Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

そこは彼がその一室を買い上げた高級アパートメントの1階エントランスホールだった。
秋晴れの明るい屋外から入ってくると、その古くて重厚な建物内は暗くてほどよくひんやりとしている。
顔が映りそうなくらいピカピカに磨かれた大理石の上をアッシュは音もなく歩いていく。
照度の落とされた照明にも煌くプラチナブロンド、希少な翡翠の瞳を宿す整った造作、服装はボタンダウンシャツにVネック・ニット、その容姿にそのアメリカントラッドの出で立ちはアメリカ上流階級の子女さながらで、彼がストリートでは名の知れた若いギャングのボスだと言っても誰も信じないだろう。
彼がエレベーターの前に着くと同時に、タイミングよく1階に降りてきたエレベーターのドアがゆっくりと開いた。
そこから黒髪の少年が現れる。
アッシュの瞳と少年の黒い瞳が合った。
エレベーターから出てきたその少年は、目下の所アッシュが同じ部屋で暮らしている日本人の友人、英二だ。

「あれ?アッシュおかえり。早かったね。」
「・・どこに行く。」
「あー。ちょっとスーパーまで。」
英二の視線が微妙にアッシュから逸らされる。
そんな英二の様子にアッシュは違和感を感じた。
「どうした?」
「何も。」
ほんの少し言いずらそうに言葉をにごす英二の態度にアッシュは怪訝そうに眉を顰める。

何かを隠しているのか・・。

「俺も行く。」
「え?・・君、買い物に付き合うの嫌いだろう。先に部屋に戻ってなよ。」
「いつも俺のために晩メシを作ってくれるオニィチャンの荷物持ちになってやるぜ?ほら。」
アッシュは軽く英二の背に手を回しそのまま押した。
「・・・。」
少し困った顔をして眉を下げた英二は、だが素直にアッシュに従った。



そして2人は今、スーパーの一角にあるオレンジ色の山の前にいた。
小さいオレンジ色。大きいオレンジ色。
濃いオレンジ色。薄いオレンジ色。
ほぼオレンジ色と黒で統一されたそのコーナーは値札のポップも賑やかにケバケバしい色合いで飾られていた。
そのオレンジ色の正体は果物のオレンジではない。その山は・・・・。

「何だ。これは。」
「ハロウィン用の品物コーナーだね。」
だから来なくていいと言ったのに・・。英二は呟き、少し下を向いて小さくため息をつく。

そこは、ハロウィンの準備のための様々な品物が置いてある特設コーナーだった。
山積みにされたかぼちゃ。それをくり抜く為の道具。
すでにくり抜かれてランタンになったもの。
オレンジ色の蝋燭。黒色の蝋燭。
パンプキンパイに、パンプキンマフィン。
かぼちゃのラベルのついた缶ジュース。瓶ビール。
そしてたくさんのカラフルな紙に包まれたキャンディ。チョコレート。ロリポップ。
それらとその他の関連商品が広い特設台の上に所狭しと並べられており、ハロウィン気分を盛りたたせている。
そのコーナーの上には、紫色の肌をした魔女の人形がいやらしい笑みを浮かべて箒に乗って天井から紐でぶら下げられ揺れていた。

英二の前に立っていたアッシュはゆっくりと振り向く。
「・・・・英二・・・」
「何?」
「何をするつもりだ?」
「ハロウィンの準備?」
英二は気まずそうに答えた。
「やらなくていい!嫌いだって言ったろ?!」
アッシュにバレてひらきなおった英二ははっきりとアッシュの目を見て言い返す。
「君は嫌いかもしれないけどね。ご近所づきあいってものがあるんだよ。」
「お前まだ近所のミセスとやりとりしてんのか?!」
「今度の感謝祭にさ、ミセス・コールドマンがターキーくれるって言ってくれて。」
「断れ。」
「ミセス・コールドマンの所に小さい子供がいるだろ?その子にほら、トリック・オア・トリートって言われたら・・」
「ドアを開けるな。」
「そうもいかないよ。この間アパートの管理会社から、子供達の訪問に応じるかどうか聞かれて」
「・・・イエスって言ったのか?」
「応じる場合は、管理会社が用意したカードをくれるんだってさ。それをドアに貼っておけばいいんだって。かわいいパンプキンの形をしたカードだったよ。」
英二がフフフと微笑んだ。そのカードの可愛らしい形を思い出したのだろう。
「貰ったのか・・・・。」
アッシュは片手で額を軽く押さえる。
彼はかぼちゃの山を背にして英二に向かって立っていた。
そのオレンジ色を少しでも目に入れたくないのだ。
結果、オレンジ、黒、紫、赤等で毒々しく彩られたハロウィンコーナーと英二の間にアッシュは立ちふさがっていることになる。
「だからね。アッシュ。」
そんなアッシュに英二はにっこりと特上の笑みを浮かべてこう言った。

