Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

英二は目の前の金色のフワフワな物体を容赦なくハタく。

「いいかげん起きろよ!10時に起こせっていったのは君だろ?もう11時だぞ!!」
「・・・・・・・。」
殴られてあらぬ方向にハラリと落ちた髪の毛の束もそのままに、その綺麗な金髪の頭をシーツに潜らせて微動だに動かないその人物は、英二より2つ年下の同居人アッシュだ。

昨晩アッシュは深夜遅くに帰ってきた。そしてソファで彼を待って転寝していた英二を起こし、『ベッドで寝ろ。10時に起こせ。』と一言残して、そのまま英二より先に寝室に直行しベッドに横になった。せめて服を着替えろよと後を追った英二の言葉を聞くまでもなく、英二の親友はスイッチが切れたように眠りに落ちたようだった。アッシュのそんな姿を眺め、英二はところどころに付けられた服の汚れに気付く。まったくそんなに疲れることって何をしてきたのやら・・。

『僕はきみの目ざまし時計じゃないんだぞ。』

ぼやきながら、その体にシーツを掛けてやったのだ。

それから数時間後、英二は自分が数時間前に掛けたシーツをガバっと剥いだ。
「起きろって!いいか?これが最後だぞ!」
そしてカーテンを勢いよく開ける。窓から射し込む光がまぶしい。アッシュは剥がされたシーツを目を瞑ったま器用に手繰り寄せ、抱きしめ、くしゃくしゃになったそれに顔をうずめる。
「・・もう・・。僕もこれから行きたいところがあるから朝食は自分で適当に食べろよな。」
シーツに顔をうずめていたアッシュの耳だけがぴくりと動く。英二は構わず寝室を出た。

適当に食べろと言ったもののアッシュは放っておくと朝食をとらないのだ。冷めたトーストでもないよりましだろうと、食卓に準備するべくキッチンに向かった。

コーヒーメーカーにコーヒーをセットする。これは自分用だ。
カウンターの上に置いていた食パン一斤をまな板の上に置いた。
ガスコンロに火をつけて包丁をその上に持って行く。丁寧に包丁の両面を熱する。

「・・・・何してんだ?」
笑えないコントの爆発シーン後のコメディアンのような髪型でアッシュがドアの上の框に片手をついてこちらを伺っていた。その表情はひどく眠そうだ。
やっと起きたか・・。
「包丁を温めている。」
「へぇ。」
なぜ温めているのか。温めてどうするのか等は聞かずにアッシュはバスルームへと消えて行った。目が覚めるまでどれほどかかることやら・・。

英二は熱した包丁で食パンを厚く切っていく。こうするとやわらかい食パンが切れやすくなる。それでも食パンは切りづらかった。

まったくアメリカの包丁は使えない。切れ味が悪すぎる。

アメリカに来るまで・・というかこの高級アパートメントにくるまで英二はさほど料理をしたことがなかった。ただ日本では職を持つ忙しい母に代わって、たまに妹のために簡単な食事をつくってやることもあった。焼くだけ。温めるだけといった程度のものであったが、その時多少なりとも包丁を使った。だが包丁が切れづらいなどと思ったことはない。

英二は切った食パンを皿の上に並べてケチャップを塗る。

日本では慣れない包丁を使うときは指を切らないように細心の注意を払はねばならなかった。だがこちらの包丁は、どうやら切れないことが信条であるかのようだ。
最初はあんまり切れないので不良品なのかと思い、何本か包丁を変えてみたがどれも切れない。おかげでシンク下には役にたたない包丁が何本か揃っている。銀行強盗をするときは不自由しないだろう。する気もないが。

トマトを切る。

以前、切れない包丁に四苦八苦しながら、力強くじゃがいもを剥いていた時、勢いよくうっかり手を滑らした。やばい!と思ったが指は全くの無傷だった。その指をマジマジと眺め、そして英二は脱力した。それは安堵からではなくむしろ包丁の切れ味の悪さを身をもって体験したからだ・・。
アメリカで料理をするようになって数ヶ月。英二は包丁の切れなさ加減ににうんざりしていた。
今も目の前のトマトをスライスするにもスッとその実に包丁が入っていかない。おかげで切るというより押さえて割り込むといった感触だ。熟したトマトがつぶれそうになる。

そして食パンの上にスライスしたハムを載せ、トマトを並べる。

日中、このアパートメントで英二にはやることがない。一人で外出することをアッシュが嫌がるからだ。それには充分な理由があるので英二も納得はしている。
この高級アパートメントで英二が出来ることと言えば主に4つ。
-窓の外のマフィアのビルを伺いその来客者を写真におさめる事。
だがこれは非常に単調な仕事で、ボーンズやコングと交代しないと窓の外を一人でずっと見ていることなどできない。
-簡単な筋トレをする事。
それはやはり単調な腕立てふせや腹筋だった。アッシュは地下のジムを使えばいいというが、なんとなくその気になれなかった。
-1階のスーパーに行って買い物する事。
それには近所の奥様方との会話がつき物だった。英二は人付き合いは悪いほうではなかったが、たまにこの主婦トークには辟易させられることもあった。
-そして料理をすることだ。

