Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

箱を持って一階の居間に降りた2人は飾り付けを開始した。

アッシュは箱の中のオーナメント以外にも自分のおもちゃ箱からお気に入りのおもちゃを出して木に差した。
あんまり重いと枝が折れる。落ちたら割れて壊れるよ。とたしなめる兄の意見は聞かずにアッシュはいくつか木にひっかけていく。グリフィンはそれ以上は何も言わなかった。

兄はツリーの高いところを、アッシュはツリーの低いところを飾り付ける。年の離れた金髪の兄弟は仲良く笑いながら、時には弟が覚えたばかりのクリスマスの歌を歌いながら、ツリーの飾り付けは進んでいった。

しばらくして、アッシュの手の届く範囲にはもうオーナメントを飾れる場所がなくなった。
もっと上の箇所も自分で飾りたくて、アッシュは兄にねだる。すると兄はアッシュを抱え上げ彼の手の届かないところにオーナメントを飾らせてくれた。
兄の目線で見るツリーは新鮮で、体が上下される感覚もアッシュには純粋に楽しい。

もう一回飾りたい!もっと上を飾りたい!

ねだるアッシュをグリフィンが何度か上げ下げする。繰り返す内に兄が根を上げた。

こんな事ならもっと小さいツリーにすればよかったとつぶやいて嘆息した兄は、アッシュをもう一度抱え上げ、今度はテーブルに座らせ、靴を脱がせた。
「『そこでご命令を下されば貴方の思いのままにお飾り申し上げましょう。Your Majesty』」
と、うやうやしくアッシュに向けて一礼する。
最近読んでもらった絵本に出てくるエラそうな王様とズルい家臣の会話だ。
2人の間でそのセリフを少し変えて話すのが流行っていた。
言われた方は必ず「『よきにはからえ』」と返さなければならない。
アッシュは笑いながらそう言って、古びているが頑丈な造りの木製のテーブルの上に立ち上がる。

そのオーナメントはあっちそれはこっち、もうちょと右、やっぱり左と兄に指示する。
徐々にクリスマスツリーは華やかになっていった。

そして後は一番上の星を乗せて完成となった。

「いちばんうえのお星さまは、ぼくがのせるの!」

アッシュは兄に向けて両手を伸ばした。
兄もそのセリフを予想していたのだろう。笑いながら、いいよと答えてアッシュを抱き上げようしとたその時ー

玄関のドアを叩く音がした。

グリフィンが玄関へと向かう。
アッシュは居間の扉に隠れて玄関を見た。

来客はグリフィンの女友達だった。アッシュのシッターをしてくれた事もある。だがアッシュは彼女があんまり好きではなかった。グリフィンがいる時と自分と2人だけになった時ではなんとなく態度が違うのだ。だいたい、彼女がグリフィンと話し始めると長い。その間兄は自分をかまってくれない。今回もどれだけ待たないといけないのだろうか。
それでもアッシュは居間に戻りテーブルに座り足をぶらつかせながら大人しくグリフィンを待った。

時計を見ると午後3時だ。そういえばお昼ご飯を食べていない。朝食を昼前に取ったアッシュは、お昼を食べようかとのグリフィンの誘いに、あとちょっとあとちょっとと、昼食を取らなかった。今改めて空腹を感じる。鳴り始めたお腹を手で押さえた。

そして2人で飾ったツリーを眺める。

ー後ひとつで終わるのに・・。

アッシュは名案を思いついた。このツリーはあの棚より低い。ならば棚からオーナメントの箱を取った時のように椅子に乗れば一人で飾れるのではないだろうか?

