_<)
迷走しちゃいそうなこのシリーズまたお暇な時に読んでやってください。
無記名様にコメントいただけてすっごく嬉しかったです。^^
このシリーズ初めてよかったと思いました。
でわ~。
みなさまこんばんわー。只今、深夜1:54でございます。眠い。
前回の話にうれしいコメントありがとうございました!
まだ返コメできてないのですが(汗)ごめんなさいごめんなさい。
ちょっと今日はもう遅いので後日にさせてください><。
このシリーズ早めに終わらせたいので、先に次の話アップして・・いいですか?

追記:返コメできました~。

糖度102パーセントシリーズは続きます。

今回は31%(もうシリーズ名間違った。と激しく後悔中デス。)

題名「かわいい君」です。

地味な私ががんばった今回の内容は。

雰囲気:明るめ。お互いがお互いをかわいいと思う話。
A×英なのか英×Aなのか管理人はよくわからないので、クリックする際にはお気をつけください。

あちゃー。やばいもんクリックしちゃったよ。という方は・・静かに記事を閉じてくださいね。

どちらの管理人様もそうだと思いますが、こちらの管理人はとても弱い生き物です。読んじゃったかたは管理人に対して優しい気持になってください。ならないと管理人が涙で溶けてしまいます。
ノークレームでお願いします。

それでは大丈夫そうな方は目次のページから一番下のif設定をご覧になってくださいね。

でわ~。

「kawaii ねぇ・・・・。」

英二が開けたドアの向こうからアッシュの呟きが聞こえてきた。
アッシュはいつものとおりパソコンでなにやらしている。
すでに2時間は経過した頃だろうか。
入れたてのコーヒーを持って英二は後ろからアッシュに近寄った。
「何やってんの?」
キーボードの左に湯気の出ているマグカップをコトリと置く。
「これ kawaii んだろ?」
「”かわいい”?」
アッシュの流暢な英語の中に日本語が混ざると違和感を感じる。
英二はアッシュの肩越しにパソコン画面を覗いた。

その中には子供向けのかわいらしいキャラクターの画像が並んでいる。

女の子から大人の女性までに人気のあるキャラクターのグッズ。愛嬌のあるイラスト。子犬の写真。スワロフスキーでデコレーションされた携帯電話。バンビの壁紙。着飾った女子高生・・。そのカラフルな色合いと、おもに甘い雰囲気のキャラクター達は画面をみている男2人の目をチカチカさせるものだった。

「はぁ。確かにこれは”かわいい”けど。どうしたの一体?」
「いつまでたっても英語が上手くならないオニイチャンのために俺が歩み寄ろうとしてんのさ」
「・・・・・。」
アッシュはどこで覚えてきたのだろうか。どうやら日本語の”かわいい”という単語の意味を調べているようだ。

かわいいねぇ。

何をどうしてその単語を調べることになったのかはわからないが、彼とその単語にはかなりな違和感がある。

ーいや。そうでもないか。

コーヒーの入ったマグカップに口をつけて画面をじっと見ているアッシュを英二は見下ろす。
「僕にとったら君は”かわいい”だね。」
アッシュはマグカップから口を外し、少しムッとして英二を見上げた。
「・・・俺がこのキラキラしたりピンクピンクしてるのと同類だって?」
「”かわいい”にはいろんな意味があるのさ。」
機嫌を損ねたアッシュを見ながら英二は説明を続ける。
「pretty cute lovely charming beautiful 全てをカバーできるけど、そのどれでもないね。」
「へぇ・・。」
「ただし」
英二は口の端に少し笑みを浮かべた。
「?」
「男が男にかわいいを使うと微妙な雰囲気が流れるから注意して。いろんな意味で。」
「・・・・・お前俺のこと馬鹿にしてんだろ。」
「”僕”が?”アッシュ”を?『いつまでたっても英語が上手くならない』僕にはそういう機会は滅多にないから、もうしそう思われたなら光栄かもね。」
眉を下げて大げさに肩をすくめて言い切る英二にアッシュは眉を寄せた。
「お前・・・性格が良くなったな。」
「先生がいいもので。」
「・・・・・。」
アッシュは黙って回転する椅子ごとくるりと机に向き直し、キーボードを叩きはじめた。

あれ?拗ねちゃった?

英二は笑いを咬み殺す。

「アッシュ。」

と掛けられた声にアッシュが無表情に首を少しだけ英二に向ける。そこをすかさず英二が自分の首を伸ばしてその唇に軽くキスをした。

唇をすぐに離した英二とアッシュの目が合う。
「そういう態度を”Kawaii”っていうんだよ?」
英二はにこやかにアッシュに向かってそう言った。
「・・・・・。」
アッシュはプイと、再度画面に視線を戻して、軽く鼻をならし、画面を切り替えファイルを開き、今度はなにやら難しい事をやりはじめた。キーボードを叩く手がこころなしか早い。
「君。」
「ーなんだよ」
「耳が赤い。」

その耳は後ろから見るとほんのり朱に染まっていた。

ほんとかわいいな。

英二は口に手を当て小さく笑った。

「今日の晩御飯は何がいい?」

・・・・。

アッシュは答えるつもりはないようだ。キーボードを叩く手が止まらない。

そんなアッシュの態度にやれやれと小さく息を吐き、英二がドアへ向かおうと踵を返した瞬間。

後ろから腕を強く引かれた。

わっ!?