さらにその上に輪切りにしたピーマンを等間隔で並べ、最後に細く切ったチーズを散らした。
ピザもどきの完成だ。
そしてそれらをオーブンに放り込みダイヤルを回す。

英二の気を紛らわす、このアパートでやれる事のうちのひとつが料理だった。だが、その料理と切ってもきれない縁のある包丁がこの様だとストレスがたまる。たまるのだ。

オーブンの中のピザもどきが焼きあがるのを待つあいだ、英二はカップにコーヒーを注ぎゆっくりと口をつけた。

英二は前々から思っていたことを今日実行しようと思っていた。

チン。とトーストが焼けた音がする。英二は火傷をしないようにそこからトーストを取り出し、皿に並べて、シャワーから出たアッシュの待つダイニングテーブルまで運ぶ。

アッシュは濡れた髪を拭いたタオルを肩にかけたまま、新聞を読んでいた。
「やっと目が覚めたようだね。」
「アレ以上寝てたら誰かに熱い包丁で刺されかねなかったからな。」
「熱いコーヒーも用意してたけどね。君の頭にこぼさないでよかったよ。」
「・・・・」
コーヒーカップをコトリとアッシュの目の前に置いた後、英二は椅子を引いて彼の前に座った。
「お前。ほんとマメだな。」
トーストを食べながらアッシュは呟く。片手には器用に新聞が持たれている。
「切って乗せて焼くだけだよ。誰でもできるさ。」
「ナットウをかき回すよりはひどく簡単そうだ。」
アッシュは肩をすくめて見せた。

この寝起きの悪い同居人の朝のご機嫌はいつもいいとはいえないが、今日のそれは一段と斜めのようだ。

「朝なんて、卵とトーストでいいんだぜ?もしくはシリアルと牛乳とかな。」
「毎日それじゃ飽きるだろ?なんだい。作って欲しくないのかい?おいしくない?」
「うまい・・・。」
そういったアッシュの顔は新聞に隠されていて見えない。しかし口はしっかり動いているようだ。

毎朝10時過ぎに朝食を食べるアッシュの食生活はあまりよろしくない。
アメリカ人のくせにハンバーガーが嫌いな彼は遅い昼食に何を食べているだろうか。
図書館に行ったときはほぼ屋台のホットドックしか食べないようだし。
以前昼には何食べてるのかと聞いたことがあるが『なんでもいいだろ』と教えてくれなかった。
なるべく遅い朝食も野菜等バランスのいいものを出したほうがいいのだろうが・・英二も栄養の事までいちいち考えて作れる程料理の腕がいいわけではなかった。そんな知識もない。

「お前・・行きたいところってどこだ?」

不機嫌の理由はもしかしてこれ?
そういえば、さっきアッシュが寝ていると思ってぽろっとそんなことを口にだしてしまったか、と考えつつ英二はアッシュの問いに答える。

「フォートリー。」
フォートリーとは、N.J.州だ。だが、マンハッタンとは湾を挟んですぐ隣りにある。
「・・・なんで?」

英二は説明した。
アメリカの包丁の切れ味が悪いこと。日本の包丁はもっと切れること。そこはN.Y.に仕事を持つ日本の駐在員が多く、日本人向けの店があるらしいということ。それをボーンズとコングに言ったらバイクで乗せていってくれることになったこと。そしてもうすぐ彼らがバイクに乗ってやって来る。

アッシュは相槌を打たずに聞いていた。そして最後に、「ふーん。まぁいいんじゃねぇの?」と興味なさげに呟いて、新聞をテーブルに置いた後そのまま玄関へと向かい、いつもの通り何処かしらへと消えてしまった。

ボーンズ達と行くとはいえ、アッシュ特有の嫌味の一つや二つは言われるのではないか、引きとめられるのではないかと思っていた英二は拍子抜けをした。

行ってもいいってことだよね?

