Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

1. 中学の修学旅行に持って行ったカメラのメーカー名は覚えていない。

「母さ~ん。カメラどこ~?」
居間の押入れの中を探しても探してもカメラが見つからない。明日修学旅行なのに。まいったなぁ。
「英二?まだ起きてるの?早く寝なさい。」
「だって、カメラが見つからなくて。」
「カメラ?ここにあるじゃない。」
洋服ダンスの下の引き出しからカメラが入った箱がでてきた。
なんでそんなところに・・・。
母はとても懐かしそうな笑みを浮かべながら、買ったときのままの箱を開け、黒い皮ケースに入っているカメラをそこから出した。説明書まで一緒に出てきた。
「このカメラはね。新婚旅行の時お父さんが買ってくれたのよ。」
古・・・。
「あの時のお父さんは本当にうれしそうに写真を撮ってくれたわ。10本もフィルムを使って、帰ってきてからの現像代に青くなっていたのよ。」
少し嬉しそうに語る母のことをかわいいと思ったのはそれが初めてだ。
「・・・大事に使ってね。」
時代遅れのカメラを母はそっと皮ケースにしまって、丁寧に箱に入れた。説明書も箱の中に入れる。そして僕にそれを手渡した。

両親の思い出のカメラで僕はたくさんの写真を撮った。
友達の写真を撮るのはこんなに楽しいのもだと僕は初めて知ったんだ。




2.僕を撮りに来た美術大学生の持ってたカメラは国産の最新鋭カメラだった。あのカメラは今でも彼の元で大事にされているらしい。

「へぇ~。Nikon・・のFE2?すごいですね~。」
「そうなんだ。やっぱり男は黙ってNikonだよ。英ちゃん。このカメラの良い所はねー。」
伊部さんは煙草を燻らせながら手に持ったカメラがどれほどすごいかを熱く語り出す。
僕の棒高跳びを撮りに来ている伊部さんは僕の家に泊まっていた。
『東京から来た』『美大生で』『僕を撮りに来て』『コンクールに出品する』という彼は、田舎の普通の高校生の僕にはすごくキラキラして見えた。
カメラの事はよくわからなかったけど、彼が手に持っている頭が銀色で黒いボディのカメラがとてもカッコよく見えて。
僕は分けもわからないまま、彼の話を聞いていた。
あれから僕はどれほど伊部さんにお世話になっただろうか。どれだけ感謝してもしきれない。

君に会えたのも伊部さんがいたからだ。




3.名ばかりのカメラマン助手になって初めて自分のものになったカメラは伊部さんのお下がりのCanon A1だった。このカメラは僕の写真を出品したコンクールの賞品で貰ったらしい。初めての一眼レフの写りはとてもシャープで、僕はシャッターを切ることに夢中になった。そのカメラは今は手元にない。

「やめろ。」
厳しい口調で君が僕を制した。
それはグリフィンに投薬された薬物の秘密を追ってL.A.までオンボロ車で旅をしてる途中だった。
あの時の僕達はまだ出会ってそれほど経っていなくて、59丁目のアパートにいた頃よりも君はまだまだ僕に警戒心があったように思う。今から思えば本当に猫みたいだ。都合のいいときは寄ってくるけど、何が気に入らないのかふとした時にこちらを威嚇する猫。
でも僕はショーターと3人でワイワイとやるのが好きだった。
その時も、君とショーターが楽しそうに笑ってる姿を何の気はなしにカメラに収めるべくシャッターを切ってみただけだったんだ。君のきつい瞳と制止の声に僕は驚いた。
「勝手に撮ってんじゃねーよ。」
「なんで?」
「写真は嫌いだ。」
「どうして?」
「どーしたもこーしたもねぇよ。」
そんな問答をする僕達の間にショーターが割って入った。
「まぁまぁまぁ。そんなにカッカすんなよ。英二に悪気なんてないだろう?それにプロのカメラマン(助手)に撮ってもらって、将来こいつの知名度が上がって、オレの写真も有名になって、女の子達が『誰?あの人誰?』とかなって、『キャー。ショーター様~』とかなって、一躍スターになれるかもしれないじゃないか!」
「ハッ。くだらねぇ。」
「悪気?・・なんてないよ。ただ君たちがすごく楽しそうだったから・・」
僕はちょっと言いよどんで下を向いた。でもアメリカでは自分の意見をちゃんと言わないといけない。まだまだ英語が苦手だったけど、苦手なりに顔を上げて自分の気持ちを伝えてみた。
「楽しい時間を写真に撮って後で見返すともっと楽しくなるよ?知らない人に撮られるなら嫌だけど、友達に撮ってもらって後で皆で見返すとすごく楽しいから!現像したら見せてあげるよ。僕も君やショーターと見たいよ!」
笑顔で言い切った僕に、なぜだかショーターが感動してる。なんで?
「英二!お前は本当にいいやつだ~。」
「・・いた・・痛いよ。ショーター・・ちょっ」
ショーターに羽交い絞めされて、頭を乱暴にぐりぐりとなでられた。
君はいつもの通り仏頂面だったけど、きつい眼差しが少し和らぎ口元もほんの少し上がってるように見えた。