そのまま後ろへ向かされバランスを崩し、前のめりになったところへ椅子ごとこちらを振り向いていたアッシュの前につんのめる。アッシュは英二を受け止めながら彼の胸のシャツを強く引っ張り、そしてー

気付ば英二は椅子に座ったままのアッシュに乗り上げ、彼に顎をつかまれキスをしていた。いや。されていた。

バランスの悪い体勢に、椅子から落ちないように気を配る英二の口蓋をアッシュは遠慮なく蹂躙していく。
いつの間にかうなじに回された手に頭を固定され英二はそのキスから逃れることができなかった。
「ん・・・。」
アッシュの巧みな終わらないキスに、バランスをとるために椅子の肘掛につっぱっていた手から力が抜け、体勢が崩れた。

その体をアッシュは胸に抱きとめる。

「お前の方こそ”Kawaii”んじゃねぇの?」
アッシュは英二を抱いたまま、片手で彼の顎を掴んで自分に向けさせ、からかうような笑みで英二に問いかける。
「使い方合ってる?オニィチャン?」
英二はさっきまでアッシュと合わせていた唇を乱暴に腕でぬぐい、アッシュの胸を押して立ち上がった。
「ー合ってるよ!」
英二は足音をドスドスと鳴らしながらドアへを向かった。
「英二。」
英二はドアを片手にアッシュを振り向く。
「顔が”真っ赤”だぜ?」

コノヤロ~!

英二はドアを力任せに閉めた。
その足でキッチンへと進む。

全く負けず嫌いなんだから。
そういうところがかわいくないったらかわいくない!

キッチンについた英二は足元のカゴにいれてあった人参をとり、そのヘタを包丁で力任せにダン!と切る。

そういうところ?

ふと英二は思い出した。

そういえば先日シンと暁が生まれたばかりの子どもを連れてこのアパートに遊びにきた。暁がいると、3人の会話は自然と日本語になる。ここに日本語のできないアッシュが加わると自然と英語になるのだが。その日はアッシュは出かけていた。

”やあ。かわいい赤ちゃんだね。目のあたりがあーちゃんに似ているかな?”
”そうでしょう奥村さん。かわいいところは私に似てよかったの。シンなんかに似たらごつくて可愛げなくて仕方ないわ。”
”お前。夫に向かってだな・・。”
”アーちゃん。シンは昔可愛かったんだよ。背もすごく小さくてね。”
”かわいいシンかぁ・・。ねぇ。アッシュも可愛かったんでしょ?”
”アッシュ?僕が出会ったころにはもう子供って言える年齢じゃなかったからなぁ。”
”俺は14歳のころなら知ってるぜ?初めてみたときは女だと思ったけどよ。”
そんなこと口走ったやつらがとんでもねぇ目に合ってたな・・・。とシンがブツブツ言っている横で、英二はアッシュの小さい頃を想像してみた。近頃人気の映画の子役でも、あんなにかわいいのだ。アッシュはどれ程かわいかったろう。でもー。

”何?今でも充分かわいいとか思ってるんでしょ?オクムラさん?”

英二は少し動揺する。図星だ。

”・・・あーちゃん。大人をからかうもんじゃないよ。”
”あら。私だってもう大人だわ。こんなにかわいい子供もいるんだもーん。”
”あいつがかわいい?意味がわからない・・。”

とシンが呟いたところでアッシュが帰ってきたのだ。もしかしてあのときの話を聞いていたのだろうか。

自分の名前と共に連発されるかわいいという単語。英二の動揺。

だから調べてたのだろうか?
いやきっとそうだろう。

としたらホントにやっぱり、


かわいいのは君のほうだ。


英二は包丁を持ちながら少し笑った。その顔はとても優しくてー甘いものだった。





ーfin.



日本語の“可愛い”には“愛しい”と言う意味が含まれるらしいです。
冷やし中華はじめました。みたいな。

皆様こんばんわ。小葉です。
今日から「糖度102%」シリーズはじめます。

先日もチラリと書きましたが。

A×英かも。そして英×Aかも。ですから苦手な方は回れ右。
読んじゃった方は管理人にやさしい気持になってください。
やさしくしないと管理人は凹みます。
ノークレームでお願いします。