何か釈然としないまま、英二はボーンズ達がいつ来てもいいように準備をはじめた。


*********


英二は炒飯を作っていた。

片手でフライパンを返す。
一瞬宙に浮いたその中身がフライパンの中に上手い具合に着地する。
手慣れてきた。と、自分でも思う。
冷蔵庫の中にあったハム、ピーマン、玉ねぎを使って英二は炒飯を炒めていた。

『午前中にバイクに乗っていくから待っとけよ。』

と約束してくれたボーンズ達がまだ来ない。今は1時にもなろうとしている。
リンクス達が時間を気にしないのはいつものことだ。だから英二は腹も立てない。遅れるだろうは思っていた。

もう一度大きくフライパンを返す。フライパンの上で炒飯が上手く翻った。

日本にいた頃、珍しく妹が日曜日の昼食に自ら炒飯を作ろうとしていた時を思い出す。彼女はフライパンを手で返してポロポロと周りに中身を落としていた。
昼飯はまだかと後ろから覗いた英二が、『お前下手だな貸してみろよ。』と妹からフライパンを奪い、見よう見まねでやってみたら上手くいった。お兄ちゃんスゴイ!と笑顔になった妹に、英二が調子に乗って、もう一度フライパン返すと辺りに盛大にご飯をブチまけた。
『ビギナーズラック・・・。』
と呟いた妹の小憎らしい顔が忘れられない。

でも、あれはホントにビギナーズラックだったんだよなぁ。

あの日もそれからも、たまに握ったフライパンは最初の一回ほど上手く返せなかった。
だが、このアメリカでの自炊生活において、英二の限られたレパートリーの中で炒飯の占める割合は大きい。簡単だからだ。
今ではすっかりフライパンを返す事も上手くなった。日本に帰ったら妹の前で何回でもフライパンを返してやってその賞賛を浴びてやろうと心の中でほくそ笑む。

そろそろ来ないかなぁ。

出来上がった炒飯の火を止める。3人分にしてはかなり多い。が、コングの事を考えるとこれくらいは作らなくてはならなかった。



******


英二は夕刻前に1階のエレベーターホールにいた。
先程のボーンズ達の様子を思い浮かべながら。

炒飯が完成してほどなくして玄関ベルがなった。

ー来た。

英二が玄関ドアを開けるとそこには微妙な顔のボーンズが待っていた。後ろにはいつもの通りコングがいる。
『どうしたんだい?変な顔して。』
『・・・オレぁもともとこんな顔だ。』
と言いつつ、英二と目を合わさず2人は室内に入る。
お昼食べるよね?とキッチンに行こうとした英二をボーンズが引きとめ、言いづらそうに言い訳をはじめた。なんでも今日は用事ができたらしい。だからフォートリーには行けない。と。

『そうなんだ。リンクスでなんかあったの?今ここにいていいの?』
『いや。なんかあったっつーか・・・なんつーか。』

と歯切れが悪い。とにかく今日は行けなくなった。電話しようと思ったのだが、コングが英二の昼ごはんを食いたいとうるさいので飯だけ食いにきた。すぐに出ないといけない。と言う。

じゃぁ。すぐに用意するね。と英二が用意した炒飯を2人は慌てて掻き込んた。30分もしないうちに、今日は悪かったな。一人で外に出るなよ。と言い置いて帰ってしまった。

英二は気が抜けてしまった。なかなか今日の日を楽しみにしていたんだな。と自分で思う。

遠出できるのも久しぶりだったしなぁ。

しかもバイクに乗せてくれるというのだ。人の後ろに乗るとはいえ、風を感じながらバイクで走るとなんだかストレスも発散できそうだと期待していた。まぁトラブルなら仕方ない。また今度つれていってもらおう。とため息をつきながら食器を片付け、ソファでカメラ雑誌を眺め、買い物にでもいくかとこの部屋の鍵を手に取り、クレジットカードをポケットに入れて部屋を出たのだ。

そして英二は静かなエレベーターホールで紙袋の中の鶏のもも肉の塊をチラリとみる。今日の夕飯のシチューに入れようと思って買ったのだが。
ー鶏肉の皮が、あの包丁だと切りずらいんだよなぁ。まだ牛肉の方がましだったかも。本当は今日はなぁ。
と本日手に入るはずだった包丁に思いを馳せた。

その時、後ろから聞き慣れた声に声を掛けられた。
「何してる。」
振り向いた英二は驚いた。アッシュがそこに立っていたのだ。彼がこんな早くに帰ってくるのは珍しい。リンクスでトラブルがあったらしいので、てっきり今日は日が変わっても帰ってこないのかと思っていた。
「何って・・」
買い物だけど?と英二はスーパーの袋を上げてみる。
「それ部屋に置いて戻って来い。」
「なんで?」
「行くんだろ?」
どこに?と英二は怪訝な顔をして眉を寄せる。そんな英二にアッシュは手の中で鍵をならしてみせた。

