Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

寒風吹きすさぶ2月のNY。
建物の隙間を縫って吹く冷たい風が通行人の体温を奪う。
その突き刺すような寒さに、さすがのアッシュも首をすくめながら歩いていた。
アッシュがそのプラチナブロンドの髪をなびかせながら歩いているのは高層ビルが立ち並ぶ大通りではなく、うらぶれたダウンタウンの一角だ。
古くて今にも崩れそうな廃ビルの横を通り抜けながら、アッシュはリンクスのたまり場であるバーへと向かう。
時間はもう夕刻も過ぎようとしていた。マンハッタンのビル群に阻まれた夕日はすっかり見えなくなっている。そのオレンジ色のなごりがうっすらとビルを覆っていた。そこから上を見上げれば、そのオレンジからきれいなグラデーションを描き徐々に濃紺の夜空が広がっている。まもなく空全体が夜の闇に包まれるだろう。
足早に店へと向かい地下への階段に入ると、そこまでは風は吹き込んでいなかった。その分少し暖かいような気分になる。
だがアッシュの機嫌は上がらない。

なぜだか今日のアッシュにはやっかい事が降りかかったのだ。

ダウンタウンを歩いていると道すがら声をかけられては面倒くさいことを話される。
”あっちでリンクスと違うチームが小競り合いをやっている””知らないやつが最近うちのシマで稼いでいる””ボスに会いたいと言ってるやつがいる”

『そんなことはアレックスに言え。』

アッシュはリンクスのNo.2にいつものように話を振ろうとした。が、今日は朝からアレックスが見つからないのだ、と子分どもが声を揃えてそう言った。
仕方ねぇ・・。
やっかい事を一つ片付けていると、その間にまた一つやっかい事が持ち込まれる。

まったくアノヤローはどこに隠れてやがんだ。

店のドアを少し乱暴に開け、いつものカウンターに座ろうとすると、店の隅から聞き慣れた声が聞こえてきた。

英二?

店の隅の薄暗いテーブルを見やると、英二の黒髪が見える。

なんでだ?

最近はストリートキッズ同士の抗争も小康状態に入った。そろそろアパートの外に出ていいかと尋ねる英二に、いつもの2人ーボーンズとコングーが一緒ならいいさ、と答えたのは今日の朝だった。そして今ここに英二がいる。

たしかに外にでてもいいと言ったが・・なんでここだ?

英二が自分から、このたまり場に来たがるとはあまり思えなかった。ないとも言い切れないが釈然としない。

英二はボーンズとコングと共にテーブルを囲んでいた。そしてもう一人英二の向かいにいるのはー

アレックス?

こんなところにいやがったのか。アッシュは知らずと軽く舌打ちをした。その眦がきつくなる。でもどうして。

アレックスがここにいるならリンクス達もすぐに彼の事を見つけられたはずだ。やはりアッシュはなにか釈然としない。

見れば何かを話しこんでいるアレックスに英二が真剣に相槌を打っているようだ。

残りの2人はというと・・。
ボーンズは椅子に横向きで座り、振り返るようにして椅子の背に両腕をついていた。そして後ろのテーブルの会話に参加している。コングは目の前の料理を一心不乱に食べている。
つまり2人ともアレックスの話を聞いていない。
ただ英二だけがアレックスの言葉に耳を傾けているようだ。

横向きに座っていたボーンズと目が合う。

「ボ・・ボス。」

ボーンズの呟きで、英二もこちらに気づいたようだ。だがアレックスは気づいているのかいないのか、そのまま英二に話し続けている。

アッシュは視線でボーンズを呼び寄せて事の次第を話すよう促した。

「それが今日アレックスのやつから電話があって、」
ボーンズはアッシュの不機嫌に気付いて怖々と話し始める。

どうやら今日の昼に59丁目のアパートにアレックスから電話がかかってきたらしい。バレンタインを前にしてアレックスが彼女にフラれたそうだ。

今日はバレンタインだったか・・。

そういえば、アレックスはこの日のために彼女へのプレゼントを何にすればいいのか、何を渡せばよろこんでくれるだろうか、と周りの仲間にことごとく聞いてはリンクス達をうんざりさせていた。