まずは糖度19%くらいの話。
なのでやっぱり地味な仕上がりです。

1話目。題名「きみが見た夢。」
シリアス目。内容はバナナ2次でよく使われる「アッシュが見る悪夢」の話。

今回とあるブログ様にお世話になりました。
バナナ界でのA×英の新境地。想像力豊かな過去モノから、妄想力豊かなRモノまでステキな小説を上げてくださっている「カボチャの夢」様をリスペクト(←いい言葉だ・・・)させていただきました。はっきり申し上げるとその中の小説の言葉を一部拝借して、書かせていただきました!(快く許可をいただきました。)

もちろん内容、展開、セリフ等まったく違います。なので優しいカボチャ様は「別に紹介しなくてもいい」と言ってくださったんですが。カボチャファンならわかるパクリ疑惑。ヘタレな私は乗り切れないでしょー。

悪夢を見たアッシュを慰めるために英二が使う単語をひとつだけお借りしました。

それでは楽しめる方だけお楽しみください。
if設定ですから、目次の一番下にあります。

あ。このシリーズ。早目にアップしていきます。次は6/21か6/22アップ予定です。よろしければチェックしてくださいね。

でわ~。
「・・・・かぼちゃの夢でも見たのかい?」
「ああ。でかいやつだった・・・。」

深夜ベッドの上で勢い良く起き上がったアッシュは、胸を押さえて肩で息をしていた。隣で寝ていた英二も身を起こしてアッシュの肩に手を回す。その背中はびっしょりと汗で濡れていた。
英二がなぐさめるようにアッシュの背を何度もなでる。
少し息の整ったアッシュは英二に向かって言葉を発した。
「・・・お前が晩メシにあんなの出すからだ。」
今日、仕事が遅くなった英二は近くのデリカテッセンで惣菜を買ってきたのだ。その中のサラダの中に小さくダイス状にカットされたカボチャがたくさん混ざっていた。

器用にフォークでよけて食べてたくせに。
箸ならわかるがフォークであんな細かいカボチャを全てわけられるなんて職人技だ。

だが英二は思ったことを口にしなかった。
「ハイハイゴメンね。僕が悪かったよ。」
「そうだお前が悪いんだ。」
アッシュは拗ねたように英二の胸のパジャマを両手で掴んでそこに顔を埋める。
そんな彼の柔らかな金髪を胸に抱いたまま、英二は静かにベッドに横になった。
もちろんアッシュが見たのはカボチャの夢ではなかったろう。どれ程の夢が彼を苛ますのか、いつまでそれは続くのだろうか。
出会ったころからこんな夜が幾度もある。
あの頃、やはり飛び上がるようにして起きたアッシュは、英二を起こさないよう、呼吸を整え、ベッドをそっと抜け出し、窓際で一人耐えていた。

ーあの頃の僕はそんな君に知らないフリをしたけれど。

「僕をみてアッシュ。」
声をかけられアッシュは英二を見上げた。その両頬を英二はやさしく両手で包む。

怖いことなんか何もないよ。と英二はやわらかい声で話し掛ける。
「今度怖い夢をみたらオニイチャンが追い払ってやるよ。こう見えても強いんだぜ。夢の中では君よりね。」
「・・・オレより年上だしな。」
「きみより年上だしね。」
2人は額を寄せ合い笑い合う。

ー出会った頃は一人で悪夢と戦う君にどう声をかけていいかわからなかった。でも今は。

「ほらもう寝ろよ。お休みアッシュ。」
「・・・ああお休み。」
英二はアッシュの乱れた前髪を掻き分け、その額に小さくキスをした。アッシュの瞼がゆっくり降りてその綺麗な翡翠の瞳が隠されていく。
しばらくすると小さな寝息が英二の耳に届いた。

やれやれ。

英二は小さく息をつく。

あと何回こんな夜を過ごせば悪夢は彼を手放してくれるのだろうか。

腕の中の金髪の彼を起こさないよう話し掛ける。吐息かどうか区別がつかないくらいの小さな小さな声で。

”いつでもきみを助けてやるよ。夢の中でもそうでなくても。”

体勢を変えようと英二は少し身じろぎした。
英二の胸のパジャマを掴んでいるアッシュの片手をそっと離し、その手を握る。そして、自分のもう片方の手を彼の背に回し、彼を起こさないよう、やさしく引き寄せ抱きしめた。
自分の腕の中の彼を覗く。プラチナブロンドのやわらかい髪の毛から覗くやすらかな寝顔。
かすかな彼の寝息が英二の胸にかかる。

僕の手はきみより小さいけれど、きみが手をのばした時はいつだってー。




ーfin








”カボチャの夢”の言葉はブログ”カボチャの夢”を運営されているカボチャ様に許可を取って使用させていただきました。だからこの話、カボチャ様に捧げますv。
コメントありがとうございます!
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>まある様
飢えた狼様こんにちわ(笑)
いよいよですw。でもねー。読み返してみると、そんなに甘くなかったかもー。とちょっと今、誇大広告しちゃったかな。とビビってるところでございます。ごめんなさい。ごめんなさい><。
うちの2人は2人とも負けず嫌いだから美しく甘く終わらないんですよねぇ(ため息)
まぁ。こんな話もあるよね。ぐらいに楽しんでいただけたらうれしいです!
それでは、今晩中に1話上げられたらいいな。と思ってますので。
またお時間のある時にお楽しみください♪
コメントありがとうございました!
今度のシリーズの注意事項を箇条書き。