「日本の店。」

アッシュが持っているのはバイクの鍵だった。


*****************


そして、英二はアッシュが運転するバイクの後部座席に座っていた。



ヘルメットもつけずに乗っている2人の髪が風になびく。その風のここちよさに英二の気分が少し上がった。今から念願の包丁が手に入ると思うと、それもまた嬉しい。

英二が慌てて8階の自室に食材を置いて戻ってくると、アッシュがこのアパートメントの玄関脇に留めたバイクの前でドアマンと談笑していた。ドアマンはバイクに詳しいらしい。どうやら”クリスが中古バイクを手に入れた”設定で2人は盛り上がっているようだ。そこにお待たせと英二が声をかける。ドアマンの彼が英二に挨拶をした。
『やぁ。英二。英二はバイクに乗れるのかい?』
『ええ。人の後ろなら。』
『ああ。それで充分だね。乗ったことのないやつは、バイクが曲がる時にバイクと一緒に上体を倒せないからなぁ。』
じゃぁ僕達急ぐから。とアッシュがドアマンの話をさえぎり、バイクに跨り英二に「乗れ。」と呟いた。英二も後部座席に跨りアッシュの腹に手を回す。

『お前。ホントに乗ったことあんの?』
『あるよ。日本でね。』
2つ年上の近所の幼馴染が暴走族に入っちゃってさ・・・。と、言葉を発する前にアッシュがエンジンを拭かしてバイクを発進させた。
『Have a good time!』
とのドアマンの声はエンジンにかき消され、2人の耳に入ってこなかった。


危なげない運転でアッシュがバイクを走らせて行く。
やっぱり気持がいいなぁ。と英二が思っているうちにそのバイクが減速した。
そしてアッシュは2人の住む高級アパートメントから5分ほど走ったところでバイクを止めた。
「降りろ」
と言われて英二は素直に降りた。そこはどうやらスーパーのようだった。

え?

英二はそのスーパーの店名を読んで驚いた。

ーMIKADOー

・・日本・・語?

アッシュに促されそのスーパーに入る。
アッシュの背について、英二はスーパーの奥へと進む。
まずは野菜コーナー。そして魚コーナー。そこには英二にはなじみの干物や、新鮮な魚が刺身として売られていた。

英二はアッシュについて行きつつ、あたりを見回す。

調味料コーナーを通りぬける。そこには数種類の醤油や味噌が立ち並ぶ。そしてアッシュはその先の一角へと英二を連れて行った。
そこは調理器具コーナーだった。その片隅のガラスケースの中に包丁が並べられている。どれも日本製だ。
アッシュは通りかかった店員に声を掛けてそのケースを開けてもらった。その店員は英二と同じ黒い目に黒い髪。店員の説明をひととおり聞いたあと、その内の一本をアッシュは手に取る。

「これなんかいいんじゃねぇ?」
「・・・・・・・。」
「ふーん・・確かに切れそうだな。この包丁。」
「・・・・・・・。」
「すげー。歯先に顔が映りそうだぜ。」
一つの言葉も発さない英二に構わず、アッシュが一人で言葉を続ける。
「お前。指とか切らないようにしろよ。いつも手が滑ったとか言ってるだろ?」

・・・・。

「アッシュ。」

なんだと答える代わりに、アッシュが英二を見た。その翡翠色の瞳を面白気に輝かせている。
「・・・なんでここに日本のスーパーがあるっていままで教えてくれなかったんだい?こんなに近いのに。」
アッシュは包丁を棚に戻し、わざとらしく考えるフリをしながら顎に指を当て視線を床に落とし、少し黙った後に視線をまた英二に戻して答えた。ほんの少しだけ顔を傾げる。