だが、昨晩アレックスは恋人にフラれたらしい。そのショックで今朝から自分の安アパートに引きこもっていた。そして、昼も数時間を過ぎたころ3人に電話をかけて呼び出した。
おごってやるからお前らちょっと出てこい。オレをなぐさめろ。
という事らしい。

昼過ぎに電話したという事は、俺がいない時を見計らったのか。後で数発殴ってやる。と物騒な事をアッシュは考えた。
しかし、ボーンズとコングの2人を誘うのはわかる。元々アレックスとは飲み仲間だ。どうして英二まで?とアッシュは頭をひねる。

ボーンズが話すには、以前、アレックスの恋人の話を英二が興味を持ってよく聞いていたことがあったらしい。

「アレックスはそれで英二を気に入っちゃって、」


ああ。あれか・・。

以前アッシュのアパートメントで5人で飲んだ時、酔ったアレックスに英二が捕まった。アレックスは酔うと自分と彼女の話を延々と他人に聞かせる酒癖を持っている。しかも、飲むたびに彼女が違う。

彼の酒癖はリンクスの中では有名だ。誰もが理由をつけて酔っ払ったアレックスの前から席を立つ。今日もこの酒場で昼間から酔っていたアレックスを見つけたリンクス達は触らぬ神に祟りなし、と声をかけなかったのだろう。そしてアッシュにやっかい事が持ち込まれたというわけだ。

だがあの日、なれない英二はわけがわからないまま話を聞かされていた。
しかも元来人の良い英二は丁寧に相槌を打っている。気をよくしたアレックスの話は1時間を越える壮大なラブストーリーとなっていた。が、アッシュはおもしろいので放っておいた。

出会ったその日に即ベッドに入ったお手軽な女の話をあそこまで膨らませるアレックスもアレックスだが、聞いている英二の方もどうせその内容の半分も理解していないに違いない。アレックスが興奮して捲くし立てる早口のブロークンイングリッシュに英語の苦手な英二の耳はついていってないはずだ。妙にやさしげに笑っているあの顔は、言われている英語があまり理解できない時などに、ごまかそうとして使う笑顔に似ている。アッシュは英二のあの笑顔の意味を誰よりもよく知っていた。
あの控え目な笑顔で愛想よく相槌を打たれると、知らないものは自分の話を親身に聞いてくれていると誤解するのだ。

そして今日の英二もその笑顔を顔に張り付かせてアレックスの話を聞いている。

その時、英二が相槌を打ちながらチラリとアッシュを見た。助けて欲しいのだ。

今回は助けてやるか・・。

内心苦笑しながらアッシュは彼らのテーブルに向かい、さっきまでボーンズが座っていた椅子を引いて座りながら、2人に声をかけた。

「何話してんだ?」

アレックスは黙り込む。そして酒を煽る。

誰彼構わず彼女の話をするアレックスだが、なぜだかアッシュにだけはその話をすることがない。

「ああ。アッシュ。」
ほっとした表情で英二が話しはじめる。
「今までで一番長く付き合っていた彼女に振られたんだって。」
「一番長い?どのくらいだ?」
「5ヶ月。」
そうだろうな。とアッシュは思う。強面の顔のわりにはアレックスは付き合う女には非常にやさしい。付き合い始めた女からの評判は上々だ。だが長くは続かない。その理由をアッシュはーいやリンクスのほぼ全員が知っていた。

「そんなに長く?・・付き合ったのに、他の女の人と・・その・・寝ちゃったんだって。」
しかもそれがそういう商売をしている女の人だったらしいんだ。と英二が言いづらそうに話す。
予想通りの展開だ。というかそれ以外の理由でアレックスの別れ話を聞いたためしがない。
いやあるか。”やっぱりアッシュに惚れちゃったの。”という振られ方もあった。だがアッシュには迷惑な話だ。

アレックスはどんなにうまくいっている彼女がいても、街角でいわゆるコールガールに声を掛けられると99パーセントの確率で誘いに乗るのだ。ちなみに、ただの女が声を掛けてきても”オレには今彼女がいるから”と断る。
リンクス達からは”ワケがわからない。””そんなに商売女がいいのか””アレックスは好きものだ””なら彼女の方をオレにくれ”などとからかわれている。