名称「糖度102%」シリーズ。

・BLです。
・2人はすでに恋人同士です。
・A×英だと思いますが、英×Aだと感じられる箇所があるかもしれません。
・てかある。
・てゆうか。どっちがどうとかよくわかんない。

甘いのが苦手な管理人が、とにかく甘い2人を目指します。(当社比です。)
苦手なんで甘くなくても許してください。

・1話完結です。
・シリーズ4話と番外編?1話あります。
・他の話とのつながりありません。
(脈絡がありませんし、やってるコト自体整合性がありません。)
・最初はA+英かよと思われる甘さから、どんどん糖度を上げていきます。(当社比です)
・甘さと2人のスキンシップは比例してるかどうかはあなたの想像におまかせします。
・R度の判定はよくわからない・・・。

苦手な方は静かに記事を閉じてください。
読んじゃった方は生暖かい目で管理人を見ながら菩薩のように優しい気分になってください。

・管理人に苦情など、こんなはずじゃなかった的なコメントをすると管理人は凹み過ぎて戻ってこれなくなります。
・管理人は凹みやすい生き物です。
・このブログは管理人の妄想と貴女の優しさで出来てます。

・コメントは・・こういうのはあんまりムリしないでください。返す方も恥ずかしすぎて死んでしまいそう。

・でも合言葉は「甘ぁ~~~い。」(←古)です。

最後に一言書いときますが。
甘い甘いと書いてますが、あくまでもウチの2人でですからね!
常連様はわかってくださってると思いますが、ウチの2人はヨソサマの2人よりも地味な性格でできてますからね!(←コレ重要)
あんまり英二に甘くないアッシュ。
あんまりアッシュに甘えない英二。
ウチの2人はそんなカンジですよ!

・管理人が楽しむためだけに作られたシリーズ。

それでは。
上記箇条書きを耐えられる方のみ糖度シリーズをお楽しみください。
コメントありがとうございます!
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>ミチル様
こんばんわ!コメントありがとうございます!

「「よっぽど気に入っていた」のは」
おお。そうそう。さすが。さらっとでてきますね。
『その存在』でよっぽど気に入ってたのは、英二がアッシュを待っていたソファだからです。
私は平行してたくさんの話を書き散らすので、(そしてどれも終わらない・・)なんかこういうのを使いまわしてしまうんです。
他の話を出してない時に、そういう事をすると一応不自然でないように書こうとはするんですが・・。
そうでしたか、気になってましたかー。

「私にはとても幸せな7週間でした。~」
まぁ・・・。そうコメントいただけると。本当に本当にほんとーーーーに。書いてよかったと思えます。ありがとうございます。
もー。途中凹みまくりのシリーズでしたから。
「毎週毎週とても楽しくて、そして最後はふんわりあたたかい気持ちに」
ミチルさんにそういっていただけて。最後まで載せてよかったー。デス。えへ。
最後はふんわりしてくださったんですね。ホントよかったがんばって・・。

7週間。な・・・・長かった。

それでは。本当にうれしいコメントありがとうございました!
コメントありがとうございます!
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>無記名様(06/12 21:14 すごく素敵な物語でした~ の方)
コメントありがとうございます!
そうコメントいただけると載せてよかったなぁ。と思えます。ちょっとうまく書けなかったなぁとちょっと凹んでいたのですっごくすっごくうれしくて有り難いです^^。
ところで、目次の件ありがとうございました!
うひゃー。気付いてなかったー。というか修正したと思いこんでた><
さっそく修正しておきました!!
無記名様は親切な方ですね^^。
本当にありがとうございました!

またおヒマな時に覗いてやってくださいね~。



皆様こんばんわー。
わー。今日のアップは絶対無理だと思ってたー。でも昼寝から起きてのまさかの大逆転。最後の5行が書けてアップできたー。
皆様夏バテなどしてないですが?管理人はヘロヘロです。

さて。今回は。24作目。
「The treasure of my life 選択 Vol.7 「小さな空間」」
選択シリーズのエピローグです。
う。終わってよかった。ほんとよかった。

文章多め?内容は明か暗かといったら明の方。未来があります!だってアッシュが生きてたif設定だもーん。
if設定だから目次の一番下にあります。

えーと。プロローグを読んだけど、Vol2からのシリアスさにびっくりしてこれまで読めなかったという方も、プロローグとこの話だけで話がわかるようになっていると思います(多分)

アッシュが何を選択したか興味がある方はぜひどうぞ。

できれば、Vol.5の「君を選び続けるという事」とかVol.4の「光」を読んでみたらもうちょっと楽しめるかも~。
シリーズの中でもその2つは英二がでてきてちょっぴり明るめです。

でも忙しいあなたはプロローグとエピローグだけでも話はわかるのです!


