Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

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2次小説「No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-」完結しました!

皆さまこんばんわ!
なんか英二ちやほや回数がすごいことになってますが、大丈夫ですか?(なんだか心配)
18282が圏内に入ってきたっぽいのでびっくりしています。

だがしかし。

18282ちやほや記念とか、とくに何も御用意しておりませんから・・・。
でもいったらすごいなー。そしたらもうちょっとがんばって私、222222ちやほやとりたいなぁ。
だって最初は01111ちやほやと02222ちやほやと03333ちやほやとったんですけど(ハードコピーもしておいた)
04444を逃してしまって・・・。そしてどーでもよくなって(←え?)今に至る。
あ。でもこの間11111とったんですよ。
しかし、主催者なのに、うまいこと82系統がとれないんだよなー。るーるるるー。

ま。とにかく、もう振ってもなにもでませんから、みなさん、腱鞘炎にならない程度にちやほやしてくださいね!

そしてそして、皆さま本日も新しいちやほや仲間をご紹介させてくださいv

本日は

sweeter than bnn fish(管理人:show様)
です。

わー。パチパチ。
show様は昨年の英二の日もご参加くださったんですよー。
今年は迷われたそうですけど、ご参加表明してくださってとてもうれしいですv
また今年もよろしくお願いしますねー。

そして、英二の日コンテンツを上げてくださった管理人様がいらっしゃいます。このページの下の方でリストになっておりますので、みなさま跳んでいって楽しんでくださいねv
管理人様はリンク等確認してくださいv

あと、管理人様へ業務連絡です。
例年ご賛同ブログ様サイト様のTOPページへのリンクとは別に、コンテンツのページへ直リンクをさせていただいております。
コンテンツをアップされた場合は、こちらのコメント欄にて、コンテンツ上げたよーとリンク先のURLを教えてください。
直リンクなんかいやだわー。って方はもちろんスルーしてくださってOKです。
直リンクURLをご連絡してくださった方のみ直リンクさせていただきます。
確認するの大変なんで・・・。ご協力の程よろしくお願いいたしますm( _ _ )m


それでは皆さま。8月2日までぴょこぴょこ英二を適度にちやほやしてやってくださいませ~v


※当ブログの英二の日コンテンツはずーっと下の方に掲載しております。



i-eijiallmini.gifご賛同くださる全ての方への企画参加方法i-ashallmini.gif

英二ちやほや方法はいたってシンプル。
只今から8月2日までに、下のバナーのいずれか(どれでもリンク先は同じです。)をクリック。とりあえずクリック。そしてクリック。

クリック=ちやほや。です。

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英二を可愛がってください。クリック先でどれだけ英二がちやほやされたか見れます。
何回でもちやほやしてあげてくださいね。連打大歓迎v
クリックは今この瞬間から。英二が貴女の愛を待ってます!



i-eijiallmini.gifご賛同してくださるバナナ管理人様への企画参加方法。i-ashallmini.gif
下記によりご参加ください。

① 下のバナーを8月2日までどこかに貼ってくださる。
(リンク先 http://cobabanana.blog.fc2.com/blog-entry-318.html)

コメントなしでコッソリとご参加できます。
でもバナー貼ったよーとか、コンテンツ上げたよーとか、コメントいただけるともちろんこちらにて宣伝させていただきますv


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i-eijiallmini.gif以下『英二の日。』ご賛同表明サイト様i-ashallmini.gif
(*順番は参加表明コメント等の入力時間順です。)

BANANA-yellow-FISH-blues(管理人:aia様)
⇒⇒⇒ちやほやコンテンツはコチラ(日替わりトップ絵を上げられています)

幻想奇譚(管理人:しらさぎ様)


BF again(管理人:こまい様)


BANANA☆Junkie(管理人:芙月様)


竜炎(管理人:仁礼 槐様)
⇒⇒⇒ちやほやコンテンツはコチラ(pixiv内では、こんやが山田様になります)

sweeter than bnn fish(管理人:show様)


Banana Recipes(当ブログです)
⇒⇒⇒ちやほやコンテンツはこの下からGO!




i-eijiallmini.gif以下、当ブログの「英二の日。」記念小説&記念絵i-ashallmini.gif

2015「英二の日。」記念小説
『No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-』
シリアスです。R18表現あり。お気をつけください。

2015「英二の日。」記念絵
アッシュがなにやら英二をちやほやしようとしているようです。
BL表現あり。お気をつけください。
絵はコチラから。





それでは、みなさま8月2日まで「英二の日。」をよろしくお願いいたします~。
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目覚めた後のシンの対応がなんというか、すごかった。素早かったというべきか。


ぼくが目覚めた時、そこはまだあの玄関先だった。そこでぼくらはまだ倒れたままだった。男の人が持っていたライフルがぼくらに向けて突きつけられている。女性と子供は逃げたんだろうか、すでにそこにはいなかった。

シンは無事目覚めたのだろうかと、ぼくが横に倒れている彼を伺った瞬間。

シンの腕がぬっと男へと伸びた。

ライフルの銃砲を掴んで横へと引き倒す。男が態勢を崩したのと同時に素早く起きて、床に倒れた男性のみぞおちを踵で力強く蹴った。
男が腹を抱えて蹲る。意識はあるようだ。
その男にシンが腰から抜いた拳銃を突きつけた。ぼくのオートマチック銃だ。シンは立ったまま男の顔を足でひっくり返して男に尋ねる。
「なんの恨みもないんだが、悪りぃな。俺たち、ちょっと家を間違ったんだよ。警察には通報したか?」
男は、した、と答えた。
シンはそうかと呟き今度は男の顎を足で蹴った。
その男性は今度こそ気絶した。
「英二。行くぞ」
シンがぼくの腕をひっぱり上げる。
ぼくは立ち上がりながら気絶した男を見て、そこまでしなくても、なんて思った。
「警察に俺たちの風体を説明されると困るだろう。時間稼ぎだ。走れ!」

そのアパートメントが見えない位置まで全速力まで走ってきて、とりあえずぼくらはビルの影に隠れた。
遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。
ぼくらはそのまま大通りに出て人混みに紛れる。取り敢えずは大丈夫だろうか。

シンが肩で大きく息をついた。そして僕に短く聞いた。
「あの夢は本当なのか?」

ぼくは近くにあったニューススタンドで新聞を買った。最近ぼくは、過去でも使える小銭をジーンズのポケットに常に入れているのだ。
そしてシンに黙ってそれを渡す。ニュースを確認するためではなく、ただ日付を見てもらうために。
今年は1986年のはずだ。
シンは新聞の上部に書かれている日付を見て、眉を顰め、新聞をぐしゃりと手で握り潰した。

「説明しろ。今までお前が、いつ、どこで、どうしてきたのかを」
シンのきつい眼差しに、ぼくは観念した。君には関係ないなんて、これ以上言えそうにはなかった。
「とりあえず、歩こうか」
ぼくはシンを促し、歩きはじめた。目的の場所まで。
シンがぼくの横に並ぶ。
そして道すがら、ポツリポツリと話し始める。ぼくがどうやって”彼”を助けようとしたかを。そしてどうやってことごとく失敗したのかを。シンは気持ち悪いくらい黙って聞いていた。

そのうちぼくらは目的地に着いた。

歩きはじめてから初めて、シンが口を開く。
「で、ここは?」
ぼくは言い淀む。よりにもよって、この日のこの場所に戻ってきたときにシンが一緒にいるなんて。
でもぼくは今度こそやらなきゃならないんだ。

「君のほうがよく知ってるんじゃないかな」
そう。ここはシンの方がよく知っている。ぼくたちはある屋敷の前にいた。それは李家のたくさんある屋敷のうちのひとつだった。
「月龍の屋敷だな。だが俺が聞いてるのはそんなことじゃない」
わかるだろう。と、シンは言った。
わかっている。シンが聞きたいのは、ここでぼくが何をするつもりなのか、だ。
「あー。覚えてないかな?この時期ぼくはここでユーシスに捕まっていたんだ。君ともここで顔を合わせたと思うけど。取り敢えず、君はここで待っていてくれるかい?」
ぼくは答えになっていない回答をして、シンをはぐらかす。
「ここでお前が?」
どうやらシンはあまり覚えてないようだった。それならそれで好都合だ。
ぼくは鉄の柵に手をかけて、そこを超えようとした。
「おいちょっと待て」
シンがぼくのシャツの裾を掴む。
「離してくれ」
「いいから待てって」

シンはその時、唇に指を当てて口笛をならした。
屋敷の庭から何かがぼくたちの元へ掛けて来た。数匹のドーベルマンだ。
「おーよしよし。お前らえらいぞ。オレがわかるのか」
柵の向こう側で3匹のドーベルマンがちょこんと座った。柵越しにシンに頭をなでてもらって尻尾を振っている。
「よし。お前らそこで大人しくしておけよ」
と言ってシンが柵に手を掛け、軽々とそこに登った。

「ほら」
柵の上からシンがぼくに手を伸ばす。

ぼくは複雑な気持ちでシンのその手を見た。

「どうした?」
「いや。君って嫌味なくらい何でもできるよね」
シンほど要領がよければぼくはとっくに“彼”を助けることができているかもしれない。
シンが柵の上で唇の片端を上げてニヤリとした。
「惚れ直したか?」
「そうだね」
ぼくは曖昧な笑みを返しながらシンの手を取った。

ぼくらは柵を超え、シンが案内してくれた小さな裏口から、難なく李家の屋敷に潜入した。そして人気のない部屋に入り、扉の横に張り付いて、屋敷の様子を伺っているところだ。

「それで?お前はどの部屋に捕まっていたんだ?」
「ぼく?ぼくは軟禁されていたんだよ?そんなのわかるわけないじゃないか」
「お前は何しにここへ潜り込んだんだ……昔のお前を助けに来たんだろう」
とシンが呆れた声を出す。

ぼくを助けに?

違う。シンは誤解している。ぼくはぼくを助けに来たわけじゃない。そもそもぼくは昔のぼくに会うことができなかった。

ぼくがここへ来た理由はシンには言えないものだ。

「やっぱり君は外で」
待っていてくれと言おうとした時、どこかで派手に窓ガラスの割れる音がした。
バタバタと使用人達がその部屋まで走る足音が廊下に響く。

まずい。もうそんな時間か。

「シン。きっとあれは昔のぼくがガラス窓を割った音だ」
シンが壁に張り付きながらぼくを見た。
「昔のぼくはユーシスを人質にとってこれから車で逃げるんだ」
「あの時か」
シンはどうやら思い出したようだ。
ぼくは頷く。
「駐車場へはここからどう行くかわかるかい?」
ぼくはそこでやりたい事があった。駐車場でぼくは、ぼくとユーシスを待ち構えて……。
「わかった。あいつらを追いかけるんだな。事務室から空いてる車の鍵を取ってくる。ちょっと待ってろ」
「え?シン!」
シンはどうやら、ぼくが、昔のぼくとユーシスを追いかけると思ったようだった。
ぼくの当初の予定では駐車場に行くことができればそれでよかった。だけど、考えてみると、車が手に入るのであれば、追いかけた方が懸命な気がする。
そう考えているうちに、シンは素早くここから離れ、角の部屋に入っていく。そして一つの車のキーを難なく取って来た。
「ほら、行くぞ」
ぼくはシンに黙って着いて行った。











ぼくらは、昔のぼくとユーシスが駐車場へ来るのを待って、二人が車に乗り込むのを見た。その後を追いかけようとしたぼくをシンは止める。すると、またすぐに昔のシンもバイクで出て行ってしまった。

「君、あの時ぼくらを追いかけてきてたのかい?知らなかった」
「行くぞ」
シンが車のエンジンをかけてアクセルを踏む。駐車場からぼくらの車は急発進した。
だが、もう昔のぼくらの車もシンのバイクも視界から消えていた。それでは追いかけることができない。ぼくは焦る。だけどシンは昔のぼくらが車を止めた場所を覚えているらしかった。迷いなく運転する。シンってやっぱり本当になんというかすごいと思う。そう思いながら、ぼくは助手席からハンドルを持つシンを見ていた。
すると、シンが前方から視線を外さずぼくに言った。
「また惚れ直したか?」
「ほんとにね」
シンは片頬で笑ってみせた。

そしてぼくらは目的地についた。昔のぼくらは車からちょうど降りるところだった。
シンが昔のぼくとユーシスを少し追い越したところで車を止める。

ぼくは助手席から振り向いてリアガラス越しに昔のぼくらを見た。遠い。

「どうしてこんなところで」
「あっちの角からは昔の”俺”が見てんだよ」
ぼくは、助手席に片膝をついて乗り上げ、座席の背もたれに片手をついて後ろを見た。目を凝らすと、東洋人の少年がこちらを伺っているのが見える。背が小さい頃のシンだ。

ぼくはそのまま昔のぼくとユーシスまでの距離を目算する。
15mはあるだろう。遠い。

昔のぼく達は言い争っていた。だけどその内容はここまでは聞こえてこない。
「お前ら何話してたんだ?」
「ユーシスに彼自身を撃てと挑発された」

そう。この時のぼくはユーシスに挑発された。
ユーシスが何を言ったかをぼくは覚えている。
“彼”の事についてだ。

”彼”はぼくのためなら自らの手を血でよごすのに、と。
”彼”はぼくを傷つけないためなら自分を傷つける事もいとわないのに、と。
敵だったはずのユーシスが、”彼”のために何もできないぼくが悪いと、まるでぼくをなじっているかのようだった。

ぼくは車のリアガラス越しに目を凝らす。
遠くに見える昔のぼくがユーシスに向かって銃を向けたところだった。

今聞こえないはずのユーシスの言葉がぼくの耳の中で反響する。

『アッシュのために僕を殺せよ』

だけど昔のぼくは、不甲斐ないことにユーシスから視線をそらし、銃を持った腕を下ろす。
そんなぼくにユーシスが聞いた。

『できないのか?』

「そんなことない」
ぼくは呟いて、ジーンズに差した銃に手をかけた。
「英二?」
独り言を言ったぼくに、となりの運転席でシンが訝しな声を出す。
その声を聞き流し、ぼくの耳はあの時のユーシスの声だけを拾う。

『やっぱりできないんだな』

そんなことない!
ぼくは助手席のシートの上に両膝を乗せた。腰のジーンズから銃を抜く。ぼくはそのために”ここ”に来たんだ。
「おい。英二」
シンの声はぼくにはもう聞こえなかった。そのまま助手席の背もたれを支えにして銃を両手で構える。

『僕はいずれ彼の敵になる人間だと言ったろう』

そうだ。確かに彼は“彼”の敵になった。そして彼の手下を差し向け”彼”を殺した。だからぼくはこのために来たんだ。

ユーシスを、殺す。

そのためにこの日を選んだ。

ぼくはユーシスに向けて照準をあわせた。撃鉄を起こす。その時ぼくは気付いた。この銃はスミス&ウェッソンだ。安全装置なんかない”彼”の銃。そうか。あの時、引き出しの中から掴んだのは……。

「英二」

耳元で誰かがぼくの名を呼んだ。
「お前にはできないよ」
シンの声だ。
そして、シンの大きな掌がぼくの目をふさいた。視界が真っ暗になる。
「離してくれ」
「お前には撃てないさ。英二」
「撃てる」
「昔のお前にはできなかった」
「でも今のぼくにはできる」
「英二」
「刺し違えてもユーシスを、殺す」

そういう覚悟で、ぼくはここに来たんだ。

その時、昔のぼくがユーシスに向かって叫ぶ声がはっきりと聞こえた。
「お前なんかにわかるもんか!!」
そうしてぼくが走り去って行く音が裏通りに響く。

そう。わからない。だれにもわからない。

ぼくとアッシュがどこでどれだけ笑い合っていたかだなんて。
ぼくらがどれほどお互いを信頼していたかなんて。
あれからぼくがどんなに後悔したかだなんて。アッシュを失って……きみを失ってぼくがどれだけ……きみを取り戻すためならなんてもする。ぼくはなんでもするんだ!

ぼくは撃鉄を起こした。

昔のぼくは行ってしまったけど、ユーシスと昔のシンの話し声が聞こえている。まだ間に合う。まだユーシスはそこにいる。まだ―― 。

「シン。手を離して」

英二。とシンがまたぼくを呼ぶ。
「こんなことあいつが望むと思うのか?」
アッシュが?アッシュは―― 

『おれのそばから離れるな』

そう言って、彼はぼくに銃を決して渡そうとしなかった。
そして相手が何人いようとも、自分の体から血が流れようともぼくを守って走ってくれた。

だけど敵の罠にかかって窮地に立たされたとき、彼がぼくに銃を渡したことがある。

『二度とこれを持たせたくなかった』

彼はそう言ったんだ。

アッシュの望みは……

「ぼくは……」
ぼくの瞳から何かが溢れてシンの掌を濡らした。
シンはゆっくりと手を離す。ぼくの視界は瞳に溜まった涙で歪んでいた。ぼくのその目にユーシスが一人でこちらに歩いてくるのが映った。

「お前にはできないよ。英二」

アッシュはぼくを守ってくれた。なのにぼくは何の役にも立てなくて。だからぼくは決心したんだ。

「お前には、お前のやり方があるだろう」

ぼくの歪んだ視界の中で、ユーシスがどんどん近づいてくる。このまま近づけば、いくらぼくでも撃てば当たる距離になる。
銃を持つぼくの両手が震えた。

今だ。

ユーシスが車の真横を通る。
撃鉄は先程起こしたままだった。
この拳銃には安全装置がないんだ。引き金を引けば当たる。
ぼくは引き金にかけた指に全ての神経を集中する。
そしてユーシスは長い髪をゆらしながら、そのまま通り過ぎた。

ユーシスはそのまま―― 。

「英二。もういいんだ」

シンがぼくの肩越しに腕を回して、ぼくの両手にその両手を重ねる。
そしてぼくの指からゆっくりと銃を剥がした。

「ぼくはアッシュの役に」
ぼくの瞳は誰もいなくなった道路をむなしく見ていた。
「いいんだ英二」
シンはスミス&ウェッソンを片手で持ったまま、その腕で後ろからぼくを抱きしめた。
「今度こそって……」
なにも持っていないぼくの両手は、ぼくに回されたシンの腕を掴む。

「いいんだ」

そのシンの言葉にぼくは固く瞼を閉じた。一筋の涙が頬を伝う。ぼくはシンの腕で両目を隠す。だけど堪えきれないものが溢れ出してシンの腕を濡らした。その腕の中でぼくはアッシュの言葉を思い出す。

『人殺しはオレ一人でたくさんだ』

―― でも。でもそうしたら、どうすれば。どうすればぼくはきみを助けられるんだい?

ぼくは考える。
でも何も思いつかなかった。やれることはやってきた。もうすべて……。

だけど……。だけど本当にぼくは全ての事をやってきたのだろうか?まだ何かやり残したことはないのか。ぼくがここで諦めるということはアッシュを諦めるということなんだ。

そう考えていると、そのままシンがいきなりシートを倒して、ぼくに覆いかぶさってきた。

「ちょ、シン?」
ぼくは上半身をよじってシンを見る。
シンには似つかわしくない切羽詰まった表情。
「シ……」
ぼくはもう一度シンの名を呼ぼうとした。
すると、シンはぼくの唇を彼の唇でふさいだ。
どうして……。

シンの唇でぼくの唇が塞がれている間、車の横を誰かが走っていく音がして、それが通り過ぎた。

シンがぼくから離れて身を起こす。

「やっべー。今、昔の“俺”がこっちに走ってきて車の中をチラッと見やがった」
「君が?」
ぼくはなんだかわからないままシンを見上げた。
「そう。そういや……あの時」
とシンは顎に手を当てて考えはじめた。あの時とは、今この時間の事だろう。
「“俺”はあのあと月龍を追ったんだが、道路脇に変な車が止まってるなと思って、中を伺ったんだ。そしたら」
「そしたら?」
「車の中で男同士がキスしてた」
「それって」
シンが神妙に頷いた。
「今の俺たちだな」
ぼくたちは顔を見合わせる。

少しの沈黙が続いた。

その後、ぼくらは声を上げて笑い始めた。

「きみ、ほんとかい?ほんとに覚えてるのかい?」
「ああ。今思い出した。いい歳した大人のおっさん同士が路上の車の中で乳繰り合ってんのかよ。信じらんねぇ。って思った」
あの頃はおれも若かった。と、シンが笑いながら言った。
「なんだい。それ。きみがいきなりキスするからじゃないか」
「お前が、昔の俺が走ってきてるのに、俺の名前を呼ぼうとするからだろう。あんなオヤジ達にはなりたくないな。って思ったのを覚えてる。」

と、シンがしみじみと言うのでぼくはおかしくて涙が出てしまった。
ぼくはその涙を腕で拭いた。
それは、あたかも笑ったせいで出た涙なんだという振りをする。

シンはそんなぼくを見て穏やかに笑っていた。


「……お前。こんなところにこなくても、”あの日”に戻ればいいんじゃないのか?」
シンが言う”あの日”とは図書館でアッシュが亡くなった日だ。シンにとっては彼の兄であるラオが亡くなった日でもある。
「”あの日”にはもう戻ったって言ったろう?一番最初に。わけもわからないまま」
シンがぼくの言葉を聞いて何かを考え込んでいる。ぼくはシンに説明した。
「ショーターみたいなやつが言ってたろ?同じ時の前後一ヶ月はそこには戻れないんだ」
「試してみたのか?」
「みたさ」
最初に失敗してから何回も試してみた。何度も試すうちに、文字盤がするり滑ってその日で数字がとまらなくなった。もういい加減に諦めろ、と言われてるようだった。今ではその日に限らず、一度戻った日の前後一ヶ月はそんな感じで数字が滑って止まらない。
「じゃあ今から”あの日”を設定すればいいんじゃないか?」
「だから同じ過去には戻ることできないって」
「戻ることはできなくても未来に向かっていくことは?“今”からだと未来だろ?あのショーターにそっくりなヤツは”未来に行ってはいけません”とか言ってたが、”行けません”とは行ってなかったぜ」

ぼくはハタと気づいた。

そうか。1986年の”今”からだとすると、”あの日”は未来になるのか。
同じ時には戻れない。
じゃあ進むことはできるんだろうか?

ぼくは時計に手を出した。

忘れられない”あの日”に日付を設定しようとネジを回す。
まず、1987年に年号をセットした。
そして月日のネジを回していく。
一日ずつ進めるしかないこのネジ巻き方式がもどかしい。目的の日に近づいた時、ぼくは日付を通り過ぎないよう、充分注意しながらゆっくりとネジを回していった。その日でカチリとカレンダーが止った。

設定できた!