「そして彼女にそれがバレちゃって、”そんなに商売女がいいなら病気でもウツされて○○が××て死んじまえ”って言われてフラれちゃったんだって。」
さらりと英二がアメリカの隠語を使ってその彼女の捨て台詞を再現した。
「お前・・ちゃんと意味がわかって言ってんのかそれ。」
「え?多分。○○って、」
「言わなくていい。」
アッシュは英二の言葉を遮った。
おそらく聞いたことをそのまま言っているだろう外国人の英二だが、その意味の検討はなんとなくついているのだろう。だが、使うべき場所を間違えないでくれるなよ、とあらぬ心配をする。もっとも隠語などに正しい使用場所、使用方法などないのだが・・。

「でもね。1回じゃないんだって、その彼女も2回までは許してくれたそうなんだ。」
3回ともなるとねぇ。と英二が言葉を濁す。

2回もよく許せたな。できた女だ。とアッシュはアレックスが別れた女の顔を思い出す。
うぬぼれているわけではないが、アレックスの歴々の彼女の内で自分に色目を使わなかった女は自分にとっては”できた彼女”の部類に入る。アレックスも今回の彼女には結構真剣だったはずだ。


「だ~~~~!!」

とそれまでだまって酒を飲みながら2人の会話を聞いていたアレックスがいきなり吠えた。
「ア・・アレックス?」
びくりと肩をすくませた英二がアレックスを伺う。
アレックスは勢いよく立ち上がった。いつの間にやら別のテーブルにいたボーンズに向かって大声を出す。

「ボーンズ!」
「ハイ?!」
アッシュに席を取られたボーンズはあれから他のテーブルをなぜだか転々としていた。今は店の真ん中のテーブルの脇で立っている。

「オレは帰る!ここはお前が払っておけ!」
「ちょっ。なんでオレが!」
お前が奢ってやるっていうから来てやったんだぜ!と文句を言うボーンズに、アレックスは酔っ払ってるとは思えない足取りで近寄って上着の前襟を掴み、その中に手を突っ込んだ。
「わ!お前何すんだよっ。」
アレックスがボーンズの懐から手を出すと、数枚の紙幣札が握られていた。結構な枚数だ。

「儲けさせてやったろ?」

ボーンズは賭けに勝ったのだ。その賭けとは・・

「5ヶ月丁度で別れてよかったな。胴元はお前か?」

ボーンズはバツの悪い表情を浮かべた。
いつもより調子のよかったアレックスの交際が1ヶ月半を越した頃からリンクスの中で賭けが始まった。
賭けの内容はもちろん『アレックスはいつ彼女にフラれるか。』だ。
その賭けの胴元にリンクスの中では計算の得意なボーンズが買って出た。しかも自分でも掛けている。まさかの5ヶ月。
2ヶ月でも3ヶ月でも、半年でも1年でもない、まさかまさかの大穴高配当だった。

アレックスは掴んでいた前襟ごとボーンズの胸を押して手を離し、反対の手で持っていた紙幣をバラ撒こうとした。慌ててボーンズがアレックスの手から紙幣を掴み返す。

それを見ていたリンクス達が騒ぎ出した。

「なんだお前らグルだったのかよ!」「金かえせ!」「どうしてバレンタインまで持てなかったんだ!」「お前を信じてたのにアレックス!」などと野次が店のあちこちから飛んで来る。

うるさい!!!!

とアレックスが怒鳴って場がシンとなる。

フンッ。と肩を怒らせてアレックスが店から出て行く。店のドアが大きな音を立てて力任せに閉められた。

しばらく静かだった店内に、少しずつざわめきが戻り始める。

「帰るぞ。英二。」
アッシュが短く英二に言って席を立った。
「え?待てよ。」
英二も慌てて立ち上がった。

アッシュと英二は店のドアへと向かう。
リンクス達は席を立ったボスの事をなんとなく伺っているようだ。
途中すれ違うボーンズの肩にアッシュはその手を乗せてニヤリと笑った。

「ボーンズ払ってやれよ。勝ったんだろ?」
「ボスだって5ヶ月で賭けてたくせに・・・」

それを聞いたリンクス達がまた騒ぎ出す。

「なんだよ!お前もか!アッシュ!」「お前らやっぱりグルだったんじゃねーの?!」「金かえせ!」なかには、5ヶ月を見計らってアッシュがアレックスの女を寝取ったんじゃないのかという野次まであった。
「あーもーウルせぇ。勝った金はいらねぇよ。お前らその金で飲め。アシが出た分は自分たちで払え。」