このシリーズのそれそれの話。98%ずつ書きあがってからシリーズのアップを開始してみたんですけど、それでもきつかった。私連載とか向いてない。最後の2%ですっごい時間取る。書くの遅いし・・、その話ばっかり考えてたら何がおもしろいかもうよくわかんなくなっちゃって精神的にキツかった・・・。
もう続き物のシリーズものは100%書きあがってから載せるしか体力確保できないわー。と思いました。
もームリもームリ。
まぁ。1話完結でどの話もプロローグとエピローグ以外単体で読めるんですけど。

それでは。

いつもこちらをご覧になってくださる皆様ありがとうございました!
このシリーズに付き合ってくださった方もそうでない方も。
このシリーズのシリアスさの反動で、if設定での、甘~い2人をアップしたいと思います!
でもちょっと休みたい~~><。
ので、いつアップするかは未定。

そして初めての方。
いらっしゃいませ!シリーズものでなくても短編が色々ありますから、読んでみてください^^。
基本うちのブログはA+英の59丁目モノが多いです。
と思って今、数えてみるとああ~。違う・・?。
おかしいなぁ。いつも59丁目話をひとつ増やす度に、
”あの2人はどんだけ59丁目で暮らしてたんだよ。そんなにヒマないだろ。こんだけアパートの中にアッシュがいたらもうGと戦ってるヒマないんじゃないの?。もうそれでいいじゃん。アッシュもアパート一歩も出るな。”
と自分でツッコミながらアパートの中の話を毎回作ってるのに。
今回一気に過去モノ増やしたから比率が・・。

はぁ・・。本当にちょとでも何かしらの話を楽しんでくだされば幸いです^^。

それでは~。


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当方のレイアウトはPC中心に作成させていただいております。
引越し当日。

アッシュは音をなるべく立てないようにドアの鍵を開けた。そこはアッパーイーストにある高級アパートメントの一室だ。深夜も数時間立ったこの時間に帰宅した彼は同居人を起こさないよう静かに歩き、リビングのドアを開ける。と同時にソファに目が行った。

ーやっぱり。

リビングのソファーでは英二が眠っていた。
アッシュは一人で苦笑する。ソファで眠っている英二にではなく、自分にだ。
相変わらず自分は帰ってすぐにソファにいる英二を確認してしまう。
昼に帰ればそこに座っている彼がこちらを振り向くのを。夜には彼がそこで自分を待ちくたびれて眠っているのを。
無意識にソファを見て確認する。

アッシュの足は吸い寄せられるようにソファーへと向かう。

この2年間の数々の夜を思い出す。眠っている英二を起こした日もあった。寝かしたままにした時もあった。だが、その瞼が開いてその中から黒い瞳が現れるのを期待している自分がいたのだ。

アッシュは足音をたてないようにソファーへと向かい、その傍らに立った。英二をじっと見下ろす。

英二の瞼は開かない。

以前もこうして英二をじっと見下ろしていた時があったな。と思い出す。そしてあの時・・。




********




1年ほど前のあの日。アッシュは疲れた体を引きずるようにしてこのアパートメントの下までたどり着いた。そこからこの窓を見上げると薄暗い光が灯っているのが見える。英二はまたリビングで自分を待っているのだろう。

ー先に寝てろと言ったのに。

アッシュはエレベーターで最上階まで登り、自室の玄関ドアを静かに開けた。
すると、薄く開いたリビング扉からは聞き慣れない声が静かに聞こえきた。しかし、ラジオの音だとすぐにわかる。
リビングのドアを開けた。アッシュの視線は迷わずソファに行く。そこには深夜の闇に負けない程に漆黒の髪を持つ東洋人の友人が眠っていた。
アッシュの帰りを待っていたのだろう。先日2人で行った図書館の近くの小さな本屋で購入した写真雑誌が開かれたまま、胸の上に臥せて置かれていた。

テーブルの上に置かれた小型ラジオから流れてくる落ち着いた声のDJが、本日の放送が次の曲で終わると告げ、別れの挨拶をし始めていた。ミッドナイトラジオの最後を締めるにふさわしい少し古めの落ち着いたナンバーがこのリビングに静かに流れ始める。

アッシュは黒髪の友人のそばに立ち彼をジッと見下ろした。

ラジオサイズにまとめられたその曲は終わりを迎えないまま静かにフェイドアウトしていく。本日全てのプログラムを終了したラジオからは静かな雑音が聞こえてきた。

今日も自分を待っていてくれた。自分を待ちくたびれて眠ってしまった彼の寝顔を見るのはもう何度目になるのだろうか。このソファのこの向きで彼はいつも眠っている。すでにたくさんの夜を彼と過ごしている。だが彼と過ごしたのは1年ほどだ。計算すればすぐに答えがでる。
硝煙の匂いをまとって帰ってきたアッシュの視線は知らずとソファに行くようになった。先に寝てろと言い置いてアパートを出ているにもかかわらず、どこかで彼が自分をこのソファで待っていると期待しているのだろう。そして彼は期待通りにアッシュを待っている。帰ってきたアッシュは彼の寝顔を見るとほっとする。ほっとしてなんだか心に血が通い始める気がする。