「そこどいてくれる?子供達に渡すキャンディーが買えないだろ?」

アッシュは知っていた。英二がその笑みを浮かべる時は何を言っても絶対にゆずらないという事を・・・。




「前をちゃんと見てね。気をつけて廊下を歩くんだよ。」
英二の明るい声が聞こえてくる。
アッシュはソファに寝転がり、読みかけのハードカバーを広げて顔を覆い両腕を頭の後ろに回して不貞寝していた。

あれから結局英二はスーパーの紙袋2袋分のお菓子を買った。
『去年はお菓子を上げられなかったし。』
そんなに買わなくていいというアッシュに英二は、去年はドアにカードを貼らなかったので子供が来なかったから今年はどれだけ来るかわからない、だから多めに買うのだと主張した。そういえば、昨年の英二はハロウィン・パレード参加の寄付金集めの為にノックされたドアを開け、その子供達にご丁寧にも5ドルの寄付金を渡したと言っていた。

パレード参加の為の寄付金ってなんだ。

アッシュは思う。パレードへの参加は無料だ。誰でもどこからでも参加できる。衣装の準備代金だったとしてもハロウィン当日ではおかしいだろう。

ガキにカモられやがって。

5ドルの寄付に驚いた子供たちは間抜けな中国人ハウスキーパーを哀れにでも思ったのか、代わりのモノを置いて行った。
その結果部屋は子供達がくれたジャック・オ・ランタンでいっぱいになり、帰宅したアッシュを辟易とさせたのだ。

あれから一年か・・。

去年のハロウィン前後の出来事を思い出してアッシュは知らずとため息をついた。向かいのコルシカマフィアのビルを見張るため、そして英二を不用意に外出させないために購入したこのアパートメントに暮らし始めてから1年が経つ。その間色々な事があり、アッシュがここに住んでいない期間も長かったが・・。
そんなことを考えている彼の元へ英二がやって来た。
「これでお菓子がなくなったよ。今の子達の一人が『エレファントマン』の格好をしてたんだけど、マスクの穴が小さすぎて、前がちゃんと見れないみたいだった。」
かわいかったなぁ。とクスクス笑って呟く英二の顔はやさしい笑顔だ。

子供達は何組かのグループに分かれて、間を開けて2人の住む部屋のドアのベルを鳴らした。英二はベルが鳴る度に、ドアを開けて子供達の「トリック・オア・トリート!」という元気のいい声に挨拶を返した。そしてお菓子を手渡して一人一人の名前と何に扮装しているかを尋ね、彼らの集合写真をカメラで撮る。最後に「Happy Halloween!」と言ってまた送り出すのだ。

「なんだか両隣のアパートの子供もいたみたいだ。どうりで子供の数が多いと思った・・」
現像してもどこの子かわからないから写真を渡せないな・・とぶつぶつ呟く英二に、アッシュは顔に乗せたハードカバーはそのままに声をかけた。

「カード。」
「?」
「もう渡すものねぇんだろ?カードをドアに下げたままじゃまだ来るぞ。」
「ああそっか。ありがと。」
管理会社が子供達の為に設定した時間は午後3時から6時までだった。6時までにはまだ半時間弱ある。
英二が慌てて玄関に向かおうとした瞬間。ドアのベルが鳴った。

ーほらみろ。

アッシュは心の中で毒づいた。
英二がドアを開ける。そして聞きなれた声と挨拶を交わしていた。
いぶかしく思ったアッシュが顔の上のハードカバーを手で上げて、玄関へと続く開け放たれたリビングのドアを見た。
そこから賑やかな足音を立てて、見慣れた連中が入ってくる。
「あ。ボスいたんだ。」
コングがアッシュを見てそういった。
「・・・いて悪いか・・。」
不機嫌を隠そうとしない低い声でアッシュが凄んだ。
失言したコングがボーンズに蹴られる。
その時、玄関ドアからカードをはずした英二が遅れてリビングに入って来た。
「僕が呼んだんだよ。みんなで楽しくやろうよ?去年みたいに。ほら。君達、食べ物運ぶの手伝って。」
助かったとばかりに2人は慌ててキッチンへと消えていった。
「ほら。君も。いつまでも不貞寝してないで。」
アッシュは仕方なく起きようと腕を伸ばしてあくびをした。

