Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

「このアパートを引き払う。」

その言葉を聞いた英二は、少し目を見開きすぐに目を伏せ「そう。」とだけ返した。

アッパーイーストにある高級アパートメントの最上階ペントハウスの一室。豪華ではあるがシンプルな内装のこの広いリビングルームで、2人は並んでソファーに座っていた。
アッシュは新聞を読みながら、英二は漫画を読みながら、静かな時間が過ぎていく。
その時アッシュが事も無げなーまるで今日の天気は晴れているなといったー口調で新聞から目を離さず英二に話しかけたのだ。

BANANAFISHに係る全ての事柄が、爆破されたビルの火の海の中で消失した。その後刺されたアッシュが入院した病院に、再渡米した英二も入院することになる。そして2人は無事退院した。その数ヶ月後の事だった。





引越しはいつかと聞く英二に、明日にでも引っ越すとアッシュは答えた。家具その他は全て置いていくから荷造りの必要はない。と。
このアパートに住み始めてから約2年。
その間の様々な出来事によりアッシュがいない時期、英二がいない時期、2人がいない時期と2人がこの部屋に本当に住んでいた期間は2年にも満たない。その2人のおかしな行動に、このマンションの住民もいぶかしく思い始めたようだ。なるべく気付かれず静かに姿を消したい。
アッシュは英二に、何か持って行きたいものがあれば好きにしろと言った。

「君からもらったカメラかなぁ。」

向かいのコルシカマフィアのビルから出てくる人物を隠し撮りする為に、アッシュが英二に用意したカメラの事だった。英二はこのカメラを気に入っているようだ。気付けばカメラの手入れをよくしていた。特に夜更けに帰宅した自分を待ってたのか、カメラの手入れの途中でソファで眠ってしまっていることがよくあった。
遅くなるからベッドで寝ていろという自分の意見が通ったことは数える程だ。

まぁ。持って行くならそうだろうな。

英二もアッシュもほぼ2年ここで暮らしていた割には私物が少ない。アッシュは元々何も持たないことに慣れているのだが、元は旅行者の英二もそれほど自分のものを持っていなかった。少しの服とカメラだけ。いつでもここを出れるようにー。アッシュは直接英二に言ったことはないが、そんな思いが英二の中にもあったのかもしれない。

英二が入れたコーヒーをソファーで飲みながら、アッシュはそんな事を考えていた。アッシュが新聞をめくる音がバサリと響く。
その時英二がアッシュに声をかけた。

「君は何か持って行きたいものはないの?」

俺ー?

「そんなモノねぇよ。」

「本当に?」

よく考えてアッシュ。と英二はアッシュを見る。
英二の顔は真面目なものだった。黒い瞳がアッシュを捕らえる。その瞳はなぜか少し寂しげなように見えるのは気のせいか。

大事なものないのかい?

いままでで大事なものってなんだったの?

英二の瞳がアッシュに問いかける。アッシュはその瞳を見ながら考えた。


大事な・・・?



***********

アッシュはハッとして目覚めた。
どうやら夕食後パソコンを打っている間に疲れて転寝してしまったようだ。キーボードの手前で器用に机に伏していた身体をゆっくりと起こす。何やら長い夢を見ていたようだ。ここはこの2年間アッシュが書斎として使っていた部屋だ。この高級アパートメントのこの部屋でパソコンを打つのもこれで最後か。アッシュは眼鏡を外して、もう片方の手で眉間をもんだ。
変な夢をみたのは英二の言葉がひっかかっているからだろう。

ー何か持って行きたいものはないの?

そう言えばこのパソコンの中身はどうするか。フロッピーディスクに移して持っていくべきかどうか。ここ数年追っていた薬物のデータが残っている。アッシュは消すべきか否か今まで迷っていた。

だが英二が言っているのはそういう事ではないのだろう。

ー今まで大事なものってなんだったの?

頭の後ろで腕を組み、椅子の背に身を持たれかけさせる。椅子がキシリと鳴る音が小さく響いた。

アッシュはしばらくそうしていた。

そして立ち上がり書斎のドアを開けリビングへと入る。その目がソファーに座っていた英二を捕らえた。知らずとアッシュはかすかに微笑む。そのまま振り向いた英二に、ちょっと出てくると言い置いて玄関へと向かった。
英二は何事かと声をかける。

「え?ちょっとアッシュ?!どこ行くの?」

以前は頻繁にあった深夜のアッシュの外出も、退院後は全くなくなっていた。
だがアッシュが深夜出掛ける時はろくな事がない。との思いが英二にはある。

「野暮用。先に寝てろ。」
「え。待てよアッシュ!」

アッシュは玄関ドアを閉める前に後ろを追いかけてきた英二を振り向いた。

「寝てろ。」
「・・・・待ってるよ。」

アッシュは口の端を少し上げ、明日は早くから引っ越すのでいいから先に寝ていろ、ともう一度言って、そのままバタンと扉を閉めた。

そうして夜のNYに足を踏み出す。

先ほど転寝していたほんの数十分のうちに見た、長い長い夢を思い出しながらー。















ここまで読んでくださってありがとうございます。
え?!ここで終わり~?みたいな。カンジですよね。そうですよね。ごめんなさい。この話はプロローグなので、エピローグまでいくつか話があるのです。