アッシュは彼を起こさないようにソファの端に腰掛けた。
彼の瞳にかかる黒い前髪を払ってやる。起こさないようにそっと。

だが心のどこかで彼が起きてアッシュに微笑み掛けてくれることを期待している自分を知っていた。

そうして期待通りに彼の瞼がゆっくり開かれていく。

「・・アッシュ。おかえり。」

英二は薄く目を開けた。少しずつ開いていく瞼の中から黒い瞳が現れる。それはソファーのそばに備え付けられたフットライトの暗い明かりに反射してきらりと煌めく。
アッシュは英二と出会ってから黒い瞳も輝くことを知った。
薄く眼を開けた英二はアッシュを認めて薄く微笑んだ。この友人はいつも自分に微笑みかける。その笑顔に自分のこわばった心がほぐされるのだ。

ーこいつはどうして俺のそばにいるんだろう。

出会ったその日に自分のいざこざに巻き込んでしまった事をふと思い出す。

動かないアッシュを訝しく思った英二が身を起こして声をかけてきた。
「どうしたんだい?」
「お前ー。 初めて会った時どうして俺の銃を持ちたいなんか言ったんだ?」
「え?日本じゃ本物の銃なんて持てないし、ただ単に持ってみたかっただけだよ。」
「それにー」
「それに?」
「いや。君、帰ってきたばかりだろう?何かー」
食べるかと聞こうとした英二はアッシュの胸の汚れに気がついた。乾いた血痕の後。その視線にアッシュは気づきハッと隠すようにその汚れを握りしめる。
「ごめん。」
「ーどうしてあやまる?」
「僕は銃が人を殺す道具なんて、知っていたけどわかっていなかったんだ。興味本位で君の銃を持ちたいだなんて・・。軽率だったよ。」
「別にそんな大層なもんじゃないさ。アメリカじゃ誰でも持てる。」
「だけど覚悟を持って使う人は少ない。そうだろう?」
「・・・ただ人を殺すだけさ。」
「そんな言い方しちゃだめだ。」
英二が厳しい表情でアッシュを嗜める。その黒い瞳はとても真摯で、そのなかの煌めく瞳孔には一点の翳りもない。
「君が生き抜く為には仕方なかった。そうだろう?」

これだー。とアッシュは思う。

彼にそう言われると、自分がちょっとはましな人間みたいに聞こえる。そう信じてしまいそうになる。自分の暗く重い心にほのかな温かみとほのかな明るさが流れ込んでくる。それにしがみついてしまいたくなる。信じていいのだろうか。誰の言葉でもなく、彼の言葉を。

黙り込んだアッシュに逡巡した英二がぽつりと話す。

「目が。」
「?」
「君の目だけが、まともに見えたんだ。」

だから君なら大丈夫かと思ったんだ。と英二は言った。

俺の目?

アッシュは仲間の暗い目を思い出す。どんな希望も持っていない暗い寂しい瞳・・。自分もそんな目を持っているはずだ。だが彼にそう言われると・・。
「お前。見る目ないな・・。」
ムッとした英二が言い返す。
「そんなことあるもんか。僕はこの上なく自分の見る目に自信がある。」
ーあの時、お前は俺に撃たれていてもおかしくなかったんだ。英二。周囲の全ての事を腹立たしく苦々しく思っていたあの時・・。
だがあの日彼は黒色の瞳を輝かせ自分の中にするりと入って来た。彼が自分を見たその瞳は確かに他者から向けられる瞳とは違っていた。お互いがお互いの瞳に・・・。
アッシュは肩をすくめて話を混ぜ返す。
「じゃがいもや人参を見るのとは訳が違うんだぜ?」
ムッとした英二が言い返す。
「レタスとキャベツの区別がつかない君にそんな事言われたくないね。」

先日、夕食を作り始めてからサラダ用のキャベツのない事に気付いた英二に、下のスーパーまで買いにいってくれないかと、お使いを頼まれた。そしてアッシュはスーパーに行き、レタスとキャベツの両方を買ってきたのだ。
まさか君。レタスとキャベツの区別がつかないのかい。と尋ねられる前に、俺は両方が食べたかったんだ。食事が出来たら呼べ。と、パソコンが置かれている部屋に閉じ篭った。
締めた扉の向こうで英二が笑ってる気配がしたのを思い出しバツが悪くなる。

君がどうして今頃そんな事聞くのかわからないけど。と英二は言葉を続けた。
「あの時、僕は君に声をかけた。そして色々あったけど、僕は今君の傍にいる。」
それで十分じゃないのかい。とその夜色に煌く瞳にアッシュは捕らえられる。
「こうして君の傍にいて、君と君のリンクス達に・・・」

俺とリンクスに?