そしてアッシュは椅子をツリーに寄せ、以前使ったお菓子の缶ーそれはすでに少しヘコんでいたーを椅子の上に置き、星のオーナメントを片手に器用に缶の上に飛び乗った。

背もたれをツリーに向けたその椅子の背を片手で掴んで軽く乗り出し、星を持ったもう片方の手を思い切り伸ばす。だがツリーの上には届かない。

ーあとちょっとなのに・・。

アッシュはさらに身を乗り出した。椅子を持っていた手をその背から離す。その手で木の枝を掴み自分へと引き寄せた。生木はしなやかな弾力性を持って曲がり、その頂上はアッシュへと近づく。

ー届く。

さらにグイと力を入れ引き寄せたが、反動で枝が戻ろうとする力に引っ張られアッシュは体勢を崩した。椅子の背がツリーへ向けて傾く。椅子から落ちそうになったアッシュはツリーの枝を強く引っ張る。アッシュに引っ張られたツリーも傾きアッシュへ向けて倒れて来たー。

後は何がなんだか覚えていない。揺れる足元、自分に迫る緑色の葉、傾く視界、椅子とツリーが倒れ床にぶつかる低い大きな音は同時に、ガラスのオーナメントが割れる高い音と混ざり派手な音を立てた。

気付けばアッシュは床に落ち、倒れたクリスマスツリーを呆然と見ていた。

「アスラン!?」

盛大な音に驚き玄関からグリフィンが慌てて跳んで来た。怪我はないかと聞きながらアッシュを抱き起こした兄に、アッシュは小さく頷いた。
グリフィンはほっとしたようだ。

何があったのかと聞く兄に、アッシュは何も答えられず下を向く。

改めてグリフィンは辺りを見た。倒れたツリー、散らばるオーナメント。そしてあらぬところで倒れている椅子と、ここにあるはずのないお菓子の缶。アッシュの手にはまだ星のオーナメントが握られている。

兄は状況を察したようだ。
いつもやさしい兄は、だが厳しい顔になる。

背の高いグリフィンはアッシュの目線に合わせるように屈んで、星のオーナメントを握りしめている弟の手を開かせその星を自分の手に取った。

「俺が来るまでまてなかったのか?」
兄の顔が怖くてアッシュは答えられなかった。

そのまま黙ってしまったアッシュにグリフィンはため息を付いてこう言った。
「2階に行って、いいといわれるまで待っていなさい。」

アッシュははじかれたように顔を上げた。

「もうしないからー」
「Now.」

言われたアッシュは2階の寝室に走って行った。その部屋には自分のベッドと兄のベッドが並んで置かれてある。
やさしいグリフィンはほとんど自分を叱らない。叱られる時は自分が悪い時なのだ・・。
自分のベッドに入って頭からシーツを被ったアッシュの目からはボロボロと大粒の涙が出てきた。

グリフィン。ぼくを嫌わないでー。



数時間後ー。

泣きつかれて眠ってしまったアッシュをグリフィンが起こしに来た。

外ではすでに日が暮れていて、電気のついていない寝室は真っ暗だ。
ただ開かれたドアから廊下の黄色い明りが差し込んでいた。

寝ぼけているアッシュはわけもわからず、グリフィンに両手を伸ばす。
こうするとやさしい兄はかならずアッシュを抱き上げてくれた。

まったくいつまでたっても甘えん坊だな、と。

アッシュは自分を抱き上げたグリフィンの首に両腕を回してしがみつく。
グリフィンはそのまま寝室を出て片手を手すりに添えながら階段を降りていく。
そうして1階の居間のドアを開けた。

ーわぁ!

そこにはキレイに飾られ電飾の点灯されたクリスマスツリーがあった。

寝ぼけていたアッシュは目が覚めて、自分のしでかした事をはっきりと思い出す。
自分が眠っている間にグリフィンはツリーを立て直し、割れたガラスのオーナメントの破片を片付け、飾りなおしたのだろう。

「ごめんなさい」

と言ったアッシュにグリフィンはやさしく微笑んで、アッシュの額に軽いキスをした。

びっくりするからもうやらないでくれ。と。

そしてテーブルの上に置いてあった星のオーナメントをアッシュに手渡した。
「お前が付けるんだろ?」
アッシュの顔が途端に輝く。
「うん!」
そのままグリフィンは器用に手を差し替えアッシュの脇の下を掴み高く彼を持ち上げた。
「ほら。届くか?」
アッシュがさらに手を伸ばしてもみの木の頂上に星を挿した。
「届いたよ!グリフィン!」