ぼくほシンを見た。
「できたか?」
「できたよ」
あとは時間の設定だ。
「何時に設定しようか」
「そうだな……」

ぼくは長針と短針を少しだけぐるりと回してみた。すると……

「わっ」
「どうした?英二?」

時計の針が勝手に回り始めたのだ。しかもすごい勢いで。ぼくは時計のネジから手を離した。だけど時計の針は回り続ける。ぼくは突然の頭痛に襲われた。いつもより激しい痛み。

「あ……あああ!」

ぼくはあまりにもの痛みに頭を抱えながら声を上げてしまう。

「英二?なんだ?どうなってんだ?大丈夫か!」

シンがぼくの手を取って引き寄せた。とたんシンも大きな声でうめき始めた。

ぼくの視界が回り始める。
そして周りが真っ暗になった。

ぼくは、ぼくとシンは暗闇の中にいた。体に強い風が当たっている。まるで台風の真ん中にいるみたいだ。大きな風が吹くような、ひどい嵐の中に立たされているような、そんな音がとまらない。ぼくは酷い頭痛で上がらない頭をなんとか上げて、ぼくの隣でうずくまるシンの肩に片手を回した。

その時、ある人物がぼくらの目の前に突然現れた。

「お前ら!未来の日付には設定するなっていったろーが!」

ショーター?じゃないんだっけ?ガンガンする頭を押さえながらショーターの怒鳴り声をぼくは聞いた。

でも……でもこれでもう一度あの日に行くことができるのなら。

「馬鹿野郎!そんな簡単じゃねーんだよ!未来は過去と違ってひとつじゃねぇんだ。今この瞬間から幾通りにも別れているんだ!お前はお前の望む未来に間違いなく行く自信があるのか!」

間違いなく行く自信?そんな自信あるわけない、今までのぼくの人生間違いだらけだった。

「あーあ、そんなこと言ってんじゃねーんだよ。お前が選んだ選択を、もう一度全て選びなおせるのかって事だ。正しかった選択も間違った選択も全てだ。ある朝コーヒーを飲むか牛乳を飲むかと考えた時。この日は歩いて仕事に行くか車で行くかと悩んだ時。そんなささいな”選択”までも、もう一度正確に選びなおすんだ。すべて間違わずに選びなおせてから、お前はお前の未来にたどり着ける」

ささいな選択?なんだかわからないけどぼくはアッシュのためならどんなことでもしてみせる。

「まったく。しらねーぞ。」
時の番人がブツブツと文句を言う。
「言っておくが同じ時空に存在できる同一人物は二人までだ。普通は時計が連れてってくんねーんだよ。裏技使いやがって」
とため息をついた。
そしてぼくの足元を指し示す。なにやら呪文を唱えはじめた。

すると僕の足元から光の糸が現れた。ぼくの足元から出発している一本のその糸は、すぐに何本にも別れ、複雑に絡み合い、そしてまた別れて、幾度もそれを繰り返し、漁師網のように広がり、永遠といえる彼方まで続いているように見えた。暗闇の中に広がり光る、黄金の何百、何千、何億もの糸。

「その糸は”お前の未来”だ。辿っていけ。間違いなく、な」

俺に出来ることはこれくらいだ。そう言って、時の番人は消えてしまった。

これを辿っていく?

その膨大な分かれ道。これのどこにぼくの行きたい未来があるのだろう。ぼくは茫然としてしまう。

ぼくはシンの腕を掴み上げながら立ち上がった。シンもぼくにつられて立ち上がる。だがまだ頭痛が収まらないのだろう。片手で頭を押さえたままだった。
「シン、大丈夫かい?」
「ああ。お前こそ大丈夫か」
「ぼくは平気だ」
平気なわけがない、今にも頭が割れそうだ。だけどぼくはこの糸の選択を一本でも誤ってはいけないらしかった。

ぼくはシンの手を握った。

広がる光の糸を眺める。それは最初から数十本に別れていた。

どれだ……どれが……。あ。

ぼくは気付いた。かすかに、ほんのかすかだけれど、数十本あるうちのひとつの糸の色がほんのりと……淡い緑色に染まっている。そんな気がした。

「シン。ぼくについて来てくれるかい?」
「信じてるさ」
シンが僕の手を握り返した。


ぼくは一歩を踏み出した。


とたん、光の渦に巻き込まれる。光速ともいえそうな速度で過去に経験してきた映像がぼくを通り過ぎていく、いやぼくが進んでいるのか。ぼくはひどく集中して幾とおりもある”選択”を違わずに選んでいく。一つを選べばまた一つ現れる。そしてまた一つ。絶え間ない”選択”。そのたびに、耳元で”過去”が通り過ぎる大きな音がした。

それから何百回ぼくは”選択”したのだろうか。それ以上かもしれない。

疲れたぼくはとうとう集中力を欠いてしまった。

「英二!」

ぼくは”選択”をするのが少し遅れた。とたん”過去”がぼくの方向を向けて襲いかかってくる。いろんなものがぼくとシンの身体に容赦なく当たった。ぼくはとっさに腕で身を庇った。その時ぼくはシンをつかんでいた手を離してしまった。

「シン!」

シンが強風によって後方へと飛ばされそうになっている。シンはそれに耐えていた。

ぼくはシンに手をのばした。シンもぼくに手を伸ばす。その時、ガンっとぼくの腕に何かがあたった。腕時計が破壊された。そして時計はぼくの腕から外れて後方へと激しい風とともに飛ばされていった。

全ての糸が消えた。

まぶしいくらいだった光は消え、ぼくらはバラバラに暗闇の中に落ちていく。ここで失敗すると”彼”の事を助けられないのに。“あの日”には戻れないのに。そんなのは嫌だ・・・。


アッシュ!


その時、聞き覚えのある声がした。



『お前のなすべき時になすべき事を為せ』



ああ、この声は……。ぼくはその声の主がだれか思い出しかけた。その瞬間、いつも目が覚めるときに見るような淡い白い光がぼくの身を包む。

その光がどんどん真っ白になっていく。
ぼくの目が眩しさで潰れてしまいそうだ。
気付けばまるで、ぼく自身が発光しているかと思えるくらいの白い光の中にぼくはいた。
体がどんどん熱くなる。全身に火傷を負っているかのような熱い痛み。


そうしてぼくは、なにもかもを焼きつくすような混じり気のない強烈な白い光に包まれた。


続く

腰に何かが当たる違和感を感じてぼくは目覚めた。


ぼくは深い眠りからの突然の覚醒で、ここがどこかもわからない。天井を見る……。ぼくの部屋か。

視線を少し傾けると、ベッドの横にシンが立っていた。その表情は厳しい。さらに視線を動かすとシンの手にはぼくの銃が握られていた。かつてシンからもらったオートマチック銃だ。

最近、ぼくが過去に戻るときにはいつもその銃をぼくのジーンズに差して携行していた。数時間前に過去から戻って、疲れきっていたぼくはそれを腰につけたまま眠ってしまったんだっけ。シンがぼくの腰からその銃を抜き取った感触でぼくは目覚めたんだろう。

ぼくが目覚めた事に気付いているだろうシンは、黙ったまま銃の弾倉を開けて銃弾の数を確認しているようだった。

……ああ、まずいことになりそうだ。

そして、シンはベッド脇のサイドボードの引き出しを引いた。いつもはそこに、シンからもらったその銃と未使用の銃弾の小箱を置いている。マックスからもらった”彼”の銃もそこに入っているけど一度も使ったことはない。

「……何してるんだい?」
ぼくはベッドに仰向けになったままシンに声をかける。
シンが引き出しの中に手を伸ばし、銃弾の箱の蓋を開けて中を確認する。弾の数が減っていることにシンも気付いたのだろう。

「お前こそ何をしているんだ」
真剣な眼差しがぼくを射抜く。その瞳は怒りにも似た色を孕んでいた。
「何って……別になにも」
「何もしてないのに弾が減るわけないだろ。どこで使った」

シンの口調が厳しい。

過去に遡った先でストリートキッズの抗争に巻き込まれて数回使った。そんなこと言えるわけがなかった。だけど他にうまい言い訳なんてあるはずもない。結果、ぼくは黙り込んでしまった。シンを無視するつもりはないのだけれど、彼の瞳を見返すことができずにゆっくりと目をつむる。

そのまま長い沈黙が続く。

しばらくして空気が動いた。先に口を開いたのはシンだった。
「お前、今日おれと約束していたの覚えてるか?」
ぼくはハッとしてシンを見た。その表情は曇っていた。
そうだった、今日はシンと新しい部屋を契約しに行くはずだったんだ。ぼくは過去に戻る合間にシンといくつかのアパートメントを回り、ぼくらは先日二人で一つの部屋を決めたのだ。

「ごめん……」
シンはぼくが約束を忘れたことを怒っているというよりも、どちらかというと心配しているかのようだった。ぼくの様子がおかしいときにぼくをじっとみるシンの癖。

また少しの沈黙が続く。

「また”あいつ”を探しているのか。仕事まで休んで」
そう、ぼくはここ数日仕事を休んでいた。過去に戻るために。だけどそれはシンには言っていないはずだ。
「最近いろんなやつに“あいつ”が生きてないかと聞いているらしいじゃないか」
「ぼくは”彼”を探してなんかいないさ」
助けようとしているだけだ。
ぼくはようやくベッドの上に身を起こしながら髪をかき上げる。

「じゃぁどうしてだ。マックスや、伊部、挙句のはてに小英にまで聞いて」
聞いたんじゃない。確認したんだ。ぼくは何度も過去に戻るんだけれど。この今の時間に戻ってきたときに、ぼくが過去で起こして来たことが“彼”になんらかの影響を及ぼして、彼が生きてはいないかと、誰かに確認せずにはいられなかった。だけどシンには聞いていない。どうしてシンがそれを知っているのか。
「君はなんでも知ってるんだな。ぼくにプライベートはあるのか」
「英二。心配してるんだ」

ぼくは少し口の端を上げて嗤った。
「またぼくが狂ってしまったんじゃないかって?」

ぼくは”彼”を探してNY中を昼も夜も歩き回っていた時期があった。

誰の真摯な忠告も聞かなかった。ぼくのそんな姿は周囲からはさぞおかしくみえたんだろう。マックスには怒鳴られアパートに連れ戻され、伊部さんには国際電話で諭された。アレックス達には困った顔で、もうダウンタウンには来ない方がいいと言われたし、他のストリートキッズ達には、あいつのオツムはとうとうイッちまったと肩をすくめられ、嗤われた。
その中でシンだけが黙ってぼくに付き合ってくれたんだ。でもシンは“彼”を探していたわけじゃない。“彼”を探すぼくの隣にいつの間にか現れて、長い散歩に付き合ってくれていただけだ。ぼくの進む方向が合ってようが間違ってようが、なにも言わずただ付き合ってくれただけだ。ぼくが“彼”の死を受け入れるまで。ぼくが“彼”を諦められるまで。

『お前が落ち着いてよかった』

マックスの声が頭の中でよみがえる。

落ち着いてなんかない。

ぼくは落ち着いてなんかいないんだ!

“彼”を取り戻せるのなら何百万分の一の確率だってぼくの全てを掛けてみせる。今ぼくがやっていることが例え幻で、ぼくの頭がおかしかったとしても。ぼくはそうせずにいられないんだ。

……行かなきゃ。

ぼくは枕元の目覚まし時計をチラリと見た。眠る前に腕時計で設定した時間がもうすぐ来るはずだ。

「銃を返してくれ」
「返すと思うか?」

思わない。
ぼくがシンでも返さないだろう。だが、シンの手の中にある銃を力ずくで取り返す時間も自信もぼくにはなかった。でも今回の時間旅行先では銃が絶対に必要だ。

仕方ない。

ぼくは勢いよくベッドから出て、開けっ放しになっていたサイドボードの引き出しに入っている”彼”の銃を掴んでジーンズに差す。そして強引にシンの横をすり抜けて外に出て行こうとした。シンに腕を掴まれる。

「待て」
「離してくれ」
「お前、今からどこへ行く気だ」
ぼくとシンは軽く揉み合いになった。
ぼくは知らぬ間に壁側に追いやられていく。シンがぼくを逃がさないように、僕の腕ごと壁に両手をつけた。ぼくはシンの両腕の中に囲われて動けない。シンを見上げた。
「行かせてくれ」
「だからどこへだ」
言えない。言ったところで信じてもらえないだろう。それどころか本当にぼくの精神が疑われる。
真剣な眼差しでぼくを見るシンと目が合う。ぼくはまたシンに心配をかけている。
でもー。
ぼくは申し訳なさから目を逸らして下を向く。

「英二。こっちみろよ」
シンの哀願するような声。普段のシンからは想像できないような声だった。

ぼくは思わず彼を見た。
ぼくたちの目が合う。
シンがゆっくりと僕の唇に唇をよせた。やわらかいキス。

「俺を見てくれ」
唇を離したシンはもう一度ぼくを真正面から見た。そして、ぼくの腕を離して、ぼくの肩に顔を埋めながらぼくを抱きしめた。

「お前はいつになったら“俺”を見てくれるんだ」

シンを見て?シンは何を……。

だがその言葉に、ぼくは初めて気付いたんだ。


ぼくはシンを見ていなかった。


なんとなくシンに請われるままに体を重ね。なんとなくシンとの同居を承諾した。

愛してるとの言葉に、そのまま愛してると返した。

だってシンはぼくのそばにいてくれて、ぼくの事を見てくれて、いつもぼくの事を考えてくれて。だから、

ぼくもシンを愛している。

そう思ってたんだ。

「ごめん」
「どうしてあやまる」
ぼくは申し訳なさからシンの目を見ることができず、もう一度うつむいた。
「ごめんよ」
「あやまるな」
シンはさらにぼくを抱きしめる腕に力を入れた。
「あやまらないでくれ」
シンが苦しそうな声を出す。

シンは彼の片手に握られていたオートマチック銃を彼のベルトに器用に挟んだ。そしてぼくの頬を両手で掴み、上を向かせて、深い口付けをしてきた。

何度となく交わされた深いキス。

ぼくの神経が高ぶったときや、逆に何の反応もしなくなった時、ぼくを落ち着かせるためにか彼はこういうキスをしてくる。

ぼくがNY中を歩き尽くして、それでも探し物が見つからなかったとき。
そんな事はないと虚勢をはりつつ、もうだめだと絶望に落ちたとき。

いつもいつもぼくの側にいてくれたのはシンだ。

シンの舌がぼくの口蓋をなぞりながら、彼の広い掌でぼくの背中をゆっくりと撫で下ろす。ぼくの腰を片方の手で支え、もう片方の手が手前に回ってきて、腹をつたい上がり、ぼくの胸まで到達する。

「……ん」

ぼくの鼻から小さい声がこぼれたのを合図に、シンは唇を離した。胸の突起をまさぐりながら、ぼくの首筋に唇を寄せる。

このシンの抱き方に、これまでぼくは幾度慰められてきたんだろう。このひと時だけは、やるせない絶望を忘れることができた。いつしかその絶望はシンの献身に遠ざけられて……。

いつものシンの慣れた抱き方に今のぼくの思考も停止する。

それがシンにはわかるのか、今度はぼくの首筋を嘗め上げ、腰に当てていた手でぼくのTシャツの裾をジーンズからゆっくりと出していった。ぼくの背中が直に彼の手でなでられる感触がした。
ぼくはなにも考えられず彼の大きな肩にぼくの両腕を回す。
と同時に。

―― ゴトッ

何かが床に落ちる音がした。

”彼”の銃だ。

ぼくは先程それをジーンズに差して、シンを振り切って部屋から出ようしたんだった。そうだ。時間がないんだ。

ぼくは思わずその銃を拾おうと右腕をのばした。

その腕がシンの手で阻まれる。銃に手が届かない。
「シン……お願いだ」
ぼくはゆっくりとシンと目を合わせた。シンが強い瞳でぼくを見た。ぼくもシンを見つめ返す。

しばらくして、シンが諦めたように目を瞑り、大きくため息を付いた。そして彼の腕からぼくを開放してくれた。

ぼくは身を屈めて右手で”彼”の銃を拾った。その時、ぼくは右腕に違和感を感じた。違和感というよりも……。

「……ない」

右腕にあるはずの腕時計がなかった。

「どこだ」

ぼくはすばやく辺りの床の上を見る。

「ない」

ぼくは銃を持ったまま、目の前にいるシンを軽く押しやり、もう一度屈みこみ、サイドボードの下を覗き込んだ。

「英二?何をしてるんだ」
「時計が……あれがないと」
シンの問いに無意識に答えながら、脳味噌をフル回転させて思い出す。最後に時計を確認したのはいつか。

時計の針を合わせた。その時はもちろんあったのだ。そうか、ぼくはベッドの上で時計を腕から外してから針を合わせてそのまま眠ったんだ。

ぼくは立ち上がりながら、手に持ったままだった”彼”の銃をジーンズに差した。足早にベッドへと向う。ベッドの上掛けを剥いでシーツの上を探し、枕を持ち上げてその下を見た。

―― ない。

ぼくは焦燥感にかられた。あれを失くしてしまったら”彼”を助けられない。
血の気が下がる音が聞こえた。
ぼくはもう一度、上掛けを持ち上げ勢いよくバタバタと振ってみる。だけど時計は出てこなかった。

「時計ってこれか?」
シンが大きな背を屈めベッドの下から何かを拾った。あの腕時計だ。
「これがどうした」
シンが時計を彼の目の前でぶら下げて見ている。

「返してくれ」
ぼくはシンに向かって手を出した。シンの手からそれをもらおうと一歩彼に近づく。シンは一歩後ろに下がった。彼はぼくの言葉を無視して時計を見ている。

「お前。なんかおかしいぞ。……この時計、動いてないじゃないか」
「それは、君からもらった時から動いてないんだ」

時間がないんだ。ぼくはベッドサイドの時計を見た。あと10分もしない内に針を合わせた時間になる。
「俺から?俺、こんなのお前に渡したか?」
シンが怪訝そうにぼくに問う。シンの言葉にぼくは戸惑う。
「君が、誕生日プレゼントにくれたんじゃないか」
「俺が?」

ぼくたちは顔を見合わせた。

「君が……ぼくの誕生日に中華街の店に行けと言って」
「お前、店から受け取ったって電話してきたじゃないか」
「だからこの時計」
「違う」
「え?」
「この時計じゃない」

どういうことだ。

「俺がお前に用意したのは、カメラだ。お前、使ってみたかったといってたじゃないか。インスタントなのに一眼レフの」
確かにぼくはいつかシンにそんな事を言ったかもしれない。1980年代に発売されたそのポラロイドカメラは、本撮影の前に、その場で手軽にフィルムの出来を確認できる一眼レフとしてスタジオカメラマンに好評だった。だけど、そのころカメラの仕事がまったくなくて、お金のないぼくにはとても買えないものだった。そしてカメラの仕事をやりはじめてからも、なんとなく手に入れそびれているうちに生産中止になり、そもそもフィルムカメラの需要がなくなってしまったのだ。でもずっと使ってみたかった。

「じゃぁ。ぼくは間違って」
それを手に入れたのか。やっぱりあの店じゃなかったんだ。でもその時計がないと……。

黙ってしまったぼくにシンが言った。

「返しにいこうぜ」
「え?」
「これ今から、お前が間違ってもらってきた店へ」
その店へ案内しろよ。とシンが寝室のドアへと向かう。
「ちょっと待ってシン!」
シンが寝室から出て行ったのをぼくは追いかける。
「シン、ちょっと待ってくれよ。それをぼくに貸してくれ」
「どうしてだ?今から返しに行くんだ。俺が持っていてもいいだろ?」
「だって」
シンが玄関先のドアの前で立ち止まってクルリと振り返り、ぼくを真正面から見た。
「お前。お前の誕生日から様子がおかしい。この時計が何か関係するのか?」

言ったら返してやるよ。とシンがぼくを促した。
そのとおりだ。すべてその時計のせいだ。でもぼくはもちろん理由なんか言えなかった。

シンは諦めたようにため息をついた。そして玄関のノブに手をかける。
「行くぞ」
「待って、シ……」
「痛っ」

その時シンが顔をしかめて頭を押さえた。

「シン!頭が痛むのかい?」
まずい!その時計が示す時間になったんだ!シンは今、時間旅行前後の頭痛に襲われ始めたに違いない。

ぼくは時計に向かって手を伸ばす。何も知らないシンを一人で過去に行かせるわけにはいかなかった。

ぼくはシンの手にある腕時計のバンド部分を掴んだ。途端ぼくにも頭痛が襲ってくる。何度も聞いた時計の音も。

カチ、カチ、カチ、カチ。ドク、ドク、ドク、ドク。

ぼくはシンの手から時計を取り戻そうとするが、シンは彼の手から時計を離そうとしない。ぼくらはその場所で立ったまま頭痛に耐えた。

だめだ。この場所で、このアパートの中で、過去に戻ると……。

そしてまた、世界の空気が一瞬止ったように無音になり、すぐに再開された。






ぼくの頭痛が収まらない。時間旅行の回数を重ねる度、その頭痛はひどく、そして回復までの時間は長くなっているようだった。

ぼくは何とか辺りを見渡す。ぼくの見慣れたアパートの見慣れた玄関。

だけど、それはどこか真新しくて……。

「なんだ?今の……」
シンが彼の頭から手を離した。彼の頭痛は収まったようだ。ぼくは頭痛に耐えながら、ゆるくなったシンの手から腕時計を取り戻し、それをすばやく自分の腕につけた。
「シン。静かに。外に出よう」
ぼくはシンの脇を通り、ドアのノブに手をかけようとした、でも傘立てにつまづきそれを倒して大きな音を出してしまった。

まずい!

「なにやってんだ。お前。……こんなところに傘立てなんてあったか?」
ない。ぼくの部屋には。
だけど、ここは十数年前の過去だ。その過去にこの部屋に住んでいる人がいたら。ここに傘立てがあるということは……。

「おじさんたち誰?」

ぼくたちは声を掛けられて振り返った。ぼくのリビングのはずのドアが半分開けられて、そこから一人の小さな男の子がでてきてぼくたちをみていた。

「どうして子供が……」

シンがつぶやく。

「誰だ!そこで何をしている。金ならない。出て行け!」

男の子の後ろから男性が出てきた。その男性は男の子を彼の背に隠し、持っていたライフルを構えてぼくたちに照準を当てた。
「シン早く外へ!」
ぼくは玄関ドアを開けようとしたが、そのドアが誰かによって外からガチャリと開けられる。
「ただいま。遅くなっちゃった……わ」
と同時に外から来たその女性が金切り声を上げた。

ぼくは女性の横をすり抜けようとしたが、ぼくが女性を襲うと思ったのだろうか、後ろの男性が雄叫びを上げて走って来て、ぼくの首の裏をライフルで殴った。

その衝撃でぼくの視界は暗くなる。
「英二!っつ」
倒れるぼくの右腕を腕時計の上からシンがとっさに掴んでくれた。だが、シンも後ろから殴られて、その場に倒れこんだのをぼくは目の端で捉えていた……。







「英二。大丈夫か……。ここは?」

シンが心配そうにぼくに声をかける。ここ……はあの夢の中の店だった。相変わらず時計だらけの店の中にぼくらは立っていた。
「あ〜。ダメよダメダメ。英二くん。他の人連れて来ちゃルール違反よー」
ショーターの声がする。

ぼくはまた夢の中にいるのだろう。どうして……。そうか、腕時計をしたまま気を失ったからか。
たしか、腕時計を身につけて眠ったら彼に会えるのだった。
しかし、まずいな。今ぼくたちはどうなっているんだろう。あの玄関先で気を失ったまま、警察に通報でもされてるんだろうか。

早く目覚めなければ。

目の前ではショーターがブツブツと何か言っていた。
「うーん。でもルール違反って言っても、こいつにその事伝えてなかったな。よし、今言った。今度からは気をつけろよ」
ショーター、ではないのだったか。時間管理人だったか時間の妖精だったか……。
ぼくが彼の姿をショーターとして見てしまうのは、ぼくが勝手にそう見ているだけらしい。
自分にとってわかりやすい姿で彼のことを見てしまうんだそうだ。よくわからないけど。

……ということはシンにはショーターではなく、他の人に見えるんだろうか?

