Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

手が震えていた。
いや、手だけではない。全身がだ。

アッシュは自分を覆うようにして眠っている男の下からそっと抜け出す。細かく震える手で床に落とされたシャツを拾った。それを肩にかけ大きな掃き出し窓に近づいていく。今夜は満月だ。格子の窓から入る月光は、足の長い絨毯に幾つもの十字の影を落としている。

ーまるで牢獄だ。

震えがとまらない足で窓辺へと歩く。小さな彼の体に十字の影が映され、そして進行方向とは逆に動いていった。
アッシュは窓ガラスに頭を軽くつけ庭を眺めた。この館の主がわざわざイギリスから呼び寄せた有名な庭師によって設計されたその庭は、月明かりに照らされ十分に明るい。
なんの感動もなく整然と刈り込まれたその庭を眺める。
薄い金色の月に照らされた庭なのにどうして青白く光って見えるのか。いや青白いというよりアッシュには無色に見える。無色というより無機質か。
アッシュは小刻みに震える手をゆっくりと開いてじっと見た。

ー大丈夫だ。これ位。なんてことはない。

ゴルツィネは比較的悪い相手ではなかった。ただ今日は彼の飼い主の機嫌が悪かったのだ。そしてアッシュも。
相手の機嫌のいいときは多少の抵抗や我侭も許されるが、そうでない時は体格差にモノを言わせて好きなように翻弄される。力ずくで。
どんな客もそうだった。
自分より何倍もの重量のある大人の男に勝てる力がアッシュにはない。アッシュは経験から、相手の機嫌が悪いときは嵐が過ぎるのを待つようにおとなしくしているに限る事を学んだ。

ただ今日は・・。

アッシュがクラブ・コッドからゴルツィネの屋敷に連れられてから1年はたっただろうか。てっきり彼専属の男娼になって飼い殺しされるのかと思っていたら、コルシカマフィアのボスは、酔狂にも彼に教師をつけ知識を与え始めた。アッシュは真面目な生徒ではなかったが、非常に優秀な生徒だと言えた。もともと記憶力と理解力がずば抜けていた彼は、与えられる知識を乾いたスポンジが水を吸収するように自分のものにしていった。最初は1人だった教師が彼の理解力に応じて2人3人と増えていく。

そして今日の昼下がり。

アッシュはいつもどうり、講義を受けるためゴルツィネの屋敷の一室で教師を前にしていた。

だるい・・。

ゴルツィネが商談のため一週間程留守なのをいいことに、マービンが昨日アッシュを連れ出した。理由は決まっている。アッシュを抱くためだ。マービンのなじみの安ホテルでアッシュが開放されたのは、明け方だった。
屋敷に帰ったアッシュは食事もとらず少しの間仮眠し、疲れと不快感の残る体を引きずり今教師の前に座っている。大人しくこの講義を受けているアッシュの美しい翡翠色の瞳を縁取るアイラインは、寝不足のせいか赤くかすみ微熱があるのかその瞳は少しうるんでいた。その姿は見る者にとってはかなり扇情的であることを本人は気づいていない。
聞こえてはいるが、頭に入ってこない教師の声がピタと止む。
気づけば、教師に顎を捕らえられ唇を奪われていた。

やばい。

アッシュは身を硬くする。こういうことはこの教師が初めてではない。アッシュは比較的真面目に講義を受けているつもりなのだが、何が引き金になるのか、突然教師が彼に性的な行為を仕掛けてくるのだ。
真面目そうな教師の銀縁眼鏡にはめられたレンズは白く光を反射して彼の表情を隠していた。

やめろ・・。

アッシュは予期せぬ時にー覚悟ができていない時にー仕掛けられる行為には、いつも体が激しい拒否反応を示すのか、金縛りにあったように声もあげられず体も動かせない。

やめて・・。

すがるような瞳でただ訴えてみるが、にじむ涙で濡れた翠のそれが教師の劣情をいっそうそそる。その気になった教師はますます興奮するだけで、アッシュの意図を汲み取ってはくれない。
教師の唇が金糸の髪に飾られた白い首筋に滑り、その手がアッシュのシャツをはだけ、白磁のような肌の感触を味わおうとした。

その時ー

『何をしているのですかな?先生。』
ゴルツィネが部屋の開け放たれた扉の下に立っていた。
教師がはじかれたように立ち上がり、派手な音とともに椅子が倒れた。
『こ・・これは』
アッシュも驚いて目を見開く。
商談で1週間前後屋敷を開けると言って出て行ったのはほんの2日前だった。予期せぬ早めの帰宅の理由は商談が上手くいったからなのか、それとも逆か。どちらにせよアッシュには関係のないことだった。が、タイミングが最悪だ。
マフィアのボスが目を細めてアッシュに向けて言った。
『お前は自分の部屋に戻っていなさい。私が呼ぶまで外に出るな。』
アッシュは黙ったまま、教師に口付けられた箇所を腕でぬぐい、体裁を整えそのまま部屋を出た。

明日にはまた違う教師が来るだろう。

だがアッシュには興味のないことだった。


数時間後ー


ゴルツィネの手下がマフィアのボスの寝室のドアをノックする。アッシュはその手下の後ろについていた。中から入室を促す声がして、手下はドアを開いた。背中を押され寝室の中に入る。
アッシュを残して閉められたドアを背に彼はその場に佇んだ。
高級な光沢を放つシルクのガウンを着たゴルツィネが、アッシュにはわからない酒の入ったグラスを片手にナイトテーブルの傍らに立っていた。
『こちらへ来なさい。』
アッシュは扉の前に立ったまま動かない。
いや。これからこの彼の飼い主にされることを思えば足が動いてくれないのだ。
『アッシュ。』
じれたゴルツィネがアッシュに近寄り腕をつかむ。
『っ!』
アッシュはその手を叩くように無意識に払いのけた。