その口に何かがカランと放り込まれる。

ソファに起き上がったアッシュの目線に合わせるように屈んだ英二は微笑んだ。
「君の分のキャンディ。トリック・オア・トリートって言ってみなよ。」
「・・言う前に食わせたら意味ねーだろ。」
「ハハハ。そうだね。早く起きて手伝って。アッシュ。」
英二が軽く笑ってキッチンへと向かっていく。

キャンディなんか食うの何年ぶりだ?

舌で丸いそれを転がせながらアッシュはなんともなしに考える。
この時期は街を歩いていてもハロウィンの飾りがそこかしこに溢れていて、かぼちゃ嫌いのアッシュの神経を逆なでする。しかし外国人の英二はハロウィンに限らず、アメリカのそういったイベント事に興味があるらしく、イベントの度に誰かしらに、それは何の日なのか、何をする日なのかと聞いているようだった。

聞いた結果がこのハロウィンパーティーか。

どうせ、近所のミセス達に料理を聞いてきたのだろう。なんとなく飲み会になった昨年とは違い、テーブルの上にはコング達がキッチンから運んで来たハロウィンらしい怪しい食べ物が並んでいる。どこで購入したのか、お化けの形のソーセージドッグや、うすく切ったりんごにマシュマロを並べてはさんで歯の形をしたもの、青と紫でデコレーションされた食べる気にならない色合いのホールケーキ等・・。

ー準備のいいやつ・・・。

コロンとアッシュの口のなかで甘いキャンディが転がる。

その時また玄関ドアのベルが鳴った。
英二の声がキッチンから飛んで来る。
「あー。アッシュ!多分ピザだよ!頼んでおいたんだ。手が離せないから出てー。」

仮装してパレードに出たいと言われるよりパーティーの方がまだマシか・・。

アッシュはそう考えながら玄関へと向かう。
キッチンからはボーンズ達がここに来るまでに行き違ったパレードの様子を楽しそうに英二に話している声が聞こえてくる。英二はいちいち感心して聞いているようだ。

余計な事を・・。

アッシュはピザ屋に代金を払い、受け取ったピザを持ってリビングに行き英二を呼んだ。
「英二!これどこに置くんだ!」

変な事を吹き込まれてパレードを観にいくという話になると面倒くさい。

「それはね・・・。」
英二がリビングに顔を出す。

アッシュは気付いていなかった。そのハロウィンパーティーにはかぼちゃ料理やかぼちゃの絵のついたものがなるべく避けられているという事を。

その日のNYはハロウィンで浮かれていた。今が稼ぎ時とばかりに内装をハロウィン一色に飾りたて集客する雑貨屋、飲食店。お菓子目当てにドアをノックする子供。この日のために何日も前から気合を入れて作成した仮装に身を飾りパレードに参加する者。
そして59丁目の高級アパートメントの一室でも、気の知れた少年達がハロウィンパーティーと称し、料理を食べビールを飲み、笑い合い、楽しい時間が過ぎていく。

『今夜ばかりは、不良も堅気もデイ・オフさ。』

NYのそれぞれの場所で、それぞれのハロウィン・ナイトが様々な笑顔と共に繰り広げられていたー。









そして、かぼちゃを避けていたパーティーに遅れてやってきたアレックスが彼女から持たされた手土産のパンプキンパイを見て、アッシュの機嫌が急転直下するというオチでした(笑)
最後まで読んでくださった方ありがとうございました!ど・・どうでしたか?楽しんでいただけましたでしょうか?冗長だったりしました?(心配) 後半部分が、どう終わるかわかんなくて増えていって・・。今回のアッシュは英二に負けっぱなしでほぼ言い返してない。アッシュファンの皆様ごめんなさい。ちょっとでも面白いと思ってくださるといいなぁ。
小説の最後の『今夜ばかりはー』のセリフですが、気付かない人がいたら悲しいので説明しますが、黄色のバナナ8巻86ページのアッシュのセリフです。多分こんな辺境のバナナ小説を読んでくださってるコア過ぎる方々は説明がなくても「ああ・・」って思ってくださると思うのですが一応。
今回はA+英が出会ってから2年目のハロウィンナイトです。そんな日はあったのか?という疑問ですが・・。
ちょっと面倒くさいけど、小葉自作の年表をご覧ください。ポイントは日付です。
・・・と年表を書いて説明してみたのですが、ばっさり割愛。長すぎた。2行にまとめたいと思います。
1985年3月8日  伊部と英二が ニューヨーク市警へ行く。その数日後、A+英運命の出会い。
1987年未明 アッシュ死亡。