「聞かれなかったから?」

シャァシャァと答えた。

~~~~!

「教えてくれたっていいじゃないか!」
英二がアッシュに詰め寄る。そんな英二の剣幕をかわすように、アッシュが上体を少し反らした。しかしその顔は面白そうに笑っている。
「お前ちょっと考えてみろよ。あいつらスシとかトーフとかお前に差し入れたことあっただろ?どこで買ったかとか考えねーの?」
あいつらとはリンクスの事だ。たしかに以前、ベアーズ親父のホテルで寿司と豆腐を差し入れされた。2人が現在住む高級アパートメントの1階のスーパーでは、それらが健康食品としてたまに並んでいる。しかし、差し入れされた時はまだそこには住んでいなかった。あの時のリンクスが、高級アパートが立ち並ぶあの通りのあのスーパーを使ったとは思えない。

確かに考えが及ばなかったけど・・。

アッシュは刃先が光るくらい鋭利な日本の包丁をもう一度手に取った。何かを確かめるように裏返す。
「使わないとサビるぜ?」
そりゃそうだろう。だが、今の英二の状況でサビさせるほど包丁を使わないわけがない。英二がそう言おうと開いた口を、アッシュがニヤリと笑って遮った。

「頭が、な。」

「ーーーーーーーー!」
怒りで声の出ない英二を横目にアッシュは、この包丁でいいだろと聞き、店員にそう告げてから、英二の返事も待たずにレジに行く。そして支払いを済ませて戻ってきて、ほら、と英二に手渡した。

「帰るか。」

バイクで5分。歩いて12分のあの高級アパートメントまで。


*******


ダン!

まな板に包丁が叩きつけられる大きな音がキッチンに響く。
英二は先程購入したばかりの包丁を使っていた。念願のこの切れ味。硬いものも切れる。なんだか釈然としない気分もスッとする。

あれから、アパートメントまでバイクで送ってもらった英二はそのままアッシュと別れた。トラブルは本当の事だったのだろうか。アッシュはバイクに乗ってまたどこかへ消えてしまった。
アッシュと別れた英二は『何か忘れ物でもしたのかい?』と尋ねるドアマンに、『ええ・・まぁ。』と曖昧な笑みを返し、そのまま1階のスーパーに行って、あるものを買ってきたのだ。そのあるものとは・・。

「うわっ。お前、チャレンジャーだな。」
ボーンズがキッチンにいる英二の手元を覗いて呟いた。

そのまな板の上に少し大きめのダイス状になって転がっていたのは・・・カボチャだ。

「いまからこれを煮付けようと思って。」
生まれて初めて作るから上手くできるかどうかはわからないけどね、と小声で言いながら、英二は切ったカボチャを鍋にドカドカと入れていく。
ボーンズの後ろからやはり英二を覗いていたコングが英二に忠告をした。
「英二。知ってると思うけどよぉ。ボスはカボチャが苦手なん、」
「知ってる。」
コングのセリフを皆まで言わせず英二が遮った。

水を入れて、各種調味料を入れていく。適当だ。祖母が作ってくれたのはこんな感じだったと思う。
醤油が残りあとわずかだった。英二は内心舌打ちする。そういえば、今日初めて行ったあの店にはいろんな種類の醤油があったな。と思い浮かべる。買ってくれば良かった。だが今回の分には足りそうだ。


大きなカボチャを持って最上階の自室に英二が帰ってからしばらくして、玄関ドアのベルが鳴ったので、開けてみたらいつもの二人だった。
トラブルって・・と半ば理由を察していた英二がボーンズに聞いてみると、『ワリィな。ボスがお前を自分で連れて行く、でもお前には黙ってろって言うからさぁ。』と彼が言い訳をした。そうだろうと思ったよ。と英二は2人を部屋に通す。

そして英二はそのままキッチンへ直行したのだった。


ボーンズとコングはキッチンでカボチャと格闘している英二をしばらく見ていた。英二の機嫌はなんで悪いんだ?さぁ?と小声で話しながら2人はキッチンを離れようとする。そこを英二は呼び止めた。

「なんで君たち教えてくれなかったんだい?」

あの日本の店のことか?と2人は首を傾げて少し考え、顔を見合わせた。その後英二にもう一度顔を向けて、声を揃えてこう言った。

「「聞かれなかったから?」」

あのボスにしてこの子分ありだ・・。

落胆した英二は、ため息をつきながら冷蔵庫から納豆のパックを取り出した。









最後まで読んでくださってありがとうございました!
注1:調べてみたら、2人の住むアパートのすぐ近くに日本のスーパーがあるみたいですよ。マジで。80年代にもあったみたい。
注2:アメリカ在住の方で”包丁が切れない”とのブログ記事を何件か読ませていただいて書きました。
注3:この小説は”英二ちやほや企画。英二の日。”の記念小説です。
注4:でも英二がちやほやされてなくてゴメンナサイ。
注5:「このしょうせつで こばは えいじに ほうちょうを ぷれぜんとした。」(←RPG風。理由はない。)
注6:出来上がって思ったけど、図らずとも”ちやほやバナー”の文言全部反映されてる。図ってない・・と思う。(ホンマか。いやさすがに最後の1行は意識した。)
注5:”英二ちやほや企画”に付き合ってくださった全ての皆さま。本当にありがとうございます!
スポンサーサイト
[PR]