そう考えていると、シンが目を見開いて驚いたように呟いた。

「ショーター?」

やっぱり……。

「だから俺はショーターとやらじゃねぇつってんだろ。お前らよっぽどそいつの事を頼りにしてんだな」
時間の妖精だか時間管理人だかは、なんだか嫌そうに顔をしかめた。だがその後、気を取り直したのか、胸をはって得意気にシンに向かって自己紹介した。

「俺のことは、時の番人と呼んでくれ」

もうほんとショーターでいい。

「英二。こいつ何言ってんだ?」

わかる。ぼくも最初そう思った。
だけど、シンの問いに答えるには時間がなかった。
「みんな夢なんだよ、気にしないで」とシンに言って、ぼくはショーターもどきに話しかける。

「あー。時の番人さん。ぼくたち早く目覚めたいんだけど」
「んー?でも君、その人連れて来ちゃったし、はじめましての人にはその時計の事を説明しないといけないってのが俺様の仕事なんだよね」
シンが“時計”の言葉に反応する。
「時計?」
「そうそう。その腕時計の使い方。お前、英二君からちゃんと聞いたか?」
シンが目を少し眇めてぼくを見た。
「……聞いてない」
「そっかー。ならば教えてやろう。その腕時計の真の姿を!」
ショーターがまた芝居がかった口調で、嬉しそうにシンに向かって腕時計の使い方を説明しはじめた。
シンはそれに、「へぇ」や「それで?」等、相槌を打ちながら、時に的確な質問をして理解しているようだ。時折ぼくの方をチラリと見る。
説明が進むにつれ、シンの眉が曇っていった。
「つまり、その時計は行きたい時間へ連れて行ってくれるって事だな」
シンがそう結論づけた。
「そうだ!お前は飲み込みが早いな。嫌いじゃねぇぜ、そんなやつ。そっちのヤツなんて最初は全く聞いてなくてよ」
聞いてないのがバレてたのか。
ぼくは冷や汗をかいた。ぼくが冷や汗をかいている理由は、聞いていないのがバレたのではなく……。

真正面からシンがぼくを睨んでいた。

その瞳の奥には隠しきれない憤りが見える。だけどシンは感情を抑え、静かにぼくに問うた。
「こいつの言ってることが本当だとして、お前、何回過去に戻った?」
ああ。おそらくシンは全てを悟ったろう。ぼくが“彼”を助けに過去へ戻っていた事を。
「君には関係ないだろ」
そんな事を言いたいわけじゃない。だけど、シンにバレたからには“彼”を助けに行く事を止められる気がした。
「関係ないだと?」
シンの背から怒気が発せられたのが伝わる。
「最近のお前は上の空で、俺との約束を破ってまで過去に戻っていたんだろう」
「それは申し訳なかったよ。でも」
「お前、“アイツ”を助けようと、昔のストリートキッズの抗争に首を突っ込んでんだろ」
「シン。ぼくは」
「あの頃のガキが一番ヤバイ。皆、お前より銃の腕がいいのは知ってるだろ?」
「シン。でも、」
「お前、うっかり殺られちまったらどうするつもりだ」
「ぼくは」
少し強めの声を出して、ぼくはシンの言葉を遮った。
「“彼”を助けられるならそれでもいい」
「英二……」
ぼくはシンを真正面から見返した。
そこにショーターの声がかけられた。

「ああ。君たち。痴話喧嘩なら目が覚めた後でやってくんねーかな?」

時の番人の事をすっかり忘れていた。ぼく達は気まずさで目をそらす。

「まだそっちのデカイのに説明全部終わってねーんだよ。続けていいか?」

「続けてくれ……」

シンが時の番人に答えた。時の番人は楽しそうに説明を再開する。
「さて、最後に俺から言わねばならないことがある。聞いてくれ。時をかける君たちに捧ぐ4カ条」
生き生きと話し始める時の番人を見て、彼は自分の仕事が本当に好きなんだなぁ、と、ぼくは現実逃避にもそう考えた。

「一、一度戻った“時”の前後1ヶ月には戻ることができません。
なぜなら、同じ時空に何度も歪みを作るわけにはいけないからです。

二、過去の自分に会ってはいけません。
なぜなら、あなたはいままで自分に会ったことがないからです。

三、過去の親しい人に自分の事を気づかれてはいけません。
前項と同じ理由です。

四、未来の日付に時計を設定してはいけません。
なぜなら、未来はあなたがこれから作っていくものだからです」

ショーターにそっくりな時の番人は説明が終わって満足気にぼくたちを見た。

「わかったか?」
「ああ」
シンがうなづく。
「そうか。なら目覚めろ」
そう言ってショーターもどきが指を鳴らした。

ぼくの視界が白けてくる。以前もこんな感じで目覚めたんだった。
「ちょ……ちょっと待って。シン!」
「なんだ?」
「ぼくたち、目が覚めたらあの玄関で倒れたままかもしれないし、警察に通報されているかもしれない」
すでに警察に捕まっていたらどうしよう。
シンは霞んでいく視界に違和感を感じるのか彼の目に手を当てていた。
「あそこは、ぼくのアパートの玄関だけど、過去の誰かが借りているアパートなんだ。ぼくたちは多分強盗だと間違われて殴られて気絶したんだ」
どんどん白けていく視界のなかでシンが、わかった、と声に出したような気がした。


その後すぐに、ぼくの世界が真っ白になって―― ぼくは目覚めた。


続く

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わー。皆さま!8282ちやほや突破しました!ヒューヒュー。

いやー。ぴょこぴょこ英二君もよろこんでおります。
8282ちやほやをしてくださった方のお名前をポスターに載せて英二からひとこと言ってもらおうと事前に告知していたのですが、

実際に8282ちやほやしてくださったluna様が
「顔が見えない中でもみんなで盛り上げているんだなと嬉しくなりました。なので、英二からは私の名前より皆さんに向けてのほうがいいかなと思ったりしています。」
なんて素敵な事をおっしゃるものですから、ポスターは皆さまに向けて!英二からお礼を言っていただきました^^。

でもそんな素敵なluna様に英二からどうしてもヒトコトがあります。バナーですけど。どうぞ。
20158282banner.jpg


以上ぴょこぴょこ英二からの言葉でしたー。^^。



さて。またまた皆さまにうれしいお知らせがあります。
なんと、本日もご賛同ブログ様が1件登場しました!

BF again(管理人:こまい様)

です。
わー。パチパチ。
ご参加本当にありがとうございます!
もう日数があまりないので、しっかりしたものが 書けるかどうかは自信がありません。とのことですが、バナーを貼るだけでご参加用件を満たしているので、大丈夫ですよー。
お祭りですので、あまりお気になさらず楽しんでくださいv

さあ。それではみなさま。こまい様のブログをちやほやしにいって差し上げてください。
英二の日同盟の趣旨とはそんなカンジです~。
みんなでウィンウィンになれる。そんな同盟がイイジャナイv




さて、うちのブログのコンテンツとしては、2次小説「No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-」7までアップしております!
昨日1枚アップしたんですが、続きをまだご覧になられてない方はぜひぜひ読んでやってくださいね。

そして、わたくし、今から1日ちょっとお休みをいただきたいと思います。
夏バテが・・・。つーか。睡眠不足とか・・・。というか、自分の小説をちょっとあれしたりこれしたりしたいもんで。
明日はブログの更新や、もしあればですけどコメントのご返信等はお休みさせていただきたいと思います。^^。
明日は早くねるぞー。おー。
木曜日くらいに小説アップできればなぁ。でも金曜日になるかも・・・。英二の日までにはエピローグ出したい・・・。早く楽になりたい。

それでは皆さま。8月2日までぴょこぴょこ英二を可愛がってあげてくださいねv


※当ブログの英二の日コンテンツはずーっと下の方に掲載しております。



i-eijiallmini.gifご賛同くださる全ての方への企画参加方法i-ashallmini.gif

英二ちやほや方法はいたってシンプル。
只今から8月2日までに、下のバナーのいずれか(どれでもリンク先は同じです。)をクリック。とりあえずクリック。そしてクリック。

クリック=ちやほや。です。

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英二を可愛がってください。クリック先でどれだけ英二がちやほやされたか見れます。
何回でもちやほやしてあげてくださいね。連打大歓迎v
クリックは今この瞬間から。英二が貴女の愛を待ってます!



i-eijiallmini.gifご賛同してくださるバナナ管理人様への企画参加方法。i-ashallmini.gif
下記によりご参加ください。

① 下のバナーを8月2日までどこかに貼ってくださる。
(リンク先 http://cobabanana.blog.fc2.com/blog-entry-318.html)

コメントなしでコッソリとご参加できます。
でもバナー貼ったよーとか、コンテンツ上げたよーとか、コメントいただけるともちろんこちらにて宣伝させていただきますv


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i-eijiallmini.gif以下『英二の日。』ご賛同表明サイト様i-ashallmini.gif
(*順番は参加表明コメント等の入力時間順です。)

BANANA-yellow-FISH-blues(管理人:aia様)

幻想奇譚(管理人:しらさぎ様)

BF again(管理人:こまい様)

Banana Recipes(当ブログです)




i-eijiallmini.gif以下、当ブログの「英二の日。」記念小説&記念絵i-ashallmini.gif

2015「英二の日。」記念小説
『No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-』
シリアスです。R18表現あり。お気をつけください。

2015「英二の日。」記念絵
アッシュがなにやら英二をちやほやしようとしているようです。
BL表現あり。お気をつけください。
絵はコチラから。

コンテンツ上げたいなぁ。でも英二をちやほやするのって難しいなぁと、悩まれる管理人様もいらっしゃるみたいですが、こういうのはただの祭りなので、「英二の日。」にかこつけて、アップすればなんでもいいと思います!英二が出演してさえすればオールオッケーでございます。

そんなぬるさ加減を有言実行。今年のうちの小説は英二がちやほやされてませんよ。むしろかわいそうなくらい一人でがんばってます。





それでは、みなさま8月2日まで「英二の日。」をよろしくお願いいたします~。


※英二の日は同盟にしております。別に企画に参加しなくてもいいけど、ご加入したいなぁという方はコチラ

でも、せっかくだし、今年最後だし、どこかにコンテンツ上げた方は(HPでもブログでもPixiv等のSNSでも)よろしければご紹介させていただきますよー。
コメントありがとうございます!
7/27以前の拍手コメント返礼は、この記事の一番下の「次ページ>>」ボタンからお戻りください。m(*_ _)m
拍手以外のコメント欄にいただいたコメントはコメント欄に返礼させていただいております。ご了承ください。



>こまい様

「お久しぶりです 小葉さん。」
お久しぶりです。こまいさんv

「もう 絵といい 小説といいキュンキュンして拝見&拝読させていただきました。」
ありがとうございます!キュンキュンしていただけるのが一番うれしいですvv

「「英二の日」ですが、よろしければ参加させてください! 」
ぜひ参加してください!

「もう日数があまりないので、しっかりしたものが 書けるかどうかは自信がありませんが」
英二の日バナーを貼るだけで、ご参加したことになりますので、コンテンツはアップしなくても、全然大丈夫ですよ~。

リンクの件は大丈夫です。ぜひよろしくお願いします^^
こまいさんがご復活なされたことは気付いてたんですよ。
でも私、最近までコメント欄全締めして、ひきこもっていたので・・・。
今回声をかけていただいてうれしいですv

英二の日にご参加ありがとうございます。
8月2日まで楽しんでくださいね。^^








>luna様

「小葉さまお疲れ様です。」
お疲れ様です~。

「8282踏みました!」
lunaさん。すごーいすごーい。ありがとうございます!!。

「同じ時間帯にちやほやしている方が何人かいらっしゃった」
デッドヒートだったんですか?
えー。おもしろそう。参加したかったなぁ。でも寝ちゃった。テヘv

「みんなで盛り上げているんだなと嬉しくなりました。」
素晴らしい。そうコンメントいただけると、こちらも嬉しくなります(o^^o)

「なので、英二からは私の名前より皆さんに向けてのほうがいいかな」
lunaさん・・・なんていい方なんだ(/ _ ; )
ありがとうございます。それではポスターは皆様に向けて英二からコメントしてもらいますねー。
でもlunaさんには例年の小さいバナーで英二から一言言ってもらいましょう。^ ^

素敵なコメントに今日一日ほっこりしておりました。
それでは8月2日まで英二の日企画をお楽しみください。(o^^o)

P.S.英二にlunaさんからのご伝言を伝えておきましよー。
雨が降っていた。

強くはない雨だけど、ぼくは時計が濡れてしまわないようにパーカーのポケットに手をつっこんでいる。ぼくは、とあるビルをいつもの黒いサングラス越しにじっと見ている。ここに立って何分になるだろうか。傘を持っていないぼくの少し長めの黒髪は雨に濡れて、頬に張り付いていた。ここであのビルの様子を窺ってゆうに一時間は経っているだろう。過去に戻った時に伴なう頭痛はすっかり収まっていた。

そう。ぼくは待っていた。”ぼく”があのビルから出てくるところを。

ここはベアーズ親父のホテルの斜め向かいのビルの陰だった。もちろん昔の。

ぼくは二度目の時間旅行から、自分の意思で過去の“彼”を助けに行った。何度も何度も”彼”を助けに。
だけど、どうにも上手くいかなかった。
何回か“彼”を助けるチャンスがあった。だけどぼくはやっぱり力がなくて。
失敗に継ぐ失敗にぼくの心はまいっていた。

“彼”に会いたい。

もちろん過去に戻った先では“彼”の姿を見るのだけど、近寄ることはできなかった。
『過去の親しい人に自分の事を気づかれるな』
ショーターによく似た時間管理人の言葉が頭を過る。
気付かれたらどうなるんだろう、記憶を消すとか言っていたけれど……。
よくわからないリスクを犯す気にはなれなかった。そんな事をホテルの斜め向かいのビルの陰から考えていた。

―― 出て来た。

ベアーズ親父のホテルの扉から”ぼく”とボーンズとコングが出てきた。
この古い安ホテルには、当然レストランなんて洒落たものはなく、自分たちですべての食料を調達しなければならなかった。何もできないぼくは食料調達係を買って出たのだけれど、”彼”はぼくが一人で出ることにいい顔をしなかった。でもこの時間帯、つまり正午のちょっと前の時間に”彼”の目を盗んで外に出ることができたんだ。

なぜなら――

ぼくは昔のぼくらを見送った後、道路を渡り、ホテルの玄関階段を数段上がった。素知らぬ感じでホテルに入り、小さなフロントで愛想の悪いホテルマンに鍵をくれと声をかけた。つまりは彼がベアーズさんだ。本名かどうかは知らない。みんなベアーズ親父としか呼ばない。顎髭がとても立派な―― というかまるで手入れのされていないひげもじゃな―― ミスター・ベアーズは新聞を広げながらチラリとぼくを見て、だまってぼくに鍵を渡した。

ぼくは何度も過去に戻るうちに、リンクスの仲間だということになっていた。この頃のリンクスは混乱していたのだ。”彼”が刑務所にいる間に大勢が離反したものの、リンクスのボス復活の話を聞いて、リンクスの仲間に新しくなりたがる少年も大勢いた。戻ってきた”彼”の命令で、入りたい少年はほぼ全てリンクスに加入できたそうだ。オーサーと戦うために、とにかく数が欲しかったらしい。あの頃が一番わけがわからなかった、と後からアレックスが話していたのをぼくは覚えていた。そしてこの時期、リンクスの構成員はそこそこいたので、ぼくは過去に戻った時にはそこへ紛れ込み、アレックス達とは顔を合わさないようにしていた。

ぼくは勝手知ったる風情で階段を登り、廊下を歩く。突き当たりの“彼”が宿泊している部屋の玄関ドアに鍵を差し込み開けた。安いながらも中期滞在型のこのホテルの客室は、廊下から入ってすぐの小さなリビングみたいな部屋が一つと、その奥にベッドの置かれた部屋と合計二つの部屋があった。
この時間、リンクスの皆は彼らのボスの命令をこなすためにほとんど外にでているはずだ。昔のぼくがボーンズ達と買い出しに行っている今、この部屋で残っているのは“彼”以外誰もいなかった。
不用心だと思うが、“彼”は自分の身を守るためだけに、周りに人を置くことを嫌ったのだ。

この時間帯では“彼”はまだ眠っているはずだ。
ぼくはリビングを通り抜け、“彼”が眠っているはずの部屋のドアを静かに開けた。

……アッシュ。

やはり”彼”は眠っていた。
ぼくはそのベッドへ足音を立てないようゆっくりと歩いていく。
ぼくはベッドサイドにただ立って静かに彼を見下ろした。

会いたかった。

過去に戻るたびにぼくはもちろんアッシュを見るのだけれど、遠くから見るだけだった。
だけどぼくはきみの後ろ姿を見るたびに胸が締め付けられて。
もう一度、きみと話がしたくて。
話すことは到底無理だけど、寝ている”彼”のそばなら気付かれずに近寄れるだろう。そう思って、ぼくはこの時を選んで戻ってきたんだ。

ぼくは彼のその姿を見るためにサングラスを外した。

彼の閉じられた瞼にかかる見事なプラチナブロンドの前髪。ぼくはアッシュの嫌味なくらい整いすぎているその懐かしい顔をちゃんと見たくてその前髪をそっと払おうと、手を伸ばした。
その手がかすかに震える。
彼の前髪に指先が届くか届かないかと思った瞬間。

「英二?」

アッシュがぼくの名を呼んでぼくの手首を掴んだ。
ぼくはびくりとする。

まずい。

『親しい人に自分の事を気づかれるな』

時間管理人の言葉が頭をよぎる。
『記憶を消すかその存在自体を消すか』
背中に冷たい汗が流れた。ぼくの心臓がドクドクと鳴る。アッシュに聞こえてしまいやしないだろうか。
だけどアッシュはそんなぼくの動揺とはお構いなしに、またぼくに声をかけた。

「今、何時だ?」

昔のぼくと間違ってる……?

答えないぼくに、アッシュはぼくの手首を掴んだまま枕に顔を埋めた。そして、すごく眠そうな声でもう一度、えいじ、とぼくを呼んだ。

アッシュは起きる気がないようだ。
そう言えばきみは起き抜けが信じられないくらい弱かったんだっけ。

「 11時前くらいかな。ぼくの時計、壊れてるみたいだ」
ぼくの声は緊張で少し掠れてしまった。
「なんだよ……つかえねーな」
ときみがやっぱり枕に向かって声を出す。
「うんごめんよ」

使えなくてごめん。何度もきみを助けようとするんだけど、助けられなくてごめん。

「……ばか。そんなことであやまんな」
つかえねーのは時計だろ。30分たったらまた起こせ。と寝ぼけた声で呟いて、彼はまた眠ってしまった。

―― またきっときみを起こしてあげるさ。

ぼくは彼に聞こえないようそう呟き、そっと彼の手をぼくの手首から離した。

手を離しながらぼくは決心する。
決めたんだ。
もう迷わない。

アッシュ。ぼくはきみのためならなんでもする。そうそれがたとえ――

「お前、何してんだ?」

「!」

背後から声を掛けられた僕の心臓は、今度こそ喉から飛び出そうになった。
だけど、ぼくはサングラスをかけながら極力ゆっくりと振り向く。視線の先では腕を組んだアレックスが開かれた扉にもたれかかってた。リンクスのナンバー2の怪訝そうな顔。何気ない表情を装って、ぼくはアレックスの質問に嘘で答える。

「ボスが寝る前にこの時間に起こせって言ったから来たんだけど、あと30分寝るってさ」
「……寝ぼけたアッシュに殴られなかったか?」
「腕を掴まれたけど」
「お前あぶねー野郎だな。ボスを起こすのは、アッシュが連れてきたあのエイジとかいうガキにまかせとけ」
なんでか知らねーけどあいつだけが寝ぼけたアッシュに殴られねぇからな。
そう言ってアレックスは顎をしゃくった。ぼくにこの部屋から出て行けということだろう。
ぼくは扉にもたれるアレックスの隣を通り抜けようとした。

「待てよ」

通り過ぎたところでアレックスに呼び止められる。
「お前、あんま見ねえツラだな」
アレックスを背にぼくは固まってしまった。
「おい、サングラスとってこっちを向いてみ――

「お前らうるせーぞ!」

その時、アッシュが大声を出した。
ぼくらは飛び上がってこの部屋を出る。
「相変わらずおっかねー」
アレックスが扉を閉めて、そこで一息ついた。
そしてその場所でぼくを見る。
「お前、あの時の?……今まで何を……」
まずい、なんて答えよう。そう思っていると、玄関のドアが勢いよく開けられた。リンクスのメンバー数人だった。

「アレックス!オーサーの隠れ家がわかったぜ!」
「ホントか?!」
アレックスが彼らの方へと向かう。そして彼らはオーサーの居所を話し始めた。
その隙にぼくは彼らの横を通り過ぎ、部屋を出ようとする。扉のノブに手をかけた時、アレックスがチラリとこちらを見た。ぼくはそのアレックスに向けてホテルのドアの鍵を投げる。アレックスを大きく右にそれて弧を描いたそれを、リンクスのナンバー2は手を伸ばしてなんなくキャッチした。
階段を下りてぼくはそのままホテルを出る。




ホテルの外の雨はまだ降り続いたままだった。














ぼくはひどい頭痛のする頭をなんとか上げる。

ぼくは元の時間に戻ってきた。昔のベアーズ親父のホテルがあった場所からほど近いビルの陰だ。

この時間旅行を重ねるたびに頭痛が重くなり、回復が遅くなっている。
ぼくはふらつく足を引きずるように進めてなんとか自分のアパートに戻った。

まだ頭の痛みがとれない。
ぼくはベッドに倒れるように仰向けになった。
このまま眠ってしまいそうだ。
その前に時計を合わせようと目の前に右腕を持ってきた。頭痛のせいなのか時計を腕にはめたままではネジが上手く回らなかった。
腕時計をはずして、次の時間旅行の月日に時計の針を合わせる。

今度こそ失敗できない。

次の時間旅行まで数時間ある。
疲れた……。
両腕をパタリとベッドに倒した。

時間旅行先では何時間過ごそうとどこへ行こうとも、もどってくる時間と場所は”跳ぶ”前とまったく同じ時間と場所だった。どうやらぼくはこの”現在”の時間から1秒たりとも消えてはいないのだ。
でも”跳んだ”先では数時間過ごしているので一日を24時間以上で過ごしていることになる。

前に眠ったのは何時間前だったっけ……。

今日ぼくは二度の時間旅行をした。ぼくは近頃かなりなムチャをしていて、一日に何度も過去に戻っていた。”彼”を早く助けたくて、なんとかやれることはないかと思って、いてもたってもいられないのだ。

今日の二回目の時間旅行の時の”彼”の寝顔を思いだす。
眠っていても彫刻のように整った顔に、きれいな、きれいなプラチナブロンド。

瞳の色が見えなかったな……。

それをぼくが見るという事は”彼”がぼくを認識するということだ。

『過去の親しい人に自分の事を気づかれるな』

ぼくはまた正面から”彼”の瞳の色をもう一度みるんだ。あの瞳で”彼”にぼくを見てもらうんだ。

”彼”はぼくを見てなんと言うだろか。かつての皮肉な口調でぼくに話しかけるだろうか。
「そういえばさっきは、”つかえない”っていわれたっけ」
ぼくは一人でクスリと笑った。実に”彼”らしい。”彼”は本当に皮肉屋で…。

ぼくの目頭が少し熱くなる。


疲労による泥のような重さでぼくの体と意識はベッドに沈んでいった。右手から腕時計がこぼれる。



つぎは……かならず、かならずきみをたすけるから……。





――でも、次に目覚めたときから自分が思ってもみない方向へと事態が転がり始めたんだ。




続く

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2次小説「No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-」7までアップしました!