さすがアッシュ!どこまでもついていくぜボス!と野次の内容の調子がとたんによくなる。

「いくぞ。」
アッシュは英二を伴って外に出た。





*****




「あら。アレックス。この間はどうもありがと。」

アレックスが上着のポケットに手を突っ込んで歩いていると、彼女と別れる原因となったコールガールに声をかけられた。

そういえばこの街頭の下が彼女の”仕事場”だった。アレックスは心の中で舌打ちをした。

彼女はいつもこの暗い路地の暗い街頭の下で自分に声をかけてくれる男を待って立っている。
アレックスはあの日この女を買ったのだ。別の場所で。

肌の浅黒い彼女は混血なのだろうか、大きな黒い目と黒い髪。だが肌の色はそれほど黒くなく、その顔はなかなかの美人だ。アレックスより少し年上だろう。合皮のミニスカートからはすらりとした足がのびている。くたびれた派手な化粧はけばけばしく、露出の多いキャミソールからはみでる乳房の上からそのまま羽織った短いフェイクファーのコートが安っぽく、そして生々しい。

「・・・・。」
「フラれたんだって?」
女は細い煙草を片手にアレックスに話しかけた。
「早いな。」情報が。とアレックスは答えた。
この界隈のコールガールの内ではアレックスは人気者だ。少し強面だがそこそこの顔に、身長、体格、ダウンタウンでは新進勢力のリンクスのNo.2。そしてなによりコールガールの誘いを断らない。

手っ取り早く金が必要なときはアレックスを誘えばいい。

女達の間では有名な話だった。

その女は仕草で煙草を勧めたが、アレックスはそれを断り自分の懐から煙草を出した。
女が差し出す火にアレックスが身をかがませる。
身を起こしたアレックスはため息ともつかない紫煙を長く吐き出した。
そんなアレックスに女がまた声をかける。
「助かったわ。」
「・・・・・」
だがそのせいでアレックスは恋人にフラれた。自業自得とは言えどうしようもない。
苦虫をつぶしたような顔のアレックスを気にせず目の前の女は話し続ける。
「お詫びに今晩どう?」
「今日は持ち合わせがねぇ。」

今日はバレンタインだった。

”一度こんな高級店のチョコレートを食べてみたいわ。”
といつかのデート中にショーウィンドーを見ながらかわいい恋人が呟いたのをアレックスは覚えていた。だが、それは1粒が目玉が飛び出るほど高いチョコレートだ。その日からアレックスは金を貯めた。金の貯まったアレックスは2日前、その高級店に入るには場違いな服装でーそれはいつものくたびれたTシャツとジーパンにジージャンだったー勇気を出して店のドアを開けた。そして、胡散臭そうに対応する店員に虚勢を貼りながら、小さな箱に入ったそれなりに見栄えのするチョコレートを手に入れたのだ。

そしてその足で女を買った。

よってポケットの中には1ドルと数セントしか残っていない。

「今晩はタダでもいいよ。」
しなだれかかるように間合いを詰める女。背の高いアレックスの肩に回される腕。
2人の唇が合わさる。



********************


「なんでアレックスは彼女がいるのに、他の女性と寝るんだろ?」
英二はアッシュに問いかけた。
「さあな。」
だがアッシュには理由がわかっている。

あいつも損な性分だ。

バーを出た2人は、アッパーイーストの高級アパートメントまで並んで歩いていた。
すっかり日が暮れ数時間もたった真冬の夜の寒さが体に染み渡る。

数年前、アッシュがゴルツィネの屋敷にいながらにしてストリートに出始めた頃、最初にツルんだのがアレックスだった。女のような見かけのアッシュは荒くれたストリートキッズに侮られながら、時にはそれを武器にして着々と足場を固めていった。いや自分でストリートキッズのボスになるつもりはこれっぽっちもなかったので足場が固まってしまったというべきか。アレックスとはその頃からの仲だ。
よく行動を共にするだけにアッシュの身の上ーマフィアの男娼ーだということもすぐにバレた。
アレックスにバレた時、どう思われ様と構うものかと冷たい眼差しで睨んだ先でアレックスがボソリと呟いた。