英二ちやほや企画小説、楽しませていただきました~^^アッシュと英二がバイクに乗っているところ、そして一緒に買い物している描写に、ついニヤニヤしてしまいました。二人のやり取り、原作に出てきそうな感じですね。憎まれ口をたたくアッシュがこれまた、かわいい!です。どうもありがとうございました^^

2013.07.31 06:30 URL | ueaya #- [ 編集 ]

小葉さん、こんにちは^^
『ある英二の一日』、拝読させていただきましたvvv

英二がトーストを作る過程の描写が丁寧で、それゆえにその姿が目に浮かんできてニマニマしてました^^
アメリカの包丁って切れ味悪いんですね!初めて知りました。
寝起きの悪いアッシュと、切れにくい包丁。
このふたつが重なって、うんざり気味になってる英二の心理が料理作ってる姿から伝わってきました。
うんざりしてても、英二ったら面倒見がいいからちゃんとアッシュのために朝食作ってあげるのですねvvv

寝起きのアッシュも、アッシュらしくて大好きです!
髪の毛爆発アッシュが愛しいです…(〃▽〃)

最後の英二の選んだ食材に笑いました。
確かに、切れ味のいい包丁じゃないとカボチャって切れませんもんね…すっぱり切ってスカッとする英二が見えますwww

英二の日企画、盛りだくさんでまたまた楽しませていただきました~!
ありがとうございましたvvv

2013.07.31 16:24 URL | 手塚リゲル #4ihrcKAM [ 編集 ]

★>ueaya様
こんばんわ!読んでコメントくださってありがとうございます~。

「楽しませていただきました~^^」
ありがとうございます!楽しんでいただけたとのコメント本当になにより嬉しいです(*^^*)

「ついニヤニヤしてしまいました。」
やっぱり2人の日常てで2人が仲良くなにかしているところが萌えどころですよね~。私も書いていてたのしいですv


「二人のやり取り、原作に出てきそうな感じですね」
わ~ありがとうございます~(=´∀`)人(´∀`=)
そういうのを考えるのが好きなんですけど最近脱線しまくっていたので・・。そうコメいただけて嬉しいです(*^^*)

それでは!うれしいコメントありがとうございましたー。

2013.07.31 19:58 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

★>手塚リゲル様
コメントありがとうございます~♪

「それゆえにその姿が目に浮かんできてニマニマ」
わぁ。そういっていただけると嬉しいです~^^。
なんか細かすぎたかなぁ。と思って削ろうかとも思ったんですけど、そのままにしておいてよかった~。
以前ネサフ中にアメリカの包丁は手が滑っても切れないというブログ記事をどこかで読ませていただいて、へー。とか思ってたんですよね。まぁ。包丁にもよるんだろうと思いますが今回話をでっかく膨らまさせていただきました。でも手を滑らしても指が切れなかったというのは実話みたいです。すごい。

「うんざりしてても、英二ったら面倒見がいいから」
ですよねーvvv。英二。そのオニィチャン気質。

「髪の毛爆発アッシュが愛しいです…(〃▽〃)」
見てみたいですよね。見てみたくないいですか?w
髪の毛爆発でボーっとしてるアッシュ。英二はいいなぁ。毎朝見れて。

「英二の選んだ食材に笑いました。」
ありがとうございます~w。楽しんでいただけてうれしいですvvv。
最後にカボチャで英二はスカッとしてくれればいいんですけど。でもボーンズ達の回答でまたイラっとさせちゃった。

それでは。
うれしいコメントありがとうございました~~。

P.S.もうひとつコメントありがとうございました。返コメ不要との事だったので、甘えさせていただきました~。リンク貼りましたのでご確認ください♪でわ~。

2013.07.31 19:59 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.07.31 22:17 | # [ 編集 ]

★>マオ様
わーい。マオさんこんばんわー。「英二の一日」にコメントありがとうございます!

「出だしから、アッシュと英ちゃんの攻防にニヤリ」
えへ。そこニヤリとしてくれるとうれしいvv。

「でもあくまで軽くで、強くはできないんだよ・笑」
おお~。そうですね。アッシュが英二を起こすときは、ここぞとばかりに嬉しそうに叩こうとして、英二のかわいいv寝顔を見て手が止まっちゃって。
”・・・・・・・。” ペチリ。
みたいな(笑)
どうですかどうよコレw。
いかんいかーん。ここからまた萌え妄想が広がっていくー。><

「ああでも、優しく揺り起こすのも捨てがたいかな!」
もー。マオさん。どんだけ私の翼を羽ばたかせるオツモリー。
ちなみに私はぶっきらぼうに揺り起こす派です。(どんな派閥)

「それにしても、首を傾げるアッシュが可愛い~!!」
フッ。そこちょっと狙ってみました。みんな角度が一緒なんですよ!!

「ただじゃ起きない英二、最高です!」
ありがとうございます!ウチの英二は負けず嫌い成分が入ってます!

「あるある!ってエピソードで微笑ましい」