アッシュは兄の腕の中で完成したクリスマスツリーを見た。

それはグリフィンが飾り直してくれたものだが、木の下の方にアッシュがどうしても飾ると言って譲らなかったアニメヒーローの人形も、自分が飾ったのと同じような位置に引っ掛けられている。

兄の腕の中から見るクリスマスツリーはとてもきらきらしくて満足だった。
その暖かい腕は今でも覚えている

ーあんな暖かいクリスマスは最初で最後だろう。

アッシュはいつまでもあのクリスマスを忘れない。



act4. The brilliant star on top of the Christmas tree

「お兄さんが戻ってくるまで待てなかったのかい?ガキだね。」
「そうだろうとも。俺はまだ4歳だったんだからな。」

英二は椅子の上に乗って、マックスが運んできた大きなツリーの上の部分の飾りつけをしている。アッシュは下の部分の飾りつけをしながら、あれ取ってこれ取ってと指示する英二にオーナメントを手渡していた。
昼過ぎから始めたツリーの飾り付けは、いつしか夕方も過ぎて窓の外では既に日が落ちている。

そしてやはり、飾りつけは一番上の星のみとなる。

一番上の星は手が届かない・・とつぶやく英二にアッシュはからかうように笑って見せた。
「抱っこしてやろうか?オニイチャン?」
「僕が今からずっと機嫌が悪くなってもいいならね。」
「・・・貸せよ」

アッシュは英二の降りた椅子を引き寄せオーナメントを片手にその上に立った。

そんなアッシュに今度は英二がからかうように笑って見せる。
「お菓子の缶ならキッチンにあるよ?」
「その上に乗ればお前も届くか?」
「遠慮しとく・・。」

アッシュは背伸びをしてツリーの上に星を載せた。

椅子の上から英二を見下ろし声をかける。
「オニィチャンの仕事を取って悪かったな。」
「ワガママな弟に譲るのも兄の仕事だからね。僕は君のお兄さんの気持ちがよくわかるよ。」

ワガママ・・・。
ひらりとアッシュは椅子から降りた。

「オニイチャン。疲れた。コーヒーが飲みたい。」
「コーヒー豆ならキッチンだ。」
「なんだ?ワガママ聞いてくれるんじゃねぇのか?」
「甘やかさず自立を促すのも兄の仕事だろ?」
さらに反論しようと口を開こうとしたアッシュは思い留まる。

たまには入れてやるか・・。

と頭をかきながらキッチンへ消えていく。
その背に英二の声がかけられた。
「ボクのコーヒーは砂糖はなしで。ミルクはいれて。」

自分で入れろよ・・。

普段の自分を棚に上げながらそんな事を思う。アッシュはコーヒーメーカーをセットした。
キッチンに香ばしい香りが広がっていく。

ワガママかー。

確かに自分はわがままだったろう。
まったく自分は兄には世話になったと思う。

兄とあの家で過ごせたのは4歳の頃までだ。
正直アッシュは幼すぎてグリフィンとの思い出がたくさんあるかといわれるとそうではない。
覚えているのは、やさしかった笑顔と、自分を抱き上げてくれた暖かい腕。
そして、いくつかの印象深い出来事だ。

まだ幼稚園にも行っていなかった幼いアッシュの世界はやさしい兄が全てだった。が、兄はそうではなかったろう。
自分が生まれた時、兄は14歳。別れた時は18歳。今の自分はあの時の兄と同い年だ。
年の離れた弟のワガママに辟易としたことも一度や二度ではなかったはずだ。