2015/07/28追記:
皆さま、8282ちやほやありがとうございました!
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1ページだけ小説更新しましたー。わーパチパチ。よろしければ読んでやってくださいねー。
これから小説はどんどんせつなさ満開になってまいります(自分でイウナー)
そういうのがお好きな方はぜひぜひチェキラ。
こちらの英二君もかなりがんばってますんで、心の中で応援してやってください^^。

それでは、引き続き「英二の日」をお楽しみくださいv
8282(英二英二)のキリ番をちやほやしてくださった方には、英二の日ポスターで英二くんがお礼を言いたいそうなので、お名前など自己申告をお願いします~~。
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『No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-』
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アッシュがなにやら英二をちやほやしようとしているようです。
BL表現あり。お気をつけください。
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コンテンツ上げたいなぁ。でも英二をちやほやするのって難しいなぁと、悩まれる管理人様もいらっしゃるみたいですが、こういうのはただの祭りなので、「英二の日。」にかこつけて、アップすればなんでもいいと思います!英二が出演してさえすればオールオッケーでございます。

そんなぬるさ加減を有言実行。今年のうちの小説は英二がちやほやされてませんよ。むしろかわいそうなくらい一人でがんばってます。





それでは、みなさま8月2日まで「英二の日。」をよろしくお願いいたします~。


※英二の日は同盟にしております。別に企画に参加しなくてもいいけど、ご加入したいなぁという方はコチラ

でも、せっかくだし、今年最後だし、どこかにコンテンツ上げた方は(HPでもブログでもPixiv等のSNSでも)よろしければご紹介させていただきますよー。

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2次小説「No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-」7までアップしました!

2015/07/28追記:
皆さま、8282ちやほやありがとうございました!
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2次小説「No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-」4~6までアップしました!

わー。皆さまこんばんわ!
なんと。今回はご参加表明ブログ様のお知らせです!

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うう。今年ご参加してくださる管理人様がいらっしゃるなんて。感涙ものでございます。
aia様には栄えある第一回目もご参加いただいていたんですよー。
うちがまだジャンジャンバリバリ活動していた頃、いろいろと構っていただいていて、また今年ひさしぶりに遊んでいただけるなんて光栄ですvv。

みなさまaiaさんをちやほやして差し上げてください!
コンテンツは8月2日にアップしてくださる予定だそうですvv。
ありがとうございます!あんまりご無理はしないでくださいね。バナーを貼るだけでも立派にご参加表明ですので!


そして、
わたくし、やっと英二の日記念小説の続きを更新しました!
わー。パチパチ。
4ページから6ページ目まで。
よろしかったら読んでやってくださいv

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クラクションが勢い良く鳴らされ、水たまりの上を通った車のタイヤがぼくに水をかけた。

「うわっぷ!」

顔面から体にかけて―― つまりは全身―― 雨水の水しぶきで濡れてしまった。
今日は晴れていたが、舗装が充分でない排水の悪い道路にはおそらく昨日に降ったであろう雨の水たまりがところどころに残っていた。
ぼくは腕で顔を拭く。その手をそのままこめかみに持っていった。頭が痛い。どうもこの時間旅行には頭痛が伴なうようだった。
ひどい頭痛を感じたぼくはそれが収まるまでしばらくじっとしていたところだ。それは少しの間だったけど、泥水をかけられる羽目になってしまった。

ここはダウンタンだ。狭い道路の両側には、古くて茶色い壁。ボロボロになった背の低いビルが立ち並んでいる。
その立て付けの悪そうな扉の前で、話し込みながらこちらを見ている2人組、昼間から正体をなくして壁に持たれて座り込んでる人。


懐かしい……。


ぼくが悩んだ結果戻ってきたのは―― ”彼”と初めて会った日だった。


あれからぼくは、ない知恵を絞って考えた。直接”彼”が亡くなった日にはもう戻れないらしい。とすると、どうすればいいのかと。

どんどん日を遡って考えていく。

ダメだ。どこでどうすれば“彼”が助かるかがわからない。今も昔もぼくは非力で。”彼”には助けられてばかりで、ぼくは”彼”を満足に助けられたことがなかった。ぼくらが出会った時に、一度ヒキガエルのような男―― マービンから逃げる時に壁を飛び越えて警察に電話したぐらいか。

まてよ……とぼくはそこで気付いた。

あのマービンが殺されなかったらどうなってたんだろう。“彼”は濡れ衣を着せられて警察に行かずにすんだだろう。刑務所にも。
“彼”が刑務所に行っている間に殺されてしまったグリフィンもあんな結果にならなくてすんだのではないのだろうか。するとロサンゼルスに行かなかったかもしれないので、ショーターもあんな目にあわなかったかもしれない。

”彼”に被せられたマービン殺しの濡れ衣を阻止する。

ぼくは良い案に思えた。

直接“彼”の生死に関わることではないけど、マービンが死なないということは何か“彼”の運命を変えることができるような気がする。

そうぼくは”彼”の運命を変えるんだ!

そしてぼくは慌てて準備をした。午後から仕事を休んで。
あの頃着ていたような白いTシャツを探して手に入れ、お店でジーンズの裾を短めに切ってもらった。そのジーンズの膝をわざと破ってそれらを身につける。

髪の毛は……。今、ぼくは長めの髪を後ろで縛っていた。
これはこれでいいか、昔のぼくはいわゆるスポーツ刈りだったし。今の少し長めの髪だと同一人物だと思われる可能性も低くなるだろう。

昔のぼくと……か。

ぼくはよくいろんな人から、お前は昔と一緒で全然歳をとらないな、と言われる事がある。全然なわけがない。みんなは誇張して言ってるんだろうとは思うんだけれど。
ぼくはいつか買ったが、あまり使っていないサングラスをクローゼットの奥から探し出した。それを掛けて見る。鏡の前に立つ。

どうだろう?

さすがの童顔のぼくでも十代のストリートキッズに紛れるのは難しいかもしれない。

ぼくはため息をついた。
そして寝室に戻りベッドのサイドボードの棚を開けた。そこには二丁の拳銃が入っている。

以前シンから貰ったものと……“彼”の拳銃だ。

ぼくは手を伸ばしてから逡巡する。
どちらの銃を持って行こうか。やはり……。

その時ぼくの携帯電話が鳴った。その音でぼくはビクリとする。シンからだ。
ぼくは電話に出た。

「どうしたんだい?」
『お前、大丈夫なのか?』
何が、と声に出そうとして気づいた。そうか、ぼくは昨日気分が悪いと言ってシンに早く帰ってもらったんだっけ。
「大丈夫だよ。寝たら治ったよ」
『ならいいが……明日か明後日にでも体調がよければ部屋を見に行かないか?』
シンは本気で10日以内に引っ越すつもりのようだ。ぼくは正直そんなに早くなくてもいいのだが、最近シンには迷惑を掛けているから、好きにさせてあげようと思った。
「いいよ。とりあえず明日電話するね」
『ああ。待ってる』
そして電話を切った。

ぼくは、開けっ放しにしていたサイドボードの棚の中に視線を戻す。

オートマチック拳銃を手に取った。

弾の数を確認して、それをジーンズの腰に挿した。それがわからないように上からパーカーを羽織る。

そしてぼくは時計のネジを回した。今回は1985年。ぼくが始めてアメリカに来た年だ。”彼”と合った日付もばっちり覚えている。アメリカに初めて来た時、伊部さんと一緒に一日目は観光をして、二日目は刑務所に入っていたマックスに会いに行って、そして三日目に”彼”と合ったのだ。
ぼくは時計の針を合わせ終わった。時間は30分後にセットした。5時50分。ぼくと伊部さんが、スキップと待ち合わせした時間の少し前だ。

ぼくは急いで家を出て目的地まで足を運ぶ。ダウンタウンの外れに着いた。もうすぐ時計の針を合わせた時刻になるだろう。ぼくは適当な場所でじっと待った。

来る……。

カチ、カチ、カチ、カチ。

回っていないはずの時計の針の音が聞こえてきた。そしてすぐに頭に痛みを感じてくる。

ドク、ドク、ドク、ドク。

時計の音と頭の血管の脈打つ音が混ざり合い、ひどい頭痛がやって来た。
だけど”彼”を助けられると思うとそんな痛みなど気にならなかった。

今度は必ず・・・。

突然強い風が吹いたようなゴウという音がして、その後世界が一瞬だけ無音になる。次の瞬間には、街の音が再開された。



―― ぼくはもう一度過去への旅を決行したのだった。







車に泥をはねられた後、ぼくの頭痛が収まってきた時、背後から笑い声がした。

「お前、泥だらけだぞ、トロイやつだな。何やってんだよ」

ゆっくりと振り向くと一人の少年がいた。頭痛が完全に治まったぼくは、少年に答えず歩き始めようとする。
「なぁなぁお前どこ行くの?」
少年が馴れ馴れしくぼくの肩に腕を回してくる。
なんだ、こいつ……。
ぼくの腰と彼の腰が当たった。
「あれ?銃なんか持ってんだ?」

少年が少し大きな声を出し、銃に触ろうとした。

ぼくは、触るな、と言ってやろうとしたけど、そう言う前に彼がぼくをさらに引き寄せ、ぼくの耳元で囁いた。

「お前、あの二人に目をつけられたみたいだぜ?」

少年の視線の先をぼくはチラリと見る。先程、ぼくが頭痛が治まるの待っていた場所の辺りにいた二人組がこちらを見ていた。手に持っていた何か光るものを背後にさっと隠したようにみえた。ナイフ……だろうか。彼らはぼくが銃を持っているというぼくらの会話を聞いていたのだろう。目が合うと、チッと舌打ちしてぼくらの進行方向とは逆方向に行ってしまった。

少年がぼくの肩から腕をパッと離した。

「お前、あぶないやつだな。こんなところでぼーっと突っ立てんなよ」

そうだった。ダウンタウンは危ないところだった。
ぼくはかつて”彼”が、ここは日本じゃないと何度もぼくに忠告していた言葉を思い出す。
この頃より数年後から次第にダウンタウンの街並みも綺麗に、そして安全になって観光客が訪れる場所にまでなったとはいえ、ぼくがNYに来た頃はまだまだ荒んだ場所だった。

「ごめん。助かった。ありがとう」
「いいってことさ。ところで本当にどこに行くんだ?」
別に答える義理はないんだけれども、ぼくは助けてもらった手前ウソをつくのもなんだと思って正直に答えた。
「ピンク・ピッグ」
少年はちょっとびっくりしたようにぼくを見た。
「お前リンクスなのか?」
ぼくも少し目を見開く。この少年はピンク・ピッグを知ってるんだ。ピンク・ピッグとはリンクスの溜まり場のバーだ。ぼくと”彼”が初めて出会った場所でもある。
「違うけど……」
「じゃぁ。お前もリンクスに入りたいのか?ちょうどいいや俺も今から行くところさ。一緒にいこうぜ!」

リンクスに入る?
気のよさそうなその少年はなんというか、あまりストリートキッズには見えなかった。
よくある白いTシャツに膝の破れたジーンズ、そしてスニーカー。格好はぼくの知っているストリートキッズそのものだ。
黒い髪に黒い瞳。そして少し濃い色の肌。だがその顔の堀の深さから、彼が白人と黒人の混血だということがわかる。

どこがストリートキッズに見えないというわけではないんだけれども……。

その少年は先に歩き出した。
ぼくにそう声を掛けてくれたのはありがたかったが、ぼくはストリートキッズのリンクスに入れるくらい子供に見えるんだろうか……。なんだか複雑だ。
ぼくらは並んで歩く。少年は道すがらいろんな事を教えてくれた。
どのストリートキッズのグループに入ろうか悩んだこと。リンクスは人数こそ少なかったが、いろんな人種が混ざってるグループはそこくらいなので、そこに入ろうと思ったということ。普通は黒人は黒人同士。メキシコなどの南米系は南米系同士。またはもとからのアメリカにいる白人ではその中で幾つもの派閥があるらしい。
俺みたいな混血はどこにも混ざりづらいんだ、と少年は言った。
だがリンクスのボスだけはそんなことは気にしない。いろんな人種が混ざってるグループはリンクスくらいなんだそうだ。

「どうしてなんだい?」
どうしてなんだろう。そういえばぼくは気にしたことがなかった。
「……お前、聞いたことねーの?」
その少年はぼくの耳に口を寄せて小声で囁いた。
「リンクスのボスはゲイなんだってよ」だから何にも気にしねぇんじゃねぇの?
そう言ってその少年は笑った。
ガキの頃から男相手にウリをやってたんだってよ、と。

だからなんだっていうんだ。ぼくは彼の言葉に顔をしかめてしまった。“彼”は好きでやってたわけじゃないのに。
ぼくは途端不機嫌になった。
少年はそんなぼくをみて、まいったな、とつぶやいて頭を掻いた。

「結構有名な話なんだぜ?リンクスに入るの嫌んなったか?」
「別に。きみは大丈夫なのかい?」
「全然さ。ウリをやってたっていっても昔の話みたいだし。それに俺見たことあるんだ」
何を見たのかと聞いてみた。
「リンクスのボスのガンテクニックだよ。すっげーんだぜ。すっげークールだ」
少年は興奮して話し始めた。
先日、ダウンタウンの外れの崩れたビル跡の広場で、リンクスの掟を破った二人の少年達が制裁のために壁際に立たされていた。そこに偶然通りかかったらしい。
リンクスのボスは少年達に向けて無表情に引き金を引いているところだった。
弾丸は順番に、壁際の少年の右肩をかすり、左肩をかすり、右頬の真横の壁を撃ち抜き、左頬の真横の壁を撃ち抜いた。決して標的の少年には致命傷の傷を与えない。それを、二人分正確にやってのけたらしい。
「15ヤードくらい離れた場所から、顔の真横に狙って撃てんだぜ?すげえだろ。そうだ。その広場すぐそこなんだ。ちょっと行ってみようぜ!」
「お……おい。ちょっと待って」
その少年はぼくの腕を引いて返事も待たずに角を曲がってぼくをその広場に連れて行く。ぼくは早くピンク・ピッグに行きたいのに。だけど、広場は本当にすぐだった。
そして、少年は広場の真ん中に立って壁を指し示す。

「ほら。ここからリンクスのボスは撃ったんだ。顔色も変えず、正確に」

正確に、か。ぼくは“彼”の銃が正確でないのを見た事がなかった。

その時、広場の向こうの角から3人の少年が現れた。あれはー

「アレックス!」

少年が声を出して走り寄って行くその向うには、ぼくには見慣れた3人がいた。アレックス、ボーンズ、そしてコング。
でもみんな若い……。当然か。最近ぼくはみんなと連絡を取っていなかった。どうしているだろうか。

「なんだお前。こんなところに来るなって言ったろ?」

アレックスが嫌そうな顔で少年を見る。
少年はアレックスの元へ駆け寄った、そしてアレックスにせがむ。

「なぁ。今日こそリンクスに入れてくれよ」
「ああ?ダメだっつってんだろ」
「なんでだよ。頼むよ」
「お前、食わせてくれる親も寝る家もあんだろーが。ガッコーへ行けよガッコーへ」
どうやら二人は面識があるらしい。その二人のやりとりを聞いていたコングがアレックスに声をかける。
「アレックス。そいつ何だよ」
「あー。前にオーサーの取り巻き連中にカツアゲされてたところを追い払ってやってからしつこくてよ」
行こうぜ、とアレックスが背中をこちらに向けかけたとき。

ボーンズがぼくの腰を見て目ざとく声をかけた。
「お前、銃を持ってんのか」
「持ってるけど」
なんでわかるんだろう。パーカーを上から着ているのに。
ぼくは短く答えた。過去のぼくたちはまだ会っていないと思うけど、ぼくは彼らと極力会話などをしないほうがいいと思った。
「お前もリンクスに入りてぇの?」
入りたい……ワケじゃないけど、リンクスの溜まり場のピンク・ピッグには行きたかった。仲間になったほうが動きやすいだろうか?だが、ぼくがぼくであるとバレる確率も上がるだろう。どう答えようかと逡巡していると少年が勝手に答えた。
「これ、おれのマブダチ!めちゃくちゃ銃の腕がいいんだぜ。こいつと一緒にリンクスに入れてくれよ!」
言うにことかいて、ぼくの銃の腕がいいなんて……ありえない。ぼくは冷や汗をかいた。
「撃ってみろよ」
アレックスが数ヤード先のひしゃげたドラム缶を顎でしゃくった。

仕方ない。

ぼくはゆっくりと深呼吸してから銃を手にとって、両手で構える。安全装置をはずす。
サングラス越しに慎重にドラム缶に狙いを定めた。そして引き金を引く。
と同時に人気のない静かなダウンタウンの裏町に銃声が響き渡った。
発砲による振動がぼくの肩に響く。

「かすりもしねぇな」

アレックスが呆れた声を出した。
三つ並んだドラム缶は結構大きな標的のはずだったが、そのどれにも弾は当たっていなかったのだ。
「お前、すげぇ下手なんだな……」
少年が額に手を当てて上を向く。
ボーンズとコングが腹を抱えて笑った。

前にも笑われた事があったっけ……。

ボーンズが涙を指で拭きながらアレックスに向けて言った。
「こいつおもしれぇぞ、アレックス。お前、銃を持ってるやつが仲間に欲しいって言ってたじゃん」
「馬鹿。持ってりゃいいってもんじゃねぇよ」
アレックスが苦い顔をする。やっぱりリンクスには入れないだろうか……リンクスに入れないのは構わないが、ピンク・ピッグの店にも入れなくなりはしないだろうか。ぼくは自分の銃の腕前を恨んだ。
アレックスがそのまま背を向けた。
残りの二人もアレックスについていこうと背を向けようとする。

まずい。

そうだ。今もしぼくがアレックスにあの事を言ったらどうなんだろう。事態は変わるかもしれない。ぼくはその事を口に出してみた。

「今日の7時くらいにオーサーが昔の仲間を集めてピンク・ピッグを襲う」

場の空気が固まった。

隣に立っている少年が僕に問う。
「お前……何言ってんだよ」
アレックスの目が険しくなった。
「どこで知った」
一度経験しているからだけど、そんなことは言えない。ぼくは嘘をついた。
「オーサー達が話しているのを偶然聞いたんだ。ぼくはきみたちのリーダーを助けたい。ピンク・ピッグまで連れて行ってくれ」

「もう6時半過ぎてんぜ?」
コングが自分の腹に手を当てて答える。ぼくは知っている。コングの腹時計はまあまあ正確だった。
6時30分というと昔の伊部さんがちょうどピンク・ピッグで”彼”にインタビューをしている頃だろう。時間がない。

「ガセだったらただじゃおかねぇ。来い!」
アレックス達3人が走り始めた。ぼくも全速力でそれについていく。

あの少年は成り行きについてこれなかったのか、その場で突っ立ったまま唖然としてぼくらを見送った。






「どうした、早く来いよ」

ぼくたちはピンク・ピッグの前の道路に着いた。全速力で走ったぼくたちは全員が肩で息をしていた。アレックスは迷わず店の扉へとつづく階段を下りようとしたが、ぼくは店に入れないことに気づいて立ち止まった。

『過去の自分には絶対会うな』

ぼくはショーターそっくりな時間の妖精の言葉を思い出した。
店の中には昔のぼくがいるはずだ。

「先に行ってくれ」
「ああ?おまえ怖気づいたのか?」
アレックスが強い声でぼくを威嚇する。
お前、やっぱりウソだったのかよ、ボーンズとコングがぼくの背後に立つ。
「店の扉ってここだけかい?」
「そうだが」
ぼくは腰から自分の銃を抜いた。アレックス達がぼくに向かって身構える。
「ぼくはここでオーサーの仲間が来た時に食い止めるよ、きみたちはきみたちのボスに知らせて」
「……お前、信用ならねぇ。俺もここで待つ。ボーンズ。アッシュに知らせろ」
「あいよ」
ボーンズが階段を下りようとしたとき、ぼくたちの真横にバイクが急停止した。そこから降りた男の肩に当たってボーンズが跳ね飛ばされた。
「なにすんだよ!」
ショーターだ!
黒いモヒカン頭のその男は猛スピードで階段を駆け下りていく。
そうだった。あの時ショーターが来て慌しく“彼”に何か言っていたんだ。それからすぐに……。
「来る!」
ぼくが叫んだと同時に、数台のボロい車がピンク・ピッグの前にやってきた。ぼくたちの周りに乱雑に停車される。その中からたくさんの少年が飛び出してきた。
「オーサーの仲間だ!」
少年達は地下への階段を次から次へと下りていく。アレックスがその内の一人を撃った。ぼくらに気付いた敵がぼくらに向けて銃を撃つ。ぼくは誰も乗っていない車の影に隠れながら銃を構えて発砲した。
さすがのぼくも標的の近くから発砲しているので、敵の左肩に銃弾が当たった。狙ったのは右肩だったけど当たりさえすればどこでもいい。だが多勢に無勢で、ほとんどの少年達に店に入られてしまった。
アレックスがぼくたちの方を向いて叫んだ。
「俺たちも中にはいるぞ!」
「待って!やつらの狙いはスキップなんだ!」

ぼくの言葉にアレックス達がこちらを振り向く。

「スキップは地下の天井にある天窓みたいなところから逃げるんだ。どこかわかるかい?」

「お前、なんでそんなこと……」
「早く!」
そこで、スキップを……ぼくとスキップを今、助けられれば。
「それならこのビルの裏だぜ、来いよ!うっ」
ボーンズが走りだそうとしたとき、誰かに後ろから殴られて倒された。
「ボーンズ!」
その時ぼくらの後ろから聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「へぇ裏にそんなところがね。お前らこいつらを抑えてろ!」
耳の後ろで撃鉄を起こす音がした。
ぼくらの首裏にいくつか銃が突きつけられている。
ぼくらは動きを止めた。
彼らのうちの二人がぼくらをすり抜けて店の裏へと走り去る。

走り去ったその二人の後姿を見ると一人は帽子をかぶった黒人だった。
あの黒人……覚えている。たしか、ぼくとスキップを捕まえて車で倉庫まで連れて行ったやつだった。

ああ……スキップ。

ぼくたちに銃を突きつけているやつらのうちの一人がアレックスに気付いた。
「あれ?こいつアレックスじゃねぇ?」
彼らがアレックスを銃口で小突く。
「ホントだ。リンクスのナンバー2か。人質はこいつでもいいんじゃねぇの?」
まずい。一体ぼくらはどうなるんだろう。と思ったその時、

後ろから数発の銃声がしてぼくたちに銃を突きつけている少年達がバタバタと倒れた。
「アッシュ!」
コングが嬉しそうな声を出す。

アッシュ?!