ありがとうございます~~。英二と妹のこういう話とかなくてもいいんでしょうけど・・・。でも書いてる途中でこういうの想像しちゃうと思わずキーボード叩いていっちゃうんですよねー。
どうでもいいこういう話ダメな人はダメなんだろうなぁ。とか思ってるので、そうコメいただけるとホッとしますv

「あと2日、私も頑張ります♪」
そうですねー。でもそこらへんはテキトーにやってくださいねv。でも楽しみにしてますw。

それでは楽しいコメントありがとうございました!

2013.07.31 22:43 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.08.01 02:20 | # [ 編集 ]

★aia様
aiaさーん。めっちゃ長いコメントありがとうございます(*^^*)
そして、もひとつお礼。
先日は“念”をありがとうございました!
お陰様でこの話書き上がりました。・゜・(ノД`)・゜・。
きっとaiaさんに念をもらったからだ~。ほんとありがとうございます(^ ^)

「ちゃんとお料理されるんだ」
いや全然っすよ。仕事で疲れちゃったらもうなかなかねぇ。こちらに足を運んでくれる皆様は主婦の方も多いみたいですが、時短料理を大募集して教えていただきたいくらい。マジで何回コッソリやろうと思ったことか。

「しかも店名「MIKADO」」
本物の店名はMIKADOではなかったです(^ ^)
ほんとはこの話、本気で英二とアッシュに長いツーリングをしてもらおうと思って書き始めたんですが、調べたら2人のアパートの間近くに日本のスーパーがあった(驚愕)お話にならないわー。と数ヶ月放置してたのを今回のために軌道修正して仕上げました。ホント念を、ありがとうございますー。

「ナットウをかき回すよりはひどく簡単そうだ。」
これ(笑)なんかアメリカの人ってこんなこと言いそうですよね(笑)
その他セリフに“あるある“とコメくださって嬉しいです!ありがとうございます~(=´∀`)人(´∀`=)

「とうとう明日は英二の日!」
そうですね!いよいよです!みなさんと盛り上がれればいいなと思います!
aiaさんの絵もとてもたのしみです~。

そして。バナーにもコメントありがとうございました~。まとめて返コメすみません><。

「わ、笑える~」
まぁ。そういっていただけると~~(嬉)
毎日バナーを換えたかいがあるってもんですー。

なんと皆勤賞だったんですよー。すごいぞ私ー。

それではご丁寧でたのしうれしいコメントありがとうございました~(^ ^)

2013.08.01 21:43 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.08.03 19:31 | # [ 編集 ]

★>ミチル様
ミチルさんこんばんわ!コメントありがとうございます!

「本当は3作すべてにコメントをしたいんですが」
まぁ。なんともうれしいお言葉。でもムリしなくていいんですv思ってくださるだけで充分ですよー^^。

「軽妙でクスってさせられる感じ。」
言葉に言葉を返していくのが好きなんです。オフ生活でも。言葉のやりとり楽しいですよね~。

「お笑いがお好きだからなんでしょうね。」
どうなんでしょうね。関西圏で普通に育ったら普通にテレビで目に入る程度には好きでした。関東圏に来て思ったんですけど、こちらはお笑い番組が少なすぎですね・・・。そりゃ性格や考え方や会話の内容が違ってくるよなぁ。って思います。深夜のくだらないお笑い番組が懐かしい。
でも一番は、そういう「軽妙な会話」が載せられている小説を読むのが好きなんです。ギャグまでいくと辛いんですが、主人公達が小気味いい会話をしているようなのが好きです。好んで選んで読んできました。

「きちんと調べてらっしゃるんですね。」
そうですねぇ。きちんとかどうかは自信ないですけど、外堀を埋めるとお話が想像しやすいんです。あと、このブログで小説を書くにあたり”ちょっとしたリアリティ”を出してみたいと思いました。そういうのも面白そうだな。と思って。

「やっぱり頭の中を覗いてみたいです。」
頭の中ですか・・・小さい頃から本を読んであれこれ想像するのが好きだったんですけど。まさかこの年になってこんなことで役立つとは思いませんでした。この1年バナナの事しか考えなかったんですけど、そろそろ他の話もまた楽しみたいなぁ。と思います^^v。

「映画を見るように脳内で画が再生されるんです。」
ありがたいことに今まで数人の方に似たようなコメントをいただいたんですが。おもしろいことに、絵師様からいただくことが多いですw
まぁ。そういうことなんでしょうねぇ。絵を書く人は場面を創造する力がとてもおありなんだろうと思います。それでも私の小説でそうコメントくださるということは、合うんでしょうかねぇ。ああ。私こそミチルさんの頭の中を覗いてみたいです。わたしより私の話が3Dで動いてるんじゃないですか(笑)

「アメリカ人て大雑把にもほどがあるでしょうに。」
アメリカは訴訟大国ですから、”包丁で手を切ったから損害賠償をよこせ”とメーカーが訴えられないように包丁が切れないとか(違)