それでも自分はグリフィンが大好きだった。
アッシュの人生で唯一ワガママを聞いてくれたやさしい兄だ。

グリフィンが入隊した後、父は残された自分の面倒を見てはくれたが、たいしたワガママを言った覚えも聞いてもらった覚えもない。
NYに出てからはそれどころではない。

後にも先にもワガママらしいワガママが叶ったのはグリフィンがいたあの頃だけだ。

ーいや。違うか・・。

取り留めのない事を考えているうちにコーヒーが出来上がった。
アッシュはマグカップにコーヒーを注ぎ、湯気のでるそれを両手に一つずつ持ちながら居間へと戻る。その居間はなぜだか照明が落とされていて暗かった。
ただ、部屋の隅にある背の高いスタンドライトの暗い明かりがほのかにリビングと大きなもみの木を照らしている。

「英二?」
何をしてるんだ。と尋ねようとしたアッシュに声がかけられた。

ほら。と英二が声を出したと同時に、ツリーの電飾が光り始める。

暗い部屋に色とりどりに点滅するツリーの明りが幻想的でアッシュの心は再度故郷の家へと馳せられる。

目の前にあるツリーの光は昔兄の腕の中でみたツリーのように暖かい色だった。
暗闇を微かに照らすその明かりはアッシュの心にも灯される。

いつの間にか隣に並んだ英二がアッシュの手から彼の分のコーヒーを取った。
「綺麗だね。」
「ああ。」

アッシュは自分の傍に立ち、ツリーの淡い光に照らされる英二を横目で見た。
隣に立つ英二の気配はとても自然で自分にとって違和感がない。
いつからだろう。他人が傍に来ても自然体でいられるようになったのは。
この黒髪の友人が傍にいる時、アッシュの心に何か暖かいものが流れ込んでくる。
異国人のこの友人はいつまで自分の傍にいてくれるのだろうか?自分はいつまで・・。

グリフィン以外に言ったワガママかー。

この優しい友人に向けてかつて自分の口から思わずこぼれ出た言葉を思い出す。ー傍にいてくれーあれは最大のワガママだ。

『ずっとなんて言わない』

瞬くように煌く電飾の明かりはその一つ一つが小さな星のようだとアッシュは思った。

そして一番上の星に目をやる。
そのオーナメントは透明のプラスチックで出来ており星の形をしたものだ。電気が通っていないそれは自身が輝くことがない。
だが近くの電飾が瞬くたびに、透明のはずのそれもうっすらと輝く。アッシュの視線は自然とそこに行く。

まるで隣にいる友人のようだ。それ自身は輝くことがないがアッシュがそれを見失うことはないだろう。
どうしようもない自分の暗闇を照らしてくれる星。
自分を明るい場所に導いてくれる星。

『世界中がきみの敵にまわっても僕はきみのー』

グリフィンとツリーを飾りつけた日を忘れないように、この日は自分にとって忘れられないものになるのだろうか。

2人は立ったまま湯気の出ているコーヒーを口にしながら、しばらく黙ってツリーを眺めていた。

そのツリーの一番星は、他のどの星より輝いて見えた。





お久しぶりでございます。最後まで読んでくださった方。本当にありがとうございました!
今回は本物のお兄ちゃんに怒られて泣いちゃうアッシュ。
兄にベタベタに甘えるアッシュと、甘やかすグリフィン。この兄弟はこんな感じであって欲しいなぁって。
後、英二兄妹。基本優しいんですけどこっちの兄妹は年が近いからケンカもしちゃいそう。今回ケンカと言うほどのものでもありませんでしたが・・。
どうでしたでしょうか?ちょっとでも2人が可愛いと思ってもらえたらいいなぁ・・・。でもいつにもまして実況中継のような文章でみなさんダレちゃったかなぁ。
本当に毎回思うのですが、ちょっとでも楽しんでいただければ幸いです。^^
過去話だけではつまらないかと思って、最初と最後を59丁目時代で挟んでみたのでしたが、これが敗因。長くなっちゃって。いらなかったかなぁ。と今でも悩む。
ちなみに2人が出会って2年目のクリスマスは59丁目にいたのかどうかという事ですが・・。ハロウィン話の時と同じ理屈で。お願いします・・。
それでは最後までお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました~。


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