「日本食を広められたしね。アッシュおなか空いてるだろ?なんか食べるかい?」
日本食・・・・。
「・・・・いらねぇ。この話の流れだとどうせナットウだろ。」
英二が似合わない大げさな仕草で肩をすくめてみせた。
「残念。かぼちゃの煮つけだよ?」

ソファから起き上がった英二の瞳はいたずらっぽく輝いていた。

「ほらアッシュ。立てよ。どうせ何にも食べてないんだろ。納豆もかぼちゃもないから食卓に行こう。」
先にソファから立った英二が、いつもの笑顔でアッシュに手を差しだした。





**********************





「英二。起きろ英二。」

「・・アッシュ?」
その瞼がゆっくりと開かれ、見慣れた黒い瞳が現れてくる。英二は少し寝ぼけた声を出しながら時計を見た。
「なんだまだ5時前じゃないか。・・なんで君起きてんの?・・まさか君一睡もしてないの?・・・ひょっとして今日はNYに台風でも来るんじゃないの?」
「・・・寝起きいいじゃねぇか。」
「君と違ってね・・。」
という英二も、だがさすがにあくびをしながら寝ぼけ眼を手でこする。

ソファーから起きろ。というアッシュの言葉に英二は素直に立ち上がり寝室に行こうとした。が、1歩も踏み出さないうちにアッシュに声を掛けられる。
「そっち持て。」
「・・・持ってなにするんだい?」
「引越し。」
「は?まさかこれ持ってくのかい?」
「そうだ。」
「はぁ?君、家具は何も持って行かないって言ってたじゃないか。」
「いいからそっち持てよ。」

こんな朝からなんなんだ。とブツブツ言う英二を無理やり促して2人でソファーを運び出す。

外に出るまでにアパートメントの住人とは誰にも顔を合わさない。運び出した外にはご丁寧にトラックが一台とまっていた。2人でその荷台にソファーを運び上げる。そしてアッシュは英二を助手席に押し込みトラックを発進させた。

さすがの英二も助手席で居眠りする。
どれほど走ったのだろうか、車が停車する振動で英二は目覚めた。

「ここ?」

英二が聞いたのはここが新しくすむアパートかという事だ。アッシュはそうだと答えた。59丁目のアパートよりももちろん小さく、古い建物だが、その概観はそこそこ小奇麗だった。玄関にはドアマンなどがいないそこは、アッパーイーストの高級アパートメントよりもよっぽど自分達の身の程に合っていた。
そのアパートメントにまた2人でソファーを運び込む。
運び込んだ部屋は家具付きの賃貸のようだ。だがリビングにはぽっかりと空間が開いている。そこにソファーを設置した。今まで住んでいた高級アパートメントの広々したリビングに比べ、かなりこじんまりとしたその部屋にはこの大きなソファは不釣合いだ。なんだかバランスが悪い。

「なんで家具付きなのにソファーだけがないんだい?」
「さあな。」
「・・待てよ。もしかして外にあったソファって、」

英二が言っているのはこのアパートメント近くの路上に捨て置かれていたソファーの事だ。先程車から降りたときに目の端に入ったのだ。あのソファは元々この部屋にあったものなのだろう。それをアッシュが運び出した。

「細かい事は気にすんな。」
「こんなことやっていいのかい?!賃貸なんだろ?」
「あれより立派なソファになって大家も喜ぶさ。」
『なんでアメリカ人ってそんなに自己中心的なんだ』と英二は日本語で呟いた。「信じられない。」と英語で呟きなおす。

アッシュは運び入れたばかりのソファーにドカッと寝転がって英二にこう言った。
「オレは寝る。」
「はぁ?ここで?家具付きだろ?ベッドもあるんじゃないの?」
アッシュは目を瞑ったままひとつの部屋のドアを指し示しながら英二に答えた。
「ベッドはある。だがシーツがない。」
「・・・・」
英二は少し黙った。
そして寝転がるアッシュをソファーの奥へと押しやる。アッシュは何事かと英二を見た。
「僕も寝る。詰めて。」
「なんだよ。」
「なんだよじゃないよ。僕も眠いんだ。」
高級アパートメントにあったこの大きなソファは男性がかろうじて2人並んで寝転がれるほどの奥行きがあった。
英二は空いた場所に無理やり寝転がった。
「起きたらまた前のアパートに行ってカメラ取ってこなきゃ。」
食器もどうせないんだろ。シーツも買わなきゃ今晩も眠れない。などとブツブツ一人で話しているうちにその黒い瞳が瞼でゆっくり隠されていく。どうやら眠ってしまったようだ。疲れているのだろう。
近頃英二は慣れないアルバイトをやりはじめた。レストランのボーイだ。
いつまでも君に世話になってばかりじゃいられない。と。
それを反対する理由もアッシュにはないので好きにさせていた。
本当は写真の仕事がやりたいくせに。
経験と実績のない英二の写真を使ってくれるところがどこにもない。