冗談はおいといて。そういうブログ記事を何件か読ませていただいたんですが、全ての包丁がそうとは限らないでしょうし、今回、話は盛らせていただいてますよ!ww。だから話半分で読んどいてくださいw。

「明日はカボチャの冷製スープを作ろっと。 」
最後にミキサーかけるのめんどくさくないですか?
ミチルさんはきっとお料理が上手なんだろうなぁ。ビクトリノックスから結局貝印て。使った人しかわからないこだわりでかっこいいですv。
私、小説を書き始めてから、小説を書く時間をひねり出すためによりいっそう料理に手を抜くようになったんですけど、教えてください。簡単だけどおいしくて見栄えがいい料理を。
という企画をマジでコッソリ開こうかと何度思ったことか。開いたら乗ってくれますか?

それではうれしいコメントありがとうございました!

2013.08.04 22:05 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.08.05 11:30 | # [ 編集 ]

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.08.08 00:15 | # [ 編集 ]

★>ちょこぱんだ様。
わー。ちょこぱんださんこんばんわ!

「この後、切れ過ぎて手を怪我して『-your kiss-』に続いて行く」
なるほどー。そういう考え方もありますねー。^^

「『続・可愛い君。』に出てくる包丁も切れる方ですよね?」
ああ。そうですね。アレはあきらかに切れます。今回アッシュに買ってもらった包丁を英二は何年も大事に使ってる。
なんてどうでしょう。いま決めました(笑)

「「銀行強盗をするときは不自由しないだろう。する気もないが。」って突っ込みが小葉さんらしくて大好きです。」
ありがとございます。ここ書きながらちょこぱんださんの事がフッと頭をよぎりました。なので「する気もないが。」部分はあきらかにちょこぱんださんだけ向けサービスです(^ ^)拾ってくださるのは五分五分だと思ってましたが。ありがとうございます(*^^*)

「Recipesはやっぱり原点ですね。」
そうですね。やっぱりねぇ。
あんまり関係ないですけど、以前どこかで『美味しい料理をつくる妻の夫は浮気しない』って読んだことがあって、料理というのは威力があるんだなぁ。と思いました。
アッシュの場合『自分のために作ってくれる』事自体が嬉しいことではないかなぁって。『自分のために作ってくれる=自分の事を考えてくれてる』って事ですもんね。毎日作る側からするとただ面倒くさいだけなことかもしれませんが(苦笑)
つまりは自分の事を考えてくれる英二の元にアッシュは帰るんですよ!
ウチのサイトコンセプトが今はっきり決まりました!(笑)
ブログ名は本当にテキトーに決めたんですけどねぇ。

「もっと長距離ツーリングさせてあげたかったなあ」
最初はねそのつもりで書き始めたんですよ。数ヶ月前に。2人にツーリングでもしてもらおうって。NYの日本の駐在員で子供がいるご家庭はマンハッタンの外に家を借りるんですって。そしたらそこに日本の店もありそうだなぁ。って思って。さて具体的にどこへという段階で日本の店を調べてみたら“めっちゃ近くに店があるやーん。“て頭を抱えて放置してたんです。遠くまで行くことなじゃないかと。でも今回英二の日用に無理やり仕上げました。

「二つ上の暴走族に入った幼馴染のことが気になるのは私だけですか?」
ちょこぱんださんだけ見たいですね(笑)
突っ込んでくれてありがとうございます!
英二の高校時代って学校が荒れてた時代だったんじゃないかなぁ。って。だから、結構ヤンキーとか見慣れてるんじゃないかなぁ。って。不良とも話せる普通の人っているじゃないですか?それが英二設定ですvだからきっとストリートキッズも”本場のヤンキー”くらいの感覚なのかもしれないとかw。

「まさかの「英二の日」二本目」
なんかねぇ・・思ったより参加サイト様が多くて。しかも何にしようと悩んでらっしゃるものですから。主催者が新作の一本もださなきゃなんか申し訳ない気がしてねぇ・・。
ところでケイタイってそんなに大変だったんですね。容量オーバー?(汗)よくわかんない><。なんか無理させてごめんなさい~。
そっかー。アホほどクリックしてくださったのはちょこぱんださん(だけ)ではないのかー。そっかー。ホント有り難いなぁ・・。
でも多くの人が楽しんでくださったと思うと本当にうれしいです。”本当にうれしい”って言葉を近頃いっぱい書いてるんですけど。これちゃんと伝わるのかなぁ。

「有難うございました。」
いえ。こちらこそ本当に有り難いことだと思っております。ありがとうございました!
お返事おそくなってごめんなさい。今週倒れるかと思うくらい体調悪くて・・。
それでは本当にありがとうございました。コメントうれしかったですv。

2013.08.10 01:15 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

トラックバックURL↓
http://cobabanana.blog.fc2.com/tb.php/213-935d536a

| ホーム |