アッシュの見た長い長い夢。ここからアッシュの人生の節々で大事だったもの探しが始まります。

大事だったものというより、「アッシュが選択してきたもの」でしょうか。もちろん大事だから選択してきた。
アッシュの人生は選択の連続だった。と私は思います。
もちろん私たちの人生も選択の連続ではありますが、アッシュの場合はliving or dead の選択が多そうです。幼い頃からその小さな賢い頭脳でその時の最善だと思われるのものを選んで来た。でないと生き抜いてこれなかったでしょう。生き抜くために何を選んで、何を諦めてきたか。選ぶほどの選択肢がなく否応なく選んできた、もしくは選ばされたものもあるでしょう。
悲しいことをいえば最後の2年間に英二を選びつづけたのは最善ではなかった。「選ぶべきもの」ではなく自分が心の底から「選びたいもの」を選んでしまった事が原因で生き抜けなかったんだと思います。それはそれでアッシュはとても幸せだったでしょう。最善ではなかったですが自分の欲しいものを手に入れ続けた最高の2年間だったんだと思います。

このシリーズではアッシュが生きてた設定から初めてますので、アッシュは死なないですよ!
私も皆さんと一緒でアッシュと英二の幸せな未来がみたいんですもの!!

ですので、アッシュの過去への旅に付き合ってくだされば嬉しいなぁ。

過去をめぐりめぐってまたif設定に戻ってくる予定です。(←色々書いてますが、そんなたいそうなものではないです。はい。今書いてるものを読み返すと何を選択したんだアッシュ?ともうグダグダかも。)ちなみにアッシュの過去なので、”目次&小説”カテゴリの年代別にそれぞれの話をアップしていきます。
1話1話は読みきりで1作ずつ読めます(と思います。)プロローグ含めて7作。
if設定でアッシュが何を選択するかまでよろしければお付き合いください。
ていうか、if設定でアッシュが何を選択するかまで管理人がアップし続けられることを祈っていてください!

それではアッシュの子供時代にレッツゴー。
シリーズvol.2は”目次&2次小説”カテゴリの
[1975年 アッシュ7歳-8歳。ケープコッドで暮らしていた頃の話]にあります。


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このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.05.07 15:51 | # [ 編集 ]

>ちょこぱんだ様
こんばんわ!コメントありがとうございます。
お返事遅くなってごめんなさい~。><
でも忙しい中ちょこぱんださんからのコメントがすごくうれしかったです♪

「英ちゃんが出て来ないって聞いてたんで」
ああ。そうか。各所でそんなことコメントしてましたね。ごめんなさい。
英二がでてこないのは、次の話から3話分です。
そんな英二スキーのあなたに、このシリーズの英二比率のご案内。
VOL.2 英二度0%
vol.3 英二度0%
vol.4 英二度0%
vol.5 英二度80%
vol.6 英二度90%
vol.7 英二度100%
ってところでしょうか。今から変わるかもしれないけど。
英二がでてくるにつれて明るいシーンも多くなります。
vol.5までしばらくお待ちください(笑)

「「。」で途切る所が好きです。この余韻が」
うわ~。ちょこぱんださん。すごい所を見てますね。
そーなんですよね。そういうの好きなんですよね。余韻というか間というか。
なんとなくリズムを気にしながら小説の文章を書いていくことが多いんです。リズムっていうかテンポっていうか・・。間合いっていうか。余韻っていうかですねw。

まぁ。そんなにがっつり考えてやってるわけではないんですけどね。ちょっとでも読みやすくできればいいなぁと思って。アップの前には微調整に微調整を繰り返し、面倒くさくなってアップが嫌になるっていうね(笑)

「アッシュのお話なのに、英二の事ばかり書いて申し訳ないです。 」
いえいえ。私もどちらかといえば英二スキーですからね!読んでいてすごく楽しいです(o^^o)

それと貧血についてのコメントありがとうございました。
こちらにまとめて返コメさせてください。
暖かなコメントに思わすホロリです。
そうですか。そんなに細かく色々食べて行けばいいのかも。
病院でお薬貰ってるんですがそれがまた違う理由で飲めなくて。ニントモカントモです。ちょこぱんださんの教えてくださったキクラゲとか牛乳とか試してみようかなぁ。

それでは楽しい&ありがたいコメントありがとうございました!

2013.05.10 18:32 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

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