『俺は姉貴が体を売ってくれたカネで大きくなったんだ。』

そしてアレックスはこう続けた。

金がないと食べていけない。食う為にはなりふりかまっていてはここでは生きていけない。だから男だろうが女だろうが何をして稼ごうが俺は気にしない。と。

アレックスの姉はアッシュと出会う前に流行り病で亡くなっていた。

自分たちが出会ったのは13才の頃だろうか。まだお互いの外見も考え方も今よりはずいぶんとガキだった。だがアレックスは昔からそこそこ体格がよかった。それから数年後、一足早くアレックスの見てくれだけが大人になった頃、街角で商売女に声をかけられるようになった。

アッシュはそれからアレックスが女達の誘いを断るのを見たことがない。金のない時以外は。

アッシュは英二の問いに答えず、ただ黙って前を向いて歩いた。




***************


「タダなんか言うな。大事な商売道具だろ?」
アレックスは慣れたように角度を変えてキスをした。アレックスがこの女を買うのは先日が初めてではなかった。
そして、自分にキスをしている女の細い肩を強く掴んでゆっくりと押しやる。
「オレは金を払えねぇ時は、オマエらとは寝ねぇ。」
ポケットから最後の1ドル紙幣を出して、彼女の手に握らせる。

「キス代。」


***************


しばらくして、英二はまた口を開いた。
「でも5ヶ月で当てるなんてきみとボーンズもすごいな。ラッキーだったね。」
いやラッキーといっちゃアレックスに悪いな。と笑った顔をあわてて英二はひきしめる。
「・・・・。」

アッシュが5ヶ月に賭けたのは理由があった。

5ヶ月に賭けたのではない。5ヶ月後が2月だったのだ。アッシュは2月に賭けたのだ。ボーンズもおそらくそうだろう。
アレックスもバカではない。愛しい恋人がいる間は、コールガール達がいる界隈には近寄らないようにしている。

だがアレックスは声をかけられると女達の誘いを断れない。

彼が恋人と付き合い始めたのはハロウィン前の9月の初めだ。順調に付き合っているように見えた。
そして年も明けて2月ともなると、悪い風邪が流行る。毎年の事だ。
商売女の中にはアレックスの姉のように幼い子供を養っている者もいる。
高熱を出したその子を病院に連れて行く金もなく、せめてクスリ代だけでも稼ごうと、芯から冷える真冬の街角にミニスカートで足をさらしながら立ったとしても、男を捕まえられない時がある。そんな時、彼女達が思い浮かべるのが声を掛ければ必ず自分を買ってくれるアレックスの事だ。

2日前、恋人の為にチョコレートを買ったアレックスはその箱をポケットに入れーその箱はポケットに入る程小さかったー、食事を取ろうとリンクスの溜まり場であるバーに足を運んだ。チョコレートの残りの金額で薔薇の花束でも明日買おうかと鼻歌を歌いながら。
そこに件の女が店の入り口で待ち構えていたのだ。

『アタシを一晩買ってくれない?』

アレックスは何も聞かずに自分の部屋に連れて帰る。
そして次の日、噂を聞きつけた自分の彼女にバレた。
5ヶ月目にして。悪い風邪が流行る2月に。そういう事だ。


********



「子供が熱でも出してんじゃねぇのか?帰ってやれよ。」
そして女に背を向けて自分の安アパートへと歩き出す。
女はアレックスに息子が熱を出したことを話してはいなかった。
アレックスのその背に女が声を掛ける。

「アンタ。これからもタカられるよ。」

アレックスは振り返らずに軽く手を振った。




********

賭けに勝ったアッシュとボーンズはすごいなと、しきりに関心している英二にアッシュは小さく笑いながら問いかけた。
「なんで勝ったんだと思う?オニィチャン?」
「なんとなく?」
「・・・・お前、ギャンブルには絶対手を出すな。」

なんとなく。で賭けて勝てる賭け事はない。

最後の数パーセントは一か八かだが、その他の数パーセントはなんらかの情報によってある程度予測して、本当に”賭け”に出る部分のパーセンテージを極力減らさなければツキを呼ぶことなど出来ないだろう。
英二の言ったようになんとなく賭けるヤツはほぼ勝てない。もしくはビギナーズラックで勝つくらいか。そういうやつらが賭け事に身持ちを崩していく。

アッシュの物言いにムッとした英二は少し強めの口調で言い返す。

「じぃちゃんの遺言で、賭け事と自分が好きになった女以外には手を出すなって言われてんだ。」
「そりゃ懸命だ。」
アッシュは肩をすくめた。

「アレックスに聞かせてやれ。」


********



ハッッッックション!!