ぼくは思わず振り向いた。
白いTシャツにジーンズ。その翡翠の瞳は厳しくすがめられていた。
―― ああ、アッシュ!
階段を駆け上るなり発砲して敵を倒したアッシュは、だけどぼくたちのことは眼中にないようだった。
プラチナブロンドの髪をなびかせながら彼は大声を出した。

「スキッパー!!」

アッシュの視線の先では、店の裏口から引っ張ってこられたスキップと昔のぼくが、まさに車に乗せられている所だった。車のドアが閉められ急発進する。

アッシュが両手で銃を構え、車のリアガラスに向けて狙いを定めた。そして撃つ。相変わらずの早業だった。
弾丸はアッシュの狙った場所に当たったんだろう。車の後ろのリアガラスの左側に銃弾による穴が開いた。だけど車の運転手は無事なようだった。車体は少し傾いたものの、そのまま路地の角を曲がってしまった。

アッシュが後ろから来たショーターを振り返らずに叫んだ。
「ショーター!お前のバイク借りるぜ!」
ぼくは思わず声を出した。
「追いかけちゃだめだ!」
だがアッシュはぼくの声など耳に入ってないようだ。ショーターがアッシュに向かって叫ぶ。
「待て、アッシュ!行くな!罠だぁ!!」
アッシュは誰の声も聞かずにバイクに跨って行ってしまった。

ああ。アッシュ!
ぼくは止められなかった。この先できみはマービンに捕まるのに。

「ポリスだ!逃げろ!!」
誰かが叫んだ。数台のパトカーがサイレンと共にやってくる。リンクス達がバラバラに逃げ始める。アレックス達もこの場から走り去った。

「乗れよ!」
ぼくの真横に一台の自転車がつけられた。自転車?
その自転車には、さきほどぼくをあの広場まで連れて行ってくれた少年が跨っていた。
ついて来てたんだ。てっきりあの時広場に残ったものだと思ったけど。

「早く乗れ!」
少年がぼくに向かって叫ぶ。
ぼくは自転車の後ろに跨った。少年が全速力でペダルを漕ぎ出した。

猛スピードで自転車はどんどんダウンタウンから遠ざかっていた。



ダウンタウンを抜けてしばらくしたところで、少年は自転車を止めた。ぼくを乗せて全速力で自転車を漕いだせいで彼の息は上がっている。ぼくは自転車から降りた。

「ありがとう助かったよ。ぼくは行くところがあるからここで。君も早く逃げたほうがいいよ」
そう礼を言ってぼくは早足で歩き出す。
これからアッシュは埠頭の倉庫に閉じ込められるんだ。あの頃は地理がわからなかったから、どこがどこだかわからなかったけど、今のぼくはNYに住んで数十年も立つ。

「待てよ。どこ行くんだ?」
「埠頭の倉庫街」
少年は息をきらしながら、自転車をカラカラと押してぼくについてきた。
「なんで?」
「アッシュを助けに行くんだ」
「どうして、そこまでするんだ?」
「きみは、どうしてぼくを助けてくれたんだい?」
「俺?……俺はリンクスに入りたかったんだ……」
と少年は話し始めた。

だけれど、あの広場でぼくらがリンクスを助けにいくと言ったときは、怖くて足が動かなかった、と。

でも、ぼくの事が気になって―― あんなに銃の腕前が下手なのに、大丈夫なのかと思ったのだそうだ。余計なお世話だ。―― 少し遅れてピンク・ピッグまで来たらしい。そしたら、丁度ぼくらが銃撃戦をやっているところだったみたいだ。

「おれは、ただ、ケンカが強いストリートキッズがかっこいいと思ってたんだ」

アッシュやアレックスの銃の腕前を見て、ただカッコイイと思っただけなんだ、と。自分も撃ってみたいと思った、と。今日の銃撃戦を見て怖くて足が動かなかった。そんな自分がなさけないと思ったらしい。

でも、それは少年らしい憧れなんだと思う。ぼくもかつては、戦いに強いアッシュに惹かれて、そして憧れた。でも、

「銃はけっしてカッコイイと思うだけじゃ持てないものだと思うよ」

そうだな。と少年は素直に言った。
「おれはこのとおり混血で」
学校ではいやがらせを受けることも多いらしい。彼が何気なく口にした学校名にぼくは驚いた。NYでは有名なパブリックスクールだ。親が資産家なのだろう。そうか。だから彼はストリートキッズには見えなかったのか。
だけどこの時代、その名門校の生徒のほとんどが白人だったのではないだろうか。だから嫌がらせを受けることが多いのだろう。

学友達を見返してやりたいと少年は思ったそうだ。強くなりたい、と。

「でも、実際に銃を使って戦っているストリートキッズたちを見ると、怖くてなにもできなかった……」
「仕方ないさ。それが普通だよ」
ぼくは歩きながら少年をなぐさめる。そう。それが普通なんだ。ぼくだってアッシュを助けるためでなければ……。

ぼくに話をして少しすっきりとしたのか、うつむいていた少年が顔を上げて明るい口調でぼくに言った。
「お前、かっこいいな。リンクスを助けるために銃撃戦だなんて」
ああ。おれも拳銃持ってたらなぁ。でも、持ってても怖くてやっぱりダメか。とその少年は笑った。

「じゃぁ、ぼくはこの辺で」
そろそろ少年と別れたほうがいいだろう。ちゃんとした両親がいるのなら家に戻ったほうがいい。
「おい。待てよ。乗せて行ってやるよ」
話しているうちに少年の息はすっかり整ったらしい。若いってすばらしい。
「タクシー拾うからいいよ」
ぼくはポケットに手を入れた。この時代に使えるお金をいくらか持ってきていたのだ。
「お前のそのカッコじゃ、どのタクシーも乗せてくんねーよ」

ぼくの格好?ぼくは自分の格好を改めて見てみた。

ダウンタウンで車のタイヤに跳ねられた泥水で白いTシャツがところどころ汚れている。
頭から被ったからきっと髪にも乾いた泥がついているのかもしれない。
しかも先程の銃撃戦で道路に伏せたり転がったりしたものだから、ひどい有様だ。
どうりで先程からいやな顔をしてすれ違う人が多いと思った。

「ほら」
自転車に跨って少年がぼくを促した。
「ありがとう」
ぼくはありがたく後ろに跨らせてもらった。少年は自転車を漕ぎ出す。
「言っとくけど、送るだけだからな!おれは銃なんか持ってないんだからな!」
漕ぎながら少年がぼくに向かって叫ぶ。
「わかってるよ!ありがとう!」
ぼくも少年に向かって叫び返した。

でも、彼はこの自転車をどこから手に入れたのだろう。ぼくは深くは考えないことにした。





そしてぼくはその少年と交代しながら自転車を漕いで埠頭の倉庫街に着いた。
ぼくたちはやっぱり息を切らしている。ぼく……もうそんなに若くないんだけれど……。

「で、どの倉庫にリンクスのボスが捕まってんの?」
「知らない。片っ端から探していく」
ぼくは歩き出す。
「知らないってお前」
「きみはもう家に帰って。本当にありがとう」

その時、重い扉の開く音が遠くに聞こえた。
ぼくと少年ははっとした。ぼくたちは近くの倉庫の陰に身を潜める。そして音がしたほうを伺った。

あそこか!

それはかなり遠くの倉庫だった。
ひとつの倉庫の扉が開いていた。その扉の前には数台の車が止められており、大人の男が数名立っていた。
倉庫の中から誰かが大声怒鳴っている声が聞こえる。この声は……この声はアッシュの声だ。

ぼくは全速力でそこへ走る。少年の制止する声が背後から聞こえた。
だけどぼくはアッシュのことしか目に入らない。両手を縄で縛られたアッシュが、マフィアの手下に引きずり出されているところだった。
「アッシュ!」

するとどこからともなく、ストリートキッズたちが現れて男達に襲い掛かった。ショーターとアレックス率いるリンクス達だ。
銃撃戦が始まり、ぼくの方向にも銃弾が飛んできた。ぼくはまた一番近い倉庫の角に身を隠す。だけどぼくは銃を取り出し、すぐに身を乗り出してアッシュを探した。
しばらくすると遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。
早く到着してくれ!
倉庫の前では、スキップが誰かに羽交い絞めにされていた。道路に転んだアッシュにマービンが銃砲を向けていた。アッシュの手首はまだ縛られたままだ。
アッシュ!
ぼくは堪らず走り出した。
マービンがアッシュを目掛けて引き金を引く。その銃声だけがやけに大きくぼくの耳に響た。

ズキュウゥゥン!

「アーッシュ!!」

叫んだのはスキップだった。

アッシュを庇って銃口の前に立ちはだかったスキップが銃弾に倒れた。
「スキップ!」
アッシュがスキップを呼ぶ声がする。
同時にアッシュが立ち上がり、縛られたままの手を、スキップに向けて伸ばす。彼はスキップの名前を何度も呼んだ。だが胸に大きな赤い血の染みが広がったスキップは目を開かなかった。
「マービン!キサマ・・・」
アッシュに睨まれたマービンがそのきつい瞳にひるんで後ずさる。あたふたと用意された車に乗って逃げだした。それをアッシュが追いかけようと、他の車の傍にいたマフィアに体当たりして、その車に飛び乗る。
「アッシュ!行っちゃだめだ!」
ようやくその倉庫までたどりついたぼくは、走り出したアッシュの車に向かって叫んだ。この先で、きみはマービン殺しの濡れ衣を着せられるんだ!
アッシュを止めなきゃ!
ぼくは懐から拳銃を抜いてアッシュのタイヤを目掛けて構える。
引き金を引いた。

当たった!

とぼくは思った。
アッシュの乗る車の車体が傾き、斜めにスリップしたようにみえた。
当たったと思ったのだけれど、かすっただけだったのだろうか。
アッシュはすぐに車体を建て直し、そのまま車を走らせている。

「お前!」
「ボスを撃つなんてなにしやがる!!」
「あいつをつかまえろ!」

ぼくはあっと言う間にリンクスたちに捕まえられた。左腕を背中で捻り上げられたまま地面に倒された。
「お前!オーサーの仲間だったのか!」
「離せ!」
アッシュをとめなきゃ。今からマービンが殺されてアッシュは罠にはめられるんだ!
「離してくれ!!」
地面にうつむけで背中から拘束されながら、ぼくは力いっぱい抵抗する。

「待ってくれ待ってくれ!そいつは銃の腕がヘタクソなだけなんだ!マービンの車を撃ったつもりなんだよ!」

あの混血の少年がぼくを庇う声がする。あのまま逃げなかったんだ……。

その時、ぼくの目から火花が散った。
どうやらぼくは誰かの銃の持ち手の部分で頭をガツンと殴られたみたいだ。
頭が割れるように痛い、だけどぼくはかすむ目を思い切りこらして前を見た。

アッシュの車はどこだ。彼をとめなきゃならないんだ。ガンガンと頭が痛むせいか視線が定まらない。ぼくは見えないアッシュに向けて右腕をのばす。その右腕に巻いている時計から秒針の音が聞こえてきた。

カチ、カチ、カチ、カチ……。

「離せーーーーー!!」







気付けばぼくは、一人で路上に這いつくばっていた。どうやらここは埠頭の倉庫街ではなく、ぼくが時間旅行を始める前にいたダウンタウンの外れの路上だった。道を行く通行人がぼくのその姿に眉をひそめ見てみないふりをして通り過ぎていく。頭痛のせいでぼくは頭が上がらなかった。

するとポケットに入れっぱなしだった携帯電話が鳴り始めた。痛む頭をなんとか持ち上げ、身を起こし、フラフラと歩きながらぼくは電話に出る。

『英ちゃん?伊部です』
「伊部さん……」
伊部さんは今日、NYに仕事で到着したそうだ。晩御飯でもどうかと誘ってくれた。
だけどぼくは頭痛がひどくて、しかもひどく疲れていたので、その誘いを断ってしまった。
『そうか。体調が悪いんじゃぁ仕方ないね。仕事が忙しくなってきたからってあんまり無理しないでね』
「ごめんなさい。あの……伊部さん」

ぼくは聞かずにはいられなかった。

”彼”はどうなったのかと。

あのときぼくは”彼”が乗る車のタイヤを撃ち抜いたはずだ。

車はそのまま走り去ってしまったけれど、あの後からパンクでもして”彼”はマービンの部屋まで辿りつけなかったということになってはいないだろうか。

そうだとしたら”彼”はあの時マービン殺しの濡れ衣を着せられて刑務所に行かなかったのではないだろうか。

「あの……ぼくが初めてNYに来たときの事なんですけど……」




―― ぼくは、それから過去から戻る度に、”彼”が助かりはしていないかと、誰かに聞かずにはいられなかった。




続く
「ちりんちり〜ん。いらっしゃーい」
「ショーター!」

ぼくは夢の中のその店に駆け込んだ。相変わらず薄暗い店の奥のカウンターの向こう側にはスキンヘッドに黒いサングラスの男がいる。

「おれはショーターとやらじゃねぇって言ったろ?お前が見たいような顔に見てるだけだって。お前にとって説得力のある顔にな。俺はしがない時間管理人さ」
時間管理人?時間の妖精じゃなかったっけ?だけど今はそんなことを気にしている暇はなかった。

「この時計だけど」
ぼくはやっぱり今、夢の中でもこの時計を腕に巻いていた。

「お?どうだった?初めての時間旅行は、"ラベンダーの香りがする"とか言ってみたか?とぉ〜き〜を〜♪」
ショーターにそっくりな自称時間の妖精―― 時間管理人だったっけ?どっちでもいいし、もうショーターでいい―― がわけのわからない事を言って歌いはじめた。
だがぼくはそんな彼を無視してショーターに詰め寄る。

「これ。どうやって使うんだ!」
「どうって、針を合わせた時間になったらカレンダーの年月日に跳んだろ?」
「一度は戻れたけど……」

そう一度は戻ったんだ。戻りたくて戻りたくて仕方なかった“あの日”に。
そして―― ぼくは失敗した。彼を救えなかった。どこかで夢の中の出来事だと思っていたのかもしれない。だから全力を出し切れなかったのかもしれない。ぼくは後悔していた。

でも夢ではなかったのだ。なぜなら先ほどのテレビに、ぼくがそのとき乗ったタクシードライバーが出演していて。
そしてあの年――1987年には発行されていない紙幣を、あるおかしな客からもらったと言っていた。そのおかしな客とはぼくだ。ぼくは過去に戻ったとき現在の銀行から下ろしたばかりの新紙幣しか持っていなかったんだ。
ぼくはテレビに釘付けになった。
だけどテレビ特番の小さなコーナーだったそのタクシードライバーの話はすぐに画面から消えてしまった。

そんなぼくの様子を見て心配するシンには、体調が悪くて早く眠りたいからと言って帰ってもらった。

それからぼくは急いで時計の針を回した。そして試してみたんだ。今度は“あの日”の一日前に戻ろうと。丁度夜だったし、夜なら“彼”もきっとまだあの部屋にいるだろう。ぼくらが二年暮らしたあの高級マンションに。そこに行ってぼくは“彼”に忠告するんだ。ラオには気をつけろって!

だけど針を回して、その時を待ってみてもなんの変化もなかった。
時計の針を進めて何度かぼくは試してみた。だが全く過去には戻れなかった。

そしてぼくは腕時計を腕に巻いたまま眠ったのだ。

このショーターにそっくりな彼曰く時間の管理人に会えるようにと願って。

「同じ日に戻ろうとするんだけどさっばり戻れないんだ」
ショーターはぼくの顔をじっとみてから口を開いた。
「お前、この間の俺の注意事項を聞いてたか?」
「注意事項?」

ぼくは頭を捻る。この前、ぼくはショーターの言うことを全く信じていなかった。―― 死んだはずの男に夢の中で、お前が持っている時計はタイムマシンだと言われて誰が信じると言うのか―― 後半は早く目覚めたいと思うばかりで正直聞き流していた。

そんなぼくの様子をみてショーターはあからさまにため息を付いた。

「いいか。その時計はお前を好きな時間に連れて行ってくれる。だが、何度も同じ時に戻れるわけじゃねぇんだ」
同じ時に……戻れない?
もう“あの日”に戻れない?
「それじゃ困るんだ!」
「困るって言われても知らねぇなぁ。今からもう一回その時計の注意事項を全部言ってやるから今度はちゃんと覚えとけよ」

“彼”が死んだ日に戻れないと意味がない。ぼくは茫然とした。

「ひとつ――
そんなぼくを気にせず、ショーターが指を一本立てて説明し始めた。
「一度戻った“時”の前後1ヶ月には戻ることができない」
1ヶ月。長すぎる。
「どうして」
「同じ時空に何度も歪みを作るわけにはいけないからだ」
「一度ならいいの?」
もちろんダメだ。とショーターは肩をすくめた。
「だが、その時計がお前を気に入っちまったんだからしょうがねぇ」
この時計がぼくを?まるで時計に意思があるようなショーターの言い方にぼくは違和感を感じた。


ショーターが二本目の指を立てた。
「二つ目、過去の自分には絶対会うな」
「会ったらどうなるんだい?」
「お前、過去に年食った自分と会ったことがあるのか?」
「ないけど……」
「ならそういうことだ」

「三つ目、過去の親しい人に自分の事を気づかれるな」
「なんで」
「あー。なんでなんでうるせぇよ。お前、家族や仲間から“お前にさっき会ったけどあれ未来のお前だよな?”とか聞かれたことあるか?ねぇだろ?あったら困るんだよ」
「気付かれたらどうなるんだい?」
「さあ……どうするか……そいつの記憶を消すか、その存在自体を消すか」
「本当にそんなことするのかい?」と聞いたぼくに、時間管理人はニヤリと笑って、お前次第だ、と答えた。

「最後だ。未来の日付には設定するな」
「未来なんてどうでもいいんだ。それよりもう一度戻りたい日があるんだ」
「ダメだ」
「どうして」
食い下がるぼくにショーターは手をヒラヒラと振った。
「聞きたいことは聞いたろ。今日はもう帰れ」

その言葉と同時に、ぼくの視界が霞む。
ぼくは見えなくなっていく自分の目に手を当てた。これは……目が覚めるということだろうか。

「ショー……」

どんどん白けて行く視界の中で時間管理人がぼくに声をかけてくる。

「その時計を身に付けて眠った時には、いつでも会ってやるよ」

待ってくれ。ぼくは“あの日”以外に戻っても意味がないんだ。

どんどん目の前のものが白くかすれていった。世界が眩しい白色で染まって行く。そしてすべてが真っ白になったその時――



『お前のなすべき時になすべき事を為せ』



ぼくの頭の中に声が響いた。



―― あの声は誰の声だったのだろう。時間管理人の声ではなかった。聞いたことのある声だったけど、ぼくは今でも思い出せない。



✳︎



ベッドの上で目を薄く開けた。
ぼくは横向きで眠っていた。窓からは朝の白い光が差し込んで寝室を穏やかな光で包んでいる。窓の外からは小鳥のさえずる声が聞こえてくる。いつものぼくの部屋のいつもの朝。

目の前にあった右腕に巻かれている時計を眺める。

夢……じゃないよね。

これがもし本当なら。
“彼”を救えるかもしれない。
ぼくは時計をマジマジと見た。
決定的な“あの日”には失敗してしまったけど。

ぼくはさきほど頭に響いた声を思い出した。

『お前のなすべき時になすべき事をなせ』

そう。問題はいつに戻って何ができるか。だ。
ぼくは考える。
どうやったらあんな結果にならずに済んだんだろう。

考えろ考えろ。

ラオが彼を刺さなければよかったんだ。
過去に戻ってラオを説得する?
でもぼくほラオがどこに住んでいたのかすらわからない。シンの兄弟だけど。直接話したこともなかった。

ラオをけしかけたのは月龍だという噂を聞いたことがある。
じゃぁ月龍の命令を止める?にしても、それもうまく行く気がしない。
だいたいやっぱり月龍がどこにいるのかもわからなかった。彼は暗殺を防ぐために、NYにあるいくつもの李家の屋敷を定期的に転々としていたようだ。

ぼくはどうして何も知らないんだろう。
あの頃のぼくは、ぼくと”彼”のことで精一杯で。しかも”彼”はぼくに何一つ裏社会の事を教えてくれなかった。そういえば”彼”はいつしかぼくが銃を持つことすら嫌がった。出会った頃は持たせてくれていたのに。

あの頃のラオと月龍を知っているのは……。

シンだ。

ぼくは頭を振った。
ダメだ。シンには聞けない。でもぼくはチャイニーズに知り合いがいない。

ぼくがあの頃の事で知っていることと言えば、ぼくたちが住んでいたアッパーイーストの高級マンションと、その向かいがコルシカマフィアのビルだったこと。リンクスの仲間数名と“彼”のダウンタウンのアパートとリンクスの溜まり場であるバー。

ダウンタウンの溜まり場?