『写真を見返す事は楽しい事だ。』

この時僕は本当にそう思ってたんだ。





4.59丁目のアパートメントで使ってたカメラは君がどこかで揃えてきた真っ黒いNikonの一眼レフとレンズ。ボディにはF3/T と表示されていた。メイドインジャパンのカメラにしてくれたのは、僕が日本人だから気を使ってくれたんだろう。

「うまくとれてんじゃん。」
「そうかな・・。」
向かいのコルシカマフィアの持ちビルに出入りしている人物の写真が現像できたので、僕は君に見せていた。
そのとき僕の肘が机に当たって、積み上げていた写真の束が崩れて床にバラ撒かれた。
まずい。その写真は・・。
バラ撒かれた写真を拾おうと屈んだ君が地の底を這うような低い声で僕に言った。
「・・お前。オレが寝ている間に黙って撮るな。」
「黙って撮ってないよ?今から撮るよ。ってちゃんと言ってる。」
小声でだけど。
「撮られたくないなら起きれば?」
「・・・・。」
この頃の僕は君に英語で軽口を返せるようになっていた。しかも君に口で勝てるようになっていたんだ。10回に1回くらいの割合だけど・・。
このアパートメントでは君と出会ってから一番たくさんの君の写真を撮ったよ。
笑ってる君。すねてる君。嫌味なくらいかっこいい君はどんな姿でも様になった。
写真を撮られるのが嫌だと言ってるワリには、出来上がった写真を見せるとちょっと嬉しそうになってたと思う。
本当に嫌ならもっと不機嫌になるはずだったし。

・・どうかな?




5.最後の逃亡中に持つことのできたカメラはポケットにも入る小さなコンパクトカメラ。妹が商店街の福引で当てた京セラのヤシカT AF-Dだった。日本から持ってきたカメラがこの時まだ僕の手元にあったなんて奇跡だ。そしてそれはまだ僕の手元にある。

「おはよう。」
珍しく夜明け前から起きていた君に声をかけた。
そこは老朽化した廃ビルだった。
早朝の刺すような冷たさの中で君は窓を開け放して、その古すぎて今にも外れそうな窓枠に器用に座っていた。長い足をもてあましながら片足を窓枠に立てている君は男の僕から見てもかっこいい。
僕は君に向けてシャッターを切った。
「撮るなって言わないの?」
「あきらめた。ここ数年でオレは学んだ。もうろくしたジジィ達には何言っても無駄だってな。」
「・・・・・。」
美しい朝焼けをバックにした君は信じられないくらいきれいな姿なのに、なんて口が悪いんだ。
「そうだね。僕がジジィの部類に入るかどうかは置いといて、僕は付いてくるなと言われても付いていくし、日本に帰れって言われても帰らない。」
「トシで耳がきこえねーんじゃねぇの?」
「ずっと君の傍にいるよ。」
君のそばにー。
君の動作が一瞬止まって、なんとも言えないような顔になる。僕は別に返事が欲しいわけじゃない。
「なんか飲む?」
「・・・ああ。」
飲むといってもお湯だけど。君と飲むと不思議とおいしかったんだ。

君もそうだったかい?