アレックスは道すがら大きなくしゃみをして、盛大に鼻をすすった。寒い。
なにが寒いかというと、深夜の気温もそうだが、彼女にフラれた心も寒ければ、すっかり寂しくなった懐事情も寒い。

格好つけて最後の1ドル紙幣を女にやってしまった。俺は馬鹿か。

と1人で頭を乱暴に掻く。

明日何食えばいいんだ?とりあえずチョコか・・・・。

ポケットに入れっぱなしの小さな箱に手が触れた。

チョコレートを食べたいと言った時の彼女の笑顔を思い出す。

この気持ちはどうすれば忘れられるのだろうか。


**********


「アッシュ。明日アレックスも呼んでご飯でも食べようぜ。」
「?」
「さっきアレックスの話を聞いてたら、高いチョコレートを買ったって言ってた。お金がないんじゃないの?」
全く。こいつのこういうところが面白い。アッシュは思う。人の話を真面目に聞いているかと思えば半分も理解していなかったり、かと思えばその要点だけはとらえていて、しかも相手を慮る。
「そうだな。だが昼間はやめとけ。」
「なんで?」
「あいつが今日遊んでた分、俺にイロイロ押し付けられた厄介ごとをそのままあいつに押しつけてやる。」

それにあいつも金がないのであれば、稼ぎたいだろう。厄介事の中には儲け話もあった。自分ではやりたくない面倒くさい仕事だったが。

「君のリンクスだろう?君がやればいいんじゃないのか。」と英二は呆れた声を出した。

明日の晩御飯何にしようかなぁ。と英二が呟く。
なんでもいいさと答えるアッシュに、それが一番困るんだと英二が返す。

そうして角を曲がると2人の住むアパートメントが見えてきた。

「僕、アレックスの話を聞いていて結局あんまり食べてないんだ。君は腹へってないかい?」
「俺も食ってねぇ。」
「何かつくる?何がいい?」
「なんでも。」
「だからそれが・・」と英二が怒る。

アッシュは笑いながら高級アパートメントのエントランスのドアを片手で開けた。昼間は常駐しているドアマンもこの時間ではさすがにいない。

アレックスは今どうしているだろうか。エレベーターに乗りながらアッシュは考える。

とにかく明日厄介ごとを全部押し付けてやる。でないと自分の気がおさまらない。アレックスの明日はとんでもなく忙しいものになるだろう。

そして片方の口角を挙げてニヤリと笑った。

ー余計な事を何も考えられないくらいに。な。






♪シャラララ。すーてきにキーッス。シャラララ。すーなおにキーッス。♪
最後まで読んでくださった方。ありがとうございました~。
今回アレックスの恋バナ?失恋バナ?ということで、これまた需要のないカンジでした。本当にここまで読んでくださっている方一人ひとりにチョコを渡したい気分でございます。
もう周知の事実だと思うので文章中では書かなかったのですが、アメリカではバレンタインの日には男性から女性にプレゼントや花束を贈るのがスタンダードらしいです。なんともすばらしい。でも日本にはホワイトデーがありますから!!
本当は英二の高校の頃の話をアップする予定だったのですが、なぜだかアレックスの話が横からむくむくと出来上がってしまい。こちらをアップ。
私にとってアレックスはこんな感じで、リンクスのNo.2だけど、ちょっと間抜けなところもある中間管理職的な立ち居地です。アッシュがかっこいい分、ちょっとカッコ悪いところもあって欲しい。多分リンクスの中でアッシュは畏怖というかちょっと怖い存在だと思うのですが、その分アレックスは庶民派で平気で賭け事の対象にもされちゃう愛されキャラであって欲しいというか・・。
こんなアレックス。た・・・たのしんでいただけましたか?(今回はアレックスキー様の動向が気になる気になる・・でもいるのかなぁ?)
ちょっとでも皆さんにたのしんでいただける要素がこの小説の中にあるといいなぁ。と思います。
それでは本当にありがとうございました!
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2013.02.11 09:55 | # [ 編集 ]

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2013.03.12 21:57 | # [ 編集 ]

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2013.05.12 18:51 | # [ 編集 ]












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