ぼくの中で何かが引っかかった。もう一度最初から考えてみよう。“彼”を助けるためには何をすればいいのか。何ができるのか。考えられることは全てやってみよう。

何回も何回も――



―― そしてぼくは、ここから何度も過去に戻ったんだ。



きみを助けるために。


続く
「気づいたか?」

ここは――

ぼくの借りているアパートだった。
見慣れた家具、見慣れた天井。見慣れたシンの心配顔。

ぼくは勢いよく身を起こす。
「っつ」
ぼくはこめかみの痛みに、思わず手を寄せた。包帯の感触がする。
「急に起きるな。お前、頭打ってるみたいだぞ」
ベッドに起き上がったぼくをシンが支える。
ぼくは頭から腕を離してシンを見上げた。
「……どうなったんだ?」
「何が」
「だから、ア」
アッシュはどうなったのか、と声に出しそうになって、言葉を切った。
目の前には、ぼくの様子がおかしい時にシンが浮かべる真面目な表情。

夢?……だったんだ……

「ぼく、どうして」
「驚いたぜ。電話からお前の声がしなくなって」

シンが言うには、ぼくはあの時、シンと電話をしながらタイムズスクエアで倒れたらしい。
ぼくは仕事に行く前に銀行からお金を下ろしたばかりで、それをシンも知っていたので強盗にでもあったのかと、慌ててぼくを探してくれて、病院まで連れて行ってくれたそうだ。

「過労だそうだ」
「心配かけてごめん」
「慣れてるさ」
シンは唇の片方を上げて笑って見せた。

水でも持ってきてやろうと、彼が立ち上がる。
少し言いづらそうに、お前が銀行から下ろした金は盗られてたみたいだぞ、と言った。
そうか、まああんなところで倒れたらそうだなぁ。と思う。今ではそこそこ治安のよくなったタイムズスクエアだけど、ぼくが来たころは危ない地域のうちの一つだった。命があっただけでもよしとすべきだろう。

ぼくは鈍く痛む頭に手を添えながらソファーに座る。テレビのスイッチを入れた。

「っ痛……」

ツキリとこめかみがうずいた。ぼくは思わず手をそこにやる。

夢の中で殴られたこめかみが痛い。倒れたときに打ったのだろうか。夢だったのか……そりゃそうだよな。リアルな夢だった。

ぼくはリモコンをもったまま、ぼぅっとテレビを眺めていた。

しばらくして、シンがグラスに入った水を持ってやってきた。ぼくの目の前のテーブルにそれを置いて隣に座った。
彼の長い腕がソファーの背に沿って伸ばされる。結果、ぼくの首の後ろに回されたシンの腕。ぼくはそこに頭を少し預けた。シンは自然とぼくの肩に手を置く。
いつもの二人の慣れた習慣。

「何みてんだ?」
「さあ?」
「さあってお前……」

ぼくは手にリモコンを持ったままだったことに気づき、テーブルにそれを置いて、代わりにコップを手にした。
ぼくはテレビを付けたものの、先ほど見た夢を思い出していたのだ。やたらリアルな夢。疲れる夢。思い出すと頭痛を感じる。

後ちょっとで“彼”に会えたのに。

テレビでは、何かの特番が流れていた。どうやら世界の不思議現象をテーマにした番組のようだった。信憑性はかなり怪しいものだが、好きそうな人には大好きそうな、派手な効果音と胡散臭いイメージ画像で幾つかの超常現象が紹介されている。

隣に座っているシンは自分のためだけに取ってきたビールを飲んでいる。
ぼくは、意外にシンがこの手の番組が好きだと知っている。聞けば、こんなの信じない、と答えると思うし、実際そんなに信じてはいないと思うが、テレビでやっていると決してチャンネルを変えたりはしない。今も結構真剣に見ているようだ。

ぼくは横目でチラリとシンを見て、かわいいなぁ、と思う。いつのまにかぼくより大きくなって頭もよくて、NY華僑のトップだけど、ぼくより5つも年下だし。こう言ういかにもな番組が好きなところがかわいいと思う。宇宙人かぁ。いたらいいよね。

シンがぼくの視線に気付いてバツの悪そうな顔をした。

「チャンネル変えるか?」
「ううん。そのままでいいさ。ぼくも観たいよ」
「……変える」
「いいって」
ぼくはどんな顔をしてシンを見ていたのだろうか。決してバカにしてはいないのに。ただかわいいなぁって思っていたから、顔はほころんでいたかもしれないけど。
そう言えばシンはぼくに年下に見られるのを嫌がるのだった。そんなところが年下っぽいと思う。
少し拗ねたような顔をしてシンはリモコンに手を出した。
その手にぼくは手を重ねてチャンネルを変えさせないようにする。シンのもう片方の手がぼくのその手首を掴んで離した。
「だからいいって」
「いや変える」
ぼくたちはチャンネル権を争うことになった。笑いながらリモコンを取り合う。
シンが座ったまま、手に取ったリモコンを高く上げだ。
「ずるいぞ。ぼくの手が届かないと思っているんだろ」
ぼくは立ち上がってリモコンに手を伸ばした。
「おっと。使えるものは使う主義なんだよ。それが自分の体格ならなおさらな」
シンも立ち上がる。手は頭上に上げられたままだ。
これで絶対ぼくの手に届かなくなった。
「出会った頃はぼくよりすごく小さかったのに」
ぼくは悔しくて唇を噛んだ。
シンは意地の悪い笑みを浮かべながら高い位置からリモコンをテレビに向けた。

テレビでは不思議現象の再現動画の後、実際にそれを体験した人のインタビューに変わっていた。

「おれはがんばったんだぜ」
じゃぁぼくはがんばらなかったとでも思うのか。というか、身長にがんばるとかがんばらないとか……。
まぁ別にこんな番組、ぼくは観てもみなくてもどちらでもいいからいいか、とソファーに座ろうとしたその時。視界に入ったテレビ画面にぼくはくぎ付けになった。

「待って!シン!」

リモコンでチャンネルを変えようとするシンの腕にしがみつきぼくは大きな声を出した。
「え?」
「チャンネルを変えないでくれ!」
シンは驚いてぼくを見下ろした。

ぼくの視線の先では相変わらず、超常現象番組が流れていた。
ある男性がインタビューを受けている。

そのインタビューは……。

『それでは、あなたはこのお金を十数年前に手に入れたと言うんですね』
『ああ。おれはその時タクシードライバーをやっていて、変な客がやって来たんだ。そいつは市立図書館で降りて、いきなりこの金を押し付けやがった。その当時、おれはアメリカに来たばっかりで英語も碌に喋れなかった。だから、偽札をつかまされた、騙されたと思った。バカにするなと追いかけて一発お見舞いしてやったのさ』
インタビューアがその男にさらに尋ねた。

『だけど十数年前の客から渡されたそのお金が、最近新しくなった新紙幣だった』
『そうさ。おれはこの金を……』

その男は喋り続けていた。だけどぼくの耳にはもう何も届かなかった。

「英二?どうした英二?」

シンがぼくを見下ろして心配そうな声をだす。ぼくは彼の腕にしがみついたまま、微動だにせずにテレビの中の男を見つめていた。

中肉中背、黒髪、黒い瞳のメキシコ系。ぼくはこの瞳に真正面から睨まれ、怒鳴られた。肩を掴まれ羽交い絞めにされ、こめかみを……。

「英二?また目眩でもするのか?」



―― ぼくはこの人のタクシーに乗ったことがある。



続く

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2次小説「No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-」プロローグ及び1~3までアップしております。続きはしばらくおまちください。

どーも。皆さま。小葉です。
今年も英二をちやほやしてくださってありがとうございます!
(返事無用コメントもありがとうございます。楽しく拝読させていただきました(o^^o))

もう3年目なんで、みなさんも飽きてるだろうと思ってたのですが、去年はまだバナナ萌えされてなかった方で今年はじめて楽しんでくださっている方もいらっしゃるようで、なんだかすごくうれしいです!
常連様もいらっしゃるみたいで、本当にうれしいです。
英二をちやほやするだけの企画なのにね(涙)。
今年は少数精鋭の皆さまがひたすらクリックしてくださっているようですが、私もがんばってます!
カウンターの1111と2222を取れたんですよーvvv。
今はもう3000ちやほやを過ぎておりますから、82 802 812 等のゴロのいいキリ番でちやほやなさった方ありがとうございます!
8282(エイジエイジ)を踏んだ方は英二の日ポスターに名前入りで英二くんからお礼を言っていただきますので、ぜひぜひお名前と自己申告コメントをよろしくお願いしますねv
しかし、腱鞘炎にはならぬようお願いします。

たのしんでくださっている方がいるから私も楽しまねば!

ということで、記念絵をPIXIVに上げてきました。(え?)
まぁ・・・いろんな事情がありまして。
いや。ただ単に絵につけた文章が長すぎて、縦長の絵ではバックに書けなかった。という事ですが・・・。

まぁ。あわよくば、PIXIV民様を召還させていただいて、英二をちやほやしていただければ。とか思いますが、私の画力とうちの気の強い英二では無理だよね。アハ☆
結構恥ずかしいので企画終わったらサクッと削除しようかしら・・・。
時間がたつにつれ超恥ずかしくなってきたんですけど。
今から別の方法考えようかしら。でもうちのブログじゃ幅がちっちゃすぎるんだよなー。
とりあえず、リンクはコチラ
よろしかったら、見てやってください^^

小説は・・・只今絶賛調整中。しばしまたれよー。日曜日くらいには3枚載せたい・・・。

それでは、引き続き「英二の日」をお楽しみくださいv
※当ブログの英二の日コンテンツはずーっと下の方に掲載しております。



i-eijiallmini.gifご賛同くださる全ての方への企画参加方法i-ashallmini.gif

英二ちやほや方法はいたってシンプル。
只今から8月2日までに、下のバナーのいずれか(どれでもリンク先は同じです。)をクリック。とりあえずクリック。そしてクリック。

クリック=ちやほや。です。

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英二を可愛がってください。クリック先でどれだけ英二がちやほやされたか見れます。
何回でもちやほやしてあげてくださいね。連打大歓迎v
クリックは今この瞬間から。英二が貴女の愛を待ってます!



i-eijiallmini.gifご賛同してくださるバナナ管理人様への企画参加方法。i-ashallmini.gif
下記によりご参加ください。

① 下のバナーを8月2日までどこかに貼ってくださる。
(リンク先 http://cobabanana.blog.fc2.com/blog-entry-318.html)

コメントなしでコッソリとご参加できます。
でもバナー貼ったよーとか、コンテンツ上げたよーとか、コメントいただけるともちろんこちらにて宣伝させていただきますv


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i-eijiallmini.gif以下、当ブログの「英二の日。」記念小説&記念絵i-ashallmini.gif

2015「英二の日。」記念小説
『No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-』
シリアスです。R18表現あり。お気をつけください。

2015「英二の日。」記念絵
アッシュがなにやら英二をちやほやしようとしているようです。
BL表現あり。お気をつけください。
絵はコチラから。

コンテンツ上げたいなぁ。でも英二をちやほやするのって難しいなぁと、悩まれる管理人様もいらっしゃるみたいですが、こういうのはただの祭りなので、「英二の日。」にかこつけて、アップすればなんでもいいと思います!英二が出演してさえすればオールオッケーでございます。

そんなぬるさ加減を有言実行。今年のうちの小説は英二がちやほやされてませんよ。むしろかわいそうなくらい一人でがんばってます。





それでは、みなさま8月2日まで「英二の日。」をよろしくお願いいたします~。


※英二の日は同盟にしております。別に企画に参加しなくてもいいけど、ご加入したいなぁという方はコチラ

でも、せっかくだし、今年最後だし、どこかにコンテンツ上げた方は(HPでもブログでもPixiv等のSNSでも)よろしければご紹介させていただきますよー。
コメントありがとうございます!
7/21以前の拍手コメント返礼は、この記事の一番下の「次ページ>>」ボタンからお戻りください。m(*_ _)m
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>ニヤニヤ様

「どうしよう。楽し過ぎます。」
マジで?!そうコメントいただけるとやってよかったって思えます~~(○´∀`)ノ+゜*。゜喜+゜。*゜

「2525から2828まで踏めました♪」
すごい!楽しんでいただけているようでうれしいです。
でもあんまり無理しないでくださいねー。
でも2と8のセットで揃えられるとうれしいのわかる。
私・・・3年企画してるのに揃えたことない・・・・。

「楽しい お祭りを本当にありがとうございます。」
こちらこそありがとうござます。
楽しんでいただけているとわかると本当にやってよかったなぁ。とたのしくなります!

うれしいコメントありがとうございました!
8月2日まで、楽しんでくださいね♪







>ニコニコ様

「小葉さん、お疲れ様です」
ありがとうございます!

「めいいっぱいの拍手と 英ちゃんへの ちやほや を」
ありがとうございます!超うれしいです!(ノ´д`ノ。・ゎーぃ・。\´д`\)
そうコメントいただけると、勇気とやる気をいただけます。

うれしいコメントありがとうございました!





>ミヤ様

「はじめまして!」
はじめまして!

「今年も英二の日をやって頂けるなんて、本当に嬉しいです!」
こちらこそご参加していただけるなんて本当に嬉しいです〜〜〜。

そうですかそうですか。ミヤ様は去年の10月頃に再燃したのですね。わたしはいつかなぁ。2年くらい前かなぁ?バナナって再燃する人多いですよね。それだけ人を惹きつけるいい話ってことなんだろうなぁ。

「それから小葉様の小説を読ませて頂き、沢山萌えさせて頂きました!」
ま〜。うれしいです〜。私の妄想がミヤ様の萌えの糧になったなんてうれしいです〜。

「とっても続きが気になります!」
わーわー。そう言っていただけると、すっごくやる気がでます〜。またまたすっごいうれしです〜。

「あああ、シン、ごめんね!」
(笑)ミヤ様面白いですね。笑っちゃいました(笑)
そうですねー。もーなんか最初からフラグ立ちまくりですよね!
これから2人がどうなるか楽しみにしておいてください。ってたいしたことないですけど。ほんと。

「文章がめちゃくちゃですみません!」
いえいえ。すごく楽しかったです。
ミヤ様は楽しい方ですね。またぜひ遊びに来てください(o^^o)

それではうれしくて楽しいコメントありがとうございました。
更新頑張ります!
コメントありがとうございます!
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>万代葉様
万代葉さん。おひさしぶりです~^^

「小葉様の新しい作品を読めてとっても嬉しいです。」
こちらこそ、コメントいただけてとってもうれしいです!ヾ(☆´Д)人(Д`☆)ノ
しかも私の話でドキドキしていただけるなんて。超うれしい!

「英ちゃん頑張ってー‼︎」
この話は、読んでくださった方に、”英二がんばれがんばれ”って思ってもらえたらいいなぁ。と思って書いたんです。
そう書いていただけるとホントうれしいvvv
今からもっと英二ががんばるので英二(と私)を応援してください!

そうそう、管理画面では万代葉さんの最初の投稿も「!!」でした。
管理画面で読んでる私は気付かなかったです。
でも拍手ページでは「??」になってるんですね。
これは万代葉さんが打ち間違ったのではなくて、FC2の拍手ページが悪いんだと思います。
変なお気をつかわせちゃってなんだか申し訳ありませんでした<(_ _)>

「続きを楽しみにしています。」
ありがとうございます!無事最後までアップできることを祈っておいてください。

それでは!また遊びにきてくださいね!!でわ~
コメントありがとうございます!
7/19以前の拍手コメント返礼は、この記事の一番下の「次ページ>>」ボタンからお戻りください。m(*_ _)m
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>セツナイ。様
こんばんわ。コメントありがとうございます!

「すごく、続きが気になる お話です。」
わーわー。そう言っていただけると、次のアップがんばろうって気になります。
だって1ページ目と2ページ目が、一番読んでいただけるかどうか不安だったところなんです~。
うれしいです~。
ちょっと明日明後日とどうしてもアップできないのですが、その次の日は疲れててできないと思うのですが・・・。
また近いうちにがんまりますので!
よろしければ続きも読んでやってください^^。
それではうれしいコメントありがとうございました!



>luna様
lu~na~さーん。
早速のコメントありがとうございます。とってもうれしいですv^^v

「英二の日、参加できて嬉しいです。」
こちらこそ、ご参加くださってうれしいです!

「私が82のキリ番踏ませていただいちゃいました」
おおぅ。そうなんですか!
とりあえず、50くらいでクリックやめておいたら(←本気で自分でクリックするな)
次にクリックしたら82はとっくに超えてたんです。
踏めなかったけど、うれしかった(涙)
今年は小説上げるのでせいいっぱいで、キリ番イベントできなくて申し訳ありませんがほんとうにうれしいです。。o.+゚。(′▽`o人)≡(人o′▽`)。o.+゚。

「コッソリもいつもチェックしているので」
そっか、日記もチェックしてくださっってるのですね。
グダグダ日記読んでくださって、ありがとうございます~。
じつは最後の5行はまだちゃんと決まってないんですが、見切り発車。
んんーどうにかなるでしょう!(多分・・・)

たしかlunaさんはアッシュの最期を読むのが苦手だと書かれてたような気がするのですが、
今回の英二の日の小説はアッシュが亡くなった日の事が書かれているので、苦手でしたらご無理せずに回れ右するか、読み飛ばすかしてみてくださいね^^。

コメント本当にうれしかったです。なんというか、参加してくれる人いるのかこれ。と思いつつ英二の日をはじめたので。

それでは、できましたら、英二の日をおたのしみください^^。

「……変な夢みたなぁ」

ショーターの軽いノリを思い出してぼくはくすりと笑った。
時間の妖精とか言ってたっけ?
昨日の夜、あんな夢を見たのはこの時計の動かし方を考えていたからだろうか?

ぼくは時計を右腕に着けていた。
この時計はまだ止まったままだ。どこかの時計屋でこの時計をみてもらおうと、持って出てきていた。無くさないようにと手に巻いている。

角を曲がってタイムズスクエアの大通りに出る。ぼくは今、流行のミュージカル俳優の雑誌取材用の写真撮りの仕事の帰りに、タイムズスクエアを歩いていた。ちょうど正午になったばかりなので、さてどこでお昼ご飯を食べようかと考えているところだった。

するとぼくの携帯電話がポケットの中で鳴った。ぼくは携帯に耳をあてる。
『英二?』
「シン。どうしたんだい?」
『いや。今日空いてたら晩飯でもどうかと思って』
シンって恋人にするにはまめなほうだと思う。忙しくても時間が空いたら連絡をくれる。ぼくは仕事で色々やることがあったのだけど、今日は早く帰ろうと決めた。
昨晩はなんだかシンに申し訳なかったし。
「いいよ」
『よし。晩飯前に、引越し先のフラットをいくつか見に行くぞ』
「君。話が早すぎやしないかい」
ぼくはちょっと呆れてしまった。本気で10日以内に引っ越すつもりなんだろうか。
『善は急げってな』
急ぎすぎじゃないか。ぼくにも都合ってものが、と電話に向かって文句を言おうと思ったその時、電話を持った腕に巻いてあった腕時計がカチカチと鳴りはじめた。

あれ?時計が動き始めた?

電話を耳から離して腕時計を見る。だが時計は動いてはいなかった。
『英二。どうした?』
「いや。君にもらった、っ痛」
『どうした?英二』
ぼくは突然の頭痛に襲われた。カチカチという時計の音とともにドクドクという血管の音が頭の中に広がり、それらが混ざり合い、と変な痛みがぼくを襲ってくる。
頭に手を当てる。携帯電話がぼくの手から滑り落ちた。耳のそばに当てられた腕時計の音がさらに大きく頭に響きはじめた。

なん……だ?これ?

『英二?英二!』

途端、高速でトンネルに入ってすぐに抜けたような、ゴウという音がして、ニューヨークの喧騒がほんの一瞬だけ途切れた。

何?

そして、その喧騒がまた再開される。
ウソのように頭痛が止まった。
ゆっくりと頭から手を離す。
なんだったんだろう……。
やっぱり頭痛は収まっていた。
ぼくは落とした携帯電話を拾うために屈み、それを手にして身を起こそうとした。
ふと、違和感を感じて辺りを見回す。別に何があるというわけでもなかった。見慣れたタイムズスクエアの雑多な光景。僕は歩きはじめながら電話の向こうのシンに話しかけようとして、その手を止める。
見慣れた?
もう一度立ち止まる。電光掲示板の流れるニュースの時間は12時12分だった。その隣の日付が目に入る。

ぼくは目を疑った、「せんきゅうひゃくはちじゅう・・」ぼくは思わず声に出して今日の日付を読もうとした。
ドンッとその時ぼくは誰かにぶつかられて尻餅をついた。
「道の真ん中で突っ立ってんじゃねぇ!」
その人がぼくにどなって去っていく。その人物は薄手のコートを着ていた。コート……。今は夏のはずだ。ぼくはTシャツ一枚だった。
そういえばなんだか肌寒い……。
周りを観てみると、長袖のシャツを着ている人、厚手のジャケットを着ている人、袖なしのダウンを着てい人。
袖なしのダウンなんてぼくがアメリカにやってきた時に流行っていたけど、今じゃ誰も……。

ぼくは立ち上がろうとして、地面に手を付きなおしたとき、カサリと何か紙の音がした。捨てられた新聞だった。
新聞の日付を見る。まさか。
そして電光掲示板をもう一度見た。

1987年?の……そしてこの日は……この日付は……そんなことって。

「タクシー!」

ぼくはちょうど目の前に来た黄色いタクシーを拾った。強引に車道に出て止めたのだ。
「ニューヨーク市立図書館まで!」
ぼくの剣幕に驚く風でもなく、タクシードライバーはチラリとバックミラー越しにぼくを見やり、おかしな客をつかまえちまったといわんばかりに咥えていた煙草の火を灰皿に落とした。タイムズスクエアから市立図書館まで5ブロックくらいだ。歩いても15分ぐらいで着くが、ぼくは一秒たりとも無駄にしたくなかった。
「急いで!」
タクシーがウインカーをカチカチさせ、ゆっくりと走り始める。
ぼくはもう一度運転手を急かそうと後部座席から少し乗り出すために、運転席の背もたれを右手で掴んだ。
その腕には時計が巻かれている。

この時計……。

ぼくの頭の中に昨日の夢のショーター―― いや時間の妖精か―― の言葉が鮮明に思い浮かんだ。

『戻りたい日があるんだろう?』

ある。
何度も何度も後悔した。どうしてぼくはあの時日本に帰ろうなんて思ったんだろうって。
どうして“彼”のそばにいなかったんだろうって

『その時計は汝が望むがままの、時の彼方へ連れて行ってくれるであろう』

ぼくは時計を凝視する。文字盤の中のカレンダーを。
1987年のこの日に幾度戻りたかったことか!
だけど夢の中でもこの日に戻れたことはなかった。これは昨日の夢の続きなのだろうか?先程見たタイムズスクエアの電光掲示板の日付を思い出す。

これが夢でも構わない。
夢でもぼくは“彼”を助けに行くだけだ。

タクシーはあっというまに市立図書館の前まで着いた。
急いでポケットからサイフを出して10ドル紙幣を渡した。
「お釣りはいりませんから!」
慌てて車の外に出ようとする。
だけど、タクシーの運転手に腕を掴まれた。
「え?離してください」
「○△×%……!」
まずい。この運転手は英語が通じないのか。彼が何を話しているのかがわからない。彼が話しているのはおそらくスペイン語だった。黒髪、褐色の肌のその男はヒスパニック系だろう。NYで暮らしているとたまに英語の通じないタクシーに乗ってしまうことがある。
彼は大声を出しながら、ぼくが渡した10ドル紙幣をぼくに向けて振ってみせた。
「お釣りはいらないんですけど」
だがどうもそんなことではなさそうだ。彼は明らかに怒っている。
ぼくはふと気付いた。

そうか。10ドル紙幣は数年前に意匠が変わったんだった。この時代にこの紙幣はなかったはずだ。確か1ドルと2ドル紙幣は変わらなかったんだっけ。ポケットのチップ用の小銭入れにはたまたま1ドルと数セントしか入っていない。
おそらく運転手は偽札をつかまされたと思って怒っているのだろう。偽札じゃないんだけど、信じるわけがない。じゃぁ。カードで支払うかと思うが、数年先のカードも使えるわけがない。
ええい。仕方ない。ぼくは急いでるんだ。

「ごめんなさい!」

ぼくは運転手の腕を捻り、彼の腕を振り切った。彼は腕を押さえて痛がっている。ありったけの紙幣を全て彼に押し付ける。午前中所用で銀行に行ったぼくはカメラ鞄の中に結構な額を持っていた。新札で。

「これ、いつか使えるようになるから!それまで持っててください!!」

運転手の腕を放してぼくは全速力で走り始めた。

ぼくは全速力で走りながら心の中で”彼”の名を呼んだ。
“あの日”――いや“この日”からぼくは、”彼”の名前を思い出すだけで心が壊れるくらいに痛くなった。そんなぼくの前で、ぼくたちを知っている人は”彼”の名前を出すことを避けていた。
ぼくもいつしかその名を遠ざけるようになって・・・。

アッシュ!
アッシュ!アッシュ!