6.僕はカメラも持たずに再渡米したんだ。帰国しない僕を置いて一旦帰った伊部さんが、すぐにまた僕に会いに来た。

「これ。預かってたフィルム。LAの時の。」
「・・・・。」
「この時の君達は本当に楽しそうだった。逃亡生活だったのにね。」
「カメラはまだ預かってるよ。欲しくなったら連絡して。」
伊部さんと別れて、自分で借りた安アパートに帰った僕は、フィルムを現像もせずにクローゼットの奥の隅に投げ、上から雑誌やガラクタを積み上げた。

それから一度もあのクローゼットは開けなかった。



7.僕は初めて自分でカメラを買った。ドイツ産のRolleiflex SL2000F。中古カメラ屋で僕の手持ちの金額を提示したら勧めらられたのがこのカメラだ。このカメラは安かったけど正直今までのどのカメラよりも扱いづらかった。でもこの頃の僕にはどうでもよかったんだ。

「・・・シン。なんで付いてくるの?」
「んー。暇だから?」
冬のNYはすごく寒い。短い会話でも息が白くなる。
仕事がない時は、フラリとNYの街中にでるのが習慣になっていた。そして写真を撮る。
僕の散歩が長いときはシンがどこからともなく現れて僕に付き合った。
『あなたの写真はどこか寂しそうね。』
自分の写真を携えて売り込みに行った先の雑誌社でそう言われた。
僕はまだ探してしまうんだ。
あの公園に。あの角を曲がったところに。
マックスにはまだそんな写真を撮ってるのかと諭された。そんなことしても彼は帰ってこないと。
シンはこんな僕に何も言わない。忙しくないわけないのに黙って付いてくる。
僕もそんなシンに何も言わない。
その時チラリと白いものが目の前を掠めた。
「初雪か・・」

いつの間にか僕の背を追い越したシンが上を向いてふとそう呟いた。




8.写真の仕事が舞い込み始め、今まで使っていたカメラでは機能の面で物足りなくなってきた。人から借りて写真を撮ることも多い。真剣に写真の仕事をするのであれば・・・。

「お久しぶりです。」
『英ちゃん?!ホント久しぶりだな。元気か?!』
国際電話の向こうで伊部さんの懐かしい声がする。
『連絡くれないからさ・・本当に心配してたんだよ』
「本当にすみません・・・。」
『まぁ。いいさ。元気なら。最近どうだい?』
「あの。僕。今度、ニューズ・ウィークに写真を連載させてもらえることになったんです。」
『ニューズ・ウィーク!そりゃすごい!』
「それで、僕・・・。今古いローライフレックスを使ってるんですけど。」
『ローライ・・・。』
「伊部さんに以前いただいたCanonA1を送っていただけないかと思って。新しいカメラ買うお金がなくて・・」
まかせろ!すぐに送ってやるから!と伊部さんの気のいい返事が受話器の向こうから聞こえてきた。
国際電話は高かろうとその後すぐに電話が切れる。
そして数日後、伊部さんからカメラが届いた。
「NikonF90Sだ・・・」
包みを開けて驚いた。伊部さんのNikon好きは知っている。もはや信者に近い。
丁寧にパッケージされたカメラといくつかの交換レンズの間からメモが出てきた。この独特の字は伊部さんの字だ。

ーーーーー

英ちゃんへ。
この間元気な声を聞いて安心しました。
ニューズ・ウィークとの契約おめでとう!
これは僕からのささやかなプレゼントです。
とか言ってもレンズは僕のお古だけどね。ごめん。
きっとNYの街並みにはNikkorレンズの描写がよく似合うよ。
お礼の電話はいりません。国際電話は高いからね。
君は僕の一番弟子だからこれくらいさせてくれ。
でも弟子の方がえらくなっちゃうかもね。
それでは、日本から君の活躍を応援してます。伊部俊一。