外国人の英二は、日本では家族が彼を待っている。

どうしてこいつはここに残るんだろう。

閉じられた瞳を縁取る黒いまつげを眺めながらアッシュは思った。が、それ以上は考えない。

このまま眠ってもどうせ英二が先に起きるだろう。英二のアルバイトも今日は休みのはずだ。先に起きた英二は何もないキッチンに行ってため息をつくかもしれない。そうして自分を起こしに来るだろうか。
こちらに来る道中、助手席で眠っていた英二はここがNYのどこかいまいちわかっていないはずだ。59丁目のアパートメントに帰りたくても一人では帰れないだろう。と一人で口元が少しゆるんだ。

帰る・・・。

いや。今日からここが自分達の部屋だ。
外出して帰ってきた自分を英二は向かえてくれるだろうか。いままでと同じこのソファで。
アッシュは想像した。
この部屋のドアを開けた瞬間自分はまずこのソファに目をやるだろう。そしてー。


『おかえりアッシュ。』


アッシュは英二を落とさぬよう体勢を変え、上を向き、そして静かに目を閉じた。











最後までこの話を読んでくださった方本当にありがとうございました。
わー。終わったー。このシリーズ。最初から最後まで読んでくださった人はどれほどいるんだろー。お疲れ様でした。貴女と私w。
こんだけシリアスな話読ませといて、アッシュが選んだものはソファーかよ!とお思いの貴女。すみませんすみません><。
もー。なんでそれを選んだかとかは、貴女の想像のままに。
実はこのアッシュの選択は答えが堂々と載せてあって。気付かれるかなぁ。いやまさかなぁ。と思ってたのですが、実際気付いてくださった方がいて。すごい。ありがとうございます。
”AnotherOne「その存在」”でソファー持って行ったって書いてるんです。さらっと。ハハ。
話の順番的には「再会の後」があって、このシリーズのプロローグとエピローグがあって、「その存在」があります。

それでは、シリーズ全部読んでくださった方も、この話だけ読んでくださった方も本当に本当にありがとうございました!
ちょっとでも面白かったと思っていただけたなら嬉しいです^^。でわ~。

コメントありがとうございます!
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>ミチル様
だ・・大丈夫ですか?風邪。
私のはただの疲労ですが、1週間も咳がとまらないなんて。辛い・・。
そんな時にコメントいいのに。うれしいです!ミチルさんのコメントで元気をいただきました。ありがとうございます。

でも返信不要なんですね・・。いつも本当にコメントうれしいんですv。
最近、色々いただいていて、全て返コメ不要で封じられてたけど気になるコメントにちょっぴり返させてください。
「それぞれをイラストに」
これねー。絵を描ける人はいいな。って思います。
絵師様からのコメント読ませていただくと、私の小説なのに、きっと私よりはっきり場面を想像してくださってる部分があるんだろうなぁ。って思うことがたまにあります。
今回ミチルさんにそうコメントいただいて、
”それぞれ・・・?(考え中考え中)・・・・どこ?”とか思っちゃったもん(苦笑)マジで。そんな絵になるようなところ・・(考え中考え中)・・・どこだ・・。
いやー。うらやましいです。あ。リクではないのでご安心をw。


「てとこがやっぱり少女漫画なんだと思うんです、いい意味で」
私もそう思います。ショーターとアッシュの2人て。・・・・それもいける。(いけるんかぃ!)
軽快なアクションコメディ。とかで楽しそう。
・・・いやいやいやいや。英二がいるからバナナフィッシュは切ないんですよねー。少女漫画なんですよ!いい意味で!!


「『Another one』の続きてことですか?」
ごめんなさい。ちがいます・・・・・・・・・・・。
本当に本当に本当にごめんなさい・・・・・。
別シリーズです。もう2人はできちゃった後です。もうAnother one は挫折気味です。書くのに時間がないんですよ。4月から。あのシリーズ時間と体力いるんです・・。転勤しないと無理コレ。もう長期戦です。

そして最後はやっぱり。

「英ちゃんは確かにアッシュの足手まといだったけどそれは逆もあるよね、て思ってて。」
そうなんですよねーーー。
ネットでバナナ2次をやりはじめてから”英二が足手まとい”だという意見があるんだ。と知って、ちょっとびっくりしてました。
英二側にたったらアッシュだって英二の足ひっぱってるよねー。とか今ここでコメントしたらアッシュスキー様に殺られるんでしょうか・・・。で・・でもでも。私だってアッシュの事好きだもん!
どっちがどっちなんてことはないんだもん!
2人で選んだことなんだもーーーーーん!!><。

ああ。ちょっとだけにならなかった・・・。
気を使ってくださったコメントありがとうございました。
ミチルさんにコメントいただくと、いつももう一つ書こうという気になるんですよね。Another oneもその気にかなりなったんですけど、体力なくて。ヘタレでごめんなさい。><。

本当にコメントありがとうございました!
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