払うつもりはなかった。

そんな事をすれば、目の前の男の機嫌が今以上に悪くなることはわかっていた。だが、昨日はマービンに抱かれ、日中は教師に迫られ、この上目の前の男に触れられることをアッシュの体と精神が拒んだ上の反射だった。
飼い猫にひっかかれた男は、アッシュの細い腕を肉厚の手でがっしりと掴み、引きずるようにベッドまで連れて行き、その小さな体をベッドに投げた。したたか背中を打ったアッシュが肘をついて頭をあげると、ゴルツィネは金髪の少年の後ろ髪に手を差し入れ髪の毛ごと頭をつかみ上を向かせた。
『わたしに逆らうな。』
男はアッシュに口を寄せる。生温かい息がアッシュにかかる。無意識に顔を背けようとしたが後頭部を固定され逃げられない。唇が合わさり、男の舌がアッシュの小さな口蓋を侵した。
『お前が誘ったのか?』
ここでアッシュはようやく言葉を発した。
『・・・俺は誘ってない。』
『わたしの許可なく、ああいうことは2度とするな。』
『だから誘ってなんか、』
『お前が誘ったのであろうとなかろうとだ。』

じゃぁ聞くな!

自分の主張などどうでもいいのだ。自分の感情などどうでもいいのだ。わかっていた。わかってはいたが胸の内からどうしようもない怒りが込み上げる。アッシュは力いっぱい男を押しやろうと腕の中で暴れた。
左頬が男によって張られる。その反動で体がベッドに叩きつけられた。アッシュは暴れるのをやめた。
だが、翡翠のきつい眼差しで男を真正面から睨み付ける。男はそんなアッシュの瞳を歯牙にもかけず、両手首を掴んでベッドに縫い付けた。
『逆らうなといっただろう。』
逃げるように首をすくめるアッシュの首筋を男の舌が這った。アッシュはこれから起こることから目をそむけようときつく目を閉じる。瞼に覆われた翡翠の瞳から涙が滲んだ。

これから長い夜が始まるのだ。いつもの夜がー。






そして今、アッシュは冷たい月光に照らされた庭を眺めながら震えが止まるまで自分の腕で体を包み込こんでいた。いつまでも止まらない震え。

ー誰かここから・・・。

何かを隠すように固く手を握りしめ、目を瞑る。アッシュは大きく息をした。

何度も何度も。

窓の外では強くもない風が吹いているのか、庭に植えられた木々の梢がこすれる音がする。ほぼ等間隔にざわめくその音はなぜだか故郷の海の波の音を思い起こさせた。
海と浜辺以外はなにもない故郷の風景。全てはあそこから始まった。アッシュはここに行き着くまでの出来事を思い出した。

自分に乱暴した男に向かって銃を向けた時。
叔母の家に預けられるのが嫌で家出してきた時。
抱かれるのが嫌で仕方なかったが、初めて客に自分から媚びて金をせしめた時。

アッシュはゆっくりと瞼を開いていった。その中から強い光を放つ翡翠の瞳が現れる。

誰かなんていない。

全て自分で選んで来たことだ。
全身を這っていた震えはいつしか止んでいた。

誰も連れ出してはくれない。

握り締めた手を開いて、冷たい窓につけた。

いつかここから・・。

アッシュは月を見上げる。
今は何時なのだろうか、夜はまだ明けそうもなかった。
月は無機質な光を満遍なく辺りに放っていた。その光が世界を青白く染める。
ただ、十字の格子に嵌められたガラス越しに佇む少年のみごとな金髪と、意志を持ったきつい翡翠の瞳だけを際立たせていた。







最後まで読んでくださった方。本当にありがとうございます。
誰得的なまさかのG×Aネタ。こんなのも書きます。みたいな。
私がBF2次小説を書く理由のひとつは(そんなたいそうなものではないですが)原作の理由を考えてしまうからです。
なんで英二は料理ができるんだろ?なんでアッシュはハンバーガーが嫌いなんだろ?どんな時にアッシュは英二から暖かいものが流れ込んでくるんだろ?
そしてBFでの最大の疑問は「アッシュって英二と出会う前どんな生活送ってたんだろう」です。
これ考えるとすごく考えてしまって。何歳から何歳までクラブ・コッドにいたのだろうか。どうやって銃を(しかもポリススペシャル)を手に入れたのか。グリフィンはどうやって見つけたのか。考えればキリがない・・。
吉田先生。アッシュの過去を描いてくれないですかね。
こんな暗くて英二がでてこない話需要がないんだろーなー。
ちなみに言い訳ではありませんが、R18を書きたかったのではなくアッシュの過去を考えればこうなったという・・。どれほどの人がこの小説を読んでくれるのか甚だ懐疑的ではありますが、ここまで読んでくださった心優しい方。本当に感謝です!ありがとうございました。
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2013.03.09 00:25 | # [ 編集 ]

>hitoron 様

初めまして!
コメントありがとうございます!
hitoron様もブログを始められたのですね^^
しかもイラスト!バナナ界でイラストブログは本当に数少ないのでとっても希少で貴重ですね。
これからの更新期待してます♪
リンクもよろしくお願いします♪うちも貼らせていただきますねv
「素敵な文章楽しみにしています^^」
ありがとうございます!
なかなか更新できませんが、またお暇な時遊びにきてやってくださいね。
でわ~。

2013.03.09 07:50 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

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2013.03.10 11:18 | # [ 編集 ]












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