ーーーーーー

「これって40歳近い男の人が書く文章じゃないよね・・」
軽いノリの文章は伊部さんなりの気遣いだろうか、それとも素なのか・・。
そのメモを読んだ僕は少し微笑んだ。
人づてに伊部さんも報道カメラマンとしての地位を着々と築き上げ、成功を収めていると聞いた。
Nikonか・・・。
59丁目のアパートで使ってたのもNikonだった。あのNikonはもしかして伊部さんに勧められた君が買ってきたものだったのだろうか・・。あのカメラは今はどこにあるんだろう。59丁目のアパートがどうなってるか僕は知らない。知りたくない。

僕はメモを持ってる手の甲で目頭を押さえた。


                       
  

9.個展終了後。

「お疲れさま。」
誰もいなくなった画廊の一番奥にその写真はまだ飾られていた。
小さな画廊を借りて行われた僕の初めての個展も無事終了し、片付けはこの写真を残して全て終わっている。
この写真だけは自分で下ろすからと、スタッフの皆に言って残してもらったのだ。
もの言いたげな暁を促してシンもスタッフと一緒に帰って行った。
僕はその写真の前でカメラと共に一人佇んで写真の君に話しかけてる。
傍から見れば変なやつだろう。
「個展が終わってやっと君とゆっくりできる時間ができたね。」
あの頃の自分達も逃げることやマフィアに立ち向かうことに忙しくてゆっくりしている時間なんてなかったけど。
2人で過した束の間の穏やかな日々で僕は君にコーヒーを入れた。
『英二。コーヒー。』
と命令形にもならない君の言葉に僕は、
『僕はコーヒーじゃないんだぞ。』
と必ず返してたっけ。
そしたら君がちっとも悪く思ってないカンジで
『Please.』
っていつも言うから。僕は肩を怒らせたフリをして結局キッチンに行ったんだ。
「君にコーヒーを入れて上げたいけど、ここじゃそういうワケにもいかないか・・」
僕は小さく笑った。
「そうだ。このカメラ覚えてる?」
手に持ったカメラを少し上げて僕は君に聞いてみた。
昨日、個展で君の写真を見たマックスが、目を見開いたかと思うと走って画廊を出て行ったんだ。
何事かと思っていたら数時間後に、このカメラを持って走って戻って来た。
59丁目のアパートで君に貰ったカメラだ。
あのアパートを引き払う時にマックスが僕に黙って預かってくれていたらしい。
このカメラを見ると僕が君の事を思い出すから。僕が君を吹っ切れないだろうからって・・。
「このカメラで君をたくさん撮ったよ。君は嫌がってたけどね。」
僕は目の前の写真の君に向けてカメラを構えた。
「勝手に写真を撮るなって今でも君は怒るかい?」
シャッター音が静かな画廊に響く。

これは最後の君のスナップショットだ。

ここ数年、僕は周りが見えてなかった。君のことばかり考えて。

僕は気付いたんだ。

僕の周りにはとてもやさしい人達がいる。

僕が君を思う気持ちは誰にも負けないものだと思うけど、

僕の周りの人達もそれに負けないくらい僕のことを思ってくれているんだ。

僕はそんな人達と共に、

「ーいつまでも君の傍にいるよ。アッシュ。」







最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。
6作目はちょっとしんみりした話。でした。
私なりの「英二がアッシュの死をどうやって受け入れるか?」です。
まぁ。出来上がったらそうなってただけで、本当は「英二のカメラ遍歴」を書きたかっただけですが・・。
私は写真が趣味です。カメラも好きです。ここで持ってるカメラの種類と台数を言ったら皆さんが引くくらい好き・・。(instagram やってます。写真好きのスマホの方よければ遊びにきてください。PCではこちらhttp://instagram.com/cobarie
英二の人生を導いてくれた伊部さんに貰ったNikonと英二の人生を変えたアッシュから貰ったNikon。
2人の大事な人から貰ったカメラのメーカーが同じだったらなんて素敵じゃないかな。と思って。もうそれは運命の出会い。
BF好きでカメラ好きなそこの貴女。貴女の「英二のカメラ」をぜひ教えていただきたい。
Snapshots の名前をつけて写真ネタで今度は明るいA+英を書いてみたいです。
マニアックな小説に最後まで付き合ってくださって本当にありがとうございました!
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