てことはですよ。2人が出会ってからは2年以上3年未満。最低2回(最高3回)ハロウィンがあったワケです。
皆様の萌えをかきたてた1回目のハロウィンは1985年の10月31日。
1986年の10月31日も59丁目にいたっていいじゃない!
てところからの妄想です。ご賛同の方は拍手ください(笑)
余談ですが英二が子供達のパレードに寄付した1985年の円相場は1ドル250円ぐらいだったみたいなので、5ドルだと・・1250円?当時の小さい子供には大金かもですね。
それでは最後までしかも結局長くなったあとがきをここまで読んでくださった方々・・・。本当に本当にありがとうございました~!。
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さっそくのハロウィン創作(^^)☆ 読めて嬉しいです。 二年目のハロウィン……感慨深いですね。一年目の教訓(?)から、注意深く英二の行動を監視するアッシュが何とも可愛らしいです。カボチャはごめんだけど、英二につられて彼もイベントを楽しんでいるかな?

アッシュの「キャンディなんか食うの何年ぶりだ?」というセリフに切なくなってしまいました。
英二のおかげで心温まるハロウィンになったかな。そしてアレックスのせいでドタバタ劇が起きたかな…(!?)

小葉さんのハロウィン創作を読んで、ほんわかした気持ちになりました♪ありがとうございます♪

2012.10.25 22:29 URL | らぶばな #ozafj4PA [ 編集 ]

>らぶばな様

さっそく読んでくださってありがとうございます!☆
ちょっと早めのハロウィンネタ。楽しんでいただけましたでしょうか?

>注意深く英二の行動を監視するアッシュが何とも可愛らしいです

ありがとうございます♪可愛らしいアッシュというのも私は好きです♪
だってまだ17歳の少年ですものね。
もう私が大人になっちゃって、かわいいカンジで見ちゃうこともあります(苦笑)

>カボチャはごめんだけど、英二につられて彼もイベントを楽しんでいるかな?

そうそう。やさしい英二はわざわざかぼちゃを避けたハロウィンパーティーを企画したので、アッシュも楽しめてるハズです。が・・。その部分がうまく書けなかった。とちょっと心残りです。

>二年目のハロウィン……感慨深いですね。
>アッシュの「キャンディなんか食うの何年ぶりだ?」というセリフに切なくなってしまいました。

まぁ~。らぶばなさんは感受性が高いのですね。何も考えずに書いちゃったのですが・・。
確かにちょっと感慨深いものがあるかもしれません。1年以上一緒にいたんだなぁ。とか、その1年間もとんでもない事件に巻き込まれて無事に2年目のハロウィンを迎えてるんだ。とか、1回目のハロウィンより2人はもっと心の通じ合う友達になってるだろうなぁ。とか・・。
アッシュはこれ以前の最後にキャンディを食べたのはいつでしょうね・・。

>英二のおかげで心温まるハロウィンになったかな。そしてアレックスのせいでドタバタ劇が起きたかな…(!?)

英二の気遣いに気付きちょっと気分が上昇したアッシュをアレックスの手土産が台無しにしたカンジで!(笑)
そうですね・・。アレックスが彼女に持たされたのはパンプキンパイだけじゃなくて、持ってきた大きな紙袋からはかぼちゃ系の食べ物が次から次へとでてきたりして。アレックスが悪気なく一つづつ解説付きで出すたびにアッシュの機嫌が悪くなるってのはどうでしょうか?(笑)たまらなくなったアッシュは大声で怒鳴り、怖がった3人は部屋を飛び出して行く。みたいな方向で。でも結局英二と2人きりになったアッシュは結果オーライかもしれません(苦笑)

それでは。本当にコメントありがとうござました!ほんわかした気持ちになってくださって嬉しいです♪

2012.10.27 01:00 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]












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