ここが夢の中でもよかった。
それでも”きみ”を助けられるなら。

今きみは図書館の中で、流れる血を押さえながらいつもの席に座っているのだろうか。
図書館の奥のあの辺りのあの席に。

早く早く。もっと早く。

ぼくはひさしぶりに力の限り走る。
周りの人が何事かとぼくを見た。
ぼくは階段を急いで駆け上り、正面のドアを勢いよく開ける。エントランスを駆け抜け図書室のドアを開いた。
そこはぼくの記憶の中の図書館とまったく変わっていなかった。
そりゃそうだろう。ぼくはこの日から一度もこの場所を訪れなかったんだから。

いつもなら清閑すぎる図書館がなぜか今日はざわめいている。
ぼくは広すぎるこの図書室をざっと見渡した。

いつもならきみはあそこに―― 

いない。

なら、あの場所の席がとれなければ、そっちは―― 

いない。

その席で僕の視線がとまった。

なぜだかそこの席を遠巻きに人が囲んでいた。

その人垣が少し動いた時に、その人の輪の真ん中にちらりと見えたものは。
机にうつ伏せになっているらしき人の頭髪だった。
かつて見慣れていた、決して忘れることのできない、とてもきれいなプラチナ色の……

「……アッシュ」

瞬間、その場所から飛び出そうとしたぼくの腕をだれかがガシっと掴んだ。
「お前!○×△%#$!!!」
先ほどの運転手だ。ぼくは背後から羽交い絞めにされた。
「離してください!」
振り切ろうとぼくは抵抗するが、すごい力で抑え込まれる。
「△×□%#$$!」
「いかなきゃ。いかなきゃならないんです!はなして!はなせ!!」
押し問答をしていたぼくたちの横を担架を持った救急隊員が慌しく通り過ぎた。
「この……!」
ぼくがタクシー運転手を殴ろうと振り向いたとき。
ガツリと先に運転手にこめかみを殴られた。

目が回る。

ぼくはまたアッシュのいる方向を向く。
暗くなっていく視界。ぼくはその場にくず折れた。
殴られた頭がいたい。ドクリドクリと音がするようだった。血でもでているのだろうか。
こめかみに右手を当てようとする。

すると今まで気にしなかった時計の音がまたやけに頭に響いた。
……カチ、カチ、カチ、カチ。
それと合わさるように頭痛の音も大きくなっていく。

そこに”彼”がいるんだ。

ぼくはずっと探していたんだ。

もう一度会えたら絶対に離れないって決めたんだ。

あと少しで、もう少しで……きみと……きみを……。



アッシュ!




―― そうして、何が何だかわからないままぼくは目覚めたのだ。





続く
「よぉ英二!元気だったか?」
「マックス!」
ダイナーズの店の隅のテーブルにマックスは座っていた。待ち合わせに少し遅れてしまったぼくはマックスが待つテーブルへと歩いていく。
初夏のきつい日差しの中から店に入ると屋内はクーラーが冷んやりと効いていて心地よかった。
「元気だよ。マックスも元気そうだね。ジェシカはどうだい?」
「あいつは殺したって死なねぇさ。それよりお前、仕事の調子がいいようじゃないか」
「まだまだだよ」
オーダーを取りに来た店員にぼくはコーヒーを頼む。

マックスと会うのは何ヶ月ぶりだろうか。今、彼らはNYに住んでいた。ぼくがNYに残ってからほぼすぐに、彼らはよりを戻したのだ。つまりは離婚しなかった。そして、マックスの仕事の関係もあって家族でこちらに引っ越してきた。面倒見のいいこの夫婦に、一人暮らしを始めたばかりで金もなければ知り合いもいないぼくはかなりお世話になっていた。しかもぼくはカメラを持ってNY中をフラフラ歩き回っていて、普段から心配をかけどうしだった。まぁ、仕事をもつジェシカの代わりに彼らの息子のマイケルの面倒を見たことも一度や二度ではなかったけど。感謝祭やクリスマス、そして復活祭等、家族が集まる時期には必ずぼくを呼んでくれた。だけどここ数年はぼくの仕事も忙しくなり、なかなか彼らの家にお邪魔する時間も少なくなっていた。

「ジェシカは心配してお前を呼んでこいと俺に言うが、おれはお前がいつまでもおれのところにばかりに来るのもそれはそれで心配だった。だから、今は今でいいと思ってる。だが俺たちはお前の友人だ。いつでも用事がなくてもまた遊びに来てくれ」
「うん……ごめん。ありがとう」
マックスはほんとうにいい人だと思う。彼からすればぼくは本当になんでもない赤の他人のはずなのに。

ぼくはシンと一緒に暮らすことにしたことをマックスに報告するかどうか迷った。マックスはシンのことを面白く思っていないのだ。
なぜなら昔、マックスのベトナム戦争時代の戦友の弟がシンの兄に―― 

「英二?」
ぼくが言いよどんだのを訝しく思ったマックスに先を促された。
ぼくはマックスの目を真っ直ぐにみて話す。
「シンと一緒に暮らすことにしたんだ」
マックスは少し眉を上げた。そして目の前のコーヒーを少し飲んで、カップを置いてからこう言った。
「おれは男同士のことはよくわからん。だがあれからシンはずいぶんとお前に心を砕いて来たようだ。お前が落ち着いた原因の一つがあいつであればそれもいいかもしれん」
マックスがぼくの目をまっすぐに見返した。
「お前が落ち着いて本当によかった」
「……ありがとう」
「いいってことさ。それより今日お前を呼んだのは渡したいものがあってな」
そういってマックスは何も言わずに紙袋をテーブルに置いた。
「これは?」
「開けてみろ」
紙袋を引き寄せ、ガサリと袋の中を覗いて見たぼくはそのまま固まってしまった。
―― これは……」
驚いたぼくはマックスを見た。視線の先には真剣なマックスの瞳。

「あいつのだ」

言葉の出ないぼくに、マックスが繰り返す。

「あいつの銃だ」


―― この銃がこの時ぼくの手元に戻って来たのも何か意味があったのだろうか。


✳︎



「スミス&ウェッソンか……」

ぼくはベッドに背を持たれさせながら、その文字を声に出して読んだ。
今ぼくは“彼”の銃を持っている。

この銃だけが最後まで“彼”といたんだ。

“彼”の遺体はマックスが身元を確認して、その時、遺品を預かったらしかった。

『お前が落ち着いたら渡そうと思ってた。あいつは銃とともに生き抜いてきた。人生の最初の最初からな』
“彼”の人生とは切っても切れないこの銃は、あいつの一部なんだろうと思う。とマックスが言った。
『この銃も俺よりお前に持っていて欲しいだろう』

あいつが一番気にかけていたお前にな。

そう言ってマックスがぼくにこれを渡した。

“彼”の銃を手にするのは二度目だろうか。
一度目は初めて彼に会った時だった。あの時は興味本位で銃を持たせてくれなんて彼に言ったぼくだけど。彼と一緒に行動することになって、銃とはかっこいいだけのものではなくて、本当に人が生き抜くために使っているものなんだと改めて知った。とても面白半分では持てるものではなかったのだ、と自分を恥ずかしく思ったこともあった。

“彼”はいつも玄関脇の高い棚にこの銃を置いていた。彼より身長の低いぼくの手が届かないような所に。彼はこの銃をぼくに触られたくなかったんだろう。それを察したたぼくは気づかぬふりをしてたけれど……。

「あの頃一日中あの部屋にいたんだぜ?普通気づくだろ」

ぼくは思わずひとりごちた。
ぼくがずっと気づかないとでも思っていたのだろうか。だとしたら“彼”も意外に間の抜けたところがあったのか、とぼくは一人でくすりと笑う。それともぼくがよっぽど抜けてるヤツだと思われてたのだろうか……。え?そうなんだろうか。

ぼくはベッドに寝転がり、仰向けになりながら手の中でその銃のシリンダーをカラカラと回して見せる。弾は銃創に一つを残して全て入っているようだった。

素人のぼくにでもわかる。この銃は使いづらそうだ。

リボルバーでしかも短身。
連続で撃ちづらいだろうし、銃身が短い分命中率も下がるだろう。

ぼくは天井のシミをめがけて拳銃を構えた。狙いをつける。もちろん撃つ気はない。

彼は何を思ってこの銃を使っていたのだろうか。

「ぶっそうだな」

誰かの声が聞こえて、ぼくは慌てて肘をついて身を起こした。そこにはスーツ姿のシンがいた。ぼくは思わずシンに問う。
「上海は」
「行かずにすんだ」
しまった。
ぼくはしくじったことに気付いた。今日シンからもらった時計はリビングのテーブルの上に置きっ放しだった。なのにぼくは“彼”の銃を手に持っている。シンはこの寝室に来る前にあの時計を見ただろうか。
「俺が以前渡した銃はあるのか?あっちのほうが使いやすいだろ」
シンがネクタイを緩めながらこちらへと歩いてきた。

以前、シンの組織のごたごたでぼくの身も危なくなるかもしれない事態になったことがある。護身用に持っておけ、と拳銃を渡された。素人でも扱いやすそうなオートマチック銃。
「あるよ」
シンはゆっくりとベッドに近づき、そこに腰掛け、ぼくの右手に彼の大きな手を伸ばした。ぼくのその手にはまだ“彼”の拳銃が握られていた。

「この銃はお前が使うのは無理だ」

シンがゆっくりとぼくの手から、“彼”の銃を剥がした。

「うん。そうだね」

ぼくたちは、ぼくがこの銃を使うわけがないことを知りながら、確信には触れずに話を続ける。

「お前ときたら、女でも使えるオートマチックですら土壇場で安全装置を外し忘れちまって、撃てなさそうだ」
「ひどいな」
「ホントの事だろ?」

以前、シンに銃をもらったその時に、射撃場に連れて行かれたことがある。ぼくの腕前を知りたかったそうだ。だけど数年ぶりに銃を持ったぼくは、その時ちょっと緊張していて、安全装置を外さず引き金を引こうとしてしまったのだ。シンは苦虫を潰したような顔になった。シンに言われて慌てて安全装置をはずして、そして人型の黒い的をめがけて数発銃を撃った後は、シンに頭を抱えさせてしまった。
的を全て外したのだ。
シンが運転する帰りの車の中で、二人とも終始無言だった。
車を降りる時にシンが、ぼくに護衛をつけると言った。もらった銃はどうすればいいかと尋ねると。『お守りにでもしておけ』と一言だけ言ったんだっけな。
銃を渡されたり護衛をつけられたりしたわりには何事もなく日々が過ぎたけど。

「きみにもらった銃は、言われたとおり、お守りとして大事にしているよ」
「それでいいさ」
お前にそれ以外の使い道なんてないだろう。とぼくをからかいながら、シンが大きな背を曲げてぼくに覆いかぶさってキスをする。

シンはこの銃が誰のものかわかっているんだろうか。もちろんわかっているんだろう。今日ぼくが誰に会ったとか、そしてだいたいどんなことを話したとか、彼はなんとなく知っているようだった。もちろん面と向かってお前にいつも監視を付けているなんて言われたことないけど。監視ってほどのものではないのかもしれないけど、華僑のネットワークはどうなっているんだろう。
でも、ぼくは監視をつけられても文句がいえないほど不安定な時があったんだ。NYを彷徨うように一人で写真を撮っていたぼくを見つけては、シンは何も言わずにそんなぼくに付き合ってくれた。

彼の手に渡った銃がサイドボードに置かれた。その音がコトリと響く。ぼくはそれまで銃を持っていた手をシンの首裏に回す。
ごめん。君からもらった時計が嬉しくなかったわけじゃないんだ。君を傷つけるなんて、そんなつもりじゃなかったんだ。
そんな思いを伝えるように、彼のキスに応えた。




✳︎




そして、今ぼくは時計を手にして寝転がっている。



あれからまたすぐにシンの携帯電話が鳴った。ぼくたちはまさに抱き合ってコトをすすめている最中だった。シンはしばらく呼び出し音を無視していたけど、とうとう中国語で短く悪態をついて電話にでた。そしてやはり中国語でなにやら話しているのでさっぱり内容がわからなかった。電源を切ったシンはとても申し訳なさげだった。
『悪りぃ。行かなきゃなんねぇ……』
『慣れてるよ』
だから気にせず行って来て、との意味を込めて他意なく答えたぼくにシンは眉を寄せて見せた。
『……お前。それ聞きようによっちゃぁすっげぇ嫌味に聞こえるぜ』
『え?だって』
本当に慣れてる…し、お互いもちろん仕事は大切だ。
『わかってるさ。明日の予定は?』
シンはため息をつきながら話題を変えた。
『銀行に行って、仕事に行ってかな』
『そうか。また連絡する』
そうして、ぼくの頬に軽くキスをした。
『プレゼント気に入ってくれたか?』
『もちろん。すぐに使わせてもらうよ』

シンはくしゃりと笑って去っていったのだ。

ベッドの上でシンを見送った後、ぼくはその場で起き上がってため息をついた。そしてサイドボードを見る。そこにはぼくたちの―― ぼくとシンの写真が飾られていた。昨年のぼくの誕生日にシンが写真を撮ろうといってシンが撮ったものだ。あの長い腕で思い切りコンパクトカメラを持つ手を伸ばし、自分達に向けてパシャリと撮った。ノーファインダーなのに上手く撮るな。とフィルムを現像した後ぼくは関心したものだ。それを思い出してぼくは思わず微笑む。そしてその写真立ての前に置かれままの”彼”の銃を手に取り、サイドボードの引き出しを開ける。そこにはすでにシンから貰った銃が入っていた。その奥にぼくはそっと“彼”の銃を入れた。そしてリビングに行ってシンからのプレゼントを手に取ってまたベッドに戻ってきたのだ。

「オールドSEIKOか」

中古だけど高いんだろうなぁ。とぼくはひとりつぶやく。中古といったら失礼か。アンティーク?でもそれほど古いタイプではないよな。その時計は、シルバーのバンドとシルバーの本体に、文字盤は黒味がかったネイビーブルーだった。かっこいい。しかも新品同然のきれいさだった。新古品?こういう世界はよくわからない。以前、編集の人で時計マニアがいて、仕事の打ち合わせをそっちのけで、彼の時計コレクションやらなんやらを語ってもらったことがある。ぼくは時計など動いていればなんでもいいタイプで、多分シンもそうなんだと思ってたけど……。いや。ぼくが使ってみたいって言ったんだっけ?記憶にないけど。

時計を腕にはめてみた。
あれ?この時計動いてないな。
時計をもう一度腕から外し、その裏側を見てみる。
電池がないのか切れてるのか。明日時計屋に行って見てもらうとするか。

時計の中には日付表示もあった。
文字盤の中央より右側に小さく表示されているカレンダーの日付はでたらめだった。

左側の西暦表示が随分と狂っていた。1987年?西暦が入ってる時計なんて珍しい。

新古品に見えるこの時計だが、実は以前に持ち主がいて、その人から手放された時に止まったまんまなのだろうか?

ぼくは取り敢えず時計の側面にいくつかあるダイヤルを回してみた。長針が少し回る。今何時なんだろう・・・。枕元にあるデジタル式の目覚まし時計を見てみる。0時12分?この目覚まし時計も時間が正確じゃないんだけどまぁいいか、とぼくは時間を合わせた。
また別のダイヤルを回して見る。今度は日付が代わった。どんどん日を遡っていく。今度は月が変わった。試してみたがダイヤルを逆には回せないようだ。一日ずつ戻っていくしかないこの仕組みに、なかなか面倒くさいものだな、とぼくはうんざりする。数ヶ月分もどったとき、ふと、ある日付でぼくの手が止まった。

1987年のこの日、ぼくは一度日本へ帰るために飛行機に乗ったんだ。
伊部さんに車椅子を押してもらって。そして、

そして、“彼”が図書館で―― 。

ぼくはサイドボードの引き出しを見つめた。先ほどあの中にいれた“彼”の銃を見つめるかのように。

胸が締め付けられるように痛む。
ぼくは時計を持った手を、痛む胸に押し当てた。

この日にきみが―― 。

時計を持つ手をぎゅっと握り、“あの日”から幾度となく考えたことをまた考える。

あの日に戻れるなら、ぼくは……。

だが戻れない。ぼくはわかっていた。どんなに願っても、求めても、探しても現実は変わらなかったんだ。

『お前が落ち着いて本当によかった』

これまで心配をかけた人達の顔が頭をよぎる。

ぼくは落ち着いたんだ。

現実を見れるようになったんだ。“彼”を忘れたわけじゃないけれど。

そうしてぼくはサイドボードから視線を外し、きつく目を閉じた。










そのままぼくは眠ってしまったんだと思う。

だけどここはあの中華街の店だった。いや?なにか雰囲気が違う。そうか店内の商品が時計ばかりなんだ、とぼくは気づく。

と思うとあちらこちらに掛けられた時計が鳴りはじめた。ボーンボーンとなるものや、ジリリリリと甲高く鳴り響く音、ピピッピピッという電子音もあった。そしてやっぱり暗い店内の奥のカウンターには店主らしい人が棚の整理をしていた。だが今は帽子を被っていなかった。しかもTシャツにジーンズだ。


店主がゆっくりとこちらを向いた。


「おやおや。ようこそいらっしゃーい」

明るい声の店主がにこやかにぼくに挨拶をしてきた。この声は・・・ぼくがよく知っている人物の声によく似ていた。決して忘れることのできない。顔、声。

「ショーター……?」

ぼくの声は少しかすれた。これは夢なんだろう。懐かしい声、ぼくは店主を改めて眺める。白いTシャツにサングラス。そしてスキンヘッド。

「ショーター?だれだそれは?お前にはそう見えるだけだ。俺様は聞いて驚け、時間の妖精でーす」

やっぱり夢か。

「こらこら。夢じゃねーって」
そのショーター……彼曰く時間の妖精に向かって、ぼくはハハハと笑って見せた。

「えーと。じゃぁぼくはこれで」

早目に目覚めたほうがよさそうだ。ぼくはそこでクルリときびすを返そうとした。

「まてまて。お前いい時計を持っているじゃねぇか」
「この時計?」

彼がぼくの右腕を指した。ぼくは夢の中なのにシンからもらった腕時計を巻いていた。そういえばこの時計を弄ってるうちに眠ってしまったんだっけ。

「お前その時計の使い方を知っているのか?」
「使い方?電池がないのか動かないんだ」
「電池?そいつは機械式時計だぜ?」
「機械式?」
「そうだ。ネジをある程度巻くと、後はお前が歩いた時の振動や手を降った時の振動を動力として、ネジを巻かなくてもずっと動き続けるのさ」
「へぇ」

なんだかわからないけどすごいんだろうな。

「だがその時計は、そいつ自体が頑固な意思を持っていて、ネジを巻こうが巻こまいが、お前が腕を降ろうが降ろまいが、動くか動かないかはそいつの気まぐれだ」

……つまりは壊れてるってことなんだろうか?

「しかし、喜べ。キミはその時計に選ばれし者!」

自称時間の妖精―― どう見ても悪ふざけているショーターにしか見えない―― はどんどん口調が芝居がかってきた。

「その時計は汝が望むがままの、時の彼方へ連れて行ってくれるであろう」

そろそろぼくは夢も見ずに熟睡したほうがいいのかもしれない。でもあんまり嬉しそうにお芝居をしているショーターにそっくりな人をムゲにすることはできなかった。ぼくはショーターが大好きだったんだ。

ため息をついた後、ぼくは時間の妖精に聞いてみた。

「つまり?」
「つまりってお前」

かわいくねーやつだ、とか、浪漫ってもんを知らないやつはこれだから、とか、彼がひとしきりブツブツと呟いた後、どうしてか気を取り直して、いきおいよくぼくに言い放った。

「つまり、そいつはタイムマシンだ!」
得意げに話す彼をマジマジと見ながらぼくはまた相槌を打つ。
「へぇ……」
全く信じてないぼくを見て、彼はやれやれと肩をすくめてみせる。
「信じてねーんだろ。まぁ仕方ねぇか。だがその時計の針を合わせた“時”にお前は跳ぶことができる」
突拍子もない事を言いはじめた彼にぼくは反論してみた。
「さっき合わせてみたけど何も起こらなかったよ」
「その時間まで“来て”ないんじゃないか?」

時計の針を見ると12時12分だった。もちろん短針も長針も動いていない。そう言えば、この時計を合わせる時に使ったデジタル時計って遅れてたっけ。先程ぼくがベッドの中で動かした時のままで腕時計の針は止っていた。

あれから眠ってしまってこの夢を見ているはずだけど、今は何時だろう?
「じゃぁ明日の0時12分になったらその……」
彼の言葉を信じていないぼくは言葉に詰まった。
「お前は時間を”跳べる”ってことだな」
“跳べる”?
いつへだろうか。一日前?二日前?
そんなぼくの思考を読んだのか彼はぼくの疑問に答えてくれた。
「そのカレンダーを合わせた日にさ」

カレンダー?そうか、この時計は西暦までついていたんだった。
西暦のネジはもらった時のまま触ってなかった。つまりカレンダーの月日はさっき、ネジを回していた時に“あの日”で止めたままだ。

ぼくが“彼”を図書館で永遠に失った日で。

「戻りたい日があるんだろう?」

彼は何かを含めたような声を出した。サングラス越しの彼の瞳は読めなかった。

そしてそのショーターにそっくりな男はぼくにむかって、時計の注意事項をうれしそうに話し始めた。

だけど、不思議な事に夢の中なのにぼくは眠くなってしまって、そこから彼の話を全く聞いていなかった。




―― この時、このショーターみたいな男の話を信じてもっとよく聞くべきだったんだ。ぼくはすぐに後悔することになった。




続く
―― とにかく。ぼくは頭の中を整理するためにこれを書いている。


誰かに読まれるとぼくが狂っちまったと思われるだろう。だから久しぶりに日本語で書こうと思う。ぼくは今―― というかここ十数年アメリカのNYに住んでいる。ぼくの周りには日本語が読める人はほぼいない。

もしこの内容を理解できる誰かがいれば、とうとうぼくの頭がイカれちゃったと考えると思う。
ぼくだって自信がない。ぼくが正気なのかどうかなんて。

でも、ぼくはここ数日のことを忘れたくなかった。だから今からその事を書く。
なんの変哲もない、いわゆる大学ノートにこれを書いていく。
文章を書くなんて学生の頃以来だからうまくかけるかわからないけど。忘れたくないことを、忘れてはいけないことを、順番に書いていこうと思うんだ。

事の起こりはどうだったか。

その日の朝ぼくは―― 



✳︎



「なぁ英二。引越しのこと考えてくれたか?」

シーツを被るようにベッドで丸くなって眠っていたぼくは、薄く目を開けてシンの方を向く。
シンはすでにシャワーを浴びたようだった。彼は勝手知ったる風体で、ぼくの家のぼくの寝室に備えられているぼくのクローゼットに近づいていく。

ぼくたちは―― ぼくとシンはつまりはそういう関係だった。一緒に暮らしてはいないのだけれど、ぼくのクローゼットに何着かの彼のワイシャツとスーツが常に用意されているような。もちろん下着も常備されている。日本式に言うと半同棲という言葉がぴったりだ。
いつの頃からこうなったのか正直あまり覚えていなかった。思い返せばNYに来てほとんどの年月をシンと過ごしている。
最初の二年以外はだけど。

ベッドに横になったままのぼくの視線の先では、シンがクローゼットから無造作に彼のワイシャツを取り出していた。
ぼくはそれをぼぅっと眺める。
ぼくより数周り大きくて、ほどよく筋肉のついた背中がこちらに向けられていた。
その背中にワイシャツが羽織られ、立てられた襟首に手際よくネクタイが通される。
クローゼットの扉の内側にある縦に長い鏡に彼が映し出されているのがここからでも見える。
シンは少し首を仰向け、鏡を見ながら、慣れた手つきでネクタイを結び始めた。

ちぇっ。サマになるよなぁ。

あんなに大きな手なのに、なんでも器用にこなすことをぼくは充分知っている。
彼とは何年の付き合いになるのだろうか。

ぼくの手よりも大きい彼の手は、中華料理を作るのが意外に得意だったりするし、
パソコンをタイピングするのはぼくより早かったりするし、
ここにちょっと物を置けたらなぁ。と言った僕の家の隅に日曜大工で上手い具合に棚を作ってくれたこともあった。
以前飼ってた犬を洗うことも彼に任せておけば大丈夫だったし、
NYを徘徊するように写真を撮るぼくの腕を引いてくれたこともあった。

眠気から完全に冷めないぼくは、そんなことをうつらうつらと考えながら、薄目を開けてベッドに横になったまま、ぼんやりと彼を眺めていた。そこで鏡の中のシンと目が合う。
「英二?」
ネクタイを結び終わったシンはぼくを振り返り、ベッドへと近づいてきた。そしてニヤリと笑ってこう言った。
「今おれのこと見てたろ」
見惚れてたのか?と冗談ぽっく彼が笑う。
そんな笑った顔も充分に男前だ。だけどぼくは5歳も年下の彼にからかわれるのがおもしろくなかった。出会った頃はチビだったくせに。
「……手が」
「手?」
「器用だなぁ。と思って」
シンの頭の上にハテナマークが飛んだ様に見えた。なんでそんな話になるかわからないようだ。ぼくはネクタイを結ぶ君がかっこよくって正直見惚れていたんだなんて説明する気などさらさらないない。くやしいので。
シンがぼくをじっと見た。ぼくの言動が変な時はシンはこうしてぼくの様子を見る。ぼくはちょっと過去に行動が不安定な時期があって、ずいぶんと彼に心配をかけたのだ。
「へぇ……この手がねぇ」
シンはそう言って口の端に笑みを浮かべ、その手で無造作にぼくの身体を覆っていたシーツをずらしていく。
「シン?」
シーツがずらされることによってぼくの裸が腰まで露わになった。別にはずかしがるような間柄でもなかったけど。だって数時間前までぼくたちは普通に恋人達が夜に楽しむようなことをしてたわけだから。でもぼくは、そのまま眠ってしまってさっき起きたばかりだった。ぼくだけ裸ってのもちょっとなぁ、と思ったその時、
「うわっ」
肌をなで上げられる感触にぼくは変な声を出してしまう。
シンの手がゆっくりと僕の腰から脇腹をなで上げてそのまま背中を辿りながら上がってきた。
「ちょっ」
ぼくはシンの手を押しのけるために体を起こそうとした。が、それより先にシンが覆いかぶさってぼくを組み敷いた。彼の手の最終到着点であるぼくの頬が大きな掌で包まれた。小さく笑いながら彼がぼくに聞く。
「おはよう。おれの器用な手に起こされたか?」
ぼくは彼を見上げながら答える。
「どちらかというと今、君の体重に起こされてるよ。重い。太っただろ?」
「……マジで?」
ウソだけど。
肯定の意味を込めるようにぼくはニコリと笑ってやった。
「ホントかよ……」
ぼくの笑顔にまんまと騙されたシンは脱力した。ぼくの肩に顔を埋めて。
「ちょっとシン。本気で重いよ」
ぼくは身じろぎをしてシンを押し返そうとする。シンはその動きを封じ込めるようにさらにぼくに体重を乗せて、ぼくをしっかりと抱きしめた。
「ほら重いって。シーン」
笑いながらぼくはシンを押しのけようとする。シンはぼくの肩に顔を埋めたまま笑って、「おれ太ったからしょうがねーよな」とぼくの上から退こうとしなかった。ぼくたちは笑いながらそんなやり取りをしばらく繰り返していた。
そんな感じでひとしきりじゃれ合った後、シンがぼくに聞いた。

「なぁ。英二。引越しのこと考えたか?」

だけど彼はぼくの返事も待たずに質問の回答を先延ばしにしようとする。

「……ゆっくり考えればいいさ」 
「考えたよ」
シンの緊張がほんの少しぼくに伝わる。ぼくはシンの目を見て答えた。
「一緒に暮らそう」
彼が目を見開いた。
「本当に?」
ぼくは頷く。
「本当だよ」
シンは真剣な表情でぼくにもう一度尋ねた。
「一緒に?」
「一緒に」
ぼくはさらりと答える。

すると、シンはベッドの上に起き上がり、Wooooo!と叫んで―― ほんとにそう叫ぶ人をぼくは初めて見たかもしれない――ぼくの脇に手を差し入れ、ぼくを起こし、勢い良くぼくを抱きしめ、そしてぼくの頭を両手で包み、キスをしてきた。

「ちょっ…シ…」

激しいキスにぼくは何も言えなくなる。
それは長いキスで、しかもその激しさにぼくは上手く息継ぎができなくて、酸欠になろうかという時、彼の唇が離された。
彼の両手がぼくの頬を包んだまま、彼の額がぼくの額にコツリと当てられる。

「愛してる。英二」

断られるかと思ってた。と彼は呟いた。

シンから同居の話を初めてされた時から答えはもう決まっていた。でもやっぱりシンがぼくの回答をさえぎって良く考えろと言ったのだ。それきり話題にならなかったから、ぼくはなんとなく返事を返しそびれていた。

「うん、ぼくも愛してる。返事が遅くなってごめん」

シンは笑って答えた。

「いいんだ。よかった」

そのよかったには色々な意味が含まれていることをぼくは知っている。
……ぼくはほんとうにシンには世話をかけたのだ。

「よし!十日以内に引っ越すぞ」

「え?」

「部屋はもういくつか決めてあるのさ。今度見に行こうぜ?」

その時、シンの携帯が鳴った。




―― 今考えてみると、このタイミングでこの時電話がかかってこなければ、ぼくはこの文章を書くことにはなっていなかっただろうと思う。

それは必然だっんだろうか。どうなんだろう。










「ここで……いいのかなぁ」

ぼくは古びた店の前に立って看板を見上げていた。




あれからシンは舌打ちをして携帯をとった。そしてなにやら中国語で話していた。電話を切った後、苦々しげにこう言った。

『今から上海に行かないといけなくなった』
『上海?今から?』
シンがうなずく。
ぼくは少しあっけに取られた。最近のシンは忙しいとは知っていたけれど。

以前のようにシンがふらりとぼくの部屋に遊びにくることも少なくなった。だから一緒に住むかという話になったんだけれど。これほどまでとは。

『たいへんだね。大丈夫?』
『ああ。いや…でも…なぁ』

シンが大丈夫と言う時は大丈夫な時だ。だけど歯切れ悪いその返答にぼくはもう一度大丈夫なのかと聞いてみた。
シンは顎に手を当てて逡巡した後僕に尋ねた。

『仕事は心配ない。ただ……お前今日ヒマか?』
『昼からマックスと会う予定があるけど』
『時間があれば俺の代わりに行って受け取って欲しいものがあるんだ』
『いいけど。どこだい?』

中華街だとシンが言った。店は小英に案内させると。
店?何か注文していたのだろうか。そうたずねると、シンは曖昧に、どうしても今日受け取りたいものなんだ、と答えた。

そうしてシンは慌ただしく着替えて―― 一連の行動でシンのスーツはしわくちゃになっていた―― ぼくの額に小さなキスを残して去っていった。

その後小英から電話が来て、お昼前にその店に連れていってもらうことになった。時間通りに小英が迎えに来たのだけど、そこでまた小英の電話が鳴った。
中国語で勢い良く何か話している。
電話を切った小英は申し訳なさそうにこう言った。
『ぼくも上海に行くことになりました』
何かトラブルでもあったのだろうか?あったんだろうな。だけど華僑の内部のことは、よっぽどの事でないと二人ともぼくには言わないし、ぼくも首を突っ込むつもりはない。

結局その場で小英が慌ただしく店への地図を彼の手帳に描いてくれた。それを破ってぼくに渡しながら申し訳なさそうにこう言った。
『英二さんに絶対に今日受け取ってもらうようにって言われてるんです。一人で行っていただけますか?』
わかったよ。とぼくはそのメモを受け取った。
『受け取ったら、シンの携帯に電話してくださいね』

ぼくは一人で中華街に到着して、迷いながらもなんとか辿り着いたその店構えを見上げて、小英の事を考えていた。あの後すぐに飛行機に乗らないと行けないと言って慌ただしく車を出していたけど、彼は無事に乗れただろうか?

「この店であってるのかなぁ」

ぼくはもう一度メモと看板を見比べる。
そこには簡単な地図の他に店の名前も漢字で書かれていた。

小英の字って意外に個性的なんだな。

つまり字が汚くて読めないのだ。そのメモを胸ポケットに入れて、ぼくはこの店で合っているのかどうか自信がないまま、その店のドアを開けた。

カランカランとドアにつけられたベルの乾いた音が店内に響いた。
店の天井の真ん中にポツリとつけられた小さな照明がいっそうその店を暗く感じさせる。
古びた小さな店は骨董品屋なのだろうか。
足を踏み入れると同時に左右によくわからない壷やら皿やら木彫りの置物やらが所狭しと並べられていた。
足元には無造作に額縁に飾られた絵画が並べて立てられている。
店の奥のカウンターの向こう側には男性が立っていた。店主なのだろうか、店の中なのに帽子を被っている人がいる。

「こんにちわ」

ぼくは挨拶をしてみた。
カウンターの向こう側にも品物がたくさん並べられており、店主はこちらに背を向けて、どうやらその棚の整理をしているようだった。ぼくに気づかないのだろうか。

「こんにちわ。あの……シン・スウ・リンの使いで荷物を取りにきたんですけど」

店主がようやくこちらを向いた。目深に被られた帽子に隠されて顔はよくわからない。
どうやらぼくの顔をじっと見ているようだ。小柄なその店主は僕より細くて小さかった。体型からして老人なんだと思う。
中折れ帽に、体に合った三つ揃えのスーツ。だけどそれはなんとなく着慣れてないような印象を受けた。

「あの、シンの……」

ぼくはもう一度言葉を繰り返そうとした。するとその店主がカウンターの下から小さな箱を取り出してカウンターにコトリと置いた。その手は細くて筋張っていてかすかに震えていた。老人特有の細かい震え。逆側の手には杖が持たれていた。彼はかなりな老齢なんだろう。

「これ。いただいて行っていいんですか?」

店主は無言で頷いた。
どうやらぼくの英語は通じているようだ。
ぼくはカウンターに近寄り、片手で充分に持つことのできる小さな箱を手にした。

「ありがとう。じゃぁ預かりますね」

もう一度彼は頷き、ぼくをじっと見ているようだった。

なんだか奇妙に感じたが、ぼくはそれを手にして店を後にした。


✳︎


ぼくは小さな包みを手に持ちながら、シンに電話した。
「英二か?店、わかったか?」
「うん。これどうすればいいんだい?」
「開けてみろ」
え?今開けるのかい?と尋ねたぼくに、今すぐだ、とシンが答えた。
ぼくはその場でゴソゴソと包み紙を破って小さな箱を開けてみた。
―― これ……」
「気に入ったか?」
シンはぼくにそう尋ねた。
中には腕時計が入っていた。骨董品屋で手に入れたということはアンティークなのだろうか。
「お前、前にそれ使ってみたいって言ってたろ?」
え?これはぼくのためのものなのだろうか。と思った時に、電話の向こうでシンが誰かと短く話した。中国語で。
「悪りぃ。行かなきゃなんねぇ、英二」
「なんだい?」
「誕生日おめでとう」

そうか。だから今日中にこれを取りに行きたかったのか。

今日はぼくの誕生日だった。朝から特にこの事は話題にならなかったけど
やっぱり覚えてくれてたんだ。
ぼくの心に何か暖かいものが広がる。

「……ありがとう」

できるだけ早く帰ってくるから、と言ってシンが電話を切った。

ぼくはその小さな箱をもう一度閉めて、ポケットの中に突っ込んだ。
しかし、いつぼくはこんな時計を使いたいって言ったのだろう。シンの勘違いなのだろうか?
だけど、今日中に渡したいと思ってくれた気持がうれしかった。
軽い足取りでぼくは歩き始める。マックスと待ち合わせの店へと向かって。


―― この時、ぼくやシンがちょっとでもこの小さな贈り物について言及していたら、今のこんな事態にはならなかったのだろうか。
あとからその店に行こうとしても、同じ店には二度とたどり着けなかった。


続く

力強い手に腕をひっぱられてぼくは身体を反された。

「ん……」

ひっぱられるといっても無理やりにではなくて。
でも少々強引だけど―― 

ベッドの上にうつむいて、腰だけ上げさせられた体勢のぼくに、彼が覆いかぶさり、彼自身を挿入される。はじめはゆっくり、そして徐々に早くなっていく行為にぼくは翻弄された。
ぼくの身体を知り尽くした彼は、ぼくのいいところを何度も突いて。

お互いの荒い息遣いが静かな部屋に響く。
彼がぼくの前に片手を伸ばしてぼく自身を掴んで上下した。

「あ」

そしてほぼ同時にぼくらは極めた。

彼はぼくの身体から彼自身をゆっくりと引き抜いた。
そしてまたぼくの体は彼の手によってなんなく返され、ぼくらは向かい合う。

「英二。好きだ。お前だけだ。お前だけを愛しているんだ」
ぼくの年下の恋人は彼の広い胸にぼくを包み込むようにぼくを抱きしめる。
「ぼくも、」
ぼくはそこで言葉を切った。

彼の大きな胸にぼくの顔は埋められていた。声を出しづらい。力強く抱きしめられているので身動きがとれない。息もしづらかった。
ぼくは少し面白くなる。
いつも余裕でなんでもできるの君なのに、こんな時はなんだか余裕がないような気がして。
ぼくより身体が大きけど、年下だし、ちょっとかわいい。
ぼくは彼の腕のなかでクスリと笑った。
なんとか顔を上げて愛しい恋人の名を呼ぶ。


「愛してるよ。―― シン」


続く


2015eijidayposter.jpg




2次小説「No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-」プロローグ及び1~3アップしました。

英二の日。とはなにか?

・アッシュは誕生日設定があって毎年たくさんの人に祝ってもらえるが英二は誕生日設定がないから祝ってもらえない。
・そうだ。8月2日を「英二の日」と(勝手に)設定してちやほやしてあげよう!
・ご賛同のみなさん。英二くんを一緒にちやほやしてみませんか?

という、当ブログの企画。

2013年度からはじめまして、今年で3回目です。しみじみ。
2013年、2014年とご参加してくださった方々ありがとうございました!
くわしくは英二の日同盟カテゴリを見てねv

あのころは私もそこそこコンテンツを上げていたので集客率も高く、なかなか賑やかに開催させていただいていたのですが。この1年はたいへん申し訳ないことに各所に不義理をいたしているので地味に・・・。
こんな管理人でも付き合ってやろうじゃないか!といった貴重な方はもろ手を上げて歓迎しますので。
ぜひともよろしくお願いいたします^^
来ていただいた方になるべく楽しんでいただけるように、
オレ!ひとりでもなるべく賑やかにがんばるよ!

さて。おしらせがあります。
英二の日の企画は本年度で最後にしようかと思います^^。


今年も開催しようかどうか悩んだんですが・・・。
ほら。私、あんまり活動してないから、参加する人もいないかなぁ。って思って。
でも、なにも言わずにスルーするより、ちゃんと宣言して来年からやらないでおこうと思って!(←なんだかエラそう)
いちおう主催者だしね。うんうん。

もちろん同盟はそのままにしておきますので、有志の方はよろしければ英二をちやほや(バナーをブログにはるとか、心の中でおめでとうって言うとか、コンテンツあげるとか?)してください。

じゃぁ何が違うのかって?
そうですねー。
ぴょこぴょこ英二を設置してみなさまを派手に煽らない、ってことですかね?(←おい)
最後ですので、バナークリック参加のみなさまは私に煽られて派手にクリックしてくださるとうれしいですv
(煽るな煽るな)

さ。というわけで、2015年度英二の日企画、地味にはじまりまーす。

あ。うちの企画小説は一番下にあります。
そうそう。今年は企画絵も上げてみました。てへ。(←これが一人でもがんばるという事か)

i-eijiallmini.gifご賛同くださる全ての方への企画参加方法i-ashallmini.gif

英二ちやほや方法はいたってシンプル。
只今から8月2日までに、下のバナーのいずれか(どれでもリンク先は同じです。)をクリック。とりあえずクリック。そしてクリック。

クリック=ちやほや。です。

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英二を可愛がってください。クリック先でどれだけ英二がちやほやされたか見れます。
何回でもちやほやしてあげてくださいね。連打大歓迎v
クリックは今この瞬間から。英二が貴女の愛を待ってます!



i-eijiallmini.gifご賛同してくださるバナナ管理人様への企画参加方法。i-ashallmini.gif
下記によりご参加ください。

① 下のバナーを8月2日までどこかに貼ってくださる。
(リンク先 http://cobabanana.blog.fc2.com/blog-entry-318.html)

コメントなしでコッソリとご参加できます。
でもバナー貼ったよーとか、コンテンツ上げたよーとか、コメントいただけるともちろんこちらにて宣伝させていただきますv


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i-eijiallmini.gif以下、当ブログの「英二の日。」記念小説&記念絵i-ashallmini.gif

2015「英二の日。」記念小説
『No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-』
シリアスです。R18表現あり。お気をつけください。

2015「英二の日。」記念絵
アッシュがなにやら英二をちやほやしようとしているようです。
BL表現あり。お気をつけください。
絵はコチラから。

コンテンツ上げたいなぁ。でも英二をちやほやするのって難しいなぁと、悩まれる管理人様もいらっしゃるみたいですが、こういうのはただの祭りなので、「英二の日。」にかこつけて、アップすればなんでもいいと思います!英二が出演してさえすればオールオッケーでございます。

そんなぬるさ加減を有言実行。今年のうちの小説は英二がちやほやされてませんよ。むしろかわいそうなくらい一人でがんばってます。





それでは、みなさま8月2日まで「英二の日。」をよろしくお願いいたします~。


※英二の日は同盟にしております。別に企画に参加しなくてもいいけど、ご加入したいなぁという方はコチラ

でも、せっかくだし、今年最後だし、どこかにコンテンツ上げた方は(HPでもブログでもPixiv等のSNSでも)よろしければご紹介させていただきますよー。
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ほんとは、今年の英二の日のポスターにしようかと思ったんですが。
アッシュの方が幅とってるから、やめた。
あ。違う違う。BLだから、トップに堂々と載せるのはやめようと思ったんだ。
私の良心。

さて。アッシュが今年も英二をちやほやしなきゃと、がんばってキスしようとして・・・るように見えます。

それに対する英二の反応は?

8月2日までに3枚上げますので、よろしければ楽しみにしててくださいねー。

PIXIVにアップしました。コチラ
はい。ということでー。

がんばって小説書きました!しかも長編。無謀すぎるチャレンジに、もう魂がヘロヘロです。

題名は『No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-』

以下注意事項を箇条書き

・この小説は2015年度英二の日記念小説です。
・英二の日にかこつけてますが、英二君はちやほやされていません。
・英二の日なのに、すっごく自分で働いてます。かわいそう。
S×英ありマス。
A×英ありマス。
・でもこの小説のメインはR18を書きたかったわけではないので、それを期待して読むとがっかりします。
・でものっけからR18部分があるので、お嫌いな方はプロローグを飛ばして、1ページ目(プロローグを除く)からお読みください。いやこれマジで。
・プロローグを読まなくても小説は理解できます。むしろ読まないの推奨かなぁ。載せるかどうか最後まで迷った。
・プロローグとおまけはサービスです!(誰にだ)
・登場人物は・・・脇役が、小英、マックス、ショーター、アレックス、ボーンズ、コング、伊部、暁、あ。マービンもか。オールスターだなこりゃ。
・名もなきモブの少年もいます。モブがお嫌いな方はご注意ください。
・メインは、英二主人公。シンの出番多め、アッシュ少なめ。
でも私、A英(英A)のヒトですから。(←この一文でいろいろ察してください)
・シリアスですが最後はハッピーエンドです。

そうそう、大事なことを書くの忘れていました。

・SFです。(え?)
・SFといっても、宇宙には出て行かないし、悪者を倒さないし、巨大ロボにうっかり乗ったりしません。超かわいい女の子のアンドロイドも登場しません。科学考証いっさいなし。
・じゃぁなんでSFかって?
・略して、S(少し)F(不思議)。

そうそう。もうひとつ大事なことを書くのを忘れていました。以下この小説の帯風あらすじ。

『アッシュが亡くなってから十数年後、英二が手に入れたのは、時間を巻き戻せる時計だった。
ーぼくはこれできみの運命を変えるんだ!ー
果たして英二はアッシュを助けることができるのか?
英二の日常に起った、S(少し)F(不思議な)物語。』

・ああ。調子に乗ってこんなこと書いてますけど、もう最後まで読んでくださる人がどれだけいるのかと・・・すごい内心ビクビクです。
・管理人は小心者です。生暖かく見守ってやってください。貴女のご趣味に合わないときはそっとページを閉じてくださるとうれしいです。

・アッシュ最期の表現あり。

・これくらいの長編の小説を書くのは初めてなので、慣れなくて・・・。12ページくらいじゃ中編なのかな??
・読みづらいところはもちろん読み飛ばして結構ですが、SFなので、多少の説明くさいところはご勘弁を。
・1ページ目(プロローグを除く)と2ページ目にたくさんしょーもない伏線を貼ってますので、がんばって読んでみると要所要所と最後の最後でほんのちょびっと楽しめるかもしれません。



さて。それでは。
注意事項を読んだけど、小説も読んでやっていいぞ。と言う方、この下からどうぞー。



『No rain no rainbow -何度でも、きみの元へ-』

No rain no rainbow -プロローグ- R18 2015/07/20更新
No rain no rainbow 1 手にいれたもの 2015/07/20更新
No rain no rainbow 2 きみを忘れたわけじゃないんだ 2015/07/20更新 
No rain no rainbow 3 今が夢でも 2015/07/20更新
No rain no rainbow 4 ぼくは知っている  2015/07/26更新   
No rain no rainbow 5 なすべき時になすべき事  2015/07/26更新 
No rain no rainbow 6 その運命 2015/07/26更新
No rain no rainbow 7 雨 2015/07/27更新
No rain no rainbow 8 きみだけを見ていた 2015/07/30更新
No rain no rainbow 9 いくつもの光 2015/07/30更新
No rain no rainbow 10 力の限り 2015/08/01更新
No rain no rainbow 11 何度でも、きみの元へ 2015/08/01更新
No rain no rainbow -エピローグ-  2015/08/01更新

No rain no rainbow -おまけ- R18 背後要注意 2015/08/13更新
↑この小説は『This Love -慟哭-』 の話の続きでもあります。
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